2003年のデビュー以来、音楽を愛し、バンドを愛し、3人が一丸となってシーンを走り続けてきたロックバンド・FUZZY CONTROL。過去に5枚のアルバムをリリースしてきた彼らは、今年6月に活動10周年を迎えてもその攻める姿勢を崩さず、ロックバンドとしての成長を止めることはなかった。3人が繰り出すラウドで硬質な音の中に潜む、膨大な熱量と研ぎ澄まされた感性が爆発した6枚目のアルバム『ROCKS』。ラウドシーンが盛り上がりを見せる2013年、彼らが今作で作り上げたロックは、大きな爪痕を人々の心に刻むことだろう。カヴァー&インタビューとなる今回は、3人に10年間の活動とアルバム『ROCKS』に込めた想い、そしてFUZZY CONTROLが鳴らすROCKの本質を訊いた。
●今年の6月に活動10周年を迎えられましたが、実感はありますか?
JUON:そんなにやってきたっていう感じもないんですよね。あるようでないっていうか、今回のアルバム『ROCKS』を作るにあたり、バンドが完全に攻めモードになっちゃっていて。だからなのか判らないんですけど、落ち着いてゆっくりやってきたという感じはないんです。10周年というのはキーワードとしてはありますけど、「言われてみればそうですね」っていう感じ。
●この10年はどうでしたか? しんどかった?
SATOKO:しんどくもあり、でも結局はすごく楽しかっただけだなと思って。
●楽しかった?
3人:楽しかった〜。
SATOKO:“音楽が好きなんだな”って。3人で音楽をやるっていうことは、ちょっとバンドへの熱が下がったりとか、ちょっと感覚が違ったりとか、ちょっと性格が合わないとか…“ちょっとしたこと”で一緒にできなくなるじゃないですか。だけど、そういうこともなく。無事故無違反じゃないけど(笑)、そういう感じでこれたっていうのが良かったなと思って。自分的には、2人はすごく人柄が良いんだなっていうか…。10年経って気付くみたいな、“こんな奴らとバンドを組めるっていうのは相当大きいな”って思ってます。
JOE:俺は人見知りなところもあるんですけど、2人のキャラに助けられてるっていう部分も大きいですね。
●あれ? JOEさんはステージのキャラと少し違いますね。MCからは開けっぴろげなイメージがあったんでけど。
JOE:そうなんですよね。あれも結構人見知りの自分を隠すような感じで。
●守るために攻める、みたいな。
JOE:そうそう!
SATOKO:なにかしゃべってるんだけど目は合ってない、みたいなね。
JOE:防御力が弱いんだと思う(笑)。
一同:アハハハ(笑)。
JOE:だからバンドがずっと楽しくて、好きなメンバーと盛り上がっちゃう部分が大きかったと思う。
JUON:私生活でもそうだし、3人でやってきたバンド活動が生活の一部だったから、それと共に成長したり、いろんなことを知った10年だったというか。俺は中卒っていうのもあって、昔から漢字とか言葉遣いとかがよくわかんないんですよね。
SATOKO:さっきもインタビューで「ゆくゆくは○○になりたい」っていうところを「よくよくは〜」って言っていて(笑)。
●このバンドの成長と共に、人間としても形成されていったと(笑)。
JUON:バンド以外のところで成長してもバンドにいい変化をもたらすし、返ってくるんですよ。そういった成長の結果をいちばん返したいのがここ…FUZZY CONTROLなんです。自分と向き合いながら、どんどんプラスしてきた10年だったと思います。
