FACTがフルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作『burundanga』をリリースする。
衝撃の世界デビュー作『FACT』以降も、前作『In the blink of an eye』でもう1つ先へと進化した姿を見せつけた彼ら。昨年3月には別名義のクラブミュージックバンド・co3のデビュー作と同時に、ミニアルバム『Eat Your Words』を発表。1つ以前の作品でリスナーが抱いたイメージを置き去りにするかのように、5人は“変化”という呼び名の進化を遂げ続けてきた。今回の新作でもMichael “Elvis” Basketteをプロデューサーに迎え、ストリングスやスクラッチDJなど新たなサウンド手法を導入。
さらにはシンガロングパートが大幅に増したことで、これまで以上にフックを強めた楽曲はいずれも一瞬でリスナーを虜にする。常に新しい音を志向し、変わり続けることで変わらない何かを模索しているバンド、FACT。自らも現時点での最高傑作と認める本作に我々が心打ち抜かれた瞬間には、彼らはもう既に次の地平へと向かっていることだろう。
「みんなの考えていることが微妙にズレているからこそ、良い感じになるんじゃないですかね。微妙に違う視点から5人が同じゴールに向かっているというのが、FACTなんじゃないかな」
●今回の『burundanga』はフルアルバムとしては、2ndアルバム『In the blink of an eye』以来となりますね。その間にミニアルバム『Eat Your Words』をリリースしていますが、自分たちの中ではどんな位置付けの作品だったんですか?
Kazuki:デジタルの憂さ晴らしかな(笑)。最初は「FACTの曲はしばらく作れない!」と言ってco3(別名義プロジェクト)でデジタル・メインの制作をやることになったのに、やり始めたら「こっちも出来ない!」となって。単純に俺らのワガママです(笑)。
●FACTの曲が作れない時期があったというのは?
Kazuki:単純に、クリエイティブな気分になれないというか。芸術ってそうだけど、音楽も曲を作りたくなった時に作るものだと思うから。
Takahiro:出来ない時は出来ないよね。『In the blink~』のツアーをまわりながら曲作りもしていたんですけど、新しい曲が出てこなくなって。最初は気晴らしのつもりで、co3を始めたんです。でも遊びでやっていた時は出来たのに、ガチでやると曲が出来ない感じになったというか。
Tomohiro:バンドサウンドなら今までやってきているので、5人全員が良いと思う線引きが見えていると思うんです。でもデジタルのみでの制作は初めてだったので、そこの線引きがハッキリしていなかった。そうなってくると、みんなが迷路に入り込んじゃう感じで…。
●それがまたフラストレーションになった。
Tomohiro:でもそれがあって『Eat Your Words』が出来たし、今回のアルバムにもつながった部分はあるとは思います。結果的に当初の予定とは形態を変えて、FACTとco3を両方リリースさせてもらったんですけど、そういう自分たちの意志も聴いてもらえる恵まれた環境ではありますね。
Kazuki:"今年もアルバムを1枚作らなきゃいけない"と考えた時に、"曲はもちろん書けるけど、自分たちが満足していないものを世に出してもいいのか?"という部分で不安になって。そこはアーティストなら誰もが闘っている部分だと思うんです。だったら、少し期間を置いたほうがいいんじゃないかという話になったんですよ。
●自分たち自身が納得出来る作品を作るために、一度あえてFACTの制作から離れたというか。
Takahiro:リリースのスパンが短いと自分たちも追われている感じになっちゃうし、そうなってくると単純に苦しくもなる。良い意味で作業を1回ストップ出来るなら、そうしたかったんです。
Kazuki:本来は"作りたい時に作った曲が貯まったからリリースする"というのが理想だと思うんですよ。でもそれは現実的になかなか難しくて。
●〆切がないほうがやりやすい?
Kazuki:いや、それはないです。〆切がないならないで遊んじゃうから…(笑)。
Tomohiro:インディーズ時代からレコーディングの日程をまず決めて、そこに向けてみんなで走っていくイメージはありますね。
●今回のアルバムを作り始めるにあたって、どういう作品にするかのイメージはあった?
