音楽メディア・フリーマガジン

二人目のジャイアン 楽しいときも夢を追いかけているときも、そこには必ず音楽が流れている

楽しいときも夢を追いかけているときも、そこには必ず音楽が流れている


 
本物のエンターテイメントを体現し、完成度の高いステージでめくるめく世界へと誘う二人目のジャイアン。昨年4月には盟友・FUNKISTとのスプリットミニアルバム『TOP OF THE WORLD』で注目を集めた彼らが、アルバムとしては約2年ぶりとなる新作を完成させた。『Keep On Music』というタイトルに熱い想いが込められた今作は、近年のバンドとしての変化と、それに伴う数々の出会いが生んだ、まさに奇跡の1枚と言える渾身作。既成の枠組みにとらわれず、自由に音楽を奏でる彼らはどうやってこのアルバムを作り上げたのか。背景にある多彩な人との繋がり、そして楽曲が生まれるきっかけとなった様々な物語について、バンドの中心人物であるMasaに訊いた。
 


 

INTERVIEW #1
「“求められたことには全部応えてみよう”と決めたんです。自分たちが思い描く“二人目のジャイアン像”ではなく、他人が思う“二人目のジャイアン像”に応えてみよう」

 
 
●オリジナル作品のリリースとしては2017年の『Friday Night』以来となりますが、今作の収録曲にはいろんなトピックスがありますよね。
 
Masa:そうですね。
 
●例えばM-2「Rock&Beat」は全国ダンスバトル『アキスト5』公式テーマソングかつ映画『ハッピーメール』の主題歌だし、M-5「愛でもくらえ」はDJダイノジ大谷さんからの提案で出来た曲らしいですし、FUNKISTとの共作M-9「ヒットチャートを駆け上がれ」は赤川大花火大会特別番組メインテーマだし…。
 
Masa:よくわからないですよね(笑)。
 
●だから経緯を知るためにMasaさんのブログを遡って読んでいたんですけど、2018年9月10日のエントリーにヒントがあったんです。
 
Masa:ほう。
 
●そのブログは「好きなものを全身で表現する」というタイトルで、FUNKISTからの紹介でDJダイノジさんと知り合い、その繋がりで“肉フェス”に出演し、そこで更に色んな人と出会ったと書かれていて。要するに、今作は色んな出会いの結果でできた作品なのかなと。
 
Masa:そうなんですよ。以前JUNGLE☆LIFEに取材してもらったのは2014年にリリースした3rdアルバム『3枚目のジャイナ』のときだったと思うんですが、あの頃は「自分たちはこうあるべきだ」みたいな思い込みというか、自分を尖らせるために扉を閉じていた感じがあったんですよね。
 
●以前のインタビューでおっしゃっていましたね。「打ち上げで対バンにダメ出ししてる」みたいな(笑)。
 
Masa:そうそう(笑)。そういう尖った感じだったんですけど、もっと音楽に真摯に向き合うようになって、心がオープンになっていったんです。それにサクラメリーメンやFUNKISTとの共作を経験して、人と何かを作ることの楽しさを覚えたんです。昔は、自分が作りたいものだけを作っていたんですが、「人からお題をもらって作る」ということを経験して。それが楽しかったんです。
 
●なるほど。
 
Masa:現在バンドのマネジメントは自分たちでやっているんですが、自分たちで会社を作ったくらいのタイミングから、“求められたことには全部応えてみよう”ということを決めたんです。
 
●断らないということ?
 
Masa:断らない。例えばアイドルやビジュアル系の人たちからも仕事を頼まれたらやってみる。やろうと思ったらできるんだから、自分たちが思い描く“二人目のジャイアン像”ではなく、他人が思う“二人目のジャイアン像”に応えてみようと。もちろん言われたままをやるのではなく、どういう風にアプローチできるのかをその都度ちゃんと考えながら。
 
●それってすごく勇気が要ることではないんですか?
 
Masa:そうですね。でも“どう楽しむか?”を考えるようにしたんです。僕らはもともとクラブっぽいシーンで活動していたんですけど、違うジャンルの人と何かをすることに関して「イヤだな」と思うミュージシャンも居ると思うんですよ。“自分のセンスとはちょっと違う”みたいな。
 
●そうですね。そう思う気持ちもわかります。
 
Masa:でもウチのメンバーは意外とそういうことを楽しめるタイプだったので、アニメの仕事とかも“売れるため”とかじゃなくて“どう楽しむか?”というところに軸足を置いて、全力で応えて相手が求めた以上のものを出し続ける。
 
●ほう。
 
Masa:2017年にイタリアのエナジードリンク『GO&FUN』のイメージソングを作らせていただいたんですが、あれは特にオーダーが来たわけじゃないんですよ。
 
●え?
 