●今作『ROCKS』は、自分が信じるものや目指すところ、それまでの道を進むこと…そういうことが大きなテーマになっているような印象を受けたんです。
JOE:『ROCKS』というタイトルは、前のアルバム『SUPER FAMILY CONTROL』(2011年10月)を出すときから決まっていたんです。
SATOKO:CDの帯に暗号で書いておいたんです。うちらは奇数のアルバムは『〜CONTROL』という感じで、絶対最後に“CONTROL”という言葉を付けるんですよ。偶数は全部数字になっていて、次は「SIXかROCKSのどっちかにしよう」と言っていて、じゃあ“ROCKS”でしょうと。
●なるほど、言葉だけは決まっていたと。
JUON:今年の3月に曲作りが始まったんですけど、『ROCKS』を作る前に桜の木の下でアコースティックギターを弾いていて。そこでまさに「桜の木の下で、アコギで作りました!」みたいな曲を作ったんです。それが後々のM-3「What are u waiting for?」という曲になったんですけど。
●え? 「What are u waiting for?」は結構ゴリゴリじゃないですか。
JUON:それは“これからどうやってアルバムを作っていこうか?”と悩む前のすごくフラットな状態のときの話で。そういう段階を経て、無意識にアルバム全体の楽曲が『ROCKS』を作る方に向かって行っていたということに、自分自身徐々に気づいていったんです。
●“こういうものを作ろう”じゃなくて、“何が作りたいのか”を探っていくというか。
JUON:そうすると、自然と突き詰める場所が見えてきて、“これが『ROCKS』か!”と自分でも全貌が見えてくる。そこに至るまではすごく悩んだけど、そこからは今まででいちばん制作しやすかったし、いい意味でいちばん楽だったし楽しかった。“本当にロックが好きなんだな”って。性に合っているし、いちばん素直に曲作りが出来たと思います。
●M-7「Lyrics」はまさに音楽が生まれる瞬間のことを歌っていると思うんですが、アルバム制作の最初の心境がこの曲に綴られてますね。
JUON:「Lyrics」の歌詞は、俺が今回初めて詞を書いたんです。今までは言葉に自分がたどり着いていなかったというか、歌詞を書きたいという想いが、本当に確かな想いかどうかが自分でもわからなかったんです。だから、言葉と表現したい想いが離れていないと実感できたときに歌詞を書きたいなと思っていて。
●確かな想いだと実感できるまでは歌詞にしなかった。
JUON:今回は自分でも歌詞を書きたいという気持ちが今までにないくらいあふれてきて。「Lyrics」は自分が初めて吐き出した歌詞なんですけど、今まで知ってくれているファンの方も、俺の心の中が新しい角度で見える作品になっていると思うんです。だからこそ“聴いてほしい”という気持ちが倍増しているんです。
●歌詞のもととなる材料って、自分では何だと思います?
JUON:自分の核の部分っていう感じがします。だから全然ネガティブでもないんですよね。本当に思っていることなんだけど、別にハッピーでもなくて、大切にしているものというか。
●喜怒哀楽とかではなくて。
SATOKO:ニュートラルなんだよね。
JUON:拗ねる必要はないし、タイミングでもないし。今作はそういうものがすごくニュートラルにハマったんです。やっぱり曲が『ROCKS』というタイトルにハマったっていうのが嬉しくて、それが歌詞にも影響していると思います。
●SATOKOさんが歌詞を書いている曲のメロディは誰が作るんですか?
