ライブバンドとして濃密な活動を重ねてきた2012年を経て、精神的にもサウンド的にもタフになったFOUR GET ME A NOTS。バンド結成10周年を目前にした彼らが、通算3枚目となるフルアルバムを完成させた。数多くのライブの合間で常に曲作りを行い、コンスタントに作品をリリースしてきた彼らだが、今作は曲作り合宿でそのときの熱量を瞬間的にパッケージした意欲作。ライブバンドならではのマインドを詰め込み、更にメロディアスに、更に攻撃的に、更に表現の幅を広げたアルバム『BLINKS』。12曲に込められた様々な想いは、ライブハウスで輝きを放つ。
●2012年4月に3rdミニアルバム『ELIXIR』をリリースし、7月までツアーがありつつ、9月には台湾のロックフェス“2012 ROCK IN TAICHUNG FESTIVAL”にも出演して。去年は結構忙しかったですか?
石坪:そうですね。バンド人生でいちばん忙しかったくらいの1年でした。すごく充実していましたね。
阿部:うんうん。
石坪:ツアーの最後は沖縄だったんですけど、沖縄でライブしたのも初めてだったし、台湾も初めてだったし、結構初めてづくしの1年だったような気がします。11~12月はツアーで九州2往復とかしていましたし、その合間に今作のレコーディングがあったりして。だから本当に音楽中心というか、充実した1年でした。
●止まる隙もないくらいに走り続けていたと。
石坪:そうですね。でもそこまでキツかったという感じでもなくて。
高橋:切羽詰まった感じではなかったよね。
石坪:うん。自分たちのマイペースも保ちつつ色んな経験をすることができて。それも新発見でした。
●台湾はどうだったんですか?
高橋:すごく楽しかったです。
石坪:“日本より人気があるんじゃないか?”っていうくらい盛り上がって(笑)。
高橋:初めてライブで求婚されました。
●え? 求婚?
高橋:何人もの人に「チエー! ケッコンシテー!」って(笑)。
●ハハハ(笑)。めっちゃ盛り上がったんですね。
石坪:そうですね。無料フェスだったんですけど、結構人も来ていて。嬉しかったですね。
●日本でやる感覚とは違いました?
石坪:音響とかお客さんの雰囲気は違いましたけど、あまり変わらないか?
高橋:うん。自分たちのやってることは変わらないかな。
●前作のミニアルバム『ELIXIR』は歌とメロディに特化した作品だったと思うんです。対して、今回リリースとなる3rdフルアルバム『BLINKS』ですが、現時点のバンドの意志やメッセージ…伝わってくるマインドがすごく強い曲が多いと感じたんです。
石坪:うんうん。
●前作収録の「Determination」は前々作のツアーが終わったそのときに感じたことを歌った曲だったと思うんですけど、今作はそういう趣の楽曲が多いなと。
石坪:確かにそうですね。
高橋:やっぱり歌詞はそのときに思っていることが色濃く入っちゃいますよね。
石坪:それこそ前作のツアーだったり、台湾に行ったりしたような経験も含めての意志はすごく詰まっていると思います。
●それも瞬間的に感じたことというより、バンドをずっと続けてきたからこそたどり着いた気持ちというか。だから去年1年間の集大成というより、2004年から続けてきた9年間の集大成のようなアルバムだと感じたんです。
石坪:そうですね。もちろんアルバムは毎回“それまでの集大成”というつもりで作ってはいますけど。
●来年で結成10年になるし、今作が節目になっているのかなと。
阿部:あ、来年10年か…。そういう自覚は全然なかったですね(笑)。怒涛っていうか、バーッとやってきているので、色んな経験はしてきましたけど、10年という実感はあまりないというか。意識もしていなかったな。
●この9年間は長かったですか?
石坪:いや、早かったですね。しんどかったことも楽しかったことも…全部ありますけど。
高橋:だから今があるんだなって思う。
●FOUR GET ME A NOTSを9年間やってきて、3人の中ではこのバンドはかなり大きな比重を占めていると思うんです。それぞれに聞きたいんですが、このバンドは自分にとってどういうものですか?