Masa:「曲書いてもらえたらいいですね〜」「書きますよ〜」っていうふんわりした段階で、アレンジまでして曲を送ったんです。
 
●ええ!
 
Masa:イベントで偶然知り合った人がおもしろい人で、何かしてあげたいなと思って。僕らにできることは“音楽”だと思ったので、『GO&FUN』っていう商品名からイメージを膨らませて曲を作って。それを送ったらすごく喜んでもらえて、イメージソングになって、それで『GO&FUN』のキャンペーンカーで合同ツアーをまわることになって。ストーリーが生まれたんですよね。
 
●ほう。
 
Masa:そういう経験から、自分で勝手に決めつけずに、もらったエネルギーを自分たちなりに色んな形にして返すっていうことは意味があるんだなって。(バンドの軸を)変えちゃだめなんですけど、引き出しを増やすことはすごくいいなと。その引き出しはそのまま自分たちのパワーになっていくから、そういうものを作品にしたいという欲がどんどん強くなっていったんです。
 
●なるほど。
 
Masa:FUNKISTと共作したときも(2018年4月『TOP OF THE WORLD』)、僕たちはそれまでショーアップしたステージでMCとかも少なめにライブをしていたんですけど、西郷(FUNKIST / 染谷西郷)なんか付き合いが長いこともあってああいうノリになるんですけど、そしたら化学反応が起きるんです。“身を任せる”じゃないですけど、力が抜けた感じになって、逆にステージが良くなっていったんです。粋な感じが出てきたというか、実感としてステージが変わったんですよね。
 
●それは想像していなかったことなんですか?
 
Masa:うーん、実は結構それをするには本当に勇気が必要で。「かっこつけていないとかっこよくない」と思っていたんですが、それは今から考えてみると自信の無さだったんですよね。自然に立っているだけだとかっこよくない、だからキメてステージに立たないといけないっていう“恐れ”が取り払われたというか。
 
●二人目のジャイアンは“ショーアップしたステージ”というところがコンセプトだったと思うんですが、だからこそ決め込んだライブが必要だと思っていた。
 
Masa:そうですね。でも気張り方の方向性が変わったというか。「この曲がこんなにかっこいいんだから、他のところでは力を抜いていいんだろう」って。そういうこともあって、「色んな人からエネルギーをもらったら色んな曲が書けるぞ」ということに気づいたんです。
 
●エネルギーをもらったら色んな曲が書ける。
 
Masa:だから今作は、出会いがなかったら生まれてなかったアルバムなんです。今回の収録曲は本当にバラバラというか、バラエティに富んでいるじゃないですか。それは様々な人からもらったエネルギーが含まれているという意味もあるし、様々な人からエネルギーをもらうことで僕たちは音楽を奏で続けることができるし、音楽があればまたそこに集まることができる…だから“Keep On Music”というタイトルを付けたんです。


 

INTERVIEW #2
「曲を作るときは心のままに書いたというか。“どういう人にどう届けたいか”とか“どういう風に心を揺らしたいか”だけを考えて作っていた」

 
●先ほどおっしゃっていた心境の変化が、バンドの変化になり、活動する場が増えていったんですね。
 
Masa:ものすごく増えた気がします。先ほど少しおっしゃってくださいましたけど、FUNKISTの西郷が「DJダイノジと二人目のジャイアンは合うと思う」と言って、まず最初に山形のイベントで紹介してもらったんです。
 
●あ、そうなんですね。
 
Masa:初めて会ったときにすごく仲良くなって、その日のうちに一緒にCLUB QUATTROをまわるツアーが決まって。それで今度は大谷さんが無茶を言ってくるわけですよ(笑)。「カヴァーをやりたい」とか。それに僕らは応えるわけじゃないですか。
 
●「断らない」と決めているので。
 
Masa:そうそう。毎回大谷さんの無茶ブリに応えて、いつもお立ち台の上で大谷さんの胸ぐらを僕が掴むっていうのが恒例化してきて。「早めに言え!」とか「現場で変えるな!」とか(笑)。
 
