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G-YUN

ジャンルレスで変幻自在な彼女が描き出す“最高の喜怒哀楽”

 ソロデビューしてから初のフルアルバムとなる『HiMYMEMINE』をリリースした、G-YUN。前号でのレコーディング潜入インタビューでも語っていたとおり“今の私”を詰め込んだという今作は、彼女が持つ多面性と自由さをそのまま示すようなカラフルかつポップな作品となっている。サウンドプロデューサーとして福井昌彦氏(Do As Infinityほか)とakkin氏(ONE OK ROCKほか)を迎え、ジャンルレスで変幻自在なヴォーカリスト“G-YUN”の魅力が一層引き出された。またGOLLBETTY時代からの盟友でもあるMISSYを作曲パートナーに迎えたことも、彼女にとって大きかったようだ。過去のわだかまりから自らを解放し、弱い部分にも向き合った今だからこそ表現できる強い想いのこもった歌。揺れ動く心情を隠さない人間味ある彼女が描き出す、最高の喜怒哀楽をこのアルバムだけでなくツアーでも共に体感してほしい。

Interview

「ソロになっても私は私だからビビビッとくる感覚は同じで、それを曲として表現するべきだと思ったから。気を遣い過ぎる必要はない分、今までよりワガママにもなったし、柔軟にもなりました」

「歌詞の中に書いてある気持ちを見たら、当たり前だけど全部"私"っていう1つになるから。そこはブレないし、本当に思っていることを歌っているという部分も絶対にブレないんです」

「ライブをしなくても音楽はできるんですけど、最高の喜怒哀楽は味わえないんですよ。最高の快感や最低の落ち込みを味わえるのはライブしかないから、それを味わいたい」

●まず今回の1stアルバム『HiMYMEMINE』のクレジットを見て、GOLLBETTYでも一緒だったMISSYとの共作曲が多いことに気付いたんですが。

G-YUN:自分がGOLLBETTYの解散を言い出したこともあるし、最初は一緒にやるつもりはなかったんですよ。でも『Message』を作りながら、"誰とやってもいいじゃない!"って吹っ切れた時があって。私はやっぱりMISSYのギターが好きだし、彼のセンスを尊敬している。そこで急遽MISSYに電話をかけて、「もう一度、一緒に夢を追いかけない!?」と言って名古屋から呼び出しました(笑)。

●共同作業を始めたのはいつ頃だったんですか?

G-YUN:今年の3月末くらいですね。1stシングル『Message』を録り終えて次はライブ用の曲を書かなきゃいけないとなった時に、曲作りをする上で自分の"右腕"みたいになってくれる存在が必要だと思ったんです。

●それがG-YUNさんにとっては、MISSYだったわけですね。

G-YUN:GOLLBETTY時代は、彼のリフからメロディが生まれることも多かったんですよ。ソロになっても私は私だからビビビッとくる感覚は同じで、それを曲として表現するべきだと思ったから。スタジオで合宿しながら、2人で曲を作っていきましたね。

●長く一緒にやってきただけに、共同作業もやりやすかったのでは?

G-YUN:MISSYが作るリフやメロディは好きなんですけど、"ちょっと違う"と思った部分は遠慮なく変えるんですよ。彼とは付き合いが長いのでGOLLBETTYの時からそういうことも言いやすかったんですけど、より自分の意見を強く主張するようになった。だから今はMISSYが作ってきたリフでも、それは私のリフでもあるという感覚になれていて。私のソロ作品を作っているわけだから気を遣い過ぎる必要はない分、今までよりワガママにもなったし、柔軟にもなりました。

●M-1「JUST LIKE YOU」の"自分らしく居たい"という歌詞にもつながる心境というか。

G-YUN:タイトルで"YOU"と言っていますけど、"自分"に対しても歌っているような感じですからね。『Message』を出した直後に書いたのが、この曲の歌詞なんですよ。リリース後にtwitterとかで色んな反響を見たし、それをやっぱり気にはしてしまう。だけど結局、受け取り方は十人十色だし"私は私だから"と思って。その時に思っていたことをすごくストレートに書いたら、こうなりました。

