2008年、佐藤竜市と高橋勝浩の手によりスタートした“わびさび”を感じさせるツインドラム・インストロックバンド・johann。日本語が持つ情緒や祭り囃子など、“和”の要素を随所に採り入れたプリミティブなロックは、極上の美的センスとライブハウスでオーディエンスをひとつにする強いエネルギーを帯びている。四畳半のアパートから世界に鳴らす純日本製インストロック、必聴です。
●johannは佐藤さんと高橋さんの2人で始まったらしいですね。
佐藤:そうですね。サポートドラムと3人で始まりました。高橋とは前のバンドでも一緒だったんですけど、俺はそもそも茨城からバンド4人で上京してきたんです。でもみんな辞めちゃって。それでゼロからメンバーを探して、まーくん(高橋)と出会ったんです。かなり会いました。4〜50人くらいメンバー候補と会ったんじゃないかな。
●めっちゃ会ってる。
高橋:当時、竜市が前にやっていたバンドに僕が加入したんですけど、「こんなのやってる」ってスタジオで聴かせてくれたのが、僕が全然知らないものだったんです。
佐藤:当時はすげぇ暗い音楽をやっていて。
高橋:「なんじゃこれ?」と思ったんです。僕はそれまでメロコアとかを通ってきたんですけど、すごく新鮮だったんです。一緒にバンドをやり始めてからも、竜市からはいろんな音楽を教えてもらって、それが全部知らないものなんですけど、おもしろくて。
●もともと今のような音楽だったんですか?
佐藤:今のような感じはあったんですけど、自分の感性とか技術が追いついてなくて、結成当初はなかなか実現できていなくて。頭の中ではイメージできているんですけど、それをみんなに言語で伝えることができないというか。
●曲は佐藤さんが作っているんですか?
佐藤:そうですね。元となる曲を頭の中で作っていって、あとはみんなでジャムったりして。ジャムってて駄目だと思ったらその場でボツにしたり、いいアイディアが浮かんだら言葉にしてみんなに伝える。
●さっき4〜50人くらいメンバー候補と会ったとおっしゃいましたけど、今の5人になったのは1年前ですよね。
佐藤:そうです。ツインドラムになったのが1年前。
●ツインドラムはもともとやりたかったんですか?
佐藤:いや。まさか自分がツインドラムのバンドをやるとは思ってませんでした。
●やっとるやん。
佐藤:座りのドラムが深津くんで、立ちのドラムが櫻田くんなんですけど、前のドラムが抜けるってなったとき最初に深津くんと合わせたんです。彼はすごくグルーヴが良くて。ただ、音量に欠けるなぁと思ったんですね。
●パンチ力。
佐藤:そうそう。で、その後に合わせた櫻田くんはすげぇパンチ力があるんですけど、グルーヴに欠けるなと。そこで「どうしよう?」と悩んだんですけど、「2人とも入ってもらおう」と。インストだし。だから結果的にツインドラムになったんです。なので、ツインドラムになってまだ1年だから、楽曲的にももっとツインドラムを活かすものができると思うんですよね。それはこれからの課題だと思っていて。
●高橋さんはベースなので、ツインドラムは直接的に関係しますよね。それまでと比べてどうですか?
高橋:もうわけわかんなくて楽しいです。
●わけわかんない(笑)。
高橋:このバンドでは初めてことばかりで。楽しいですね。
●インストというのも最初から?
佐藤:いや、違うんですよ。最初はヴォーカルも探していて、何人も会ったんです。女の子もいたし、ラッパーみたいな人もいたし。でも結局ピンとこなくて。ヴォーカリストもこういう音に歌を乗せるのは難しいと思うんですよね。更に僕はメロディを弾くのも好きだし、単音のフレーズも好きだから、インストで模索しながらやっていこうかと。それで手応えを感じたから、これでいいんじゃないかって。
●今回の2ndミニアルバム『Haiku Days』を聴いて思ったんですけど、表現したいことがすごく明確に伝わってくるというか。音楽で他者とコミュニケーションを取ろうとしているというか。
佐藤:僕、文章が好きなんですよ。小説の中に出てきたワンフレーズとか。今作にM-5「輝く街」という曲がありますけど、それは本屋に行ったときに『ひかりのまち』という漫画があって。中身は読んでないですけど、そのタイトルからインスパイアを受けて作った曲なんです。言葉や文章からイメージがバーッ! とくることが多いです。
●それは雰囲気? 景色?
佐藤:雰囲気ですね。例えばライブでやるところまで想像するんです。ステージで「次は「輝く街」をやります」と言ったあと、その次に鳴るイントロを想像する、みたいな感じで。
●なるほど。
佐藤:M-2「koyuki」も、“小雪”という言葉の字面がなんかいいなと思って、ずっと曲にしたかったんです。小雪という名前の20歳の女の子が初めて居酒屋に行く、という曲なんですけど。
●おもしろいな(笑)。文章や言葉からインスパイアを受けるという話に関連しているのかもしれないですけど、和の要素も随所に入れていますよね。作品タイトルにも関係しているM-3「haiku days tanka poetry」は5・7・5・7・7のリズムがモチーフになっているし、祭り囃子のリズムや掛け声とかが採り入れられている。
佐藤:大好きですね。中学校のときに地元のお祭りで神輿を担いでいたんですけど、それがすごく楽しくて。そういうのをバンドでも表現したいなと。
●祭り囃子って、音楽で“収穫を祝う”という目的でみんなの気持ちをひとつにするものじゃないですか。johannの音楽からはそういう志向性を感じる。みんなで楽しもうっていう。
佐藤:訳もなく楽しめるっていうのはすごくいいと思うんですよ。うちの曲はメンバーの掛け声とかも入ってますけど、ああいうのもライブでみんなと一緒に楽しみたいからなんです。お客さんが身体を揺らして聴いてもらいたいというより、縦ノリでウオーッ! っていう感じで聴いてもらいたい。お客さんがダイヴしている光景とかをステージから見るのが最高なので。
高橋:最高です。
interview:Takeshi.Yamanaka