SATOKO:メロディはJUONですね。仮歌が付いていて。でも、例えば「What are u waiting for?」は私が歌詞を書いたけど、仮歌の時点でJUONが“What are u waiting for?”とは叫んでるんです。
●この曲自体もそうですが、基本的にはハードでヘヴィな曲が多いですが、どれもメロディがスコーン! と抜ける感じがあって。
JUON:今回のメロディは、すごく綺麗にレールにハマったんですよね。よく「メロディが降ってくる」とか言うじゃないですか。でもそれは、もともと自分の中にあるものを出せているかどうかっていうのと同じだったりすると俺は思うんです。
●自分以外のどこかから降ってくるわけではなくて。
JUON:いろんな音楽を聴くし、いろんなメロディを聴いたりするんですけど、SATOちゃんっていう人がいて、JOEっていう人がいて、ユニバーサルというレーベルと一緒にやっていくぞと。大島こうすけさんやakkinさんというプロデューサーと出会って…『ROCKS』に向かう道っていうのが、自分の中でハマったんですよ。ハマったら、ずっと出したかったけど、どうやって出すかわからなかったものが出てきた。だから人間って、元からすごいものを持っているんだと思います。それがちょっとしたきっかけで出てくる。今回はそういう力を感じました。やっぱり何枚も出してきたから、自分のクセに沿って作りがちなんです。それが悪いわけじゃないけど、『ROCKS』は新しくしたい。聴いている人たちに「今まで以上に最高だ」とか「こんな最高の名曲たちを聴かせてくれてありがとう」っていう風に思ってほしいんです。そこに導かれていく感触があったというか。
JOE:それがゴリゴリのロックによる、セクシーなメロディラインの秘密だったと。
●3人のアンサンブルからは3ピースと感じない厚さを感じるんです。それは音数だけの問題じゃなくて、洗練されているからこそというか。複雑な展開や構成なのに、シンプルに聴こえる楽曲が多いじゃないですか。その最たる例がM-11「Burnie」なんですけど、冷静に聴くと結構難しいことをやっていて“なんでこういう展開思いついたんだろう”と不思議になるんですけど、それをゴチャッと聴かせないというか、聴き手にスッと入ってくる。複雑なのにシンプルに聴こえるんですよね。
SATOKO:今のアンサンブルにたどり着くまでには、いろんなところに寄り道してきたんです。「3人でやっているんだから3人がピッタリ合っていなきゃダメだ!」と思ってめっちゃ練習するときがあったり、その後で「やっぱり個々のグルーヴを重んじた方がいいんじゃないか?」となったり。ストイックな集団なので、いろんなアンサンブルに挑戦してきて、その都度突き詰めてきたんです。
●なるほど。
SATOKO:音質に関しても、「好きな音質でみんなでやった方がいいんじゃないか?」とか「全員で示し合わせてやった方がいいんじゃないか?」とか、いろいろ経てきた中で思うことがあって。“その中でどれがいちばんやりたいのか”っていうのを3人がそれぞれ考えて、また持ち帰って…っていう繰り返しによって、今は“この3人でやると絶対かっこいい”と思える方法が何百通りもあるんです。だから逆に自由というか、ルールが減ってきたと思っていて。
●おもしろいですね。「こうすべきだ」といういろんな試行錯誤を重ねた結果、自由になった。
JOE:逆に「はみ出した方がおもしろい」くらいの感覚だよね。
SATOKO:はみ出しても、みんながそれをわかっているから狙ってはみ出すことができる。「はみ出ちゃった!」ということにはならない。
●それは3人だけの感覚なんでしょうね。10年やってきたからこそっていう。
JUON:「ロックにルールなんていらねえ」っていうね。
SATOKO:往年の天才たちみんなが、すごくルールを守ってるし、破っているっていうか。破っていることもルールだし。その秘密みたいなものはどんどん突き詰めていかないとわかんないし。FUZZY CONTROLという形態でやっていって、3人でおのずと作ってきたルールもあれば、壊してきたルールもある。誰かひとりが「こういうルールを作ってくれないか」と頼んだこともあるし。
JUON:その時に信じたところに向かうのは常に一生懸命だったね。「これ以上進めねえよ!」っていうところまで行ききった。
●その時に信じたところを突き詰めてきたからこそ、その積み重ねが今に活きていると。
JUON:そうですね。一個一個中途半端にやるんじゃなくて。
●話を聞いていると、今作を作っていく過程でのバンドの充実ぶりが伺えますね。
SATOKO:でも、曲がいいのが出来過ぎちゃったので、作詞がすごく煮詰まりました。2回、本当に吐いた。
●えっ? 本当に吐いた?