●ハハハ(笑)。
 
Masa:それで川崎CLUB CITTA'のイベント(DJ ダイノジpresents ジャイアンナイト優勝博覧会 〜ジャイアン生誕祭〜)でキングコングの西野さんやホームレス小谷さん、アイドルとかアップアップガールズ(仮)とかと繋がりができて。アイドルとかも親和性が高くて、一緒にライブをやるとすごく盛り上がるんですよ。それで今度はダイノジさんから「“肉フェス”に紹介したい」と言われて。
 
●“肉フェス”は全国で開催されているフードイベントですが、ライブなどのステージパフォーマンスもあるんですよね?
 
Masa:そうです。それでダイノジさんから紹介されて“肉フェス”に出演させてもらって。それで京セラドームで開催された“スーパープレミアム肉フェス〜NEW YEAR ニクトーバーフェス〜”で歌っていたら、ネルシャツを着たオタクの人が、僕たちの音楽に合わせてすごくかっこよく踊ってるんです。実はそれがリアルアキバボーイズのメンバーだったんですよ。
 
●話がどんどん進展する(笑)。
 
Masa:彼らも出演していたんですけど、お肉を食べに客席に行ってて僕らのライブを観たらしくて。それで後で話しかけてきて「アニソンも大好きだけど、もともとこういう音楽でも踊りたかったんです」と言ってくれて。
 
●おお。
 
Masa:「僕らダンスの大会開催してて、テーマソングを書いてくれる人を探してるんですよ」と言われたから「じゃあ書きましょうか」と言って、ダンスの大会を観に行ったんです。
 
●繋がるなぁ(笑)。
 
Masa:そのダンスの大会がすごくおもしろくて。“アキバ×ストリート〜世界最強オタクダンサー決定戦〜”っていうんですけど、DJがアニソンのオケを流して、そこで1対1でダンスバトルするっていう。普通のダンスバトルのアニソン版ですね。
 
●そんな大会があるんですね。
 
Masa:例えば、関東大会の決勝で負けた人が、北海道大会に再エントリーして優勝して全国大会に進み、そこでまた関東大会で当たった人と対戦することになり、今度は勝つっていう。ドラマがあるんですよね。しかもみんなアニソンが好きだから、友情が芽生えたりもしていて。
 
●なるほど。
 
Masa:でも僕はアニソンとかもともと詳しくないから「この曲そんなに盛り上がるの?」って思ったりするんですけど、純粋に音楽を楽しんでいるというか、「この曲待ってました!」みたいな感じで盛り上がっていて、すごくよくて。アニソンとかのジャンル関係なく“音楽”なんですよね。本当に素敵だなと。
 
●音楽を全力で楽しんでいる光景がそこにあった。
 
Masa:そうなんですよ。だから今回「Rock&Beat」という曲を大会のために書き下ろして、そしたら評判が良くて、タイアップがついて映画『ハッピーメール』の主題歌にもなって。
 
●そういうタイアップって、普通は大人や代理店が動いていると思うんですが…。
 
Masa:普通はそうですよね。でも僕たち、1つもそういうのが無いんですよ。
 
●まさに出会いが音楽を生んだ。
 
Masa:だから作品を作るとき、次のためにネタを残す人もいると思うんですが、今回は自分が持っているものを全部出そうと思って、M-4「追憶の体温」のMVには友達に出演してもらったり、「愛でもくらえ」はDJダイノジの大谷さんからとLINEでやり取りしてるときに「最近は承認欲求が強い時代…“いいね”を求める時代になってるから、俺たちは逆に愛をくらわせる社会にしたいんだよね」みたいな話をされて「じゃあ俺、それで曲書きますよ」と返事して。その“愛をくらわせる”というのがすごくいいなと思って、「愛でもくらえ」を作ったんです。
 
●そういう色んな繋がりから曲を作ることって、最初におっしゃっていた「二人目のジャイアンはこうあるべきだ」という固定概念があったら絶対にできないことですよね。
 
Masa:そうなんですよ。「愛でもくらえ」とか、3〜4年前だったら絶対に書かない曲ですね。でも今はすごく気に入ってて、全然リード曲でもないのにラジオで流したりして。昔は本当に斜に構えていたかったんです。
 
●斜に構えていたい?
 
