天才詐欺師エンドウ.(G./Vo.)、千葉のヤンキーミツ(Ba./Vo.)、キモヲタ戦士カオル(Key./Vo.)、下町のアークデーモンキョウヘイ(Dr./Vo.)の4人からなるバンド、GEEKS(ギークス)が新作をリリースする。メンバー全員で歌われるパンキッシュで重厚なコーラスとキャッチーなメロディも健在ながら、今作では彼らのルーツを今まで以上に強く意識したという。ビートルズやローリング・ストーンズをはじめとして、GREEN DAYやMETALLICAなどロックの歴史に名を残す偉大なアーティストたち。それらからインスパイアされつつ、GEEKS一流のセンスで昇華された楽曲たちは1曲1曲が強烈な個性を放っている。一瞬英詞かと錯覚してしまう独特な歌詞と世界観にもさらに磨きをかけ、他に類を見ない新たな名盤を完成させた。
●今作のタイトル『GRIMOIRE(グリモワール)』というのはあまり聞き慣れない言葉ですが、“魔術書”という意味なんですよね?
エンドウ.:直訳だと“魔術書”とか“魔導書”なんですけど、実はヨーロッパでは“わけのわからない書物”っていう意味で使われたりもするんですよ。魔法とかファンタジックな意味合いは全然なくて、ゴチャゴチャ入り乱れた感じから付けましたね。
●確かに今作はどの曲も似ていなくて、個性的な楽曲が揃っています。
エンドウ.:僕らは実際そこまで意識していないんですけど、自然にそういうものになったことはすごく嬉しいですね。あと、僕らが持っているセンスや色んな考え方を全部詰め込みたいと思っていたので、それによって1曲1曲の色が分かれたのかな。
●意識的にバラエティ豊かにしたわけではないと。
エンドウ.:自分たちがやりたい曲を好きなように作ったというだけなので、そんなに意識はしていないですね。僕らは基本的にアルバムを作ると決めてから、曲を作り始めることが多いんですよ。アルバムを作るとなったら、本当に1曲目から順番に作ったりもするんです。そういうやり方をしていると「これはさっきと一緒だな」と気付くので、結果的に似ないのかもしれない。
●今作を作り始めるにあたってのテーマや方向性はあったんですか?
エンドウ.:ジャケット写真に描かれているイラストの4人は僕らなんですけど、その4人のワルガキを主人公にした80年代アメリカのどこかの街を舞台にしたストーリーというか。そういうイメージを最初にみんなと話して、その街で起きている物語を曲にしていきました。
●ジャケットのイラストはGEEKSの4人なんですね。
エンドウ.:自分たちを題材にしたキャラクターを描いてほしいということで、ファンタジスタ歌麿呂という有名な方にお願いしたんです。この絵を見て「そう来たか!」という部分もありつつ、さらにイメージが広がって。今回は1曲1曲が個別の物語になっているんですけど、どれも同じ世界観の中の同じ街で起きている10個の話という感じなんですよ。1曲1曲に主人公がいて、基本的には曲名が主人公の名前になっています。
●一貫した世界観もありつつ、サウンド面では今まで以上にルーツを強く意識したそうですが。
エンドウ.:ずっとルーツは意識しているんですけど、近年特に意識するようになっていて。僕らはビートルズやローリング・ストーンズ、クィーンやディープ・パープル、クラッシュやザ・フーとか、要するにロックの歴史に名を残しているものが好きなんです。逆に今の音楽が大嫌いで、そういうものに対する反動が常に心の中で怒りや不満としてある。たとえばライブハウスでオーディエンスを盛り上げているヤツらが、ニルヴァーナを聴いたこともないのにニルヴァーナのTシャツを着ていたりするのを見ると「終わっているな」と思いますね。
●実際にM-7「GUITAR GIRL」では、そういう内容を歌っていますよね。
エンドウ.:「ジミヘンも聴いたことがないのに、ギターを弾いてさ…」みたいなことを思っちゃうんですよね。「この人たち、カッコ良いな」と思ったら、「じゃあ、この人たちは何を聴いていたんだろう?」とどんどんさかのぼって音楽の歴史を知ってほしい。音楽が好きで、本気で挑むんだったら、ルーツを辿るはずじゃないですか。だから僕らはルーツを大事にして、自分たちが胸を熱くした音楽を出していこうという気持ちがすごくあるんです。
●かといって、GEEKSの音楽にはあからさまなルーツ感が出ているわけではなくて、節々にそういう要素を潜ませている感じがします。
エンドウ.:ロックを好きな人には気付いてもらえると思うんですよ。逆にロックを知らないガキンチョたちが今作を聴いてルーツをさかのぼるキッカケになったり、色んな音楽をさらに聴きたくなるようなキッカケになってほしいなと。そういう想いは常にあるんですけど、今回は特に盛り込めたかなとは感じています。
●色んなルーツをGEEKS流に消化した音になっているというか。
エンドウ.:何かをそのままやるというよりも、好きなものが多いのでそれを全部やりたいという思いがあるんですよ。だから、部分部分に盛り込まれているのかもしれないですね。
●それが“ゴチャゴチャ入り乱れた感じ”という今作のイメージにつながるんでしょうね。
エンドウ.:ゴチャマゼにしているつもりはないんですけど、ゴチャマゼになっちゃうんですよね。基本的にはパンクでロックなことをやりたいんですけど、聴いている音楽がパンクとロックだけじゃないから。「あれも良い。これも良い」というものをやっていくとこうなって、よくわからないものに…(笑)。
●楽曲自体はストレートな感じなのに、サウンドとしてにぎやかな印象があるのはキーボードの存在も大きいのかなと。
