音楽メディア・フリーマガジン

GalapagosS

脅威の進化速度であらゆるジャンルを呑み込むエレクトロロックバンド

 ロックもパンクもテクノもニューウェーブも全て切ないメロディの曲にしてしまう、そんな日本独自の進化を遂げたサウンドを聴かせる3ピースバンド、GalapagosS(ガラパゴス)。

テクノポップユニット、FLOPPYでも活動する小林写楽を中心に2010年に結成された。今年4月にデビュー作となる1stミニアルバム『Soy sauce impulse』を発表してから半年足らずで、彼らが早くも初のフルアルバム『Black including all』をリリースする。キャッチーなメロディという芯は変わらないまま、様々なジャンルを飲み込んでいく彼らの進化は止まらない。

Interview

「年間計画を見たら書いてあったので"やるしかないな"って。3人で呑みながら酔っぱらっている時に考えた計画なので、ペースがおかしいんですよ(笑)」

●GalapagosSという名前の由来は"ガラパゴス化(Galapagos Syndrome)"だそうですが、日本独自の進化を遂げたサウンドというのがコンセプト?

写楽:結成した当初はまだバンド名も決まっていなかったんですけど、たまたまTVで"日本の楽曲のコード進行は海外から見ると独特だ"っていうのを誰かが言っているのを見て。言われてみれば、日本には色んなジャンルのバンドがいるけど、歌はポップで歌謡テイストなものが多いなと思ったんです。みんなはたぶん意識せずにやっていることを、僕らは逆に意識してやってみようということでしたね。

●写楽さんはFLOPPYでも活動されていますが、そことはまた別のサウンドをやろうとした?

写楽:FLOPPYよりもバンドサウンドを前面に出したものをやろうと思って、1stミニアルバム『Soy sauce impulse』も作ったんです。結成当初は普通の3ピースの音だけだったんですけど、いざやり始めてみると打ち込みの音が入っていないと不安になってしまって。そこから打ち込みを入れることになって、今の感じになりました。

●当初は打ち込みなしのバンドサウンドを志向していたんですね。

写楽:最初にこの3人でイベントへ出た時は、普通のコピーバンドみたいな感じでしたからね。FLOPPYも活動休止中だし、その間に普段はやらないようなことをワーッとしようと思って。

ゴキミ。:3ピースバンドでワーッとやる感じといったらBAKUかなと思って、そのライブでもコピーしました(笑)。

●BAKUと今のGalapagosSとでは音楽性が全然違いますが…。

写楽:でも僕もBAKUがルーツの1つではあるので、すぐ賛成しました(笑)。ツアーの本数がすごく多かったりライブがとにかく疲れるとか、そういう無駄に体力を使うことがやりたいなと思っていたんですよ。

ゴキミ。:結成した時も"とにかく楽しいことを何の足かせもなくやって、単純に楽しもう"という話をしていたんです。そもそもバンドの話をするっていう名目で集まって、3人で酒ばかり呑んでいたのがそのまま今も続いている感じですね(笑)。音楽性も1つのジャンルにこだわらず、何でもやってみようと思っていて。ライブでもバカになりたいんですよ。

●色んなタイプの曲はありつつ、どれもメロディはすごくキャッチーなのが特徴だと思いました。

写楽:キャッチーさはすごく重視していますね。

新太郎:まずわかりやすくて、キャッチーであることは重要で。それぞれにやりたいことは色々とあるんですけど、その根底にあるものは一緒なんです。

●前作を作って、バンドとしての基盤を固めたところもあったんでしょうか?

写楽:そこで生音と打ち込みのバランスだったり、このバンドのやり方がやっと見えてきた部分もありましたね。GalapagosSは色んなジャンルのサウンドをやりたいバンドなんですよ。でも前作は5曲入りだったので、やりたいことを全部は伝えきれなくて。そこで取りこぼしたものを全部拾い集めて出来たのが今回の1stフルアルバム『Black including all』なんです。

新太郎:前作を出した時点では、このバンドだったらもっと出来るだろうなっていう感覚があったんですよ。

ゴキミ。:前作は本当に初期衝動的だったというか。今回はアレンジも含めて、色々なことに挑戦しようという感じでした。

●M-6「アリアケル」は前作に続いての再録ですが、これもリアレンジしているんですよね。

写楽:前作から1曲入れようとは3人で話していて、この曲が良いんじゃないかということになったんです。アレンジも前作から変えて入れることで、他の収録曲との間に良い落差を付けられるかなと思って。

ゴキミ。:前作のバージョンが完成形ではないというか、自分たちの中ではもうちょっと何とか出来そうな感覚があったんですよ。前のバージョンも良いんですけど、今回で完全版を作ったという感じですね。

●前作を作った後にすぐ次の作品を作りたいっていう気持ちになっていたんですか?

写楽:欲求的にはそうですね。作業的には"もうイヤだ"っていう感じでしたけど(笑)。"色んなジャンルをやる"っていう大風呂敷を広げた割には、前作は意外とまとまってしまった気がするんですよ。自分の中では"もっと、とりとめのないものを作りたかった"という想いがあったので、今回はそれに挑戦しました。

●メンバーそれぞれの個性も前作より出せたりした?

