昨年ライブのMCで2020年2月開催を発表し、遂にその全貌が明らかになったcoldrain主催フェス“BLARE FEST. 2020”。“全国どこにも負けない異常なラインナップを地元に集めたい”という想いで2010年から始まった“BLARE DOWN BARRIERS”は、colrainにとって自分たちの「居場所」を作る作業であると共に、国内外の仲間たちから学んできたマインドを具現化する場所でもあった。2007年に名古屋で結成し、ラウドシーンを起点にして目覚ましい成長を遂げ、今や国内のみならず海外でも幅広く活動する彼らの現時点の集大成が詰まった“BLARE FEST. 2020”の核心に迫る全メンバーインタビュー。
「“BLARE DOWN BARRIERS”の初年度はすごいメンツなのにチケットが売り切れなかった。自分たちの中では自信を持って開催したけど、思っていた以上に厳しい現実だった」
●いよいよ開催が近づいてきた“BLARE FEST. 2020”ですが、2020年2月に開催すると発表したのは、ライブのMCが最初だったんですよね?
Masato:はい。でも「いつかフェスにする」ということは、遥か昔からずっと言っていて。他のバンドが主催するフェスに出るたびに…特にHEY-SMITHの“OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL”とSiMの“DEAD POP FESTiVAL”が野外になってからは…ずっと言っていましたね。MAH(SiM)には「フェスやるやる詐欺」と言われていましたけど(笑)。
●MAHくん言いそう(笑)。
Masato:なので、やるからには何倍にしてでもその予想を覆してやろうと思って。
●満を持しての開催だと。
Masato:あいつらが5年間くらいやってきた分を、俺たちはまず最初の1回に注ぎ込んでやろうという意気込みだったんです。
●前身になっているのは、“BLARE DOWN BARRIERS”という自主企画イベントですよね?
Masato:はい。全然狙ってなかったんですけど、“BLARE DOWN BARRIERS”は2020年でちょうど開催10周年なんですよね。つい先日の取材で言われて気付いたんですけど(笑)。
●ハハハ(笑)。
Masato:そこで、2月に開催することにこだわっていたことも思い出した(笑)。
●“BLARE DOWN BARRIERS”の初期の頃は2月開催が多かったですね(※2010年〜2013年までは2月開催)。
Masato:会場をずっと探していたんですけど、全然空きがなくて。今回の会場も、実は2年以上前から押さえていたんです。
●あ、そんなに前から押さえたんですか。“BLARE DOWN BARRIERS”というイベントはどういったコンセプトで始めたんですか?
Masato:1回目を開催した2010年というのは、俺たちが幕張メッセで開催されているようなフェスに出させてもらう機会が増えた年なんです。
●はい。
Masato:当時は名古屋に住んでいたんですけど、東京ではすごいメンツのバンドが頻繁に集まっているのに、名古屋ではそういうイベントがなくて、“だったら自分たちでやろう”と思ったのが始まりだったんです。
●なるほど。
Masato:木造感のあるライブハウスが好きだったので、名古屋のTHE BOTTOM LINEに東京では当たり前に集まっているメンツを呼んだんです。当時はまだシーンの壁があったパンク勢とラウド勢を混ぜたりして。
●あの頃って、まだシーンの隔たりがありましたっけ?
