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CoolRunnings

人を支えるために鳴らし始めた音楽で、彼らは大きく成長した

 “響心、支えになる音楽”をコンセプトに活動を重ねてきたCoolRunnings。前作となるミニアルバム『HYBRID HUMAN』をリリースして以降、彼らはライブを重ねながら自己を見つめ直し、1曲1曲を今まで以上の時間と労力を掛けて練り上げた。絶望も、失望も、悲しみも、葛藤も…様々な苦悩とネガティブな感情を乗り越えて突き進んできた彼らは、音楽の大切さ、そしてCoolRunningsというバンドの希望を確信して4枚目のミニアルバムを完成させた。人を支えるために鳴らし始めた音楽で、彼らは大きく成長した。

Interview

「ライブハウスに集まってみんなで作っている空間には一切敵がいなくて、絶対にひとつ、全員が共有している感情がある」

●今年3月にシングル『Locus / ライトハンド』をリリースしましたけど、その前の作品となるとミニアルバム『HYBRID HUMAN』(2010年1月)まで遡りますよね。『HYBRID HUMAN』以降の1年強という期間はどういう流れだったんでしょうか?

鈴木:正直に言うと、『HYBRID HUMAN』を出したとき、自分たちが思っていたほど反応がなかったんです。

●思っていたほど"伝わっている"とか"届いている"という実感がなかった?

鈴木:そうですね。そこで"何が足りないんだろう?"と色々考えて。で、『HYBRID HUMAN』までは自分たちが思うままに曲を作っていたんです。"練る"というより感覚的に曲を作っていたというか。

露崎:うん、そうだね。

鈴木:だから『HYBRID HUMAN』以降は、1曲1曲に集中して作っていったんです。でもなかなか思うように曲ができなくて、リリースまでに時間がかかってしまった。ライブも、まだまだ表現しきれていないという自覚があったから表現方法とかも見つめ直していたというか。

●なるほど。

鈴木:更に『HYBRID HUMAN』以前の流れも関係しているんです。

●というと?

鈴木:何度かのメンバーチェンジを経て今のメンバーになったのは2008年なんです。「このメンバーでずっとがんばっていくぞ」とバンドがようやく固まった時期だったんですけど、ちょうどその直後にオーディションがあって、そのオーディションが上手くいったことが逆にバンドにとっては良くなかったというか(※ロッキング・オン主催のオーディション"COUNT DOWN JACK"で優勝し、"COUNT DOWN JAPAN 08/09"に出演した)。

●一見チャンスを手にしたように思えますけど…。

鈴木:今から考えたら時期尚早だったなって。もちろんチャンスをいただいたことはすごくいいことだったんですけど、あのイベントに出たことによって周りから"すごいんだな"という見られ方をして。でも実際の僕らはまだまだ未熟で、対バンしたバンドも僕らのことを"なんだ、大したことねぇな"って思ったと思うんですよ。そういう未熟なライブをしていたということは自分たちでもわかっていて、それが悔しくて悔しくて。

●なるほど。

鈴木:そういう流れがあって、自分たちなりにがんばって作った『HYBRID HUMAN』だったんですけど、それでも思うように反応がなくて。"まだまだ全然ダメだ!"って心の底から痛感したんですよ。今から考えたら、以前は甘えていたんですよね。"COUNT DOWN JAPAN 08/09"に出たことによってちょっと天狗になっていたのかもしれない。

露崎:それはあるね。

鈴木:今から思ったら、当時の僕らはもうクソ野郎ですよ(笑)。そのときの後悔が今の僕たちを作っているというか。今になって、やっとCoolRunningsとして表現したいものが見えてきた感じがしています。

●2008年にこのメンバーになってからの3年間は、簡単に言えば苦悩の3年間だったと。

鈴木:そういうことです(笑)。

露崎:そういう流れがあったので、最近は曲作りにすごく時間がかかっていて。

●何に時間がかかってるんですか?

露崎:昔に作った曲よりも高いクオリティの曲を作ろうという意識があって。その分、アレンジとかで新しいアイディアを試したり。

鈴木:それにアレンジもそうですけど、時間がかかっているいちばんの理由は、僕自身が原曲を作ってくるペースが明らかに遅くなってるという(笑)。

露崎:特にメロディラインを作るのに苦労してるね。

鈴木:うん。僕が歌メロとコードを作ってきてスタジオで合わせる、っていう感じで曲を作ってるんですけど、僕が歌メロとコードを持ってくるまでにすごく時間がかかってます。そこそこいい曲だったらすぐにできるんですけど、今までの後悔もあって"本当にいい曲を"って自分の中のハードルを上げたので、そのハードルを越えることに苦労するというか。

●曲作りは自分との闘いなんですね。

鈴木:まさにそうですね。どんどん強敵になってきているんですけど(笑)。

●どういうシチュエーションで作ってるんですか?