石坪:楽しいというか趣味的なところもあるし、仕事的な気持ちもある。それに、ライブは1本1本がその瞬間にしかないものなので、非現実的なものをすごく感じているんです。それはバンドをやっていないと経験できないことだと思っていて。だからFOUR GET ME A NOTSは自分にとって…今作の曲名にもあるんですけど、ライフワークになっているのかな。
●M-11「Lifework」で歌っていることですね。
石坪:うん。そういう感じですね。人生という道のりで背負っているバッグというか、いい意味での背負っているものというか。自分の人生と並行しているもの。そういう感覚ですね。
●高橋さんはどうですか?
高橋:私はこのバンドに入る前から、音楽しか考えてなかったんです。だから今までやれているのがすごく嬉しいです。音楽はもともとずっとやりたかったことだし、それで今ここに立っていることができて、もう少しで10年になるし。自分の信じたものがちゃんと存在していて良かったなと思います。
●うんうん。
高橋:あと、FOUR GET ME A NOTSがなかったら私はどれだけ変な人になっていたんだろう? と思います。
●変な人?
高橋:暗い感じだったと思います(笑)。バンドを続けてきていて、自分自身が変わってきているんです。前向きにもなっているし、このバンドをやってなかったらこんなに辛い想いなんて絶対に経験しなかっただろうと思うこともあるんですけど、でもそれがあるからこそ今ポジティブに明るくなれているという実感があって。今の自分があるのはこのバンドがあったからだなって思います。
●なるほど。ベック(阿部)は?
阿部:やっぱり好きで始めたことじゃないですか。それを今でも続けていて、多少なりともお金をもらっていて。それってすごく幸せなことだなと最近思ってきて。俺とボッチ(石坪)は今年29歳なんですけど、周りの友達とかも会社勤めして結婚して、普通に子供がいるような奴もいるし、家を建ててる奴もいますし。それはそれで幸せだと思うんですけど、好きなことをやり続けている奴は少ないと思うんです。
●うんうん。
阿部:そいつらを見ると自分より明らかに老けているように見えるし(笑)。バンドじゃなくても、たぶん好きなことをやっている人ってみんな若く見えると思うんですよ。それってすごく幸せなことなんだなって最近すごく強く思います。
●「Lifework」という曲で歌っていることがまさにそうですね。“「好きなことを続けること」僕にはこれしかない”という歌詞がありますが、これはまさに今まで続けてきたからこそ歌えることで。好きなことを続けることの難しさを感じたことは今まであったんですか?
石坪:色んなことで感じて来ました。いちばんバンドが辛かったのは1stアルバム『DOWN TO EARTH』のツアーなんですけど、それはなぜかと言うと、日程的にも30日間以上出っぱなしだったりとか、とにかく闇雲にまわったツアーだったんです。
高橋:出っぱなしに加えて、5連チャンとかあったよね。
石坪:そうそう。スパルタ教育みたいなツアーだった。
●それ、自分たちで決めたんですよね?
石坪:そうです。
●自業自得じゃないか!
一同:ハハハ(笑)。
石坪:でもそれがあったからこそ「もうこういうツアーの組み方はやめよう」と思えた(笑)。僕たちはずっと、自分たちで決めてやってみて、ダメだったらまた次の方法を考えて…という繰り返しで今まできたんです。そういう取捨選択をしてきたからこそ今の気持ちがあるというか。そういう活動をしてこれたことが大きいかな。自分たちで考えて、自分たちでやってみて、失敗したら反省して。どんなバンドもそういうことを経ていると思うんですけどね。環境を良くするためにはどういうことをしないといけないかということもちゃんと話し合えるようになったし。
●うんうん。
石坪:だから今はメンバー間のバランスもすごくいい感じになっていると思います。
●先ほど高橋さんが「このバンドがなかったら変な人になっていた」と言ってましたけど、3人とも変わったんでしょうか?