●G-YUNさんの今いる心境が歌詞にすごく素直に表れている気がします。

G-YUN:今回のアルバムも全部そうなんですけど、私の歌はすごく弱いから書けるものばかりなんです。カッコ良い哲学や強い精神性を持っているアーティストにも憧れるんですけど、それよりも人間臭くて弱い人の方が普通は多いと思うんですよ。

●カッコ良い哲学を"こうだ!"と伝えるような歌詞って、それに共感する人以外には受け入れられなかったりもしますからね。

G-YUN:"こうなんだ!"って言える方がカッコ良いんでしょうけど、だったら私はダサいです(笑)。

●ハハハ(笑)。でもそういう人の方が人間味はあると思います。

G-YUN:本当にカッコ良い人間なんていないし、みんなどこかダサかったり、腹黒いところがあったり、弱かったりする。私の歌詞は"こうだ!"じゃなくて、"こうだよね? こう思わない?"って訊いている感じですね。そういう意味で私はオーディエンスの方に近い人間なのかなって思うし、弱い人が書く負けず嫌いな歌詞だからこそ聴く人の背中を押せるんじゃないかな。

●自分の弱さにちゃんと向き合っているから、強くもなれる。

G-YUN:毎日毎日、弱さにしか向き合っていないですもん! (笑)。"マイナスなことは口にしない方がいい"ってよく言うけど、みんながそんなに強くはいられないし"私は無理!"って思うんですよね。

●そこで悔しいと思って流す涙の強さを歌っているのが、M-3「DRiPPiNG FiST」ですよね。

G-YUN:強くなろうと思ってもなれない自分がいるから悔しい。"どうして自分はこんな感じなんだろう!?"と思って涙も出るし、一生懸命もがくんです。だから私の歌詞はきれいな光に満ちた"希望"よりも、赤黒い"願望"というニュアンスの方が強いと思っていて。

●赤黒いって(笑)。表面的な言葉じゃなくて、ちゃんとG-YUNという人間の生々しい感情から出ている言葉というか。

G-YUN:このアルバムに関しては、そういうものがすごく多いと思います。『HiMYMEMINE』というタイトルにしたのは"今の私"を歌っているからなんですけど、私の思っていることが聴いてくれた人みんなに届くかどうかはわからないじゃないですか。届くかどうかわからない人のことを勝手に想像して歌うよりも、"これが私の想いです"という歌詞を今回は書こうと思ったんです。

●まず自分の想いを伝えることを優先した。

G-YUN:それによって伝わる範囲は狭くなるかもしれないんですけど、みんなに向けて歌っているような歌詞を書くのは今の私がやりたいこととはブレると思ったから。"私"対"聴いてくれる人"っていう一対一の感覚で"私はこう思う。で、あなたはどう?"と歌っているので、今回の歌詞は我が強い感じもするんです。もちろん聴いてくれる人のことは考えているけど、あくまでも私目線なんですよ。

●G-YUNという個人の目線から歌えるようになったのもソロになったからこそじゃないですか?

G-YUN:GOLLBETTYの時は私が歌詞を書いていても、聴いてくれる人にはやっぱり他のメンバーの意見を代表してのメッセージだと受け取られてしまうから。ということは、もしメンバーが1人でもそう思っていなかったら嘘になっちゃうから、直接的な言葉は制御していた部分があったんです。当時はちょっと広い視野で見ようとしていた部分もあったけど、今はソロになって私以外の誰でもない言葉で表現できる。

●M-4「QUEEN Bee」みたいな個人的な恋愛体験を直接的に歌った曲も、GOLLBETTY時代ならなかったでしょうね。

G-YUN:メチャクチャ個人的な話ですからね(笑)。今までだったら、もっとオブラートに包んだ感じの恋愛ソングになっていたと思います。

●M-9「静かな夜」もそうですけど、すごく"女の子"らしい歌詞だと思いました。

G-YUN:だって私、女の子ですもん(笑)。GOLLBETTYの時は"男たちの中にいる女"という意識があって、"男には絶対に負けない!"という気持ちが強かったんです。ソロになってからは男の感情を背負わなくてもよくなったので、M-9「静かな夜」みたいな歌詞も書けるようになった。そこも直接的になったから、リアルなのかな。

●女性らしい面も素直に出せるようになった。かといって、男に負けたくないっていう気持ちがなくなったわけではない?

