仙台を拠点に活動する男女ツインボーカルの4人組バンド、JACKPOT BELLがニューミニアルバム『RE:VIVAL』をリリースする。2011年3月11日に起きた東日本大震災の被害を受けながらも、音楽を続けていくことを選んだ4人。あの当時、誰もが抱えた悩みや葛藤と闘いながら、自分たちの音楽と再び真摯に向き合った彼らは今作で1つ先へと突き抜けた。メロディックパンクにスクリーモやメタルコアの要素も融合したバラエティ豊かな楽曲は、強烈なフックを持ったメロディを軸に“JACKPOT BELL”でしか鳴らせない音として鳴り響いている。
●2009年に結成した翌年には1stミニアルバムをリリースしていますが、順風満帆なスタートだった?
KJ:いや、結構な波瀾万丈でした。結成当初のドラムが失踪癖を持っていて…。
●失踪癖!?
KJ:ライブ当日にいなくなったりするんですよ。それでドラムがしばらく安定していなかったところに、CHANが入ったことでバンドが固まりましたね。
CHAN:俺は結成の半年後くらいに入りました。
●そもそも結成はどういう経緯で?
KJ:元々はそれぞれにバンドをやっていて、対バン相手だったんです。前のバンドが解散した時に俺から「一緒にやらないか」と誘って結成しました。実はみんな、前のバンドとはパートが違っていて。俺はハードコア系のバンドのボーカルで、KAZUKIはパンクバンドのギターボーカルで、CHANはヴィジュアル系バンドのドラムだったんです。
KAZUKI:僕はずっと青春パンクをやっていて、「素っ裸になるのがカッコ良い」みたいな感じでした(笑)。
KyoKo:私はメタル系のバンドで、ギターを弾いていて。その前のバンドでもベースだったので、メインで歌うのはこのバンドが初めてなんです。
●この4人でやる音のイメージがあったんですか?
KJ:それぞれ前バンドでのライブを観ていたので、ステージでの姿を想像できたというか。最初はトリプルボーカルのメロコアみたいなイメージでした。
KyoKo:初期はパンク色が強かったですね。
●今みたいなラウド系の要素はいつ入ってきた?
KJ:ツアーをかなりまわっていたので、その中で出会った数々の対バンから影響を受けて。それを自分たちのフィルタに通して出していったら、こうなったのかなと。最初から俺の頭には「ジャンルレスなバンドがJACKPOT BELLだ」という意識があったんですよ。
●2010年から3年連続で、年間100本以上のライブをやっているそうですね。
KJ:県外に出て色んなものを吸収したいという気持ちがあったので、ガムシャラにやっていましたね。
KyoKo:仙台って、外から有名なアーティストが来たりしないとなかなかライブに人が集まらないんですよ。そういう状況を何とかするためには自分たちが外に出て力を付けて、外から仙台に影響を与えられるようなバンドにならなきゃいけないっていう意識があって。
●仙台の音楽シーンを変えたいという意識もあった。
KyoKo:やっぱり東日本大震災があってからバンドが減っちゃったのもあって、今はシーンが確立されている感じもあまりないんですよね。
●震災による活動への影響もあったんでしょうか?
KJ:バンドとしては、KAZUKIの家がなくなったくらいですね。
●なくなったくらいって…(笑)。
KAZUKI:なくなりました(笑)。
KJ:しかも、KAZUKIは風呂に入らないんですよ。
●それは家がなくなったから?
KAZUKI:いや…風呂が嫌いなんです(笑)。
●それはさておき、震災で家がなくなったと。
KAZUKI:住んでいたマンションが半壊しました。
KJ:それ以外のメンバーは大丈夫だったんですけど、震災後最初の1ヶ月はライブもできなかったです。
KyoKo:電気も止まってしまって。でも近くの避難所もいっぱいで入れなかったので、電気が復旧するまでは機材車で寝泊まりしていました。
●当初はもちろん音楽もできなかったわけですよね。
KyoKo:震災後しばらくはガソリンも不足している中で、自分たちがツアーに行くことに意味はあるのかとか色々と考えましたね。でもバンドをやめるっていうことは考えられなかったんです。ライブを再開するまでに色んな人たちが応援のメッセージをくださって、“やっぱりやめられないな”という気持ちが日々強まりました。
KAZUKI:自分らはバンドが生活の中心だし、それ以外のことは考えられないんです。
CHAN:やめるとかやめないとか考える前に、やるしかないなと思っていました。
●ライブを再開したのはいつ頃?
KyoKo:震災の1ヶ月後くらいですね。
KJ:俺は仙台の人に「頑張ろうぜ」って言うのがイヤで。親や彼女を亡くした人もいる中で、簡単に「頑張ろうぜ」って言うのは失礼な気がしたんです。だったら自分らが頑張ろうということで、すぐ動き始めた部分があって。自分らが頑張っている姿を見て、他の人たちも何かを感じてくれたらなと。震災のことばかり言いたくないんですけど、今回の“崩壊から再生へ”という言葉は今の自分たちに合っている気がします。
●“崩壊から再生へ”というのが今作『RE:VIVAL』のキーワードなんですよね。
KyoKo:みんなで考えました。M-3「Waiting for」にその想いが一番濃く出ているんですけど、この曲ができた時にはもうイメージがありましたね。
KJ:震災後に手売りの音源を1枚作っているんですけど、そこには震災直後に感じたことがモロに出ていて。今作にはそのリリース後のツアーを経た自分らの想いが出ている感じですね。
●サウンドの幅も広がった気がします。
KyoKo:以前から楽曲には色んな要素を取り入れていて、アルバムに収録した全ての楽曲が違う要素を持っているというのがウリでもあったんです。でも今までは曲の中で1つの要素を出すにしても、そこまで突き詰められていなかったところがあったんですよ。今まで「君たちは何系なの?」と言われることがよくあったんですけど、それも1つ1つの要素が中途半端だったからで。そこから今作では一気に突き抜けた感覚があります。
KJ:色んなジャンルを取り入れている特徴を認めてくれたのが、(所属レーベルの)BULL SHIT RECORDSだったんです。だから今の自分たちが自由に作った結果が、今回の形になったと思うんですよね。今までは「こういう曲をやったら、受け入れられないんじゃないか」みたいな気持ちがあったんですけど、今は普通にそういうものもやれているというか。
●M-6「Lagtime」なんかは、モロにJ-POPっぽい要素が出ていますよね。
KJ:自分のルーツにはポップスもあるので、その要素を出してみた感じですね。
KyoKo:「メロディが良ければ良いじゃん!」という気持ちがあったので、今回は収録したんですよ。
●この曲にも“あたり前が特別になってゆく”という歌詞がありますが、直接的に震災のことを歌っていなくても、そういう意味も含めて普遍的に受け取れるメッセージが多いかなと思いました。
KyoKo:全ての人がそうではないんですけど、震災がもう風化してしまっている人たちもいると思うんです。でもそういう人たちも今それぞれ抱えている問題に直面して悩んだり闘ったりしているわけで、そこで頑張ってもらいたい気持ちはあるから。いつまでも震災に囚われているんじゃなく、自分たちはもう歩き出しているんだという姿を見せたかったというのもありますね。
KJ:引きずるよりも、忘れないことが大事だから。自分たちに刻み込んで、しっかり前に進みたいという気持ちがあったんです。ツアー先の各地で色んな人たちと話をして感じたことが今は自然に表現できているし、それが音楽性にもつながっている気がします。周りで協力してくれている人たちやツアーに来て応援してくれる人たちがいるからもっと良い曲を作らないといけないし、自分らの気持ちをもっと出せる音楽をやりたいというか。
●そういう想いが結実したアルバムになっている。
KJ:色んな人と出会って話を聞いて、人間的にも成長できたアルバムかなと思います。1つの考えだけじゃなくて、色んな角度からの見方があるんだなと気付かされた作品になりました。
KyoKo:本当に色んなカラーの曲が入っているアルバムなので、飽きない作品になったと思います。やっぱり自分たちは、他の誰もやっていない新しいことをやりたいと思って組んだバンドだから。
●シンガロングパートもあって、ライブも想像できる作品かなと。
KyoKo:みんなで歌っていると、自分自身も気持ちいいんですよね。自分が良いと思ったことをストレートに表現できて、なおかつお客さんも一緒に楽しめたらいいかなと思います。
KJ:お客さんとウチらのみんなで作り上げるステージということも意識して、ライブをやっているんですよ。
●今回はツアーに加えて、リリース記念4ヶ月連続イベントを東京と仙台で開催するんですよね。
KyoKo:“崩壊から再生へ”という大きなテーマに向けて、まず自分たちがツアーを通じて成長していきたい気持ちがあって。仙台の音楽シーンを盛り上げていきたいという気持ちもありつつ、東京や他の地域とのつながりも表現していきたいという想いの中でこの企画を決めたんです。バンドもお客さんも含めて色んな人に、仙台へ来てほしいんですよ。仙台の街を見て、私たちも歩き出しているんだっていうことを知ってほしいし、一緒に仙台を盛り上げてほしいという気持ちもあるから。仙台から発信していきたいし、色んな地域の人に仙台を知ってもらえるキッカケになったらなと思っています。
●ツアーも含めて、今後のライブが楽しみですね。
KyoKo:1本1本、濃いライブをしたいですね。初めて観る人にも何回も観てくれている人にも、その日だけの特別感を出せるように1本1本大事にしていきたいなと思っています。
KJ:100本やったら100色になるくらい、毎回違う色のライブをやっていきたいんです。軸はブレないままで自分たちなりに変わっていくというか、成長とともに色んな表情を出せたらなと思います。
Interview:IMAI