激情的かつエモーショナルなサウンドと破壊力のあるライブパフォーマンスで、地元・大阪のロックシーンで注目を集めつつある3ピースバンド、DAM。まだメンバーが10代半ば〜前半だった2006年に結成し、BRAHMANやkamomekamomeとも共演を果たすなど精力的なライブ活動を展開してきた。自主制作でリリースした4thデモは500枚を超えるセールスを記録した彼らが、いよいよ待望の1stミニアルバムをリリース。激しいサウンドの中でも耳をしっかりと捉える強い言葉と歌を軸に据えた今作は、大いなる広がりの予感を漂わせている。
●2006年に結成してから何度かメンバーチェンジを経て、現在の3ピースになったということですが。
駿平:でもギターが何度か入れ替わっているだけで、この3人はずっと一緒なんです。
集:僕と駿平が16歳くらいの時に結成しましたね。
James:その頃、僕はまだ13歳とかでした。
●そんな若い頃に結成しているんですね! 元々の出会ったキッカケは?
駿平:Jamesはクリスチャンで、子どもの頃から教会に通っていて。僕も小学校の時にクリスチャンの同級生から草野球に誘われて、教会に行ったことがあったんです。そこで出会ったお兄さんたちがカッコ良くて優しかったので、そこから自分もよく教会へ遊びに行くようになったんですよ。その教会にアコギやドラムとか楽器が置いてあったので、自ずとJamesと一緒に何かやろうという話になった感じですね。
●教会での出会いが、バンド結成につながったと。
駿平:その当時はまだ遊び程度だったんですけど、中3の時にそろそろ本気でバンドをやろうと思って。Jamesが所属していた吹奏楽部の先輩に集がいて、この3人でバンドをやろうとなったのが2006年のことですね。
●当初はどんな音だったんですか?
駿平:3人で結成した直後にギターも加わって、最初は4人編成でBRAHMANのコピーバンドをやっていたんですよ。僕は小学生の時に初めて聴いてから今までずっと、世界で一番好きなバンドはBRAHMANなんです。バンドのボーカルをやりたいと思うようになったのもBRAHMANを聴いてからで、そこから色んなバンドを聴くようになって今に至るという感じですね。
●駿平くん以外もそこのルーツは同じ?
集:そういうわけではないですね。僕は駿平に教えてもらって、BRAHMANを聴くようになった感じで。元々はTHE BLUE HEARTSがすごく好きだったんですよ。
James:僕は集の影響で、THE BLUE HEARTSをずっと聴いていて。それで僕はバンドをやりたいと思うようになったんです。“こんなにシンプルでカッコ良いバンドがあるんだ!”と思って、ベースを始めましたね。
●オリジナル曲をやり始めたのはいつ頃から?
James:2回目のライブでは、もうオリジナル曲をやっていましたね。
駿平:1年くらいは、オリジナルとBRAHMANのコピーを混ぜてやっていました。少しずつオリジナル曲が増えていく度に、コピーが減っていって。それを繰り返している内に、全曲オリジナルになったという感じです。でも当時はまだ、聴いた人に“BRAHMANが好きなんやろうな”って思われるような曲ばかりでしたね。
●そこから今のような激情エモ的な音楽性になってきたキッカケは?
駿平:僕らは“こうしたい!”みたいなものがなかったので、ちょっとずつ変わっていった感じで。ずっと同じメンバーでやっているので、新しいメンバーが入ったりして急に音楽性が変わるわけでもなく、本当に少しずつ進化してきたんですよ。初めはBRAHMANの要素もありつつメロディックっぽい感じで、その後にenvyとかの影響で激情ハードコアっぽくなって、そこから今みたいになって…。これまでやってきた音楽も、時期によって全然違うんです。何か1つにとどまったことはないですね。だから初期の音源を聴いたら、“誰やねん?”ってなると思います。
●1枚1枚で作風が違う(笑)。過去に自主制作で、デモ音源を4枚リリースしているんですよね。
駿平:今作のM-3「You must be by my side」は2ndデモに入っていた曲で、M-2「肯定する事によって明日を見出す思想」、M-4「それ(音楽)は物事を美化しようとする発想」、M-5「The sinking sun」は4thデモに入っていた曲ですね。3rdデモの頃は激情ハードコアで1曲15分くらいあったので、入っていません(笑)。
●激情系の要素も入っていながら、あくまで“歌”が軸になっているのがDAMの大きな特徴だと思いました。
駿平:やっぱり色んなバンドの音源を聴いてみても、歌と叫びがどっちも上手いバンドのほうが絶対にカッコ良いんですよね。だからDAMでは叫びでも、ちゃんと言葉が聴き取れるようにしていて。そのあたりには気を遣って作っています。
●歌詞にポジティブな言葉が多いのも特徴かなと。
駿平:暗い内容の歌詞を歌っていた時期もありますけどね。僕は何にでも影響を受けやすいところがあるので、そういう歌詞だと自分自身も前に進めないんですよ。歌詞の中では“肯定する”とか“正しい”ということをよく言っているんですけど、“前向き”というからには聴く人を前に進めないといけないと思うんです。
●歌詞がそういうふうに変わるキッカケは何かあったんですか?