G-YUN:それはあります! 元々、負けず嫌いなところもあるし、そういう自分は今でもいますね。私の中で、自分が2人いる感覚なんですよ。たとえば他人のことを全く気にしない自分と、逆にすごく気にしてしまう自分の両方がいる。それが本当に不思議で…。

●真逆の感覚だと思いますけど、その2人はどんなタイミングで入れ替わるんですか?

G-YUN:そこが入れ替われるのは、ライブだけなんですよ。ライブだけは"自分がやるだけのことをやったら、どう思われてもいいや!"と思って、すごく強くなれる。だけどステージを降りた途端に、さっきまで歌っていたのと同じ曲のはずなのに"どう思われるのかな…?"ってすごく気になってしまうんです。

●ステージにいる時と降りてからでは全く別人というくらい変わるんですね。

G-YUN:そのどちらかが欠けていても、音楽をやれていなかったなとは思っていて。すごく弱いから書ける歌があって、それを歌える場所があるから"どうだ! 強いだろう!?"って思う自分にもなれる。両方があって、バランスを保てているというか。

●どちらもその時は本心であって、作っているわけではない。

G-YUN:ライブのMCでは"LOVE"とか"PEACE"みたいなことをよく話すんですけど、本気でそう思っているから言えるんですよ。もし作っていたとしたら観ている人にはバレると思うし、自分を作っているわけではないからそういうことを言っても恥ずかしくないんですよね。

●M-6「Fly Fly Fly!!」はライブのことを歌っているわけですが、歌詞を書いている時はステージを降りた自分なわけですよね…?

G-YUN:私はあんまりライブに行かないんですよ。自分が音楽をやる側の人間だからどうしてもそういう視点から見ちゃって、他のお客さんと一緒に飛べたり心踊らせたりはできないんじゃないかなっていう気持ちがあって。だから「Fly Fly Fly!!」は"もし自分が純粋な気持ちでライブに行くとしたら、こういう気持ちだろうな"っていうのを想像して書きました。

●ライブならではの開放感がすごく表れている歌詞だと思います。

G-YUN:その瞬間だけでも嫌なことを忘れたりとか、ライブって唯一そういうことができる場所なのかなって思うんです。もちろんそういうこと以外にも私がライブで伝えたいことはあるけど、息抜きってやっぱり必要だと思うから。

●それは今作全体にも言えることで、もしメッセージ性の強い歌詞ばかりだったら聴いていて疲れると思うんですよね。

G-YUN:ソロになってから、すごく人と話すようになったんですよ。その中で"この人はどうしてこんなに強くなれるんだろう?"と思ったりもするんですけど、自分がそうなれないことがつらいわけでもないし、逆にラッキーだと思っている部分もあって。

●自分の性格を客観的に見れていから、欠点を武器に変えられるんだと思います。

G-YUN:昔はそれができなかったんですけど、今はすごく自分のことを客観的に見れていますね。でもそれによって、すごくマイナス思考にもなってしまって。

●マイナス思考?

G-YUN:"これでいいんだ"と思える自分がいる一方で、"これでいいのかな?"って思う自分も同じだけいるんです。自分でも"本当はどっちなの!?"って思いますよ(笑)。でも、だから歌も辞められなかったんでしょうね。

●"もう一度歌いたい"という方向に、良い意味で気持ちが揺らいだわけですからね。でも歌詞として出てきた言葉や気持ちは揺らいでいない気がします。

G-YUN:そこが揺らいでいないから、自分はブレていないと思えるんです。最近、私は音楽が好きなんじゃなくて、"気持ちを音に乗せる"ことが好きなんだと気付いて。だから他人の音楽を聴いていても、まず歌詞ありきというか。歌詞に出てくる言葉がきれいだからとかじゃなくて、そこに込められている気持ちが伝わってきた時に泣いちゃったりするんです。