Takahiro:最初にコンセプトみたいなものは全くなくて。レコーディングまで時間がなかったから、コンセプトを考える前にとりあえず曲を作らないといけなかったんです。今回はまず俺とKazukiが2人でトラックを作って、それを他の3人に送って歌メロを付けてもらうというやり方でしたね。自然に出てくるものを次から次へと形にしていったんですけど、短期間にまとめてやったので曲の雰囲気にも統一感があるんだと思います。
Kazuki:2ヶ月くらいで、大体の曲を作ったんですよ。
●曲が出来ない時期もあった中で、そんな短期間によく作れましたね。
Kazuki:それはレコーディングの日程が決まっていたからです! (笑)。トラックを作っては3人に渡して…という感じで、そんなにじっくり確認する時間もなかったので大変でしたね。
Takahiro:俺とKazukiの2人でトラックを作った段階ではまだ完全に納得のいく状態じゃないものも渡したりしていて。でも3人から歌メロが付いた状態で戻ってくると、すごくカッコ良くなっていたりするんです。Hiroは"Aメロ~Bメロからサビ"とかいう流れじゃなくて、全パートをサビのつもりで歌メロを付けたと言っていましたね。
Hiro:そのくらいの意気込みでやっていました。「すごい!」と思わされる曲が2人からいつも届くので、それに負けちゃダメだなと。「これをどうやってもっと良くしようか?」と思うくらいのポテンシャルを持った曲がいっぱい届くので、どんどん自分のテンションも上がっていきましたね。そこからは「こうしたい、ああしたい」っていうことを四六時中考えるようになって。
●そこからは集中して一気に制作作業が出来た?
Tomohiro:でもちょうど夏の時期だったので夏フェスに出演するために出かけて、またスタジオに戻ってきて曲作りをするという繰り返しだったんですよ。
Hiro:曲作り中も週に1回くらいのペースでフェスに出かけなきゃいけなかったりして、家にほとんど戻れなかったのはつらかったですね。スケジュール的には今までのバンド人生で一番、心も身体もきつかったかな。
●きつい状況の中で苦しみながらも作ったと。
Hiro:本当にきつい時は何かにブチ当たりたいくらい煮えくり返っているんですけど、結果的にカッコ良いものが出来たのでまあいいかって(笑)。「きつかったけど、良かったね」と今は5人とも言える感じですね。
Kazuki:結果的にカッコ良いものが出来たら、不満もクソもないんですよ。全てが良い流れだったとしか思えないくらいで。
●曲作りの方法は今までと変わっていない?
Tomohiro:TakahiroとKazukiの2人がトラックを作ってきて、他の3人が歌メロを作るというのは前から変わらないですね。でも今回はそこを極端に、役割分担して作った気がする。
Kazuki:6~7割くらいは3人に歌メロを付けてもらって、それで足りない部分を5人で一緒に考えたりしましたね。
Takahiro:俺とKazukiの2人で合作する割合は増えたよね。メジャー1stアルバムの『FACT』を作った時と似た感じはあるかな。そのやり方を甦らせようという話は最初にあって、そこから2人で作っていったんです。
●前作『In the blink~』の制作時は、Eijiさんがケガでバンドを離れていたという事情もありましたが。
Takahiro:だから当時はドラムもMIDIで打ち込んだりしていたので、最初は人間味のない音になってしまったりもして。
●それをレコーディングではぶっつけ本番でEijiさんが叩いたんですよね。
Eiji:今回も似たような状況でしたけどね(笑)。
Kazuki:Takahiroと2人でトラックを作りながら、「これを叩けたらエッくん(Eiji)、マジで神だよね!」とか笑いながら言っていました(笑)。これを人力で叩くのかっていう…。
●作っているほうも無理だと思うくらいの、超絶なドラムが入っている(笑)。
Takahiro:でもエッくんは、それを否定しないんですよ(笑)。普通に「叩けるよ」って言ってくれる。
Eiji:ドラマーが考えるフレーズと、ギタリストが考えるフレーズは全然違うから面白いんです。2人が土台を打ち込んでくれたトラックを聴くと普通のドラマーなら考えないようなフレーズが入っていたりするので、「いただき!」っていう感じですね(笑)。
●難しそうなフレーズでも、上手く自分のものにしていっている。
Takahiro:M-5「tonight」なんかは「これ、叩けるのかな?」って言いながら、Kazukiと2人で笑っちゃっていましたけどね(笑)。
Eiji:俺からしたら「こう来たか!」という感じで、逆に燃えるんですよ。難しいんだけど、面白いからやりたいと思える。自分が1から考えている時間もなかったので、作業の効率的にも土台を作ってもらっているほうがありがたくて。