石坪:変わったと思います。3人ともですけど、昔はみんな視野が狭かったと思うんです。バンドに対しても自分の人生に対しても、一度こう思ったらずっとそればかりというか。でもだんだん経験していく中で、視野が広くなっていったというか、精神的な余裕ができたというか。何かネガティブなことが起こったとしたら、以前はよりネガティブ思考のままで落ちている期間も長かったりしたけど、今はすぐに切り替えることができるようになった。年を取ったということもあるだろうし、色んな人と出会う中でいい意味で心の余裕が出てきて、色んなことに挑戦してみようという気持ちも出てきて。3人ともそういう感じになれていると思います。
●昔は融通が効かなかったと。
阿部:そうですね。頭が柔らかくなったと思います。ぶっちゃけ、この2人(石坪&高橋)は基本的にめちゃくちゃ頑固なんですよ。
高橋:アハハハハハ(笑)。
阿部:1つのことを「こうだ!」と思ったら何を言っても曲げないんです。
●そうだったのか(笑)。
阿部:ボッチ(石坪)は自覚があったと思うんですけど、智恵さんはいちばん頑固な上に自覚がないから厄介なんです。
一同:ハハハ(笑)。
阿部:でもそういうところも少なくなってきて、柔軟になってると思います。もちろんいい部分での頑固なところはあるんですけど、色んな意見を採り入れるようになったというのはすごく感じますね。人の話を聞くようになった(笑)。
高橋:「これはできない!」「これはやりたくない!」は少なくなりましたね。
●その発言からすると、以前はそういうこと言ってたんですね。
高橋:やる前から「これはできない!」とか言ってました。それは自分に自信がないが故に、勝手に決めつけていたりしたんです。でもそういうことはやってみてから判断してもいいんだなと思えるようになりました。
●M-1「Walk together」に“Music connects minds”(音楽は心を繋ぐ)というフレーズがありますが、ライブという空間で感じることのできる一体感みたいなものは、日常の生活ではなかなか体験できるものではないですよね。まさに“音楽で心が繋がった”という感覚で。ライブバンドならではのこのフレーズがすごく印象的だったんです。
高橋:この歌詞は私が書いたんですけど、この歌詞のきっかけになったのは、去年南相馬にライブをしに行ったことだったんです。私たちは千葉で震災の揺れを経験して、映像とかで色々と観ていましたけど、実際に行って、未だに人が住めない状況を目の当たりにして。
●はい。
高橋:街はそのままあるのに人がいないっていう現実がある中でも、南相馬のライブハウスでライブをしたとき、笑顔ですごく楽しんでくれているお客さんがいて。地元のバンドたちもすごくがんばっていたし、そこで強い想いを感じて。それで素直に思ったことを「Walk together」に書いたんです。
●ライブハウスってそういう場所ですよね。
高橋:そうですね。今までも感じていたことですけど、そこでハッキリと今音楽ができていることの幸せを感じることができたし、私たちは音楽を続けていく意味があるなって思いました。
●あと、今作は歌とメロディが中心になっている楽曲が多い中で、M-5「Independence」という曲はめちゃくちゃ攻めてますよね。“怒り”が溢れていて。
石坪:それベックが作ったんです。
●怒っていた?
阿部:いやいや、俺、全然怒ってないです(笑)。
●なぜこういう曲ができたんですか?
阿部:歌詞は俺が書いたわけではないんですけど、「好きなように曲を作っていい」と言われたので、好きなように作ってみようと。
●「好きなように作っていい」と言われたんですか。
高橋:今回、ベックはM-3「By your hands」と「Independence」とM-9「Stop keeping things as you are」を作ったんです。
●なるほど。攻めていたり、間奏がメタルっぽくなっているのはベックが作ったからか。
阿部:俺がそういうの好きなんですよね(笑)。それにFOUR GET ME A NOTSには今までそういう感じの曲がなかったなと思って。で、好き勝手に作ったんです。
●そうか。最初に「今作は意志が見える」と言いましたけど、それはベックが作った曲の曲調も関係しているかもしれない。激しくて攻めている曲調が、強い感情に繋がっているような印象があって。
石坪:ああ~、なるほど。そうかもしれないですね。
●歌詞は誰が書いたんですか?
