2003年のデビュー以来、シーンを牽引し続けてきたJ-METALの代表格・GALNERYUS。2008年のメンバー脱退後、ヴォーカルに小野正利、ベースにはTAKAを迎えて2009年より現体制となった彼らは、2010年6月に6thアルバム『RESURRECTION』、2011年10月に7thアルバム『PHOENIX RISING』をリリース。バンドとしての充実度を高めつつ確固たる地位を自らの手で築き上げてきた。現体制3枚目となるニューアルバムに向け、7/18にニューシングル『HUNTING FOR YOUR DREAM』をリリースした彼ら。今回はMasatoshi “SHO”Ono(以下、SHO)とSyuに話を訊いた。
●SHOさんがGALNERYUSに加入されたのが3年前ですが、「GALNERYUSに小野正利が加入」というニュースを聞いてすごくびっくりしたんです。改めて訊きたかったんですが、あれはどういう経緯だったんですか?
SHO:プロデューサーの久武頼正さんから「GALNERYUSっていうバンドがいるんだけど…」と電話がかかってきまして。もともとGALNERYUSのことは知っていたし、久武さんがプロデュースされていることも、デビュー当時にアルバムをもらっていたので知っていたんですよ。そしたら「実はヴォーカルが抜けたんだけど、GALNERYUSとして出演したいイベントがあるので、ゲストヴォーカルとして出てくれないか?」と言われて「僕でいいんですか?」と。それが最初ですね。その後、実際にゲストヴォーカルとして出てみて「正式に加入しませんか?」という話になり、そう言われたことが嬉しかったし面白そうだと思ったので。
●トントンと話が進んだんですね。
SHO:でも、加入するにあたってプロデューサーに3つの条件を出したんです。
●3つの条件?
SHO:1つ、ハイトーンは嫌だ。
一同:(爆笑)。
SHO:でも「ハイトーンは別にいらないですから、大丈夫ですよ」と。2つ目、僕は昔ヘヴィーメタルバンドとしてステージに立っていたんですけど、今はイメージしていたヘヴィーメタルのステージングはできないですと。それも「大丈夫です」と言われたんです。3つ目は、僕がイメージしていたヘヴィーメタルのMCも性格的にできないです。それでも「いいですよ」って言われたので加入したんです。
●その3つの条件って…。
Syu:1つ目は早々に破られていますね(笑)。
SHO:でも残りの2つは今も続いています。僕がヘヴィーメタルバンドをやっていたのは80年代の後半から90年代の頭ごろなんですけど、当時対バンしていたバンドとかも含め、どちらかというと曲によってキメの動きがあったり、MCもモニターに足をかけて「いくぞー!!」と言ったりするイメージで止まっていたんですよね。でも今はそういう感じではないから、残りの条件は自然と僕が言った通りになっています。
●ヴォーカリストの脱退というのは、要するにバンドの危機だったわけですよね。そこでSHOさんとステージを共にしたとき、Syuさんは手応えを感じたんですか?
Syu:もともと誰もが知っている声だったし、僕自身がすごく好きだったということもあるので何の心配もしていなくて。心配事といえば、「SHOさんがGALNERYUSを気に入ってくれるか?」ということだけでした。
●なるほど。
Syu:それに声を知っている分、曲作りがすごくしやすくなるだろうなと思っていたんです。実際に6thアルバム『RESURRECTION』(2010年6月)を作ってみたところ、やっぱりそうだった。鼻歌とか自分の裏声で作っていけば、SHOさんがしっかりとした歌声でハメてくれるので、イメージ通りの録り方もできたという感じでした。
●今作を聴いて、M-1「HUNTING FOR YOUR DREAM」のインパクトが大きかったんです。SHOさんの“声”や“歌”が持つポップさ、キャッチーさが際立っていて、尚且つサウンドはGALNERYUSらしくギャンギャン鳴っている(笑)。歌とサウンドが殺し合っていないんですよね。今のメンバーじゃないとできない曲というか。
Syu:そうですね。まず、SHOさんがヴォーカルじゃないとできないでしょうね。SHOさんが加入する前のGALNERYUSは各自が限界に挑戦するバンドというか。どこまで自分ができるのかに挑戦して、作品ごとに成長していこうという感じだったんです。でもSHOさんの場合は、もう完成されていますからね。尚且つ、万人に受け入れられている声だというのは分かりきっていることで。それを僕らが際立たせればいいから、役割分担がはっきりしたんです。
●「HUNTING FOR YOUR DREAM」は、どういうきっかけでできた曲なんですか?