Y.K.C:実際に僕らがそういう壁を感じていた時期だったんですよ。ようやく自分たちで日本のバンドシーンの状態が分かり始めてきた頃というか。
●2010年というと、ラウドシーンはそこまで盛り上がっていなかったですよね。
Y.K.C:はい。シーンと呼ばれる場所に身を投じていかないと先が見えない時代でもあったし、その中でも当時は突出してメロコアが強かった。そういう日本のバンドシーンに、自分たちが“いい”と思うバンドを巻き込んでいきたかったんです。
●うんうん。
Masato:マキシマム ザ ホルモンや10-FEET、ROTTENGRAFFTYが居て、メロコアというシーンの中にもラウドっぽさは常にあったんですけど、俺らやSiM、Crossfaith、Fear, and Loathing in Las Vegasみたいなバンドが増えてきたとき、やっぱりちょっと違うなという感触もあったんです。当時は声を大にしては言わなかったですけど、“メロコアを食うしか無い”という気持ちで。
●なるほど。coldrainの視点から見ると、当時のシーンはそういう状況だったと。
Masato:俺たちはずっと海外の音楽が好きだったけど、海外の音楽を中心に聴いている人たちを狙っても、そのタイミングでは意味がなかったんです。日本のシーンが強かったので、対バンをすればするほどそこで闘いたいという気持ちが強くなったというか。
●ふむふむ。
Masato:あと、色んなバンドがたくさんツアーに呼んでくれたんです。俺たちにとっては、メロコアバンドのお客さんの前でライブをすることは辛かったんですけど、そこでは常に可能性が見えていて。そんな中で自分たちのシーンを作っていくには、“BLARE DOWN BARRIERS”のようなイベントが必要だったというか。
●イベント名の通り、当時はまさに“壁”を感じていたんですね。
Katsuma:そうですね。今となっては04 Limited Sazabysと俺らが一緒にライブをすることなんて当たり前になっていますけど、当時はTOTALFATと俺らの組み合わせですら当たり前じゃなかった。
●言われてみればそうだったかも。
Katsuma:例えば2011年の“SABBAT NIGHT 2011”というイベントでは、俺らが1番目でトリがTOTALFATだったんです。そういう組み合わせは今だったら馴染むと思うんですけど、当時は俺らが浮いていて。
●ほう。
Katsuma:浮いていたんですけど、他の出演者は俺らに興味を持ってくれていて。だから自分たちがイベントを主催するとなったときも、きっと色んなバンドが力を貸してくれるんだろうなとは思っていました。
RxYxO:正直に言うと、“SABBAT NIGHT 2011”では俺らのライブは全然盛り上がらなかったんです。だけど持っていったデモはめちゃくちゃ売れて。“ライブさえ観てもらえれば届くんだな”という兆しが見えたのはそのイベントでしたね。
Masato:うん。兆しは見えていたんですけど、それこそ“BLARE DOWN BARRIERS”の初年度はすごいメンツなのにチケットが売り切れなかった。自分たちの中では自信を持って開催したけど、思っていた以上に厳しい現実だった。
●さっき「“メロコアを食うしか無い”という気持ちだった」とおっしゃっていましたが、当時メロコアシーンのバンドに抱いていた印象はどういうものだったんですか?
Masato:“ファンじゃないけどその日のライブで演った曲はわかる”という程度のライト層のお客さんまで巻き込む力がメロコアのシーンにはあったんです。お客さんが持っているレーベルや事務所のロゴがプリントされたTシャツやタオルとかも一体感があって、バンドとお客さん全体に団結力があるように見えたというか。
●団結力。なるほど。
Katsuma:俺らの時代のラウドってすごくアンダーグラウンドなものだったから。
Y.K.C:あとはやっぱり、メロコアはすごくスピード感があるじゃないですか。僕らが当時作っていた曲にはそういうスピード感がなかったんです。そこで“どうやったら俺たちがかっこいいと思っている音楽を届けることができるか?”と考えると同時に、“何かを変えないと駄目だ”と道筋を模索し始めたんです。
●coldrainはデビュー前からライブを拝見していますけど、海外での経験も経て、かなりライブが変わってきましたよね。その背景には、そういう葛藤というか模索があった。
Masato:海外の経験はやっぱり大きかったですね。海外に行ったら行ったで、全然自分たちの名前は広まってなくて焦るし、その頃くらいから日本では下の世代のバンドも出始めていて。自分たちがいる音楽シーンはおもしろいなと思っていました。
●ライブも、シーンの中での立ち位置もそうなんですが、coldrainの媚びないスタンスはここ数年で確立したような印象があるんです。
Masato:俺らがいちばん恵まれていたのは、先輩たちが縦社会を作っていなかったことだと思うんです。普通なら失礼に当たるようなオファーも、今は先輩に対してできたりして。なのでブッキングでも攻めることができる。普通では出来ないようなことも「おもしろい」と思ってくれる先輩や後輩や仲間が増えましたね。
●うんうん。
Masato:ROTTENGRAFFTY主催の“ポルノ超特急”とかに行くと、“やっぱりこういう雰囲気は先輩たちに作ってもらったんだな”とすごく感じます。そういう先輩たちに作ってもらった空間に、俺らやSiMがすごく上手く乗ったんだなと。
●おもしろい。シーンの構造がわかる話ですね。
Masato:でもそこで先輩たちと全く同じことをやっていたら続かなかっただろうし。俺たちが海外に行ったり、他のバンドとは違うチャレンジをしたからこそ評価してもらえた面もあるし、リスナーの人にも俺らの活動が届いてるなと感じています。
「普段は聴かないジャンルだとしても、きっと来てくれた人たちには届くだろうと思うバンドを誘わせてもらったんです。壁を壊した上で、このフェスでは“仲間”としてやりたい」
●“BLARE FEST. 2020”の出演者はすごく豪華ですよね。会場を押さえた2年前からブッキングを始めたんですか?