SATOKO:言葉を吐き出すまでずっと待っているんですよ。ずっと待って「ウオォエッ!」って(笑)。
JUON:その話はメンバーも初めて聞きました。
●今初めて明かされる衝撃の事実(笑)。
SATOKO:“今、FUZZY CONTROLで何が言いたいんだろうか?”って考えて。“今までも言いたいことをいっぱい言ってきたはずなのに、何故こんなに言いたいことがいっぱいあるんだ!”みたいな感じでした。
●あ、言いたいことが出てこなくて煮詰まったわけではなくて、いっぱいあるから煮詰まったと。
SATOKO:あり過ぎるんだけど、メロディが良すぎて。“聴いてくれる人にロックオンしてバシッと刺さるような言葉っていったい何だろう?”とか“みんなは何がほしくて私は何をあげたいだろう?”と考えて、その結果吐く、みたいな。黙っては書けないから、走りながら書いたりとか。
●え? 走りながら?
SATOKO:M-2「The way you decide」はBPM260ですっごく速いんです。この曲を最初に聴いたときに、しばらく反応できないくらいの衝撃を受けて、“ヤバい! これ歌詞どうすんだ?”と思って。家で曲がバッチリ身体の中に入るまで聴いてから歌詞を書こうとしたんですけど、じっとしていたら何も書けなくて。“この疾走感の中で自分が何を思うのかを考えないと歌詞が書けない”と思って、夜中に走ったんです。
●まさに疾走したと。
SATOKO:BPM260の中に居ながら。前も見ないで走っていたから、あやうく失踪するくらいの勢いでした。
一同:アハハハハ(笑)。
JUON:語り継がれていくエピソードになっちゃったね(笑)。
●その曲の世界観に自分の身を置くというか。
SATOKO:そうしないと書けないってことに気付けて良かったです。そんなことしたこともないし、どうやったら書けるかなんてわかんないじゃないですか。詩を書く人の多くは、作詞をするにあたってお気に入りの場所とかがあると思うんですけど、この曲はどこに行っても書けなかったんですよ。
●お気に入りのスポットでもダメだったと。そのスポットは何箇所くらいあるんですか?
SATOKO:3つあって。自分の部屋と、ベランダと、近くに電車が通っている公園なんです。でもどこに行っても「The way you decide」に見合った熱量のものが生まれてこなくて。自分の中にはあるんだけど、上手く出てこなかったというか。それで“どうしたら出てくるだろう?”と思ったときに、ワーッて走ったらワーッと出てきてワーッと書けた。
●ハハハ(笑)。
SATOKO:やっぱり作ったらしんどいですね。走って出てきたときは気持ちいいし最高なんですけど、そこにたどり着くまでもしんどい。よく「生みの苦しみ」とか言うじゃないですか。でもうちらは割と楽しんで作ってきたから、じゃんじゃん出来ちゃってたんですよ。すごく凝縮して作るといっても、凝縮の仕方も年々変わってくるし。今のバンドの状態で凝縮しようと思ったら、やっぱり今まで生きてきた中でもいちばんシビアになってる。その状態で何かを生もうと思ったらより苦しくなってくるし、ポンと生まれたときに、より価値があるかどうかを判断できるようになるというか。そういうことの繰り返しです。
●曲はJUONさんが作っていて、SATOKOさんが歌詞を書いているケースが多いじゃないですか。別々の人間が作っているのに、これ以上ないくらい譜割りが気持よくハマっているのがすごいなと思ったんです。例えばM-5「DON'T NEVER STOP」はリフが曲の大きな特徴になっていると思うんですが、そこに言葉がぴったりハマっている。
SATOKO:確かにJUONが歌詞を書いた曲は、私が書いたものと違ってどこにも繋ぎ目がない感じがありますよね。JUONの中にあるものだから、代え難いよさがあって。私が歌詞を書くときは、たぶんだけど、ドラマーだしリズムの取り方がJUONと違うんですよ。変な話“JUONだったらこういうつもりで歌っている”とか“ここで息を吸いたい”とかがあって。それを仮歌をもらったときに“ここはこうやって歌いたいんだろうな”とかを研究して、曲を1度自分の中に入れてからやるんだけど、結局今回はすっごく情熱的になったときに、やっぱり自分の語呂が出ちゃったんですよね。でもJUONはそういうのまで全部再現できちゃうんです。すごいですよ。“こんなの本当にいけるのかな?”と思いながら歌詞を書いても、パッとやってくれるんです。
●そこで化学反応が生まれているんですね。
SATOKO:いろいろ化学反応が出ますね。普通の人だったらこうはいかないだろうと思っても、絵になる形にできるヴォーカルっていうか。だから、逆にそこで詞に意味があるかないかがわかるんです。歌詞として良いのか / 悪いのかというジャッジにもなるから、毎回ワクワクするんです。
●作詞は、曲を聴いて見えてくるものを言葉にするという作業なんですか?