石坪:ベックの曲は僕が書きました。
●過去のインタビューでボッチは「あまりはっきりした感情は歌詞で書きたくない」と言っていたじゃないですか。でも「Independence」はかなり強い感情をストレートに歌っていますよね。曲が歌詞を呼んだんですか?
石坪:いや、曲に合わせて歌詞を書いたわけではなく、歌詞のストックとして書いていた元ネタがあって、それを膨らませたんです。でも強い曲なので、強い言葉で歌いたいなと思って。「Stop keeping things as you are」もそうですね。「By your hands」はシンガロングというかゆったりした印象なので、その曲調に合わせて歌詞を書いて。
●ベックは歌詞について何か注文するんですか?
阿部:いや、「歌いたいように書いてください」と。俺、歌詞には全然口を出さないんですよ。
●ベックはどういう気持ちで曲を作るんですか?
阿部:うーん…俺はギターのフレーズから入ることが多いんですよ。「Independence」とかは完全にそうで、ギターのリフとソロが最初に出てきて、そこから膨らませた感じですね。逆に「By your hands」は頭の中で浮かんだメロディにコードを乗っけて…という感じだったんです。
●収録曲は、前作以降で作ってきたものの中から選んだんですか?
高橋:アルバム制作にあたって、今回曲作りの合宿をしたんです。
石坪:曲作りの合宿は今回が初めてだったんですよ。それぞれがネタを持ってきて膨らませるという作り方は今までと同じなんですけど、今回は合宿でギュッと凝縮して作ったんです。合宿だとそれしかやることないじゃないですか。
高橋:その場で「これどう思う?」みたいなやり取りをしたりして。
石坪:だから即効性があったというか、3人が1曲に対してより強い気持ちを向けられたのかなって。すごく集中してできました。
●アルバムだし、3人がそれぞれ曲を作ろうと?
阿部:いや、そもそも俺が曲を作ったきっかけは、合宿中に暇だったからなんです。
●え?
高橋:曲はまず最初、私とボッチが構成とかを練りますから。
●あ、そういうことか。
阿部:3人で合わせるときはもちろんドラムを叩きますけど、それまでは超暇だったんです。「じゃあ曲を作ろうかな」って(笑)。
●ところでメロディに関してなんですけど、特にM-7「Cosmos」とM-8「Rivals」で感じたことなんですが、メロディが今まで以上に普遍性を持っていると感じて。「Cosmos」は他の曲とやや雰囲気が違うというか、情景や映像が浮かぶメロディですよね。
石坪:そうですね。この曲はABメロとサビを別のネタとして作っていたんです。でも合わせてみたらなんか妙だけどいいなと思って。その妙な違和感が、いい感じになったんでしょうね。
●ああ~。
高橋:AメロとBメロはなんかスローモーションで映像が流れていて、サビで急に現実に戻るっていうか。そういう印象があって。
●「Rivals」は誰が作ったんですか?
石坪:僕です。
●え? マジで? 高橋さんがメインで歌っているし、歌詞の内容からしても絶対に高橋さんが作った曲だと思ったんですが。
高橋:「智恵さんに歌ってもらう曲作るわ」って言って作ったよね。
●この曲のサビのメロディはすごいと感じました。メロディックパンクという枠組みを超えているなって。
石坪:このメロディも感覚的に作っただけなんですけどね。自分が口ずさむ中からメロディを作っていて、それは今までと同じなんですけど、きっと今までに聴いてきた音楽とかからどこかしらインスパイアされていると思うんですが。
●なぜ最初から高橋さんに歌ってもらおうと?