Kazuki:あと、やっぱりギターリフ先行で作っているから、それに合うドラムを考えているんですよ。そういうものを基本に置いておいたほうが、エッくんもやりやすいんじゃないかなと思って。
●トラックの段階で良いものや面白いものが上がってくるから、それに歌メロや各パートを乗せていく方も燃えるわけですよね。
Tomohiro:それは歌メロを付ける3人に共通しているんじゃないかな。いつもトラックを受け取った時点で「ヤバいね! じゃあ、これをどうやってもっとカッコ良くしようか?」となるから。
Eiji:録っている時もノリノリでしたからね(笑)。
●そういう制作時の雰囲気を毎回の制作で続けられるのはすごいと思います。
Eiji:今後もずっとそういう感じで続くんだろうなって思います。
Kazuki:今の俺らがやっていることは、1人じゃ無理なんです。みんなの考えていることが微妙にズレているからこそ、良い感じになるんじゃないですかね。みんなが全く同じことを考えていたら、"そこ"にしか行かないので。微妙に違う視点から5人が同じゴールに向かっているというのが、FACTなんじゃないかな。
●5人の微妙なズレが1つになって、FACTになる。
Kazuki:このバンドは5人でやっている意味合いがすごくあるというか。
Tomohiro:やっぱり苦しい時を5人で乗り越えられたから、今こうやって一緒に笑っていられると思うんです。しかも良いものが出来たから充実していて、みんなの気持ちが良いんですよね。
●苦しかった時期も超えて、アルバムの全体像が見えてきたのはいつ頃だったんですか?
Takahiro:楽器録りが全部終わった頃かな。歌を乗せる前くらいになって、「すごいものが出来てきた」という感覚があって。
Kazuki:M-1「FOSS」は終盤に出来たんですけど、この曲が出来た時は「きた!」という感覚がありましたね。これまでの作品にも入っている感じの曲調だけど、こういうタイプの曲はそこまでの段階では出来ていなかったから。これが出来たことで、アルバム全体も出来上がったという感覚はありました。
●新しいチャレンジをしていたりもする?
Kazuki:M-3「pink rolex」は新しいチャレンジをしているので、面白かったですね。Takahiroのタッピングがシーケンスっぽい音になっていたり、ダブの要素も入っていたりして、全体的に新しいイメージがあります。
●「FOSS」のイントロもシーケンスっぽいですが。
Kazuki:でも実はあのイントロはギターなんですよ。トリックに引っかかりましたね(笑)。今回はギターを色んなトリッキーな方法で録ってあるんです。
Takahiro:ギターの音を加工していたりはするんですけど、意外と打ち込みは少ないんですよ。『In the blink~』の時よりも打ち込みは減りましたね。
●そういう方針が最初からあったんですか?
Kazuki:単純にそういう音を入れなくても成立したんですよ。足りない音がなかったというのが、一番の理由で。
●今回は初めてスクラッチDJやストリングスを導入した曲もありますよね。
Takahiro:「pink rolex」にスクラッチDJを入れたのは、プロデューサー(Michael "Elvis" Baskette)の遊び心ですね(笑)。
Kazuki:M-9「crying」の終盤にストリングスを入れたのもElvisのアイデアですけど、ストリングス自体は最初から入れるつもりでしたね。
●M-6「polyrhythm winter」ではストリングスの他に鉄琴の音も入っています。
Kazuki:この曲の鉄琴も最初からイメージがあって。切なさとかわいさが共存している感じが良いなと思って、「FOSS」でも鉄琴を使ってみました。
●M-7「狂」はタイトル通り、狂った感じの曲ですが。
Takahiro:日本語のタイトルは初めてなんですけど、「狂っているね」と言って仮タイトルにしていたものをそのまま採用した感じですね。
Kazuki:「ギターで喋ろうよ」っていうアイデアが始まりだったので、その時点でおかしいですからね(笑)。この曲を聴いて「ヤバい! おかしいじゃん」と言っているヤツらに対して、歌詞で「You are the crazy ones not us(狂っているのはお前のほうだ)」と言っていて。そういう遊び心と、今の世の中とかに対する風刺的な意味合いも含んでいますね。
●遊び心といえば、M-11「1-4」もそうですよね。過去の作品から続いているシリーズですが、「1-1」から始まって「1-4」はゲームならそろそろボスが出てくる頃かなと。
Eiji:まさにそうです。「1-」シリーズは今まで別のメンバーが作曲を担当していたんですけど、今回初めて自分が担当したんです。今までのシリーズがすごく好きだったので自分もそれに匹敵するようなトラックを作らなきゃいけないと思って、メンバーのイメージもリサーチしつつ作りました。
●これで1面はとりあえずクリアした?
