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君ノトナリ:LAST ALLIANCE 佐野森吾プロデュース 絶対的な歌声と聴く者に寄り添うグッドメロディが詰まった1stフルアルバム完成

君ノトナリ:LAST ALLIANCE 佐野森吾プロデュース 絶対的な歌声と聴く者に寄り添うグッドメロディが詰まった1stフルアルバム完成

2012年に幼馴染が集まって結成し、4年前にバンド名を改名して現在に至る君ノトナリ。鈴木穂高の絶対的な歌声と聴く者に寄り添うグッドメロディ、楽曲の世界観を増幅するサウンド、そして経験を積む毎に評価を高く集めているライブを武器に活動を続ける彼らが、待望の1stフルアルバム『GOLDEN RECORD』を完成させた。今作はLAST ALLIANCEの佐野森吾が初めてプロデュースした注目作。リリース直後となった今回のインタビューでは、音源制作のこと、プロデュースのこと、グッドメロディのこと、そして君ノトナリの核となっている楽曲の成り立ちについて紐解いていった。

 
 

「『GOLDEN RECORD』を積んで世に放たれた時に、誰かがアクションを起こしてくれるのを待っている。僕らも僕らなりのロマンを込めたんです」

 
 
 
 
●バンド名を変えて4年くらい経ちますが、意識は変わりました?
 
鈴木:聴いてくれている人を第一に考えるようになりました。バンド名を変えるまでは自己満足に近い感覚だったというか。
 
●自分たちが楽しければいいという?
 
鈴木:はい。でもバンド名を変えたタイミングで、徐々に名前が少しずつ知られてきて、音楽がお客さんに届くようになってきて。僕たちの音楽を待っていてくださる人たちが増えてきたことによって、そういう人たちに届くようにというか、そういう人たちを少しでも楽にしてあげられるようになりたい、と思うようになった。
 
●はい。
 
鈴木:「独りじゃないんだよ」って人の痛みみたいなものを肯定できたらいいなと思って。だから自己満足というよりも“誰かのために歌う”っていう感覚が少しづつ出てきましたね。
 
●それによって、作る楽曲も変化した?
 
鈴木:なんとなく昔は暗い曲とかバラード調が多かったんですけど、今はだんだん優しくなったというか柔らかくなったというか。時には励ませるようにテンション感が高いものだとか。表現の幅は広がったのかな。
 
●つい最近メンバーが脱退して現在は2人体制ですが、ライブはどうしてるんですか?
 
鈴木:しばらくライブは出来なかったんですけど、サポートにお願いすることになって最近ようやく出来るようになりました。
 
●まさに1stフルアルバムを出すタイミングですけど、バンドとしては転換期というか。
 
鈴木:そうですね。これが良い転換期になればいいなと思います。
 
●その1stフルアルバム『GOLDEN RECORD』ですが、LAST ALLIANCEの佐野森吾さん(G.)がプロデュースされてたんですよね。どういうきっかけでプロデュースしてもらうことになったんですか?
 
鈴木:今回のアルバムにM-9「北極星に魅せられて」という曲があるんですけど、もともとは音源バージョンとは違ってバラードっぽいアレンジで書いてて、それを書き終わったくらいの時に佐野さんと出会ったんです。2年くらい前の出来事なんですけど。
 
●はい。
 
鈴木:そこからライブに来てくださるようになって、「ライブを観てると俺とやりたいことが似てる気がする」と言ってくださったんです。それで何回か話してるうちに、「俺にプロデュースさせてくれないか?」と。
 
●佐野さんのプロデュースはどうでした?
 
鈴木:まず作曲スタイルが変わりました。今までは僕がひとりでバンドアレンジまで考えて、メンバーに渡して少しずつアレンジを詰めていっていたんですけど、森吾さんが入ったことによって彼のお題に応えるというか。お題をもらってそれに沿った曲を作る、みたいな感じになったんです。
 
●お題?
 
鈴木:例えばM-3「彗星」だと「BPM140〜150の間でシングル曲を書いてほしい」とか。あとは「ライブで女の子が泣いちゃう曲」とか。そういう制限がある中での曲作りは初めてだったんですが、それが楽しかった。
 
●制限があることによって難しくならないんですか?
 
鈴木:難しい感じはなかったですね。僕、音楽理論とかわからなくて、感覚だけで曲を書いてるんですよ。自分で弾いているコードとかもわからないくらい。
 
●まじですか。末永さんは?
 
末永:僕は音楽の学校に通ってたんですけど、でも穂高に近い感じで、感覚的ですね。
 
鈴木:コードとか知らなくても、なんとなく感覚的にわかるので問題ないかなって。メロディもギターを弾きながら歌って作るんですけど、歌詞とギターとメロディが一緒に出てくる感覚なんです。そうすると自由過ぎちゃって、何をしても許されるんです。最終的に正しいのは僕自身なので。
 
●なるほど。正解は自分の中にしかないというか。
 
鈴木:佐野さんにプロデュースしてもらって、そこに制限を設けたんです。それが謎解きパズルをやっている感覚に近くて。
 
●感覚的過ぎたものが、佐野さんのお題によって論理的な構築になる。
 
鈴木:そうですね。
 
●佐野さんはベースもプロデュースされたんですか?
 