新太郎:前作は写楽さんが持ってきたデモの段階でほぼ完成形が見えていたので、僕らはそこに少しアイデアを足していく程度だったんです。でも今回はそのやり方をやめて、写楽さんにはラフな状態でデモを持ってきてもらうようにしたんです。そこに僕らがリズムアレンジを加えて、写楽さんに戻したりもして。それだけではなかったんですけど、そういう方法も取り入れたことでそれぞれの血が通ったバンドらしい音により近付いた感覚はあります。

ゴキミ。:前回もそれなりに考えてやったつもりではあったんですけど、やっぱり聴き比べてみると今回のほうが作り方も成長してる感じはしますね。

●技術的な面での成長もあったりする?

新太郎:俺は技術的な成長もすごくしている感覚があって。練習しないと出来ないようなギリギリのフレーズも今作にはいっぱい入れているし結構、無茶していますね(笑)。

●意図的に難しいことにも挑戦した。

新太郎:俺の中ではそうでしたね。前作を作っている時に自分のキャパシティがちょっと狭いなっていうのを感じていて、そこをもっと広げていきたいと思っていたんです。アルバムとしてのコンセプトもジャンルレスにするということだったから、それに"もっとゴチャゴチャなものにしたい"という自分の想いが一致していたというか。だから自分が持っているキャパシティを超えてやってみようというところで、試行錯誤していました。

●自分の持っている引き出しの中だけで勝負しないというか。

ゴキミ。:歳を重ねていくと、すぐ自分の得意な形に逃げちゃいがちなんですよ。でも今回は普段はあまりやらないことも取り入れて、得意技に逃げないように意識しました。どれもジャンルが違うような曲ばかりなので、自分があまりやらないタイプの曲と直面した時に何を弾こうかと色々考えましたね。

●写楽さんが持ってくる曲自体もジャンルがバラバラだから、自分が得意なものだけとは限らない。

新太郎:たとえば"この曲のアレンジはこういうジャンルに落とし込もう"と決まったら、そのジャンルの音楽を聴き込んでクセを掴んだり"自分なら、そこでどうするか?"っていうことを考えたりして。だから必然的にみんなが挑戦した形になりましたね。

●そういう作業をするとなると楽しい部分もある反面、大変な部分もあるのでは?

写楽:僕はどのバンドをやっている時でも、毎回レコーディングが終わると"これでもう引退しよう!"って思うんです(笑)。

●そんなにつらいんだ(笑)。

写楽:パソコンで作業しているとインターネットも見られるので、すごく遠くへ行く方法を調べたり、何かの病気で入院すると何日入院が必要かを調べたりして、逃げる理由を探しています(笑)。

新太郎:最近パスポートを取ったので、逃げられる範囲が相当広がりましたよ(笑)。

一同:(笑)。

●そこまでするけど、結局は辞めない。

写楽:かれこれ10何年もバンドをやってきて毎年のように引退しようと思っているんですけど、"あれをやり残したな"とか"あれをやったら引退しよう"みたいなものがどんどん出てきてしまうんですよね。

●前作から半年でフルアルバムをリリースするというのも、やりたいことがたくさん出てきたから?

新太郎:大変なんですけど、年間計画を見たら書いてあったので"やるしかないな"って。3人で呑みながら酔っぱらっている時に考えた計画なのでメチャクチャな感じで、ペースがおかしいんですよ(笑)。

ゴキミ。:実際にやってみたらすごく大変だったんですけど、ほぼ計画通り進んでいるんですよね。

●それがすごい(笑)。今回の『Black including all』というタイトルに込めた意味とは?

写楽:タイトルでは"ただの黒じゃなくて、色んな色を混ぜた結果の黒だ"っていうことを言いたくて。パッと聴くとキャッチーなロックにも思えるけど、実はよく聴くと各パートは色んなことをやっていたりする。それは音だけじゃなくて、たとえば"ありがとう"という言葉1つにもすごく色んな意味が込められているんだということを伝えられたらいいなと思っているんです。

●一見わかりやすそうなものにも、実は色んな意味や背景が込められていたりすると。

ゴキミ。:M-8「迎合なき世界」は僕が作った曲なんですけど、デモの段階ではTHE BLUE HEARTSみたいな感じの曲で。そういうポップなビートパンクみたいな曲はGalapagosSには合わないかもと思って、今までは持って来なかったんです。でも今回は"色々混ぜ合わせちゃえ!"っていうコンセプトがあったから、そういう曲を2曲持ってきて混ぜ合わせたら良い感じになったんですよ。

●この曲にはホーンまで入っていますよね。

ゴキミ。:"GalapagosSとしては絶対にやらないだろう"っていうことを逆にやっちゃった方がいいと思ったんです。だからKEMURIやPOTSHOTみたいなホーンを、写楽さんにシーケンスで入れてもらって。

●"GalapagosS"というイメージすらも壊していく。

写楽:今回は出来なかったんですけど、ウクレレだけの弾き語りの曲とかもやりたいなと思っていて。

新太郎:それ、新しいですね(笑)。

ゴキミ。:僕も新しい楽器は持ってみたいですね。何とか年内に三線を買って、サウンドに取り入れていければ…。

一同:(笑)。

●10月からは結構な数のツアーも始まりますが。

ゴキミ。:"各地の美味しいものを食べたい!"っていうところから、この本数になりました。結成当初からこれぐらいは回りたいと思っていたんですけど、それが1年経ってやっと叶いましたね。今回は広島をまわれないのが残念ですけど…。

新太郎:広島には食べたい物が多かったのですごく残念で…それが今年の心残りですね(笑)。ツアーでも今作の曲を成長させていって、次につなげていければと思います。

写楽:今作でも色んなことをやっているんですけど、まだまだやりたいことはあるので今後にも期待していて欲しいですね。

Interview:IMAI
Assistant:HiGUMA

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