Kazuki:それはわからないです(笑)。誰にも予想がつかないですね。
Eiji:ボスに勝ったのか負けたのかもわからないし、次はどこのステージに行くのかもわからないんですよ(笑)。
●(笑)。今作は今まで以上にシンガロングパートが増えたのも特徴だと思いました。
Hiro:やっぱりライブでみんな一緒に歌ってもらいたいという気持ちはあるし、音源として聴いた時にアガるようにという気持ちもあって。作っている段階で"歌えるアルバムになりそうだな"とは思っていたから、その段階でどんどん取り入れていきました。そのパートを作っている時は楽しいし、聴いた時も「カッコ良いな」と素直に思えたから必然的に多くなったのかな。
Kazuki:音源でもライブでもシンガロングパートがあると、勢いが付きますよね。今作はシンガロングが入っている場所もベストだと思うし、カギになっている部分かなって。
●各フェスの大会場でライブをした経験も、シンガロングパートが増えた一因かなと思ったんですが。
Hiro:そこを反映している部分もありますね。フェスに出た時とかに他のバンドを観て「みんなと一緒に歌えるのって楽しいな」と感じていたので、自分たちも取り入れようと思ったんです。海外ツアーで一緒にまわったバンドのライブを観ても、お客さんが一緒に歌っているんですよね。でも俺らの曲は英詞なので日本人のお客さんが一緒に歌うのは難しかったりするから、「ウォー」っていう掛け声とかを取り入れていて。
Kazuki:「お客さんの声も、俺らのライブのサウンドにしちゃおうぜ」っていうことだと思うんですよ。ライブではお客さんにも参加してもらって、みんなで1つのライブを作るほうが俺らも楽しいし、お客さんも気持ちいい。そういうイメージにまで今回のアルバムはいけちゃうんだなって思いますね。
●アルバムタイトルの『burundanga』に込めた意味とは?
Hiro:今回のタイトルは「花の名前にしたいね」という話をしていた時に、ちょうど観ていた映画があって。"burundanga"っていうのは花から抽出して出来る薬物なんですけど、映画の主人公がその匂いを嗅いだ瞬間に倒れちゃうシーンがあったんです。そのくらいのインパクトが今作にもあるということを伝えたかった。
●人間の意志や記憶を奪う作用があるという、危険な薬物なんですよね。
Hiro:このアルバムには俺らの暗い部分というか"毒"みたいな部分も含まれているけど、逆にシンガロングとかのポジティブな部分があったり、すごくキレイな部分もあって。そういうことを1つの花で表現出来たらなと思って、このタイトルにしました。
Kazuki:単純に言葉の響きもカッコ良いからね。毒があって美しいものって、良い部分でも悪い部分でも魅力があると思うんですよ。俺らのそういう部分を、みんなが良いふうに解釈してくれたらうれしいなって(笑)。
●即効性もあるし、毒も含めた自分たちの魅力が全部表現されているというか。
Tomohiro:やっぱり自信作ですよね。周りの助けも借りながら5人で創り上げてきたものを、一番良い状態で録ることが出来たと思うんです。またこの先は変わっていくと思うんですけど、この時点では出しきった感じがあって。自分たちで何度聴いても飽きないくらいの作品ですね。
Kazuki:単純に、最高傑作だなと。今までで100曲以上は書いてきましたけど、今作が一番良いと思います。
Takahiro:すごいものを作ったなという気持ちと同時に、この曲をライブでやらなきゃいけないというプレッシャーもあって(笑)。完全に再現することは出来ないし、ライブはライブで音源とは別物だから、その空間を楽しみに来て欲しいですね。
Eiji:来てくれたら、最高なものを与えますよ。とにかく今作をみんなに早く聴いてもらいたいんです。もう明日発売しちゃいましょう! (笑)。
Interview:IMAI