エンドウ.:そうかもしれないですね。僕らの中ではドラムは8ビートで攻めるのがカッコ良いに決まっているし、ギターもパワーコードが一番カッコ良いと信じているし、ベースもルートでダダダッと弾くのが結局は一番だと思っているんです。僕らがカッコ良いサウンドをドーンとやって、彩りや装飾みたいなものはキーボードがやっている感じで。
●上モノ的なところをキーボードが担当している。
エンドウ.:キーボードがゴチャゴチャやってくれるので、他の3人はかなりシンプルでストレートなプレイができて、自分たちのやりたいことがすごく良い感じにまとまっているんです。僕らが一番カッコ良いと思うシンプルなプレイができるのは、キーボードのおかげですね。
●あくまでも芯にあるのはシンプルなものだと。
エンドウ.:素材はシンプルなもので、作り込みや曲の展開でドラマチックに鮮やかにしていきたいなと思っていて。全体で色々とめまぐるしいことはしたいなと思っているんですよ。めまぐるしさやゴチャゴチャ感やドラマチックさがあるから、シンプルな部分も際立つわけなのでそういうものを目指していますね。
●展開がめまぐるしいからか、アルバム1枚をあっという間に聴き終える感覚があります。
エンドウ.:僕らはどうしても曲が長くなってしまいがちなので、実は今作では意識的に全ての曲を3分ちょっとにしたんですよ。自分たちが好きで聴いてきたバンドはそういうスタイルが多かったし、「やっぱりロックはスパっと3分台でしょ」っていう気持ちがあるから。本当はもっと色々なものを盛り込んで4分超えしちゃっているところから削ぎ落として、こうなっているという部分もあるんですよね。
●余計なものが削ぎ落とされているから、過剰になりすぎずにスパっと聴ける。
エンドウ.:飽きるギリギリのところでやめておくというのがエンターテインメントの鉄則なのかなと思います。「ちょっと足りないな…」くらいのところでやめておくほうがいいのかなと。
●本当に色々と考えて、作り込まれていますよね。
エンドウ.:他の人たちがどうなのかはわからないですけど、僕らはかなり考えてやっています。考えた上でシンプルな部分や複雑な部分を演出しているので、偶然や奇跡の産物では絶対にないんです。本当に作り込んで、頭を使って、狙って、全てのことをやっていますね。
●でも一聴しただけではそれに気付かないような形になっているのも魅力なんだと思います。
エンドウ.:「適当にやってやったぜ〜」くらいのスタンスではいたいなと。でも本当は裏で超がんばっているっていう(笑)。やるからには真剣にフザケたいなと思っているんですよ。
●真剣にフザケるというスタンスは、バンドとしての軸にもなっているのでは?
エンドウ.:僕らは何ごとも不真面目にやりたいなと思っているんです。(本当は)真剣ではあるんですけど、力を抜いて適当にクールな感じを見せていきたいなと。ロックとか色んな音楽を聴いていても、そっちのほうがイケているなって思うから。ガチガチに凝り固まって挑んでいくというよりも、「関係ねぇぜ」くらいのスタンスで常にやれたらなと思っていますね。
Interview:IMAI
GEEKSの新作『GRIMOIRE』はとにかく素晴らしい。何が素晴らしいかというと、まず「とっても情熱を込めて作られている」ところが素晴らしい。GEEKS以外の全てミュージシャンは恐らく、週末夜にどーしようもない連中と散々下品に飲んだくれて周囲に痴態を晒しながら朝帰りしてジーパンを履いたままベッドに潜り込んだところで曲を作らなくてはいけなかったことを思い出ししぶしぶ鼻歌を携帯電話に録音しててきとーに曲を作っているのに対し、GEEKSは公務員のように平日午前中からスタジオに入りキリッとした上品な眼差しで情熱を込めて曲を作っている。次に「よく考えて歌詞が書かれている」ところが素晴らしい。GEEKS以外の全てのミュージシャンは恐らく、その辺のブサイクな女と一発カマしてやろうと必死になってやり取りしている気色悪いメールの文章をそのまま何も考えずに歌詞にしているはずだし、英詞のアーティストはそのメールをGoogle翻訳で英訳したものをそのまま歌詞にしているに決まっている。しかしGEEKSは上品に小説を書く文豪のように気難しい表情で歌詞を書くし、英詞の部分も文法が不安な場合は米国に住む下品な外国人の友にメールで添削してもらっている。以上の理由から、この世界で最も上等でイケている音楽はGEEKSであると断言できるので、未だにGEEKSを聴いたことがない不幸な諸君は是非購入して聴いてみるべきであることも容易に想像できるはずだ。とにかく新作『GRIMOIRE』はハンパじゃない。とにかくカッコよすぎる。この記事が掲載されている本誌JUNGLE☆LIFEはフリーペーパーであるから、その読者も恐らく金銭的にかなり困窮した貧しい連中かと思われるが、どうにかして1度GEEKSの音源や生演奏を体験して欲しい。パンク? ハードロック? メタル? オペラ? オーケストラ? この強烈な衝撃はとても文字などでは伝えられない。
G./Vo.エンドウ.
■FROM STAFF …
上記の様に口は悪いが、音は一級品。そして限りなくストイック。GEEK(ギーク)で愉快な連中です。 (キングレコード 平野宗一郎)
■プロフィール
1000人を足止めたパトカー出動逮捕者発生渋谷ゲリラライブ、米国最大級ロックフェス2年連続出演、アジアツアー、HOOBASTANKなどを手掛ける大物プロデューサーを日本に呼び寄せ音源を作るなどやりたい放題のGEEKS。圧倒的なサウンドと緻密に編みこまれた歌詞でぶちかます! 今すぐ孤高の“ホンモノ”を体感しろ!