Y.K.C:具体的に動き始めたのはもう少し後ですね。2年くらい前から「こういうことをやったらおもしろいんじゃないか」というアイディアベースの話はしていましたけど。
Masato:武道館ワンマン(2018/2/6)をやったとき、かなり多くのバンドマンが観に来てくれたんですよ。そのときに“2月はみんな暇なのかな?”と思って(笑)。2月って俺らもそうですけど、まだ本腰入れて動いていない時期じゃないですか(笑)。
●だいたいみんな3月くらいから動き始める感じですよね。
Masato:更に言うと、名古屋という場所にもこだわったんです。ふざけたことに後輩の04 Limited Sazabysが先に名古屋でフェスを始めましたけど(笑)、愛知県には“TREASURE05X”と“MERRY ROCK PARADE”が夏と冬にあって。
●はい。
Masato:“TREASURE05X”や“MERRY ROCK PARADE”は未来を見ているというか、一歩先を行っていて、出ているメンツは若いバンドが多かったりする。それに04 Limited Sazabysが主催している“YON FES”は04 Limited Sazabysらしい色があるので、俺らがやるフェスとかぶる心配がない。そういう部分ですごくやりやすいなと。
●時期も場所も他とかぶる要素がない。
Masato:だから“OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL”と“DEAD POP FESTiVAL”みたいな、仲間のフェスとも色を変えることができる。そういう意味で“自分たちにしか出来ないことがある”というのは開催を決めた2年前から考えていて、今回はそれが形になった結果というか。
●coldrainにしかできないフェスだと。
Masato:MAHには「coldranがやるフェスだからもっとラウドに寄るかと思った」と言われたんですけど、普段は聴かないジャンルだとしても、きっと来てくれた人たちには届くだろうと思うバンドを誘わせてもらったんです。壁を壊した上で、このフェスでは“仲間”としてやりたい。
●先程メロコアのシーンに対する話がありましたけど、今現在のcoldrainの活動は壁をまったく意識していないように感じるんですが。
Masato:ジャンルの壁とかはまったく考えないですね。
RxYxO:うん。バンドを判断する基準は、かっこいいか、かっこよくないか。シンプルな所だけですね。
Masato:意識するとしたら、違うジャンルのバンドとの対バンが決まったとき、俺らのお客さんが(対バン相手のファンに)迷惑をかけないかどうかを心配するくらい(笑)。
●ハハハ(笑)。
Masato:最初の頃は、HEY-SMITHと俺らのお客さんすらも交わらなかったですからね(笑)。この間、NAMBA69のイベントに呼んでもらったんですけど、NAMBA69のお客さんも俺らを理解してくれている感じがしたんですよ。そこで改めて気づいたんですが、昔と明らかに違うのは“そういう音楽がある”という認知が変わったこと。
●なるほど。
Masato:昔はがむしゃらにやればなんとかなると思っていたんですけど、マキシマム ザ ホルモンがなぜあれだけ認知されているのかというと、真面目にふざけているからなんですよね。そういう姿も間近で見せてもらえたし、まっすぐ闘うところと、お客さんと会話をするということも考えるようになった。逆に、考え過ぎないことの大事さも学びましたね。
●現場で学んだことが、今の活動スタンスやマインドになっている。
Y.K.C:曲がいいバンドは日本にたくさん居ると思うんですが、“BLARE FEST.”の出演者の共通点を挙げるとすれば、みんなライブがいいということ。この中には「音楽が好みだから」という理由で出会ったわけじゃないバンドもいるんです。
●ほう。
Y.K.C:今後はどうなっていくかわかりませんけど、今回に限っては人に惹かれて誘わせてもらった人たちなんです。後輩のバンドも居ますけど、信頼しているので安心して任せることができるメンツというか。
Katsuma:例えばRED ORCAに関しては、初ライブの前にオファーしたんです。元々は金子ノブアキのソロとしてオファーするつもりだったんですが、“あっくん(金子)がやることだったらかっこいいに決まっている”という信頼があったんです。それでこの前、初ライブを観に行ったんですけど、やっぱりかっこよかった。
●間違いなかったんですね。
Katsuma:そうですね。
Masato:今いちばん怖いのは、お客さんの体力が保たないんじゃないかということですね(笑)。
●休憩時間は設けるんですか?
