8/23、恵比寿LIQUIDROOMにてTHE BACK HORNと藍坊主による初の2マンライブが開催される。聴く者に突き刺さるストイックな世界観で唯一の輝きを放ち続けるTHE BACK HORNと、その背を見て刺激を受けつつ、人間としても音楽としても成長を続けてきた藍坊主。今回はそんな両バンドのヴォーカリストを招き、その内面と2マンに向けての意気込みを訊いた。
●8/23に藍坊主とTHE BACK HORNが2マンを行うということですが、hozzyは以前からTHE BACK HORNが好きだと公言してますよね。
hozzy:大好きです。
山田:あ、今日はそういうこと言ってくれるの? (笑)
hozzy:はい(笑)。もちろんですよ(笑)。
● それぞれのライブを観てこの機会に訊きたかったことがあるんですけど、2人はステージの上で歌いながら何を考えているんですか?
山田:何を考えてるんだろうな…。何年も歌ってきた経験から、気にしなくちゃいけないこととか注意しなくちゃいけないこととかも考えてるし。でも冷静ではないですね。かなり高い集中力で。いちばんやらないようにしていることは、お客に左右されないようにする…なんかすげぇ素人みたいなこと言ってるけど(笑)。
hozzy:(笑)。
山田:お客のこと考えてセットリストとか組むライブとかあるけど、あまりそういうことは意識せずに。やっぱり内に向かっていきたい気持ちがありますね。内に向かえば向かうほど外に放出される感じがする。そういう意味で研ぎ澄ませてる感じはあるかな。
hozzy:俺はステージで考えてたら歌えなくなっちゃうんですよ(笑)。
山田:ああ~、やっぱ感覚だよね。
hozzy:そうですね。日によって全然コンディションも違うし、特に俺はそういう波がでっかいタイプのヴォーカリストだと思ってて、その日とかその時期にどうやったら自分が最高のものを出せるのか? っていうことをライブの前に集中するっていうか。ライブが始まったらそんなこと考えても仕方がないから。リハをやってみたらその日の自分の体調やコンディションとかわかるじゃないですか。それで本番まで2時間とか空いてたら、冷めてきちゃうこととかあるんですよね。
山田:うんうん、あるよね。
hozzy:身体とか喉とか、テンションもそうだし。だからそれを本番までに如何に盛り上げていけるかっていうところに最近はいちばん集中してます。
山田:そこまでの身体の持っていき方だったりとかは大切だよね。ストレッチをやったりだとか。ライブが始まったら気持ちの内側に入っていきたいんだけど、俺の場合は始まる前に内側に入っちゃうとステージ上で孤独を感じるんだよ。
hozzy:あっ、そうなんですか(笑)。
山田:うん(笑)。そうなるとあまり良くないっていうことが自分でわかってるから、ライブ前はなるべく色んな人としゃべるようにしてる。
●それはちょっと意外でした。本番前は1人で集中するようなタイプかと。
山田:実は違うんですよね。本番前に1人でポツンとしてると、よくないことばかり考えちゃうんです。八つ当たりみたいな歌になっちゃうというか。その辺のバランスを自分なりに取ろうとすると、俺の場合はしゃべってた方がいいんだなって。
●結局は自分との闘いなんでしょうか?
山田:そうですね。やっぱり納得したいっていうのはある。結局俺も自分に当たったりすることがあるけど、自分に当たってばかりではいいものを生み出せない感じはするんですよ。そういう意味では、メンタル的なことだったり、ヴォーカリストとしての自覚だったりとか…そういうことを考えていくと、結局は自分との闘いになりますよね。
hozzy:うんうん。
山田:ライブはその時その時で違うっていうことが自分の中で覚悟できていればいいと思うんだけど、やっぱり最高のライブを1回やっちゃうと、俺は結構それを求めにいっちゃうから、できなかったときの悔しさもあるし。"今日は調子が悪いんだから調子の悪いライブでもいいんじゃないか"っていう考え方ができればいいなって思うんですけどね。例え調子が悪くても、ステージに立ってやれることはまだまだいっぱいあるし。でもやっぱり自分が納得したいし自分が気持ちよくライブを終えたい気持ちがあるから、なんか「ちくしょう!」ってなっちゃう。
hozzy:1回スイッチが入って最高な状態になってるときはめっちゃ楽しいんですよ。でもさっき山田さんがおっしゃっていた"自分の理想像"や"過去の最高のライブ"みたいなものがひとつの基準としてあるとすると、そこに届かなかったときは楽しくないんですよね。で、俺はあるときから絶対に気をつけようと思ったことがあるんですけど、例え楽しくなくてもそれを出しちゃけいないなって。
山田:そうなんだよな。わかるわかる。
hozzy:ヴォーカルがそこでテンション下がっちゃうとみんなに伝わるんですよね。ウチのメンバーもそうだし。
山田:そうそうそうそう。
hozzy:一時期、腹が立ってギターを投げたりしてたんですけど、それって自己満足じゃないですか。後からすげぇ哀しくなったりして。そうじゃなくて、その場でできることは全部したいなと思うようになったんです。だから自分が楽しい/楽しくないっていうのは二の次になってる気がします。結果的にはそのライブがみんなで楽しめたらいちばんの成功じゃないですか。そしたら自分でも納得できる。そういうのはありますね。
山田:一緒。みんなの喜びが自分の喜びになるっていう気持ちもわかってるし、そのためにがんばるっていうところもあるしね。俺も昔は八つ当たりのようなステージばかりやってたから、ステージ上でひとり寂しい想いをずっとしてて。
hozzy:そうなんですね(笑)。
山田:でもそれってやればやるほど何も満たされないんだよね。そこを隠すわけじゃないんだけど、そういう気持ちは胸の内にとどめておいて、他にできることを探すっていうか。意外にそういうライブで終わったら後味がすごく良かったこともあったりもする。
●なるほど。
hozzy:俺から見てTHE BACK HORNはずっとステップアップし続けているように見えるんですけど、テンションやモチベーションはどうやって保ち続けてるんですか?やっぱり反骨精神みたいなところなんですか?