Masa:雨が降ったら「雨が降った」とは書きたくなかったんです。でもたまにはいいなと。「追憶の体温」とかもそうなんですけど、“どう売れたいか”よりも“どう表現したいか”という気持ちがすごく強くなっていて。
 
●確かに今作、ポップだしストレートですよね。
 
Masa:そうなんですよ。それがすごく楽しいんです。僕は結構考えるタイプの人間なんですけど、今作の曲を作るときは心のままに書いたというか。もちろん“音楽脳”みたいなものは使うんですけど、「どういう人にどう届けたいか」とか「どういう風に心を揺らしたいか」だけを考えて作っていた気がする。作ってて、それがすごく楽しかったんですよね。
 
●ほう。
 
Masa:自分たちがどういうバンドかっていうのは、他人が決めることかなって。ある意味、すごく無責任になったのかもしれないです。「僕らはこういうのでかっこいいと思うから、みんなもどう?」と言えるようになった。
 
●そういうMasaさんの変化に対して、メンバーはどういう反応だったんですか?
 
Masa:戸惑ってました(笑)。僕の正解が変わるので。
 
●ですよね(笑)。
 
Masa:最初に確認が来るんです。「こういう風に変わってるけど、大丈夫?」みたいな。それで僕が「あ、自分では気づかなかった」となるんです。「でも俺の中ではこれが100点なんだよ」と説明して。
 
●Masaさんも最初は自覚がないんですね。
 
Masa:自覚がないんですよ。僕はいつでも自分なりの100点を出してるつもりなので。でもメンバーに言われて気づいて、自分で分析して「あ、変わった!」と自覚するというか。
 
●へぇ〜。
 
Masa:いちばん最初に変わったのはライブなんですが、4〜5年前までは追い込んで追い込んで、盛り上げて盛り上げて終わるのが最高だと思っていたんです。でもあるとき、ガーッと盛り上げて最後に余韻が残るライブが100点に変わったタイミングがあって。だからメンバーからすると物足りなくなったらしいんですよ。
 
●ああ〜、なるほど。
 
Masa:「これでいいの?」って。「みんな未だ体力残ってますよ?」みたいな。「俺の中で100点が変わった」と説明してからは、自分のメンタル的な変化は気づくたびにメンバーには伝えるようにしてます。説明しないと感じててもわからないところだと思うので。
 
●そうですよね。それまでの正解とは違うところにゴールするケースが多くなるから、メンバーは「あれ?」となりますよね。
 
Masa:そうなんです。バンドメンバーは全面的に僕に正解を預けてくれているので、そこは僕もちゃんと説明しないといけないし、1つのステージの中で突然変わったりすることもあるんですよ。
 
●え? 1つのステージの中で?
 
Masa:だからメンバーの中で「その場の空気でどれだけ感じることができるか」という部分が勝負になっているところがあって。そういう境地にバンドが来たかなと思います。
 
●即興性というか、その場のアドリブでライブを作っていくというか。
 
Masa:そういう部分が出てきました。僕らの中ではこのバンドはまだまだ技術が足りないと思っていて。アドリブでライブを作るレベルまでには至っていなかったんですよ。要するに、決めたことで100点を出すことを目標としていた。そこをずっと僕はなんとかしたかったんですよ。
 
●あ、そうなんですか。音楽的には、ジャムってたりしそうなイメージがあるんですが。
 
Masa:そうですよね。でも今まではそうじゃなかったんです。でも以前と比べて、決めたことから外れていてもチャレンジできるようなレベルにまでは来たかなと思います。
 

 

INTERVIEW #3
「昔“かっこわるいな”と思っていたことが“かっこいいな”と思えるようになった。逆にこだわっていたところは、実はつまんないところだった」

●今作に至るまでの出会いというのは、もともと意図していたわけではないですよね? 活動していく中で「おもしろいことをやろう」と思ったことを積み重ねてきただけというか。そういう中で、アルバムを出そうと決めたのはいつくらいの時期だったんですか?
 
Masa:FUNKISTとの共作『TOP OF THE WORLD』を作っていた頃から「アルバム作りたい」という話はメンバー内でしていたんですけど、どういう作品にしようかというのは明確には決めていなくて。まさかこんなにリード曲選びで悩むアルバムになるとは思っていなかったんです。
 
●あ、リード曲で悩んだんですか?
 