石坪:サビがいちばん最初にできたんですけど、作っていくうちに“女性ヴォーカルのメロディックパンクみたいな曲にしよう”というイメージが湧いてきて、じゃあ歌ってもらうしかないなと。
●しかもこんな綺麗なメロディに、結構赤裸々な歌詞を乗せていますよね。
石坪:ハハハ(笑)。まさに(笑)。同世代に対するバンドとか、辞めちゃったバンドとか、休止しちゃったバンドとかに対して思うことをそのまま書きました。それは別にバンドをやっている人だけじゃなくて、同世代の奴に対しての僕の気持ちですね。
●うんうん。
石坪:やっぱりみんなライバルなんですよ。僕個人もそうだし、バンド単位でもそうだし。何か比較対象があってこそ、自分を奮い立たせることができると思うんです。それを赤裸々に書いてますね。
●ボッチの性格が出ていると。一見ぼーっとしているように見えて、内心ではめちゃくちゃ熱いこと思っていたり、同世代のバンドにめちゃくちゃ嫉妬していたりすると。
石坪:それはあると思います(笑)。打ち上げの席とかで熱いこと言ったりしますし。
高橋:お酒が入ったら熱くなります。すごく真っ直ぐなんですよ。
●ハハハ(笑)。
石坪:今の年になったからこそ、こういう気持ちを歌ってもいいのかなって思えたんです。そこは正直に言ってもいいんじゃないかなって。
●FOUR GET ME A NOTSは3ピースですが、3ピースだと特に音源では表現の限界があると思うんですよね。でも、今作はその限界を気にしていないというか、個々のパートがしっかり表現できていると思うんです。歌やギターはもちろん気持ちや感情や情景を表現する割合が大きいですけど、ベースもきちんと表現しているし、ドラムも曲の雰囲気を作っている。
石坪:僕ら、3人とも好き勝手やってるんですよ。
●え? そうなんですか?
石坪:好き勝手やってるんですけど、よほど突飛なことではない限り「それやりすぎだよ」みたいなことは言わないんです。だから本当に上手くバランスが取れているなって思うんです。今まで色んな作品を作ってきて、何度もレコーディングを経験してきたからこそ、今のようなバランスになっていると思うんです。どんなに好き勝手やっても、楽曲として上手くまとまるようになったのかな。すごく尖ったことをやったとしても、3人が合わさったらパズルみたいに上手くハマるというか。そういう奇跡的な感覚がありますね。
●ということは、曲の完成像を最初に3人でガッチリ共有するわけではない?
石坪:そうですね。最初に言葉で「こうしよう」みたいなことはあまりないです。
●アレンジのことで1つ訊きたいことがあったんですが、M-4「Milestone」の最後のサビ、“we are not afraid”の部分で一瞬演奏が止まってボーカルのみになるじゃないですか。
石坪:ああ~、はいはい。
●これは深読みかもしれないですが、こういうアレンジによって、この部分で歌っている感情…“もう怖くない”という気持ちがグッと伝わってきたんです。歌詞と連動したアレンジなのかなと。
高橋:それはたぶん偶然です(笑)。
石坪:深読みですね(笑)。
●深読みだったか…。
阿部:録ってるときは歌詞がないですからね。
●アレンジを決めたときもまだ歌詞はできてなかったんですか?
阿部:できてなかったです。アレンジのアイディアの1つとして音のない部分を入れたんです。だから歌詞はまったく関係ないという。
●マジかよ(笑)。
一同:アハハハハハハハ(笑)。
石坪:でもそういう風に受け取ってくれることはすごく嬉しいことですね。1つ1つ気を抜かずに曲を作っているからこそ、そうやって気にしてもらえるようになってるのかなって。
●ああいうフックが入ることによって、聴く側に新しく何かを感じさせるわけですからね。
石坪:楽曲については、いろいろと紐解いていっちゃうとわかってくることがあると思うんですけど(笑)、聴いてくれる人が1つ1つ気になって「ここはこうなのかな?」と考えてくれることは嬉しいことなんですよね。それは僕らが意図しているケースもあれば、意図していないこともありますけど。
●“we are not afraid”の後に“cause we can see our goals”(今の僕には目標がはっきり見えているから)と続くじゃないですか。それは今現在のバンドの気持ちの現れだと思うし。
石坪:そうですね。