山田:うーん。反骨精神はあったけど、大人になっていくにつれて色んなことを認めるようになるじゃん。で、認めれば認めるほど、自分がおもしろくない人間だっていうのもわかってきたんだよね。"おもしろくねーな、俺"って。そこに対する反骨精神はある。おもしろくねぇのが嫌だなって。
hozzy:おもしろくないことないですよ(笑)。
山田:自分のことを自分がおもしろくなくなるのがいちばんイヤだと思うんだよね。だから"こうやっとけばある程度は上手くいく"ということがわかっていたとしても、そこで自分がアガらないとおもしろくないっていうか。だからそういうところで、すげぇ走りまくったりして。最近も5日連チャンで毎日朝晩8km走ってる(笑)。
hozzy:すげぇ!
山田:俺、食いもんとかそういうところにすげぇ意識が強くなってて、他のメンバーとかに言ったら気持ち悪がられたりするんだけど(笑)。身体が調子いいと気分が調子いいっていうのがわかってきて、食うものを考えたりして。
hozzy:俺もそういうのあります。
山田:それで肉を食わなかった時期とかあって、そうすると本当に頭がスッキリしたりするんだよね。人間って胃の消化に血を使いすぎると頭がボーッとなるんだけど、消化のいいものとか食べてると頭がスッキリする。
hozzy:ああ~。
山田:でもそればかりやってると…今度は気持ちが穏やかになりすぎて燃えねぇんだよね(笑)。
hozzy:俺もそういうのあったんですよ。一時期、野菜ばっか食べてみようと思って。でも闘争心がゼロになった(笑)。
●ハハハ(笑)。
山田:そうそう(笑)。だからたまに毒入れて、やるときは結構やって。その繰り返し。
hozzy:わかります、それ(笑)。
山田:だから別にずっと同じモチベーションで続けてきたわけじゃないし、やる気がないときも当然あったよ。
hozzy:ちょっと安心しました(笑)。
山田:俺たちより全然先輩のバンドでもそういうこといっぱいあると思うし。でも、"諦めない"っていう…単純なことだと思うよ(笑)。
hozzy:そうですよね。
山田:もう意地じゃん。そこで自分との勝負じゃないけど、「ちくしょう!」って自分のケツひっぱたいていくしかない、っていう気持ちで生きているかな。
hozzy:なるほど。
●8/23は2マンですけど、どういうライブをしようと思っていますか?
hozzy:今まで自分がやった最高のライブっていうのをその日に超えたいですね。個人的にもいっぱい練習して臨みます。
山田:いや~、楽しみだね(笑)。
hozzy:勝ち負けの話じゃないですけど(笑)、お客さんにとってもいいライブにしたい。
山田:やるんだったらガチンコだよ。お互い勝ちにいくくらいの気持ちでやりたいね。
hozzy:そうですね。胸を借りる立場ですけど…ホントそういう気持ちで。闘いたいです。
山田:これだけ俺たちのこと好きって言ってくれてるバンドだし、ヴォーカルとしても見られるんだなっていう意識もあるけど、8/23は…ヤバい感じにしたい。
hozzy:あ、やっぱり気楽にお願いします。俺らは本気でいくんで(笑)。
●ハハハ(笑)。
山田:本当は「気楽にやるよ」とか言いてぇんだけど、ちょっとふっかけてみようかなって(笑)。
hozzy:怖ぇー! マジ怖ぇー! (笑)
●もう勝負が始まってる(笑)。
山田:ハハハ(笑)。でもその方が絶対に後味がいいんだよ。"仲良くやりましょう"っていうのはあまり好きじゃないし。その日までのカウントダウンが今から始まって、っていう意識もおもしろいんじゃないかな(笑)。
hozzy:そうですね。楽しみです。
interview:Takeshi.Yamanaka