Syu:これは『HUNTER×HUNTER』というアニメのエンディングになっているんですけど、そのタイアップの話をいただいてから作り始めたんです。SHOさんがオープニング曲を担当していたこともあり、「今度はエンディングテーマをバンドでどうだ?」と。
●SHOさんは大車輪の活躍ですね。
Syu:特攻隊長ですからね(笑)。それで僕的に4つくらいネタを作って先方へ渡したところ、選んで下さったのがこのメロディだったんですよ。それからSHOさんに作詞をしてもらって、曲の雰囲気と『HUNTER×HUNTER』の感じを上手いこと合わせて完成したという。
●作詞はすべてSHOさんが担当しているんですか?
SHO:全部ではないです。
Syu:でも8割~9割はSHOさんという感じですね。
●ソロとGALNERYUSでの作詞のモードは違うんですか?
SHO:ソロの方はポップスで、GALNERYUSの方はサウンドが激しくて強いですから、喜怒哀楽のどれかひとつをテーマを選んで書くにしても、かなり振り切れちゃってもおかしくないというか。実際にはそこまでは書かないけど、例えば「かなり怒っています! この野郎!」とか、「ぶん殴ってやる!」みたいな感じの歌詞は、ポップスのときにはないんですよ。ソロの小野正利として「ぶん殴ってやる」という歌詞を歌うことは多分ない。
●そうでしょうね(笑)。
SHO:でも、GALNERYUSのサウンドだと、そういう歌詞を書いてもおかしくはないので、そういう意味では書きやすいです。でも、いざ書き始めると、それはそれで大変なんですけどね(笑)。自然と区別はしています。
●今作にはM-2「METAL TRIGGER」とM-3「TEMPTATION THROUGH THE NIGHT」という新曲2曲も収録されていますが、けっこう極端な2曲ですよね。表題曲と比べたらかなり尖っている。
Syu:「METAL TRIGGER」は僕が書いて、「TEMPTATION THROUGH THE NIGHT」はYUHKIさんが書いたんです。「METAL TRIGGER」はゴリゴリのメタルが書きたいと思って作りました。「TEMPTATION THROUGH THE NIGHT」の方は、YUHKIさんらしく、変拍子も含めた曲。本当にYUHKIさんらしいと思いますね。
●確かに。
Syu:まず「METAL TRIGGER」は、本当にリフもゴリゴリ、ガリガリと鳴っていて、速弾きもバリバリあって。GALNERYUSって、メロディを弾くイントロだったり、テクニカルなパートのイントロが多かったりするんですけど、リフでバリバリ押す曲が最近あまりなかったので、ここでリフを復活させようと。サビはコール&レスポンスが入るであろう感じで、新基軸とまでは言わないですけど、そういうイメージがあったんです。
●「METAL TRIGGER」の作詞はSHOさんですか?
SHO:僕とTAKAさんの共作ですね。
Syu:TAKAさんは英語に強いので。
SHO:このサウンドだからこの詞にしようと思いました。ポイントは、歌詞に出てくる“The things”が何なのかというところですよね。
●“The things”…何なんですしょう?
SHO:突然やってくるんですよ(笑)。
●突然やってくる?
SHO:こいつが来たことによって、自制心を失っているんです(笑)。“何だこれは?”ってことなんですけど。
●え? どういうことですか?
SHO:これは実話を元にして書いているんですよ。韓国で空港に向かって高速道路を走行中に、久武プロデューサーがどうしてもウ○コを我慢できなくなってしまって…。「どこかに停めてほしい」と言ったんですけど「空港に着くまでトイレがない」と言われ、車の中で悶絶していたというストーリーが元になっています。
Syu:だから“The things”というのは、ウ○コなんです。
●え?