駿平:東日本大震災があってから、僕らは石巻市の小渕浜というところによく行っていくようになって。最初はボランティアとして行ったんですけど、そこの人たちが「ボランティアとしてじゃなく、ただ遊びに来て欲しい」と言ってくれたんです。僕らが行くと本当に手厚く歓迎してくれるし、とにかくみんなの元気がすごい。家をなくして仮設住宅に住んでいるような人たちですら、メチャクチャ元気で。TVや新聞だけではわからないと思うんですけど、そういうことを知って“これはもう前向きにしないといかんな”と思ったんですよ。そこから前向きな歌詞を書くようになりましたね。
●震災後に東北へボランティアに行ったことが、そもそものキッカケだった。
駿平:震災が起こった時にみんな何かしら思うところはあったんだろうけど、僕らも色々と考えて。そういう時に僕の一番好きなBRAHMANが最前線で動いていたので、TOSHI-LOWさんにどうしたらいいか訊いてみたら「現地に行ってこい」と。それで紹介してもらった場所に行って、そこで自分のやりたいことを考えたんです。初めて行った時に僕らが手伝ってプラスになったことなんてたいしたことはなくて、逆に向こうの人たちからもらったもののほうが多かったんですよ。
●逆に元気付けられたというか。
駿平:すごく良くしてもらっているだけで自分たちは何もできていないと思って、その最後の夜に泣きそうになったんです。でもそこで“自分たちも何かやらなくては”というふうになって、使われなくなったアコギやカホンを集めて現地の子どもたちに贈ったりして。でも本当に僕らがやっていることは、ボランティアじゃないんですよ。向こうに行って何をやるべきか考えて、やりたいことをやっているだけなので。今はもう家族みたいなものというか、ただ会いに行きたいという感じですね。
●そういう経験が歌詞にも昇華されている。
駿平:その経験がかなりデカかったと思います。もうたぶん前向きな歌詞しか書かないんじゃないかと思っているくらいで。僕自身も躁鬱が激しい人間なので、自分のことを肯定して前に進めている感じですね。“自分のことも相手のことも肯定して、前に進みましょう”っていう姿勢なんです。
●“肯定する”や“正しい”という言葉は、今作のキーワードになっている気がします。
駿平:自分のことも肯定するし、メンバーみんなのことも肯定していて。どんなことを言われたとしても、生きているからには絶対に“正しい”と思うんですよ。今までの人生の中で良いことも悪いこともあったから、今があるわけで。生きている限り、それは正しいと思うんです。自分はそういうことを歌って自分自身を前に進めているので、僕らの曲を聴いた人たちも前に進めるようになったらいいなという意味で、こういう歌詞を書いています。
●メンバーも同じような考えを持っている?
駿平:2人が僕と全然違うことを考えていても、それはそれで良いと思うんです。「ここはこうだろ」と僕が言って2人がそういう気持ちになったとしても、それは嘘だから。一番初めに感じたことが大切だと思うんですよ。同じことを考えている人同士がバンドを組んでも、全然面白くない。タイトルの『a.b.cの交点』というのはたとえばaが僕でbが集でcがJamesだとしたら、その3つの交点ということで。3つの重なり合うところがDAMなので、もし3人が全然違うことを考えていたとしてもそれで良いんです。
●実際に違う部分も多い?
駿平:でも芯は一緒ですね。そこはブレない。それが交点になって、6年間も一緒に続けているわけなので。やっぱり僕が「ここだけはこうやな」と思っている部分に対しては、2人も「そうやな」と言ってくれるんですよ。それが違っていたら一緒にできていないと思う。「東北に行って何かしたい」と僕が言った時も2人は「自分たちもそう思う」と言ってくれたし、そういうところでつながっているなというのは感じますね。
James:間違いなく家族の次に一緒にいる時間が長い人たちなので、考え方が違うなんて滅多にないんですよ。一緒にいて培ってきたものがデカいですね。
●今作には、そうやって一緒に培ってきたものが詰まっている。
駿平:初めての全国流通作品なので、これまでの6年間全てをぶつけるイメージでしたね。だから勢い重視でいきました。レコーディングも一発録りで、歌も生っぽい感じをできるだけ出そうとして。
James:できる限りライブ感を出したかったので、必要以上にレコーディングということを意識せずに、いつもスタジオで練習している感覚で今の自分が持っている力量を発揮することだけを考えました。
●一発録りだったんですね。
駿平:感覚が命かなと思って。僕らのグルーヴ感はクリックを使っていては出せなくて、全員で一斉に音を合わせないと出ないんですよ。
James:ちょっとした“間”とかもクリックでは出せないし、実際にお互いの姿を見て動きや息遣いを感じないと録れないものだから。
集:逆に言えば、一発録りしかできなかったんですよね。
●ずっと同じ時間を共有してきた3人だからこそ出せるグルーヴがあるのでは?
駿平:それは絶対にありますね。良くも悪くも、他のバンドには出せないグルーヴだと思います。
●今作は独自の進化を遂げてきたDAMというバンドの、1つの結晶とも言える作品なんでしょうね。
駿平:成長っていうのは右肩上がりに直線的な感じで進むものじゃなくて、円状に周回しながら徐々に広がっていくものだと僕は思っているんですよ。だから直線距離ではそんなに進んでいなくても、半回転はしていたりする。僕らはそういう変化をしていくバンドだと思っているので、その意味でも今回やれることは全部出し切った感じはありますね。
James:M-6「約束」やM-7「Wonder」みたいな初めて音源化する曲については自分でも前からCDで聴きたいと思っていたので、それができたことがまずうれしいんです。あと、これまでのデモは作り終えた後に「ここをもっとこうすれば良かったな」と思う部分があったんですけど、今回は全然なかったんですよ。それは全部やりきれたということだから、やっぱり間違いないものができたのかなと思います。
集:今回の音源とライブとでは違うように感じたりもすると思うんですけど、どちらも僕らにとって今のベストのレコーディングであり、今のベストのライブだから。聞こえ方は変わっていても、やろうとしていることは一緒なんですよね。
Interview:IMAI