●表面的な部分に反応しているわけではない。

G-YUN:だからストレートな表現じゃなくてもいいし、断片的なワードが刺さってくればいい。歌詞の内容に共感したから泣けるというわけでもないんです。"とにかく気持ちがこもっていればサウンドは何でもいい"と思っているから、今作もジャンルレスな感じになったんですよね。

●色んなタイプのサウンドはあるけど、気持ちがこもっているという意味ではどの曲も一貫している。

G-YUN:歌詞の中に書いてある気持ちを見たら、当たり前だけど全部"私"っていう1つになるから。そこはブレないし、本当に思っていることを歌っているという部分も絶対にブレないんです。

●だから自分も含めた人の弱さや嫌な部分も無視できないんでしょうね。

G-YUN:できないんです! そういうものがザクザク私の心に入ってくるから。温かい部分はもちろんあるけど、みんな自分が大事だし、それが人間だと思うんです。

●そういうものも歌に変えて昇華できている。

G-YUN:だから歌うことを辞められない。本当に私が伝えたいのは音楽よりも、気持ちなんだなって思うんです。それは音楽だけじゃなくファッションにも言えることで、自分の気持ちを表に出して表現することが好きなんだと思います。ソロになってから、すごく"自分"というものについて考えているんですよね。

●だから、自分らしさにも辿りつけた。

G-YUN:だから、こんな作品にもなっちゃったんですけどね(笑)。

●G-YUNさんのカラフルな性格がアルバムの色として表れている(笑)。アルバムのジャケットはどんなイメージなんでしょうか?

G-YUN:一度、歌うことをやめようと思っていた時期に色んな人から言ってもらえた「笑っている顔が似合うよ」とか「ステージでいる姿が一番キラキラしているよ」っていう言葉に、すごく力をもらったんです。私は弱いから、自分1人で輝くことなんてたぶんできなかった。そういう人たちへの感謝の気持ちをM-10「KiLAKiLA」では書いていて。

●「KiLAKiLA」に描かれている波に揺れる小さなビンが、ジャケットのイメージにもつながっている?

G-YUN:私の歌は他人に向けて書いているわけじゃないけど、それが誰かに届いて勝手にその人の力になっていたりもする。それはどこの誰に届くかわからないメッセージボトルみたいなもので、キラキラ光る波の上を漂ってどこかへたどり着くんです。私にとっては自分を輝かせてくれる人たちがその"波"のようなもので、その上を流れることでビンの中にある私の気持ちが誰かのところにたどり着けるんですよね。そういう宛先のない感情の共有ができる環境にいることのすごさも感じて、人とのつながりや出会いに感謝して書いたのが「KiLAKiLA」なんですけど、それをそのままジャケットにしたかったんですよ。

●でもこのメッセージボトルは波の上に浮かんでいなくて、沈んでいるのはなぜ?

G-YUN:受け取る人は"自分でつかもうとしないと手に入らないんだよ"という意味も込めて、沈めたんですよ。もし今作が気になるんだったら、自分で拾い上げてフタを開けてくださいっていう気持ちを込めています。

●流れてくるのを待つんじゃなくて、自分の意志で見つけて拾い上げてほしいということですね。リリース後の10月にはツアーも予定されていますが。

G-YUN:今はツアーまでにやりたいことをちゃんと表現できるようにならないといけないと思って、準備している段階です。でも私が音楽をやっている理由は気持ちを表現したいからなので、伝えたいことはGOLLBETTYの時と同じだと思うんですよ。そういう意味では、ライブに向かう気持ちはあんまり変わらないかなって。ただその頃は他のメンバーの気持ちを代弁しているところが少なからずあったけど、今回はお客さんと私との"タイマンです!"っていう感じかな(笑)。

●ライブを大事にする想いは今も昔も変わらないわけですよね。

G-YUN:ライブをやって悔し涙することもあるんですけど、だから次はもっと"やってやる!"と思えるわけで。今はとにかくライブをやりたいですね。ライブをしなくても音楽はできるんですけど、曲や歌詞を書いている時は弱い方の自分が出ているので最高の喜怒哀楽は味わえないんですよ。最高の快感や最低の落ち込みを味わえるのはライブしかないから、それを味わいたい。まずは自分がそれを味わえるようなライブをしていきたいと思います。

Interview:IMAI

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