Masa:むしろ自分の中では“リード曲が無い”と思っていて。
 
●無い?
 
Masa:例えば「メクルメク」(『3枚目のジャイナ』リード曲)のような、ああいう強さがある曲が今作には無いんじゃないかと。でも曲を作る上で、僕の中ではストーリーがすごく大事になってきたんです。ストーリーがあると、曲のエネルギーがめっちゃ増える気がするんですよね。
 
●ライブで演るときもきっと違いますよね? 想い入れというか。
 
Masa:違いますね。これ不思議なんですけど、やっぱり人間だから、人間のエネルギーがそのまま音楽を通して伝わるんですよね。
 
●どれをリード曲にするか悩んだということですが、M-1「Hello Hello Hello」をリード曲にしたのはどういう経緯があったんですか?
 
Masa:これは僕のわがままですね。最初は「追憶の体温」をリードにしようと思っていたんです。要は、ライブに来ない人に楽曲だけで届くものをリードにしようと。そういう、戦略的な意味合いから「追憶の体温」をリードにしようと思ったんですけど…。
 
●…思ったけど?
 
Masa:今回の9曲の中で、そもそも僕は「Hello Hello Hello」のようなファンクやジャズのテイストが入ったポップスをやりたくてこのバンドをやっているんです。そのことに改めて気づいたときに「この曲をリードにさせてくれ」と。こういう曲が大好きなんですよ。疾走感があって、夜の雰囲気があって、パーティー感もあるけどメロディが切なくて。
 
●やりたい音楽を素直に選んだと。
 
Masa:「Hello Hello Hello」で描いている物語は、ある男の人が女の子と出会って考えが変わるという内容で、それは男女の関係に見えるけど、楽しいこととか夢も全部同じだと思っていて。もしかしたら手に入らないかもしれないけど、俺にとっての大事なときは必ず音楽が流れているから、みんなにとっても音楽はそういう存在であってほしい…という想いを込めていて。昔から僕は人間としての温度感は高い方だったんですけど、でもその熱を曲に込めることはあまりしていなかったんですよ。でも今作は、自然と曲に込める熱の量が増えた気がするんですよね。その熱がわかりやすく表に出ているかどうかは別にして。
 
●その話からすると、「エモくならないように」みたいな意識が以前はあった?
 
Masa:ありました。前は、エモくならないことが俺たちのかっこよさだと思っていたんです。大人の余裕というか、クールというか。そういう“枠”に自分たちをハメようとしたんです。ところがどっこい、今回は熱を込めちゃった(笑)。
 
●ハハハ(笑)。「Hello Hello Hello」はケミカル⇄リアクションがゲスト参加されていますが、これはどういうきっかけで?
 
Masa:僕たちは新潟に縁があってよくイベントに呼んでもらっているんですけど…ちなみに今回「Hello Hello Hello」が新潟の番組のエンディングテーマに2つ決まったんですけど(笑)…その新潟の仲間のウチの1組としてケミカル⇄リアクションと仲良くさせてもらっていて。彼女たちって、ロックバンドのカヴァーをするんですけど、歌がすごく上手くて。そういう繋がりで今回コラボをお願いしたら快くOKしてくれたんです。今まで僕たちは極力女性の声を入れまいとしてたんですよ。なぜなら男だけのバンドだから。でもその“枠”も取り払ったんです。曲がいちばん活きることをしようと。せっかくいい曲ができたんだから、すくすく育てようと。
 
●自分たちのことを考えるというより、曲のことを第一優先する。
 
Masa:「追憶の体温」もピアノと僕の歌から始まりますけど、そもそも鍵盤はメンバーじゃないんですよね。サポートの人と僕なんです。たぶん昔だったら「やっぱりメンバーの音で始まった方がいいんじゃないか」と考えていたと思うんですが、楽曲のために何がいいかを考えられるようになった気がするんですよね。昔“かっこわるいな”と思っていたことが“かっこいいな”と思えるようになったというか、逆にこだわっていたところは、実はつまんないところだったんですよね。
 
●それと何度か話題にあがった「追憶の体温」は既にMVを公開されていますが、このMVはかなりのドラマ仕立てですよね。
 
Masa:この曲は、実在するアメリカのおじいさんがモチーフになっているんです。テレビで観て知ったんですけど、亡くなったおばあさんをずっと愛し続けているおじいさんで。その話を知って“そんなに人を愛せるってかっこいいな”と感動したので、モチーフにさせてもらおうと思って作った曲なんです。
 
●そうだったんですね。
 
Masa:悲しい話なんですけど、そこには喜びもあって。曲を作っている段階から映像のイメージがあって、知り合いのグラフィックデザイナーに映像監督にとして手伝ってもらったんです。
 

 
●「追憶の体温」のMVはドラマ仕立てですごく凝った作りになっていますが、今作は全曲でMVを作るらしいですよね?
 