2人:「ウ○コが我慢できない!」という歌です。
●アハハハハハ(笑)。
Syu:あのときの我慢がないと、この曲は生まれていなかった。
SHO:そんな歌詞です(笑)。だから、内容があるようで、無いようで、あるようで…。でも、何でもいいんです。読んだ人が、“the thingsって何だろう?”と考えてくれたら。
●スリリングな雰囲気は伝わってきました。それはそれはスリリングな状況だったんでしょうね(笑)。
SHO:そうなんですよね(笑)。
●「TEMPTATION THROUGH THE NIGHT」はYUHKIさん作曲ということですけど、歌詞を読みながら曲を聴いて思ったのは…この曲はエロい!
Syu:エロネリウスですね。小野エロ利!
●ハハハハ(笑)。
SHO:この歌詞も同じです。例えば恋愛の曲で惚れた腫れたを書くとしても、振り切ったサウンドだから、強い言葉を使っても違和感はないだろうと。ソロでは満たされないものをGALNERYUSでは書いたということです(笑)。
●「満たされないものを書いた」とか言うと、SHOさんはドエロということになりますけど…。
SHO:ドエロなんですよね。分かっていただいた方が接しやすい(笑)。
●アハハハハハ(笑)。
SHO:あと、GALNERYUSのレコーディングでは「この曲は英詞にしよう」とか「この曲は日本語詞がいいんじゃないか」ということを最初に決めているんですよね。これは曲を書いたYUHKIさんが、「日本語と英語を上手く混ぜた歌詞のイメージだ」と言うので、“英語が入るなら、けっこう過激なことを歌っても、中和されるんじゃないか”と思って。
●パッと聴いただけではわからないですけど、じっくり歌詞を読んだときに“なんというエロさだ”と。“恥じらいなど要らない”って書いていますからね。
SHO:まあ、恥じらうのもいいんですけどね…。
●何の話ですか(笑)。
SHO:ポップスで詞を書いていると、喜怒哀楽と言いましたけど、結局8割~9割は惚れた腫れたというシチュエーションの中でどう表現するか、そこでどれだけ気の利いたフレーズが出てくるか、比喩が巧みかどうか、みたいなことになるんですよ。でもGALNERYUSだと、こういう切り口で書いてもいいかなと。
Syu:これはけっこうザワザワザワッとなると思う。
SHO:そうですかね? 逆に「やっぱり!」って言われそうですけどね。
Syu:僕の周りの人とかも、SHOさんに対してはどちらかと言うと洗練されていて清らかなイメージがあったみたいで。
●僕もそうでした。
SHO:「そうでした」って!
●今日でちょっと変わりましたけど。
SHO:ソロでデビューしてすぐに、バラードで名前を知ってもらったからでしょうね。世間的にはそのイメージのままなんだと思います。自分はどうやら他の男性よりも声が高いということは若いときから知っていたんですけど、どういう感じで聞こえているのかは、本人には分からないんですよ。よく「突き抜けるような声」とか「綺麗な声」と言っていただくので、きっとこの声と曲のイメージでそう思われるんだと思います。でも、ヘヴィーメタルは赤裸々な方がいいと思いますから。
●ところで現在アルバムを絶賛制作中らしいですが、もう全体像は見えてきているんですか?
Syu:もう完全に見えています。全体的なイメージとして『RESURRECTION』、『PHOENIX RISING』(2011年10月)とアルバムを出してきて、ストライク、ストライクときているので、更にストライクを投げようと。
●3球勝負だと。
Syu:そうですね。SHOさんも言っていたことなんですが、素晴らしくいいものを『RESURRECTION』で出した。その後も『PHOENIX RISING』でガツンと出せた。ライブもすごくよかった。だから3つ連続で最強のアルバムを作ろうという気持ちがありまして。
●その手応えがばっちりあると。
2人:超ばっちり!
Interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:Hirase.M