●だからあのアレンジが意図的だったかどうかは別にして、こういう部分からも今後に対するバンドの気持ちや意志が伝わってくる作品だなと思って。察するに、今のバンドの精神状態はすごくいいだろうし、いいモチベーションでアルバムを作ることができたんだなと思うんですが。
石坪:うん。今がいちばんバンドが楽しいです。
●おっ。
石坪:楽しいですね。まさに「Milestone」で歌っているように、自分たちがやるべきことや自分たちができることが以前よりも鮮明に見えているんです。だからこそ、やらなきゃいけないこともより鮮明になっているし、何を目指すべきかということもそうだし。自分がやっていることがわかるから楽しいです。自分がやったことに対してレスポンスがあること、それはライブもそうだし、曲を作ることもそうだし。
●うんうん。
石坪:そうなれたのは、最初に言いましたけど視野が広がったということも、気持ちに余裕が出てきたことも関係していると思うんです。全部ひっくるめて楽しいし、よりポジティブな気持ちになれているので。
●そうか。自分のやりたいことが明確になっているから、例えば期待する反応が返ってこなかったとしても、それも糧にできるということですね。
石坪:そうですね。“じゃあ期待する反応を起こさせてやるぜ!”と思えるようになっているというか。
●すごくいい状態ですね。そんなバンドのモチベーションや意志が見える楽曲の中で、M-12「Sunflower」はちょっと雰囲気が違っていて。温度感のある牧歌的な雰囲気で、アルバムの最後にふっと力を抜けるというか。
石坪:この曲はメロディは僕が作って、歌詞は智恵が作ったんです。
高橋:勝手に、こういうプロポーズをされたらいいなと思って。
●あ、そういう歌詞ですか。願望?
一同:ハハハ(笑)。
高橋:映画のワンシーンというか。メロディを聴いたときに、日常のほっこりした中での感動のワンシーンを表現できたらなって思ったんです。自分の願望や妄想もめちゃめちゃ入ってるけど(笑)、たぶんそういう歌詞はボッチには書けないと思うんです。
●失恋の曲はありましたけどね(笑)。
石坪:ハハハハ(笑)。
高橋:それは私の個性っていうか、色でもあると思うんです。そう思って歌詞を書いてボッチに渡したら、採用されて。メロディを聴いたときに「私が歌詞を書いてもいい?」と言ったんです。
●なるほど。この曲がアルバムの最後に入ることによって、全体がグッと締まりますよね。
阿部:「Sunflower」を最後に入れた理由は特にないんですけど、全部の曲を並べて流れを考えたとき、自然にこういう曲順になったんです。幕開けとかは勢いがあった方がいいなと思ったから「Walk together」やM-2「Arrow」はすぐに決まったんですけど、最初は「Lifework」を最後にしようと思っていたんです。
●はい。
阿部:「Lifework」からまた1曲目の「Walk together」に戻る流れがすごくいいなと。そう思ってたんですけど、「Sunflower」の置きどころにすごく迷ったんです。それでいろいろと考えて、「Sunflower」という曲がいちばん映えるのはアルバムの最後じゃないかなと。
●毎回作品のタイトルには意味を込めているじゃないですか。今回のアルバムタイトルの“BLINKS”ですが、これはどういう理由で?
石坪:もともと僕らが下北沢SHELTERでやっているイベント名が“BLINKS”なんです。“バンドそれぞれのが持っている輝きたち”みたいなニュアンスでそういうイベント名にしたんですけど。
●はいはい。
石坪:で、今作が完成して、1曲1曲がそれぞれの輝きを放っている感じがしたんです。だからそういうテーマのタイトルにしようと思っていて考えていたんですけど、なかなかいい言葉が見つからなくて。それで考えてたら「そういえば俺ら“BLINKS”というタイトルでイベントやってたじゃん」と思って。
●自分たちのイベントに、今回のアルバムを表す言葉を使っていたと。
石坪:そうそう。「じゃあ“BLINKS”でいいじゃん」って。
高橋:他にも何個か候補の言葉はあったんですけど、“BLINKS”がいちばんしっくりきて。満場一致でしたね。
●ところで今回のMUSIC VIDEOはM-6「Left behind」で作ったんですよね。ダイナミックで力強いサウンドと流れるようなメロディ、エモーショナルなサビが印象的な楽曲ですが、どういう経緯でこの曲をMUSIC VIDEOにしようとなったんですか?
