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Hello Sleepwalkers

痛みを伴う経験は彼らを本物のライブバンドへと成長させた

HelloSleepwalkersキャッチーなメロディと独特な世界観の楽曲で、聴き手に強烈なインパクトを与えるロックバンド、Hello Sleepwalkers。2011年10月の衝撃的なデビュー以来、精力的に活動を重ねてきた彼らは、目を見張る成長を遂げていた。抜群の一体感を生み出す動的なステージは、観る者の感情を巻き込むエネルギーに溢れている。今月号では、新作のリリースを来春に控えた5人に、現時点での心境とライブに対する想いを訊いた。

 

 

 

「その“衝撃”というのが、僕の中ではいちばん大きいですね。ライブでは衝撃を与えたい」

●2012年6月にリリースした『円盤飛来』以来となるインタビューですが、最近のライブは以前と比べて熱量が高くなりましたよね。何かきっかけがあったんですか?

ナルミ:他のバンドのライブとか観て、メンバーそれぞれが悔しい想いをして。“この曲はもっと盛り上げることができるから、次はこうしよう”とか、気付かされるところがあったと思います。それで変わってきたのかなって。

●悔しい想いがあった?

ナルミ:結構、頻繁に(笑)。

●頻繁に(笑)。

シュンタロウ:だから、ライブ後にメンバーで話し合うことも前より増えました。やっぱり“お客さんをもっと楽しませたい”という気持ちが常にあって、まだまだ全然足りないと思いますけど、前よりは繋がっている感じというか、お客さんとやり取りできてきたかな。

タソコ:前よりお客さん目線というか、どうやったらお客さんが楽しむことができるか? とかを考えるようになりましたね。印象に残っているのは、今年5月に赤い公園の復活ライブ“赤い公園大復活祭”に出させてもらったんですけど、そのときのお客さんとのコミュニケーションというか一体感がものすごくて、それが超悔しかった。

シュンタロウ:悔しかったね。赤い公園は普通に観に行ったりもしたんですけど、やばかったです。全部ヤラれた感じがあった。赤い公園と対バンしたとき、ライブが終わった後に感じる気持ちの中でいちばん強かったのが…絶望っていうか(笑)。

●あ、そこまで(笑)。

シュンタロウ:“かっこいい”とか“すごいな”みたいな気持ちじゃなくて、“このままじゃあ俺たちヤバい”みたいな危機感を感じたんです。“こんなに好き勝手やっていいんだ”ってびっくりもしたし。実際に好き勝手にはやってないと思うんですけど、自由に見えたんですよね。その中での見せ方とかも上手いし。最近だと、HaKUとかも対バンさせてもらって“ヤバいな”と思いました。

●こないだ僕が観たライブもHaKUと対バンしていましたね。

シュンタロウ:だから“負けねぇぞ”っていう気持ちもすごく強かったんです。

●最近のライブでは新曲もやっていますけど、そういう意識の変化は曲作りにも影響しているんですか?

シュンタロウ:そうですね。“ライブで映える曲を”っていう感じで、最近はそういうベクトルのものが多いです。

●最近は「猿は木から何処へ落ちる」「Comic Relief」「砂漠」「越境」などの新曲をやっていますけど、“お客さんを楽しませたい”という意識が、特にリズムなどに出ていますよね。躍らせるというか、お客さんを巻き込むようなリズム感の曲が多い気がする。

ナルミ:だから最近の曲は、ライブでやっているときの手応えというか、お客さんの反応が違うんです。

シュンタロウ:それに個人的には、がなりというか…。

●そう。以前のシュンタロウの歌は平熱感が特徴的だと思っていたんですけど、ここ最近の新曲では叫んだりしていて。感情の量がすごく増えている。

シュンタロウ:そういう曲が多いですね。「月面歩行」(2012年1月リリースのアルバム『マジルヨル:ネムラナイワクセイ』収録)みたいな、しっとりとした曲は最近はあまりないです。ライブで気持ちがちゃんと乗るようにと思って曲を作るので、自然とがなったり叫んだりするような歌になるんです。現時点ではそれがバンドにとっていちばんいいと思っていて。小賢しいことはあまりしていないですね。

●小賢しい(笑)。まあ確かに、Hello Sleepwalkersは展開が読めなかったりトリッキーな雰囲気を持った曲も多いですよね。

シュンタロウ:変拍子とか、そういう曲はとりあえず置いといて。音楽の楽しさっていうのは色々あると思うんです。前は“他にない”とか“今まで聴いたことがない”というものを提示することに楽しさを感じていたんですけど、現時点ではライブの楽しさを探したい。どっちがいいとか悪いとかの話ではなくて、バランスがちょっと変わったというだけなんですが。

●シュンタロウの歌い方の変化によって、もう1人のヴォーカルであるナルミとの掛け合いも拡がっている気がするんですが。

ナルミ:うーん、シュンタロウの歌い方が変わったから、それでバンドとしてのバリエーションが広がっているようには思うんですけど、私は特に変わったつもりはなくて。

シュンタロウ:でも最近は優しい感じも出てるんじゃない?