Masato:今のところ無いですね。だからSiMやHEY-SMITHのときくらいしか休憩する時間はないです(笑)。
Katsuma:でもたぶんお客さんはそこでも休憩しないので、体力は保たないです(笑)。
「“もう1回やって欲しい”と言われるようなフェスにしたいですよね。ステージ上はバチバチでライブをして、裏ではcoldrainの家に来ているような感覚になってもらいたい。外から見えるものは内側から作っていく」
●今回6組の海外アーティストが出演されますが、これはどういう経緯でブッキングしたんですか?
Masato:海外アーティストのブッキングはめちゃくちゃ大変だったんですよ。
●どういう部分が?
Masato:海外のレーベルやエージェントは、フェスの出演は世界的な知名度を判断基準にしているんです。更に彼らが1本のライブのために日本に来るということは、俺たちが思っていた以上にハードルが高かった。日本に来たことがあり、今の日本のシーンの現状を解ってくれている人じゃないと、そもそも交渉のスタート地点にすら辿り着かないんです。
●ということは、その壁はかなり高そうですね。
Masato:そうなんですよ。だから今回出演してもらえるバンドは、日本のシーンを解ってくれているんです。そういう部分については、俺たち自らが前例を作るしかないんだなって。
●海外と日本のシーンを繋ぐという使命感みたいなものがあるんでしょうか?
Masato:“coldrainがフェスをやるのであれば、海外のバンドも来るんだろうな”と思う人が5人中1人くらいの割合で居るんだったら、やるしかないと思いますね。出演者的にもおもしろいと思うだろうし。しかも名古屋ですよ。みんな飛行機で日本に来て、そこから新幹線ですからね。観光するとしても名古屋ですよ(笑)。なんもすることない…(笑)。
●いやいや、そんなことないでしょ(笑)。
Y.K.C:海外のバンドを呼ぶということに関して、収支面ではマイナスでしかないんです。でも日本のお客さんに、普段僕らが海外で闘っている姿を観てもらいたくて。僕らもバンドを始めたときは海外のバンドのライブに行くキッズだったので、今のお客さんにもわかってもらいたい。
●いいですね。
Masato:あともう1つわかってもらいたいのは、海外から来てくれるバンドもこのフェスをチャンスだと思ってくれているということ。ギャラだって移動の費用でほとんど消えちゃうと思うんです。それなのに時間をかけて日本に来てくれるのは、チャンスだと思ってくれているからで。だからお客さんには、新しいバンドを知るきっかけにしてもらいたいな。
●今の日本はあまり洋楽を聴かなくなってきていますよね。それはcoldrainがヒシヒシと感じていることなんじゃないですか?
Masato:そうですね。だから全部が当たり前になってほしい。
●全部が当たり前というと?
Masato:当たり前のように日本のバンドが海外のフェスに出ていてほしいし、当たり前のように海外のバンドが日本に来てほしい。
●国境という“壁”を意識する必要はない。
Masato:それは大変だけど、難しいことではない。もちろん国やレーベル・マネジメントによって考え方も違ったりする。でもやってみるというところから変えていかないと、このまま変わらないと思うんです。
●だから行動する。素晴らしいことですね。
Masato:海外のバンドももっと日本に来れば、みんな好きになると思うんです。そういうバンドは多いし、やっぱり誰かが呼んでそういう機会を作っていかなくちゃいけない。俺らもいろんな所に呼んでもらったからこそ、色々な景色を見ることができたので。
Y.K.C:僕らが思っている以上に、海外の人は日本がどういう国なのか知らないんですよ。だから日本の音楽シーンなんて知るわけがないんです。海外アーティストの来日がピークだった頃は、みんなが口伝えで「日本はこんな感じでよかったよ!」と言っていたと思うんです。だから大きく動かしていかないと続いていかないですよね。
●coldrainの覚悟ですね。
Masato:逆に、洋楽をあまり聴かなくなったと言いますけど、今の日本でも洋楽しか聴かない人も居ると思うんです。そういう人にも日本の第一線で活動しているバンドを知ってほしい。そこの壁は確実に壊したいですね。
●その壁も確かにありますね。
Masato:乱暴に言っちゃうと、MAN WITH A MISSIONとSlipknotなんてシステムはそんなに変わらないですからね(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
Masato:要するにきっかけですよね。俺らがこんなに英語で歌っていても、俺らのファンで洋楽をほとんど聴いたことがないという人もいっぱい居るし。そういう人にも俺らが海外でどういうバンドと一緒にやっているのか、そういうことを知ってもらうきっかけにもなる。
●フェスはいろんなきっかけを生みますね。
Masato:あと、チケット代に関して「高い」と言われたんですけど、めちゃくちゃ安いと思っていて。
●他と比べると、ということでしょうか?