石坪:MUSIC VIDEO曲を決める会議で、スタッフも含めて全員意見がバラバラだったんですよ。
●あ、そうだったんですね。アルバムタイトルが表しているように、それぞれに違う輝きがあるから、意見もわかれたという。
石坪:その中で「Left behind」がいちばん伝わりやすいのかなって。それくらいですね。僕らとしては全部の曲に想い入れがあるので、どの曲がPVになってもよかったんですが。
●「Left behind」はストレートなキャッチーさがあるし、FOUR GET ME A NOTSらしさもよく出ていますからね。この曲で歌っていることも、今だからこそのマインドが込められていると思うんです。“The ones living today/We need to pass it on to our next generation(今を生きる僕らが/次世代に伝え、繋げていかなければならない)”とありますが。
石坪:そうですね。自分たちだけで進んでいって、それで終わりっていうのは何も残らないと思うんです。やっぱり進んでいくからには何かを残したい…それこそ後輩バンドとかにも何かを残したいし。
●はい。
石坪:それで後輩たちが自分たちを超えていって。横の繋がりは今までの9年間の活動でできたと思うんですけど、世代を超えた繋がりはまだまだ細いのかなって思うんです。だからそこも太くしていきたいんです。
●なるほど。仲間のことを歌っている曲「Rivals」もあれば、自分たちの次の世代について歌っている曲もあると。
石坪:あと、僕は去年身内を亡くしたんです。身内が死んでしまうっていうことが初めてだったんですよ。ピンピンしてたのに、おじいちゃんとおばあちゃんが去年立て続けてに亡くなってしまって、“あんなに元気だった人でも死んでしまうんだ”ということを目の当たりにしたんです。僕はその人たちからたくさんのものをもらって今ここにいるんだから、自分も後世に繋げないと何も残さないまま終わっちゃうなっていうことをすごく感じた1年だったんです。
●そうだったんですね。
石坪:自分にとっては大きな出来事だったので、そういう気持ちもありつつ「Left behind」を書いたんです。僕らの地元は千葉で、千葉LOOKというライブハウスでいちばんよくライブをやっているんですけど、地元バンドをもっと盛り上げたいんですよね。若い子でバンドをやっている子は多いんですけど、大学入ってすぐに辞めちゃう人とかも多くて。そのときに楽しければいいという感じで、「オリジナル曲を作ってツアーをどんどんまわろうぜ!」みたいなバンドってあまりいないんですよね。
●ああ~。
石坪:だからバンドの楽しさを伝えたり、何かきっかけになるようなことをできたらいいなと思っているんです。
●なるほど。おそらくボッチは、酒を飲んだらそういうことを熱く語るんでしょうね。
高橋:その通りです(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
石坪:同世代のバンドとの繋がりだけで盛り上がっているだけじゃあダメなんじゃないかなって思うんです。もっと上や下の世代と繋がって、自分たちを超えちゃうようなバンドがどんどん出てくればいいと思うし。だから下の世代にも手を差し伸べることができるバンドになりたいなと思ってます。
●だから“Left behind”(後に残せ)なんですね。…今作、めっちゃ意志詰めまくってますね(笑)。
石坪:ハハハ(笑)。そうですね(笑)。
高橋:意志と妄想が詰まってます(笑)。
●そして地元の千葉LOOKから始まるツアーはどういう感じにしたいですか?
石坪:今回のツアーは、主要都市はワンマンなんですよ。だから今作以外のアルバムからの曲も含めて、ロングセットでやれるので楽しみに来てほしいですね。
高橋:「Walk together」で歌っていることですけど、みんなと音でその空間と瞬間を共有したいと思います。
阿部:毎回そうですけど、自分たち自身も楽しみながらツアーができればいいなと思います。今作の新しい曲をライブでやるのはきっと楽しいだろうなと思うし、曲も増えたから1日1日が違うライブになるんじゃないかなと思います。
Interview:Takeshi.Yamanaka
Live Photo:O-mi