SATOKO:そうですね。その中でも、メロディで「ここ超キュンとする!」っていう箇所に、超キュンとする言葉を、メロディと同じかもしくはメロディ以上のテンションで放てなかったら意味がないと思っていて。それを放った後で“この言葉をここで放つべきなのか?”ともう一回確認するんです。感覚的には、呼ばれて勝手に言葉が出てくる感じ。でも今回は、勝手には書かせてもらえなかったですね。曲が“自分の奥にあるものをどんどん出して来いよ”っていう感じだったので、普通にしていたら出なかった歌詞です。
●JUONさんが書いた歌詞は、内面から溢れ出てきた想いを言葉にしているという感じがありますよね。
JUON:思ったことそのまま表現しているって感じですね。とくにしゃがんでもいないし、背伸びもしていない等身大の自分。今、やっと自分の実年齢と気持ちが一緒な感じがするんですよね。今がいちばん等身大の自分というか、実年齢と精神的なものが見合っている。
●今まではどうだったんですか?
JUON:うーん、どうだったんだろう?
JOE:背伸びしていたんじゃない?
JUON:あ、そうか。そうだね。若いときの方が背伸びしていたんだよな。背伸びしても経験は補えないじゃないですか。経験を積んで、年齢が上がってきてやっと28歳になって、改めて年相応なバランスになった感じがあるんです。私生活では突拍子もないことをやったりして、自分でも“未だにそんなことをやってるのか…”って思ったりもするんですけど(笑)、詞を書くというところでは年相応な感じになっている。結構何も隠さず。
●隠さずですよね。
SATOKO:JUONは割と物腰の柔らかい人だから、ロマンティックな歌詞を書くのかなと思ったら、いい意味ですごくストレートというか、男らしい歌詞を書きますよね。
●すごく生々しいと思いました。ちょっと人前に出すのは恥ずかしいくらいの気持ちが、結構そのまま書かれていますよね。こういう感情を歌詞にすることに抵抗はなかったんですか?
