ブラックミュージックからの影響を色濃く出しながらも、そのバイタリティで独自の活動を続ける肉食アーバン系エンタメソウルバンド・ゴマアブラ。毎週のように路上ライブを重ねつつ、2011年11月には渋谷CLUB QUATTROワンマンを大成功させた彼らが、3/29に赤坂BLITZで過去最大キャパのワンマンライブを開催する。ワンマンまで約1ヶ月と迫った今月号では、1/1~3/29の赤坂BLITZワンマンまで、毎日五反田駅前で1人路上ライブを開催しているNulu Pongに迫る!!
会社帰りのサラリーマンが溢れるJR五反田駅。同駅の改札を出てすぐ、既に指定席と化しているというその場所に、今日も1人の男が降り立った。ゴマアブラのキーボーディスト・Nulu Pong。3/29に赤坂BLITZでワンマンライブを控えている彼は、なんと1/1から毎日五反田で1人路上ライブを行なっているという。しかも持ち曲は1曲。彼の作詞/作曲による、その名も「五反田」というナンバーだ。
彼の路上ライブを心待ちにしている人たちが集まり、午後8時を少し過ぎて酔客でごった返す中、ライブは始まった。「赤坂BLITZワンマンに向け、1人でも多くの人を五反田から赤坂へ連れて行く」という熱い想いを胸に、五反田の中心で五反田を叫ぶNulu Pong。何度も何度も「五反田」と叫ぶNulu Pong。持ち曲1曲というハンデをものともせず、サラリーマンとネオンの街・五反田に対する愛を綴った名曲「五反田」を重ねていく。曲の合間には軽やかなトークで沸かせ、Nulu Pong目当てで五反田を訪れたファンはもちろんのこと、通りかかったたくさんの人が立ち止まり、スマートフォンで彼を撮影し、そしてそれぞれの「五反田」を胸に刻んでいく。
夜はふけ、ネオンが輝き、頬を赤く染めたサラリーマンたちがNulu Pongを見守る中、彼はこの日最後の「五反田」を、頭にネクタイという五反田スタイルで見事に歌い切った。終演後、ライブを見守っていた人たち同士が集まり、Nulu Pongと一緒に記念撮影を行なっていた。お客さんたちの間には不思議な一体感があった。ゴマアブラとNulu Pongの1人路上ライブをきっかけにして、五反田で出会った者たちが、楽しそうにしゃべり、交流する。音楽は人と人を繋ぐ…その瞬間を垣間見た気がした。
3/29の赤坂BLITZワンマンまで、Nulu Pongは毎日五反田の中心で五反田を叫び続ける。行け! Nulu Pong! 歌え! Nulu Pong! 赤坂で五反田と叫ぶそのときが来る日まで!
Nulu Pong:おつかれだPong!
●あ、今日も語尾に「Pong」が付くのか…。別に後から編集で付けるからいいですよ?
Nulu Pong:いや、そこはちゃんとやりますPong。生のPongを極力出していきたいPong。
●そうですか…。今まで1人でライブをやったことは?
Nulu Pong:いや、本当に初めてです。最初はやっぱり怖かったですね。
●もう語尾にPong付いてないですけどね。でも今日は軽やかにしゃべっていたじゃないですか。
Nulu Pong:何回か観に来てくれている人によると、以前と比べてしゃべれるようになったみたいです。成長のひとつかもしれないです。何を話すかは…あそこに毎日立っていると見えてくるものがあるんですよ。
●おっ。
Nulu Pong:看板とかいっぱいあるじゃないですか。だから「五反田」を歌いながら毎日五反田の街を見たりしているんですけど、以前よりも五反田がよく見えるようになりました。今日も電柱に不動産屋さんのチラシが付いていたりとかの発見があって。そういう小さいけどおもしろい発見が毎日のようにありますね。そういうことをMCで言ってみたり。
●なるほど。
Nulu Pong:終電が終わったあと、JR五反田駅のシャッターが閉まる瞬間を目の当たりにしたこともありました。夜の時間帯も、8時ごろと終電間際とでは全然人の感じも違いますし。
●酔っ払いに絡まれたことはあったんですか?
