京都を中心に活動する、和菓子職人、家庭科教師、手袋職人、配達プロという謎の肩書きを持つ4人から結成されるダンサブルハイパーテンションインディーロックバンドCUSTOM NOISE。
80’sニューウェイブ+USインディー+ファミコンミュージック×祭り囃子という、和洋折衷で欲張りな彼らの1stフルアルバム『Gimmick!』が完成した。随所に散りばめられた遊び心と、綿密に計算されたサウンドに、勝手に体が動き出す!!
●最高に踊れる1stアルバム『Gimmick!』の発売、おめでとうございます。一時期、ライブ活動を休止されていたこともあったようですが。
安齋:今年の4月にVo./G.の六車が地元の香川県に帰るということで、ライブ活動を中止していたんです。
●では今作の収録曲はいつ作ったんですか?
安齋:ほとんどがライブでも披露していた曲だったので、みんな演奏できる状態だったし、レコーディングに向けてそれぞれ個人で練習していました。
●ライブで叩き上げられた曲を形にしていたと。
ONO-T:このアルバムは名刺代わりなので、結構前の曲も収録してベスト盤に近いものをみんなに聴いてもらおうと思ったんです。
村上:基本一発録りで、ほどよい緊張感もありつつ楽しくレコーディングできました。
●聴いていて音の生々しさを感じましたし、だからこそ"踊れる音"になっているなと。
安齋:今までいろんなレコーディング形式を試してきて、東京で各パートごとにレコーディングしたこともあるんですけど、どうもしっくりこなくて。今回はそんな経験もふまえて、信頼しているエンジニアにお願いしました。
●一発録りの緊張感はありました?
安齋:緊張感はそれほどなくて、冷静なライブみたいに淡々とやれましたね(笑)。真ん中をいきたかったんですよ。いわゆる音源っぽいフォーマットがきちっとしたものとライブ感とのちょうど中間を狙って作りました。"いっせいのーで"で合わせるんですけど、気持ちはすごいクールな感じ(笑)。
●なるほど。楽曲はほぼ全てを安齋さんが作られているんですよね。バンド結成時から今のサウンドを目指していたんですか?
安齋:フロントの3人は大学のサークルが一緒で、最初はCUSTOM NOISEではなく、いろんなコピーバンドを経てオリジナル曲をやり始めました。ちなみに一番影響を受けた音楽はTelevisionという70年代のニューウェイブのバンドです。
ONO-T:結成当時は"ジャンルに囚われんと何でもやるようなバンドになろう"って言ってましたね。初期の楽曲は雰囲気もバラバラでした。
●コピーバンド時代はどんなアーティストの曲を?
安齋:Nirvanaやeastern youth、Buckcherryとか。
●今とは方向性も違いますし、意外ですね。
安齋:いろいろ経て、今のCUSTOM NOISEが出来上がっているんです。さっき言ったTelevisionは、アンサンブルが凄いんですよ! 彼らみたいに全パートが立つような音楽をしていこうよっていうコンセプトを持てるようになったし、今では影響を受けた音楽を自分たちなりにアレンジしてやっています。
ONO-T:でも一番影響を受けているのはファミコンミュージックです(笑)。「グーニーズ」とか「いっき」の頃の、8bitの三和音!
●どの辺りに影響を受けているんですか?
安齋:僕らは各パートのアンサンブルに重点を置いていて、それが簡潔に無駄なく出ているのがファミコンミュージックだなと。
ONO-T:フレーズ作りでも影響を受けているかもしれません。
●ファミコンの音やオブジェクトって"限られたデータ要領の中で、いかにユーザーを騙すか"なので、まさに"Gimmick"だと思います。
一同:おお~! さすが上手に繋げますね(笑)。
安齋:ファミコンミュージックってみんなが口ずさめるキャッチーさがあるし、人によって聴こえているパートが違うところも面白くて凄いと思う。
●楽曲のユニゾンフレーズは、2本のギターの音色も微妙に違うし緊張感があって、ちゃんと計算されているなと感じました。
安齋:僕らもファミコンみたいに実は凄いんだぞと(笑)。あと音の長さにはこだわりがあります。スタジオで一番出てくる言葉が"音符の長さ"ですからね。
●その辺りが"踊れるCD"になっているゆえんだと思うんです。今作の資料にも"ハイパー盆踊りポップ"とあるし、ライブで踊っているお客さんが目に浮かびました。
安齋:影響を受けた音楽は洋楽なんですけど、日本らしさを出したいというテーマもあるんです。簡単に言うと、いいとこ取りをしたいんです!
●欲張りですね(笑)。
安齋:ライブ感も、音源らしさも、日本的な部分もあって欲張りな内容になっています!
ONO-T:できる限り歌詞も日本語にこだわっています。
●歌詞も響きや音使いが面白いですよね。それよりも、みなさんの肩書きが気になるんですが(笑)。
ONO-T:凄さを出そうとしてプロとか書いてますけど、仕事しながらバンドをしているっていうだけです(笑)。ライフワーク込みでやっていける方が、今の時代は動きやすいと思いますね。
●なるほど。曲タイトルも面白いですよね。
安齋:タイトルで曲のイメージが連想されると思っているので、イメージを膨らませられるようなインパクトのあるものを付けるようにしています。だから2つの単語をくっつけてみたり、歌詞の内容と一致していないこともあるんです。ただ"面白いじゃん"って(笑)。
●M-3「いろはにほへと」はそのセオリーから外れますが?
ONO-T:まだライブでもあまり知られてない新曲で、これが一番『Gimmick!』に繋がっていると思います。
安齋:歌詞カードを見なきゃ分からないんですけど、文節の頭をとっていくと、"あいうえお作文"になっているんですよ。
ONO-T:攻略本みたいやな。
●まさにファミコンだ! 今作の中で一番アグレッシブな曲ですね。
安齋:ライブでの反応が楽しみな曲だし、自信がある曲です。
●ライブというとM-6「monophonic world」は盛り上がりそうなロックを感じる曲だし、ドラマがありますね。
安齋:演奏していて一番盛り上がりを感じる曲ですね。
村上:途中で転調するし、ビートも祭り囃子調に変化していくし、ライブでは本当に盛り上がる曲です。
安齋:お客さんがそこを待っている感じがすごい伝わってきます。
●歌詞にせよリズムやフレーズにせよ、心から音楽を楽しんでいる感じが伝わります。
安齋:遊び心を真剣に繋いだバンドなんです。他のバンドとは感覚が違うかもしれませんね。今は純粋に作品が出来たという事が嬉しいんですけど、やっぱり"こうすればよかった"っていう部分も個々であると思います。でもそれはその瞬間の真空パックなので大事にしたいし、ライブに力を入れたいから、今後どう聴かせていけるかが楽しみです。
ONO-T: 通勤中にcoldplayとか聴いているんですけど、途中で『Gimmick!』に換えてしまうくらい聴いています(笑)。ジャケットにも"Gimmick!"が詰まっているので、アートワークも含めてひとつの作品として楽しんでもらいたいですね。
村上:録ってすぐは手直ししたい部分があったけど、出来上がって改めて聴いてみたら"かっけーやん!"って。いい環境でいい雰囲気の中レコーディングできたのが大きいですね。早くライブがしたいです!
Interview:上田雄一朗
Assistant:Hirase.M