Masa:そうなんですよ。現時点(取材は4/25)では「Hello Hello Hello」と「追憶の体温」のMVが完成していて、残りの曲は完成次第、順次公開していく予定なんですが。
 

 
●すべてのMVはMasaさんがプロデュースしているとのことですが、なぜ全曲作るんですか?
 
Masa:先ほど「リード曲選びに悩んだ」と言いましたけど、結局全リード曲だと思っているので、全部MVを作りたいという気持ちがあって。でもM-6「ジャイアニズム」とM-8「one nightdance」はリメイクなんですよ。だからこの2曲と既にMVがある「ヒットチャートを駆け上がれ」以外の新曲、要するに6曲分のMVを作ろうと最初は思っていたんです。それでメンバーや仲間と作戦会議をしていたんですけど、FUNKISTの西郷に相談したときに「MVが6曲って中途半端じゃない?」と言われて「確かに全曲MVの方がインパクトある!」と思って。
 
●ハハハ(笑)。
 
Masa:でも映像ってこんなに大変だと思わなかったです。今作のMV、キャスティングも場所押さえも全部僕がやってるんですよ。
 
●えー! 台本は?
 
Masa:台本も最初は僕が書く予定だったんですが、そこまで手がまわらなくて、手伝ってもらっている映像監督に助けてもらいました。
 
●ものすごいことやってますね(笑)。
 
Masa:だって誰もやってくれないですから(笑)。でも偶然ながら力を貸してくれる友達が多いので、色々と助けてもらいながらやってます。
 

 
●1曲1曲が生まれたきっかけや出会いもそうですし、MVの話もそうですけど、ものすごく深みのあるアルバムになりましたね。ツアーはどういうものにしたいですか?
 
Masa:今回のツアーは今まででいちばん楽しみなんですよ。ライブハウスをおさえるのもブッキングもほぼ僕がやっていて。
 
●あ、ツアーもですか。
 
Masa:なので相当血が通っているツアーなんです。仲間たちが出てくれるし、血が通ったライブになると思うんですよ。ずっとそういうツアーをやってみたかったんです。「今回のツアーで成長できなかったら、俺たちは滅ぶであろう」くらいの勢いで(笑)、何も兵糧は残さず、ここにすべてを注ぎ込むつもりです。
 

 

interview:Takeshi.Yamanaka
 
 

Member
L-R
Ba./Cho.Fukuo
Dr./Cho.Yoco
Per./Cho.Kou
T.Sax./Tomoya
Vo.Masa
G./Cho.Ne-ze
Tb.Shinnosuke

リリース情報
Album
『Keep On Music』

HUMAN GIANT RECORD
CDHGR-015
¥2,500+税
2019/4/24 Release

ライブ情報
Keep On Music tour 2019
5/10(金)広島SECOND CRUTCH
5/11(土)岡山MO:GLA
5/12(日)京都LiVE Buzz KYOTO
5/17(金)札幌COLONY
5/18(土)苫小牧ELLCUBE
5/19(日)旭川CASINO DRIVE
5/24(金)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
5/25(土)長岡音楽食堂ZERO
5/31(金)仙台enn 2nd
6/01(土)秋田LIVESPOT2000
6/02(日)弘前Mag-Net
6/07(金)渋谷LOFT HEAVEN(ワンマン)
6/09(日)名古屋JAMMIN'
6/14(金)松江AZTiC canova
6/15(土)松山SALONKITTY
6/16(日)徳島CROWBAR
6/21(金)梅田Shangri-La
6/22(土)神戸太陽と虎
6/23(日)豊橋club KNOT
6/29(土)長崎DRUM Be-7
6/30(日)福岡DRUM SON
7/13(土)山形ミュージック昭和SESSION(ワンマン)
7/21(日)新宿BLAZE(ファイナル・ワンマン)

more info→
https://www.kokoronotomoyo.net/

 
 
 

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj