2006年、彼等の愛する街名古屋で結成されたi GOが実に2年ぶりとなるニューアルバム『LOVE & BEER』をリリースする。
昨年ベースが脱退するも、ピンチをチャンスに変えその勢いは止まるどころか更にスピードを増し、最高傑作を完成させ見事な復活を見せた。茜谷が影響を受けたユニコーンやザ・ブルーハーツの音楽をさらに掘り下げ、“やっぱり好きな物は好きだ!”といえる強さを身につけた彼等にもはや死角はない。
●実に2年振りのアルバムが完成しましたね。その名も『LOVE & BEER』!
茜谷:ややこしい事や面倒臭い事は抜きにして、好きなものは好きだと胸を張って言える気持ちを抱きしめたいですね(笑)。
●昨年ベースが脱退されましたが、この2年間でも特に大きな出来事だったと思うんです。
茜谷:まぁ大きかったですが、切り替えは速かったですよ。曲は結構たまってたし、逆にアルバムを作ろうという目標に向かって動けたと思います。
野田:アルバムを作るという目標が明確にあったので、それは止めたくなかった。ベースが抜けたいって言ったその日に、残った3人で話し合いをしたんで、全員が上手く同じ方向に切り替えられたと思います。
●そんな障害も乗り越えてできた3rdアルバムです。
茜谷:本当に素晴らしいアルバムができたと思っているので、抱きしめてあげたい。
●素直な感想なんですが、茜谷さんの歌詞がリアルな部分と言葉遊びしてる部分とが絶妙なバランスだなと思って。
茜谷:ありがとうございます。めっちゃ嬉しいです。
野田:初めて言われましたね。
●もっとけなした方がいいですか?(笑)。
茜谷:いやいやいや、けなされたら落ち込むタイプなんで!
野田:嘘でも褒めてやってください(笑)。
●(笑)。曲によっていろんな表情があるアルバムですよね。M-3「世界の真ん中」やM-4「BOY」は凄く共感できるというか、言葉がダイレクトに刺さるんです。
茜谷:比較的真面目な曲というか、感情的な曲だと思います。
●"いつだって世界の真ん中から逃げ出せないのさ"という歌詞は、いろんな捉え方ができますよね。
茜谷:僕らの曲はひとつの意味だけじゃなくて、いろんな角度から解釈できるような歌詞が多いんです。「世界の真ん中」は特にそういう曲だと思うんで、ぱっと聴いて"こういう曲なんだ"って理解できるものではないと思います。
●聴く人それぞれが自分と歌詞とを照らし合わせたらいいんですよね。
茜谷:本当にそうです! 今までいろんな人に会ったけど、一番分かってらっしゃる!
一同:あははは!
●僕も同世代の元バンドマンとして、凄く共感できるところがあったんです。俗世間的な観点で見ると、"好きな事だけやってきていいな"っ思われている気持ちと一緒に、"お金もないし、この先何が残るんだろう"っていう不安も持ちながらバンドを続けてたので。
茜谷:分かります、共感! そういうのも乗り越えつつやってますね。バンドを楽しくできる環境を整える為に仕事もしてる、みたいな。だから続けるのが辛いなんて事も無いです。30歳を越えたからこそそう思えるのかもしれないですけどね。
●逆にM-2「LOVE&BEER」のような日常的な曲もあって。僕的には応援ソングな感じがしました。
茜谷:「LOVE&BEER」はモロ日常ですね。出し過ぎました(笑)。自分に向けてでもあるし、僕くらいの年齢で似たような経験をしてる人に対する応援ソングでもあるのかな。
●バラエティ豊かな楽曲が多い中、とりわけ異彩を放っているのがM-7「真夜中のピッキー」。
茜谷:作詞作曲とも全部こいつ(野田)なんで、僕もよくわからん部分がいっぱいあるんです。
野田:タイトルを考えてた時に、たまたまmudy on the 昨晩のピッピがいたんで、うちのドラムと二人あわせてピッキー。"11 15 29 30"と数字が出てくるんですが、これは僕の人生のターニングポイントになった年齢を歌詞にしてるんです。11は初オナニー、15は初セックス。それから、29は結婚です。他にも誌面には載せられないいろんな言葉で遊んでいます(笑)。
●この曲があるから、続くロックンロールなM-8「I×T×R」が何故かさわやかに聴こえるんですよ。
茜谷:こんなに攻めてる曲なのに(笑)。サブリミナル効果?
野田:フレミングの法則?
●それぐらい「真夜中のピッキー」に破壊力があった。間奏部分のギターソロも攻めてますよね。
茜谷:実はこいつギターちゃんと弾けないんで、ドラムが弾いてるんです。
●え!?
野田:タイトルにも名前を入れたし、花を持たせてあげようかなという愛情です。
●なるほど(笑)。M-9「IN THE CITY」はi GOらしいビートロック。
茜谷:僕が今まで住んできた街の事を考えながら考えた、ちょっとしたラブソングですね。分かりやすい曲なんで凄く評判がいいです。
●M-10「野良のブルース」も深く染み入るアルバムラストにふさわしい名曲。
茜谷:雨の日に歩いている野良猫を見て作った曲なんですけど、作っていたタイミング的にも日本が沈んでいる時期と重なって。途中から気持ちがそっちにすり替わっていって、作っているうちに感極まってしまった。
●2年振りにアルバムができて、ようやく全国のみなさんに音を届ける事ができますね。
茜谷:ありがたい事ですよね。世間的に流行っている音楽ではないかもしれないけど、今までi GOを聴いてくれた人達には凄く伝わるアルバムだと思いますし、知らない人達もちょっとでも反応してくれたら嬉しいです。そんなに貪欲ではないんだけど、結局はライブありきのバンドなんで、CD作るのもライブをする為なんですよね。だから音源を聴いて興味を持ったら、一度ライブに来てくれたら一緒に楽しい事ができるんじゃないかと思います。
野田:毎回アルバムを作るごとに前作よりいい作品を作らないと行けないと思ってて、今回も僕らができる最高のアルバムができたと思ってます。前作は前作でいいアルバムなんで、持ってない方は是非2枚とも買ってください。前作も結構いいです。
茜谷:締まらん締め方やな(笑)。
Interview:上田雄一朗