JUON:普段から“普通は恥ずかしいだろう”っていうことをやっているんですよ(笑)。だから俺にとっては恥ずかしいことじゃないんです。
●あ、普段から出しているんだ。
SATOKO:そう、JUONは普段からそういう人なんですよ。基本的にオープンマインド。
●本当に裏表がないんですね。すごいな。
SATOKO:間違ってもいいし傷ついてもいいっていうスタイル。
●強いですね。弱点を曝け出しているけど、めっちゃ強い。
SATOKO:JUONは結構強いんです(笑)。
JUON:なぜそうなったかと遡ると…中学校の頃の話なんですけど、俺は髪が長くて女の子にいじめられてて…だからいじめられるのに慣れているってことですね。
一同:アハハハハ(笑)。
JOE:辛かった過去があるんだ(笑)。
JUON:いじめからの生還者なんだよ(笑)。
SATOKO:あそこで貫けたんだから、今だって貫けると。
JUON:もっと言えば更にポジティブ変換して「中学校のときみんないじめてくれてありがとう」っていう(笑)。あのとき精神的にボコボコにされなかったら、今こうやって10年間も信頼関係を持ってバンドをがんばっていけなかったですよね。
●すごいな(笑)。
JUON:もともとオープンな性格だったけど、それがいじめの原因になってしまうという感じだったんです。精神的にボコボコにされたんだけど、俺は基本的に苦手な人でも、嫌いになるっていうことをしたくないんですよ。相手が嫌っていても。そういう精神で生きてきたので、悪いこともいいことだっていう風に考える。
●いい話ですね。なんか心が洗われる(笑)。
JUON:辛いことも、これから絶対に良くなっていくっていう風に変換して、がんばって生きていくっていう。
JOE:でも最近、もっと強くなったよね。いろんな出会いがあったのもあるだろうし、だからすごく頼っちゃいます。
SATOKO:転換の仕方がおもしろいんだよね。JUONは、一見ネガティブに取れそうなことを超ポジティブに変換する天才なんです。例えば恋人が「愛してる」と言ってくれないとするじゃないですか。そしたら普通は“相手が言わないから俺も「愛してる」と言うのやめよう”ってなリますよね。でもJUONの場合はポジティブに先回りして「俺も愛してるよ」っていきなり言うんです。言われてないのに(笑)。
●ハハハ(笑)。
SATOKO:そういうJUONを見ていると、“ちまちまとしょぼいことを考えるのはよそう”と思いますよね。
JOE:しかも、人がいちばん傷つく言葉を知っているから、自分からそういうことは絶対に言わないんです。
SATOKO:私が「ブス」って言ったりすると「“ブス”って言っちゃダメ! “可愛くない”って言え!」と叱られました(笑)。敏感にいろんなことをわかっている人だから。知識や勉強的なことはわかっていないかもしれないけど、誰もわかっていないような、人を傷つける / 傷つけないのジャッジは繊細にわかってる。いつも教えてもらっていますね。
JUON:思い返すといろんなことがあって良かったなと思います。15歳から一人暮らしをして、家に帰ったら電気とかを停められたりとかしましたけど。電気代をどれだけ滞納したら停められるかっていうのも知らないし、督促用紙が来てても「何か来てるな」くらいの感じで。無知なところからひとつひとつ覚えていったんです。
●自分の体験ひとつひとつから生き方を学んできたんですね。
3人:そうそう(笑)。
●リリース後はワンマンツアー“10th Anniversary Party 〜ROCKS〜”がありますが、どのようなライブにしたいですか?
SATOKO:FUZZY CONTROLとしてZepp Tokyoでやるのは初めてなんですよ。イベントは出たことがあるけど、ワンマンは初めてなんです。今回は『ROCKS』のような充実感のあるアルバムを作ることができたのも初めてだし、アルバムの世界にどっぷりと浸かって来てくれたら、その世界のもっと奥深いところを生でお届けできるから、楽しみにして欲しいですね。
JUON:自分たちの想像を越えたアルバムが出来上がり、それを引っさげてのワンマンツアーなので、ロックを聴いたことがない人も、恐くないからぜひライブハウスに足を運んでほしいし、ロック好きのやつも“どんなロックをやるの?”みたいな感じで来てくれてもいいんです。ひとりでも多く来てもらって、俺たちの音楽を分かち合っていきたいですね。
JOE:今のFUZZY CONTROLはすごくバンドの調子が良くて。毎日すげえ成長してるし、信号も青ばっかりなんですよ。
●一瞬も立ち止まらないと。
JOE:そうですね。だから“本当にいいものが観たい”と思う人はぜひ来てください!
interview:Takeshi.Yamanaka
Assistant:森下恭子