末永:フレーズは特に言われなかったんですけど、ライブでの見せ方とかを色々と学ばせていただきました。例えば、僕は以前は黒髪で落ち着いた見た目だったんですけど、「変人になれ」と言われまして。
 
●ふふふ(笑)。
 
末永:「殻を破れ」と言われて金髪にしてみたんです。
 
●わかりやすい殻の破り方(笑)。
 
末永:もともと金髪にするのが嫌だったんです。でも金髪にして時間が経つと慣れてきたし、僕のカラーみたいなものが出てきたので、結果的に良かったのかなと。
 
鈴木:以前はライブをただ淡々とこなしてるだけだったんです。まずライブで自分をさらけ出せてない。「自分の殻を破ってみないとダメなんじゃない?」 という話になって、末永は金髪にしたんです。
 
●自分をさらけ出せるようになりました?
 
末永:金髪にすることの抵抗があったので、それを乗り越えたときに気持ちが出てきたというか。「やっちゃお!」みたいな。
 
鈴木:もともとはずっと棒立ちで演奏してる感じだったんですけど、金髪にしてからお客さんに手拍子を煽ってみたりとか。僕から見たら結構変わってるかな。
 
●気持ちを切り替えることによって、ライブも変わってきた。
 
鈴木:それに以前の僕は、どっちかというと作品志向だったんです。ライブより音源。ライブをするとどうしてもダメ出しをされたりとかがあって、そういうのがあるとメンバー内の空気感も悪くなる。メンバーは幼なじみなんですけど、幼馴染であるが故に指摘出来ないっていう感覚もあったし。
 
●うんうん。
 
鈴木:でも今は、ライブを終えた後に“楽しい”と思えることが増えた。もちろん反省点はありますけど、一本終えた後に達成感みたいなものがあって。
 
末永:うん、1つ1つのライブが楽しい感覚になったよね。以前は“今日ダメだったな”とネガティブに捉えていたことが多かったんですけど、自分たち自身が変わっていくうちに“もっとやりたい”という気持ちが強くなってきた。
 
●いい変化ですね。
 
鈴木:対バン相手にも「今日のライブかっこよかった」と言ってもらえる機会も増えたのがいちばん大きいかなと思います。去年の夏に“仁義なき戦い”(全国ライブハウス共同企画イベント)に参加させてもらったんですけど、あのイベントは同世代でまわるんですよ。そこで「今日本当にかっこよかったよ」とかライブについて話してくれる友達が増えたり。そういうことが自信にも繋がった気がします。
 
●君ノトナリが歌とメロディを大切にしているバンドだということは今作を聴けばすぐにわかるんですが、自分たちが考える“グッドメロディ”とはどういうものですか?
 
鈴木:「誰が歌っても良い曲」という感じですね。僕じゃなくても良い曲だねっていう。誰かが口ずさんだ曲って情報としてメロディしか残らないじゃないですか。街中で誰かがふわっと歌ったメロディがずっと耳に残っている…そういうのがグッドメロディだと思いますね。
 
●今回の制作もそういうところを追求した?
 
鈴木:そうですね。でも僕は譜面に書き起こしたりしないので、歌ってしばらく他の動作とかしていても、記憶に残っていたらそれはグッドメロディなのかなと思っていて。今作の曲作りも、ギターを弾きながら歌って、メロディは歌詞と一緒に出てくるので自然と歌詞と親和性のあるものになるんですけど、その中でもしばらくして耳に残ってるものがグッドメロディであって、それをより活かすアレンジを森吾さんと一緒に練っていく。
 
●ふむふむ。
 
鈴木:ギター弾きながら「ラララ」で歌ったりもするんですけど、そこで“このメロディ気持ちいいな”とかを見つけるというか。だから「作曲をしよう!」と意気込んで作るというより、「生まれはじめたからやろう」みたいな感覚なんです。陣痛みたいな。
 
●陣痛。
 
鈴木:本当に授かりものなのかなって思います。自分の子ども、みたいな。やっぱり曲のいちばんのファンは自分だと思ってますし、メロディや歌がいちばん活きる形に仕上げてあげたい。例えギターですごくかっこいいフレーズが出来たとしても、メロディの邪魔をしていたり、曲と合致しないなと思ったら切り捨てる。そういう感覚ですね。
 
●「授かりもの」とおっしゃいましたけど、自分の中の感覚として「生まれた」という感覚を自覚しているんですね。
 
鈴木:そうかもしれないです。だから「生まれた! じゃあ曲作ろう!」というのが僕の作曲動機になっている。だた、「明確にこういう曲が書きたい」と思って作った楽曲が1曲だけ入ってて。
 
●どの曲ですか?
 