Nulu Pong:1回だけです。2人組の男の人に「兄ちゃん歌えや!」って。
●怖いな。
Nulu Pong:で、歌ったんですよ。そしたら普通に帰って行きました。感想も何も言わずに。ちょっとショックでした。
●ハハハ(笑)。1/1から始めて、今日は2/22ですが、何か印象に残っていることはありますか?
Nulu Pong:毎日印象に残っているんですけどね。強いて言えば、大雪の日ですね。
●1月の中旬ですね。
Nulu Pong:「あ、これは最初の試練かな」と。1週間くらいでだいたいやり方がわかってきて、後の問題は天気だけだと思っていたんですよ。そしたら雨が降る前にあの大雪で。あの日は夜の8時か9時くらいにやったんですけど、それでもお客さんが来てくれて。本当に嬉しかったです。
●今日も集まっている人が居ましたね。
Nulu Pong:ゴマアブラのファンの方も居れば、五反田で知り合った方もいらっしゃって。やっぱりBLITZを成功させるのが目的で始めたので、毎日何かを発信できる場所があるのはいいなと思いますし、僕の役割だと思いますので。
●か、かっこいい!
Nulu Pong:やっぱり楽しいんですよね。もちろんしんどいときもありますよ。でもやれば、毎日「やってよかった」と思えるというか。最近ちょこちょこ話してくれるようになった人が居るんですけど、「前から気になって観ていたんですけど、思い切って話しかけてみました」とか言ってくれるんですよ。だからみなさん気にしてくださっているんだなと。
●毎日やっているからこそですね。
Nulu Pong:そういうのすごく嬉しいんです。それにお客さんだけじゃなくて、五反田の人ってみんな温かいんですよ。今日もカラオケ店のスタッフの人が声を掛けてくれましたけど、毎日やっていると「今日もお疲れさま」みたいな感じで、みんな好意的に受け入れてくれるっていうか、仲間っていう感じで見てくれるんです。
●嬉しいことですね。
Nulu Pong:僕が歌っている近くでティッシュを配ったりしている居酒屋の方とかキャバクラの方とか。人の温かみをすごく感じています。
●ところでずっと「五反田」の1曲でライブするんですか? 新しく曲を作ればいいんじゃないですか?
Nulu Pong:実はそれは僕も考えていて。他の曲をやるにせよ、曲を作るにせよ、方法や形態を変えるにせよ。もうちょっと変化を付けようかなと思っていて。
●なるほど。この1人路上ライブの経験が、ゴマアブラのライブにフィードバックされたという実感はありますか?
Nulu Pong:あります。ステージの上で、いい意味での余裕ができました。MCに関しても演奏に関しても、全体を見て“今はこうすべきだな”という感覚は、前よりは出てきたのかなって。
●今日も1つのステージとして組み立てていましたよね。
Nulu Pong:そういう感じはあります。全体が見えてきたというか。
●赤坂BLITZが楽しみですね。では最後に、赤坂BLITZワンマンへの意気込みをお願いします。
Nulu Pong:ダディーも京都から赤坂まで歩きますし、メンバーが各々のミッションを乗り越えた上での一皮剥けたゴマアブラが観れると思うので、是非みなさん来てほしいです。
●楽しみにしてます。ちなみに、3/29のワンマンが終わってもNulu Pongは毎日五反田で1人路上ライブをするんですよね?
Nulu Pong:アハハ(笑)。それお客さんにも言われるんですけど、ワンマンが終わった以降のことはまだ決めてないんです。でも、僕は五反田が好きなんですが、他にも好きな街があるんですよ。そういうこともできたらいいな〜と思ってます。
interview:Takeshi.Yamanaka