鈴木:だいたい衝撃的なことがあったときです。例えばすごく感動したときとか、絶望的なことがあったときとか、本当にヘコんだときとか。何かしら心が大きく動かないと曲は出てこないですね。…嬉しいときはあまりないかな? 僕たちは"聴いた人を支える"ということがいちばんのコンセプトなので、本当に落ち込んだときに言って欲しい言葉だったりとか…自分が本当に落ち込んだりしたときじゃないとそういう人の気持ちってわからないじゃないですか。

●なるほど。今までの話は今作『STAGE』の曲を聴けばよくわかります。今作は自分たちのことをモチーフに歌っている曲が多くて、しかもその中で"理想と現実"というものに直面していたりする。だから今作を聴いて、『HYBRID HUMAN』以降色んな苦悩や葛藤を乗り越えて活動してきた、ということは想像がついたんですけど(笑)。

鈴木:そうですね(笑)。特にM-3「cause」とかはモロですね。

●「cause」は本当に絶望してますよね(笑)。"情けないこんな弱い自分には誰も救えない/守れない"という歌詞とか。

鈴木:この曲は自分自身がすごく絶望したときに、"そもそもこんな精神状態になっている人を立ち直らせたいと思って僕は音楽をやっていたんじゃないか!"ということを思い出して作ったんです(笑)。

●M-4「ライトハンド」もそうですよね。"憧れてた世界は思ってたより綺麗じゃなくて"とありますけど。

鈴木:思いっきり音楽のことですよね(笑)。華やかに見えて実際は…ということなんてどの世界にもあることだと思うんですが。

●でもそれは別に珍しい話じゃなくて、どんな世界でも経験を重ねれば一度はそういう壁にぶつかると思うんです。今までの活動の中でそういう壁にぶつかりつつ、CoolRunningsが今も音楽を続けている理由は何なんでしょう?

鈴木:自分にとって音楽がいちばん正直に自己表現できる場所っていうか。音楽がなくなったら自分じゃなくなってしまうっていうくらい大きなものなんです。ちょっと僕は夢見がちなところがあるんですけど(笑)、どんなに絶望しても光がなくならないっていうか。

●音楽がそう思わせてくれるんですか?

鈴木:そうですね。本当に限界を感じたらたぶん辞めると思うんですけど、その限界はまだ見えていない。

露崎:まだまだイケるって思うよね。

鈴木:うん。

●めちゃくちゃ苦しめられるけど、でも希望を感じさせてくれるのが音楽だと。

鈴木:そうですね。しかもさっき言ったようにコンセプトが"絶望している人を支える"なので、自分が絶望したときほどそのコンセプトが自分自身に発揮されるんですよ。辞めようと思っても"でも辞めようとしているヤツのために音楽やってるんだろ?"っていう感じでループするので、辞めるきっかけもない(笑)。

●自家発電みたいなもんですね(笑)。

鈴木:アハハハ(笑)、そうですね。やっぱりどこかで夢見がちなんだと思います。理想主義者というか。奇跡は起きるっていう話をすごく信じてしまうんですよ。

●というと?

鈴木:もういい大人なんですけど、信じれば必ず実現すると思っていて。極端な話、世の中に空を飛べる人はいないですけど、それすらも「いや、信じ続ければもしかしたら…」みたいな(笑)。

●アハハハハハ(笑)。夢見がちだ(笑)。

露崎:俺は全然そういう人間ではないんですけど、でも俊と一緒にいたらそういうことも信じられるようになるんですよ。俊は確かにちょっと夢見がちだけど(笑)、一緒にいたら夢が叶えられるような気になるんです。

鈴木:そんな話、初めて聞いた(笑)。

●そういう形で気持ちを共有できるって素晴らしいことですよね。思い込みなのか何なのかわからないけど(笑)、鈴木さんの熱量にメンバーが巻き込まれていると。

露崎:そうですね(笑)。

鈴木:僕は本当に信じてるんですよ。心の底から"イケる!"って思ってる。それが中途半端だったらメンバーも巻き込まれたりしないと思うんですけど、「夢や希望は絶対に掴める!」と強く思っている。

露崎:だから周りにいるメンバーもいつの間にか「あれ? もしかしたら本当に掴めるかもしれない」って(笑)。

一同:ハハハハ(笑)。

●それがバンドの原動力なんですね。なんとなくCoolRunningsというバンドの本質を理解できたような気がします。それと、今作は苦悩や葛藤があってそれを乗り越えようとする指向性の楽曲がほとんどですけど、最後に収録されているM-6「STAGE」を聴いたとき、CoolRunningsというバンドが音楽をやっている理由がこの曲ですべて表現されているような気がしたんです。

鈴木:はい。

●CoolRunningsというバンドの根本的な想いがすごく伝わってくるというか。アルバムからは今までの苦悩が見えるけど、こういう曲を歌えるということが素晴らしいなって。なんか感動しました。

鈴木:その話を聞いて感動して、僕の鳥肌が立ちまくってるんですけど(…と産毛が立ちまくった両腕を見せる)。

●うわっ! 気持ち悪っ!

一同:(爆笑)。

露崎:ビンビンに立ってる! (笑)

鈴木:あまりにも想いの通りに伝わってたので、感動しちゃって。すぐ感情が出ちゃうんですよ(笑)。

●暑苦しいですね(笑)。でも「STAGE」は象徴的な曲だと思いました。

鈴木:ライブという場は、そこにいる全員がひとつのものを共有しているじゃないですか。ステージに立っているときってそういうことをすごく感じるんですよ。普段生活していると、敵というか嫌いな人も当然いるし、辛いこともある。でもライブハウスに集まってみんなで作っている空間には一切敵がいなくて、"楽しい"とか"悲しい"っていう感情は色々あると思うんですけど、絶対にひとつ、全員が共有している感情があって。

●うんうん。

鈴木:だから僕らにとってのステージは、何の壁もなくみんなと繋がることができる場なんです。

露崎:今まで色々と悩んだりしましたけど、結局バンドを続けている理由って、ステージに立ったときに"支えられてる"っていう感覚があるからなんですよね。

鈴木:聴いてくれる人を支えたいと思って音楽をやっているけど、僕らは僕らで聴いてくれる人たちに支えられていて。

露崎:支え合ってるんだよね。

鈴木:そうそう。だからもう"バンドとファン"というより"仲間"みたいな感覚なんです。「STAGE」はそういうことを思いながら作りました。

interview:Takeshi.Yamanaka

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