鈴木:M-4「星をかった日」です。『三鷹の森ジブリ美術館』に初めて行った時、「星をかった日」という短編映画を知ったんです。その時はダイジェストしか観ていないので、あらすじとかはまったくわからないんですけど、その映像の美しさに感激して「この作品のために曲を書きたい!」ってものすごく創作欲が湧いてきて。僕にしては珍しい出来事なんですけど。
 
●そうだったんですね。それと「星をかった日」もそうですが、君ノトナリの楽曲には宇宙に関する言葉がよく出てきますよね?
 
鈴木:そうですね(笑)。宇宙がすごくロマンがある。僕はもともと北海道生まれなんですけど、おばあちゃんがすごく星に詳しくて。小さい頃から夜空を見て育ったんです。
 
●北海道の夜空は綺麗でしょうね。
 
鈴木:めちゃくちゃ綺麗で。「この星は◯◯で、あの星が□△で…」っておばあちゃんが教えてくれて。その思い出が「北極星に魅せられて」の歌詞になってたりするんです。昔から「人は死んだらお星様」になるとか言うじゃないですか。遠いけどちょっと近いものを感じるというか。他にも、星は死ぬ瞬間に最大光度が出るとか、死ぬ瞬間に初めて認知されるとか。そういった「儚い」「切ない」という感覚みたいなものが僕の心情に強く訴えかけてくるんです。やっぱり心が動いた瞬間が曲が生まれるタイミングだと思うんですよね。そこにいちばん影響してきたのが星なのかな。『GOLDEN RECORD』というタイトルも宇宙に関することからきていて。
 
●『GOLDEN RECORD』?
 
鈴木:地球上のいろんな音声が収録された金のレコードをボイジャーという無人探査機に積んで飛ばして、いつか地球と同じくらい、もしくはそれ以上高度な文明を持った地球外生命体が解読して、なにかアクションを起こしてくれるのを待っている、ということを知って、すごくロマンがあるなと。だから君ノトナリが『GOLDEN RECORD』を積んで世に放たれた時に、誰かがアクションを起こしてくれるのを待っている。僕らも僕らなりのロマンを込めたんです。
 
●宇宙のことめちゃくちゃ好きですね(笑)。
 
鈴木:めちゃくちゃ好きです(笑)。
 
●あと、穂高さんの歌声はバンドの大きな武器だと思うんですが。
 
末永:僕もそう思います(笑)。
 
●いつから歌い始めたんですか?
 
鈴木:実は、バンドを始めたといに「歌おう」と思っていなかったんですよ。カラオケもほとんど行かないし。
 
●え。自分で歌が上手いと思ってなかった?
 
鈴木:思ったことなかったですね。音楽の授業が好きだったり、ハモリにいくのが楽しい感覚はありましたけど、ずっとサッカーやってたし運動したりする方が楽しいという感覚だった。だから小学生の僕が「バンドやってる」と聞いたらびっくりすると思います。
 
●ボイトレ行ってるとか?
 
鈴木:そういうのは全く経験ないし、発声練習とかもわかっていないんです。
 
●でも今は、このバンドにとっての武器のひとつだという自覚はあるんですよね?
 
鈴木:そうですね。僕の声がどうのこうのと言ってくださるお客さんも居るので。
 
●聴いてすぐに思ったんですけど、絶対的な武器になるという感じがしたんです。
 
鈴木:最大限の褒め言葉ですね(笑)。
 
●歌ってて楽しいですか?
 
鈴木:もちろん楽しいです。誰もが、ホームビデオとかで自分の声を聴いたら違和感があって嫌だという経験ってあるじゃないですか。僕もその感覚はあったんです。自分のしゃべっている声も苦手だったし、動画とかで聴くのも苦手だった。でも中学生の頃に「穂高くんのしゃべってる声っていい声だよね」と言われ始めて。
 
●うん。しゃべっている声と歌声が近いタイプですよね。
 
鈴木:それでだんだん自分を肯定できたというか。バンドで歌うようになって「いい声だね」とか「いい歌だね」と言ってもらえることが少しずつ増えて「自分の武器なんだな」と少しずつ自覚していきました。
 
●授かりものじゃないけど、かけがえのなさに気づいたと。
 
鈴木:はい。だから両親と神様に感謝しています。
 
 
interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:Yuina.Hiramoto
 
 
 
 
 
 
 
 

1st Full Album
『GOLDEN RECORD』

LONG ISLAND RECORDS
LIR-1005
¥2,500+税
2019/7/3 Release


 

 

 
L-R
末永優磨(Ba.)
鈴木穂高(Vo./G./Key.)

http://kiminotonari.com/

 
 
 
 

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