ナルミ:ああ〜。

●以前は強く歌うことが多かったですからね。

ナルミ:あまり怖くしないでいようと思って(笑)。

●そういうイメージが付いてるんですか?

ナルミ:付いてます(笑)。ライブで物販席に立ってたら「実際に会ったら全然怖くないですよね! MUSIC VIDEOではすごく怖いのに!」って。“それ言っちゃだめだろ”って思うんですけど。

一同:ハハハハ(笑)。

ナルミ:ライブでもすごい形相で私がいちばん暴れているし、そういうギャップがあるみたいです(笑)。

●この1年半くらいでライブがどんどん変わっているHello Sleepwalkersですが、それぞれが考える“いいライブ”とはどういうものですか?
ユウキ:自分たちもお客さんもお互い楽しいライブがいいと思うんですけど、楽しいだけじゃなくて、曲によっては一緒に盛り上がったり一緒に感動したり。そういうことがお互いにできるライブがいいなと。

●感情を共有するというか。
ユウキ:そうですね。最近はそういうライブが増えてきた感じがあって。前は盛り上がったりすることもあまりなかったので、少しずつは増えてきていると思います。

●マコトは?

マコト:ライブが終わった後にお客さんが「楽しかったね」とか「良かったね」って興奮しながら話しているような。そういうライブができたら最高だと思います。僕の場合、ライブ中はすごく冷静か、逆にすごく緊張しているかのどっちか…0か100かなんです。

●あ、そうなんだ。

マコト:すごく緊張しているときは足が震えてヤバいくらいなんですけど、極端にどっちかの方が達成感の高いライブになることが多くて。

ナルミ:マコトだけじゃなくてうちは緊張するメンバーばかりなんですけど、緊張し過ぎるとみんなのテンションが変なことになっちゃうこともあって。そういうときのライブは、吹っ切れて暴れまくるか、変になるかのどっちかなんです(笑)。

●タソコはどうですか?

タソコ:ライブが終わった後に、何の悔いもないくらいの開放感があるのがいいライブだと思います。と言うのは、いつも何かしら…お客さんの反応だったり、演奏のミスだったり…色々と考えてしまうことがあって。そういうのが全部なくなったときがいいライブだと思います。「もう死んでもいい!」と思えるくらい。

●死んだら駄目ですけど(笑)。ナルミは?

ナルミ:私たちもお客さんも「楽しかった」と言えるライブがしたいですね。理想は、終わった後に「かっこよかった」とか言って欲しいんですけど、ただ満足して帰ってほしい。

●そういうのは顔を見たらわかりますもんね。

ナルミ:そうですよね。ライブが終わった後に物販に立っていたら声をかけてくれる人がいるんです。そこで「初めて観たけどよかった」とか「前よりもパワーアップしてました」って言ってくれることがあって、すごく嬉しくて。自分たちも良くなりつつ、お客さんも「前より楽しかった」って言えるライブが、いいライブだと思います。

●シュンタロウはどうですか?

シュンタロウ:僕は、100%ぶつけて100%リアクションや反応が返ってきたという実感があったことは未だになくて。投げ方も色々あると思うんですけど、その辺がまだまだだなと思っていて。100%投げたときって、きっと投げられた方は「ヤバいな」みたいな衝撃を受けると思うんです。その“衝撃”というのが、僕の中ではいちばん大きいですね。ライブでは衝撃を与えたい。

●衝撃を与えたい。

シュンタロウ:与えたいし、人のライブを観て衝撃を与えられたらムカつくという。

●ハハハ(笑)。

シュンタロウ:衝撃と感動、どっちもあればいいと思うんですけど、“かっこいいな”とか“すごいな”ではなくて、“わけわかんないけどすごい!”っていう衝撃を与えたい。

interview:Takeshi.Yamanaka
PHOTO:ame

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