Masato:まあそう言う人の気持ちもわかるんです。“ライブハウスの延長線上で作るフェス”という感覚というか。でも俺らは“祭典”というか“祭り”という感覚なんです。チケット代の元は100%取れることは保証する。
●今の日本のフェスって、出演者同士の関係性が客席にも伝わっているじゃないですか。海外の場合はどうなんですか?
Y.K.C:もっと広い意味で“お祭り”という感じですね。バンドがライブをやっているお祭り。
Katsuma:だから目当てのバンドが出る/出ないに関わらず「フェスだから行く」という人が多い気がします。
Masato:オランダのフェスに出たときは、昼の2時くらいからベンチで飲み潰れている人とか居たんですけど(笑)、そのゆるいお祭りのような雰囲気に共感しているお客さんがめちゃくちゃ多いんです。街全体のお祭りというか、花火大会と同じような感覚ですね(笑)。地域の密着感もあるし。
Sugi:海外のフェスは、もともとは家のガレージでやっていたことから発展したという経緯があるらしいんですよ。日本はライブハウスの文化が強くあるので、そもそものきっかけが違うというか。
●coldrainは日本のフェスも海外のフェスも経験しているわけじゃないですか。“BLARE FEST.”に関して、目標としているフェスや理想像みたいなものはあるんですか?
Masato:これは俺の個人的な意見なのかもしれないですけど、フェスとして成長するというより、出ているバンドが成長した結果としてそのフェスも成長する、という感じになればいいなと思っていて。マナーとかルールはもちろんみんなで考えることなんでしょうけど、そういったことが全部当たり前になればいいなと思います。
Y.K.C:“BLARE FEST.”という名前を一人歩きさせるつもりはないんです。「こっちは最大限提供するから、わかってね」というスタンス。
Masato:あと、運営に文句が出るのはいいけど、各バンドのファンの間での揉め事はやめて欲しいな。バンド側にとってこれ以上に悲しいことはないので。
●そうですね。
Masato:“京都大作戦”に行く度に思うんですけど、海外のフェスに行く人の感覚は、日本では“京都大作戦”に行く人の感覚がいちばん近いと思うんです。緩さもありつつ、マナーは海外の何倍も良い。2019年もいろんなフェスに出演させてもらいましたけど、“BLARE FEST.”があるからこそ去年は特に意識していたんです。
●どういうことを意識したんですか?
Masato:フェスの在り方というか。出演したフェスはそのフェスの名前で検索したりして(笑)。導線問題やトイレ問題、冬に近づけば近づくほど多くなるクローク問題もあるし。常に意見を拾っていました。
●そんな細かいリサーチをしていたんですね。
Masato:いいところは“BLARE FEST.”にどんどん採り入れようとメンバーで話し合ったりして。プラスアルファの部分は、おそらく回数を重ねないとわからないんと思うんです。でも、マイナスになりかねない部分は事前に準備できるので、最大限考えておこうと。
Y.K.C:お客さんにもバックステージに居るバンドマンたちにも「もう1回やって欲しい」と言われるようなフェスにしたいですよね。ステージ上はバチバチでライブをして、裏ではcoldrainの家に来ているような感覚になってもらいたい。外から見えるものは内側から作っていく…初めて“京都大作戦”に出たとき、そういうことを強く感じたんです。
「フェスにおいて“慣れ”ってすごく重要だと思うんですんですよ。慣れているからこそ円滑に進む部分も多いだろうし。でもその“慣れ”という言葉がすごく嫌になったんです。それは海外の経験からもらったものなのかもしれない」
●タイムテーブルはどういうポイントで考えたんですか?
Masato:敢えて“普段観ているから今日は違うバンドを観よう”と思わせられる組み方になっていると思います。まあいちばんのポイントは、SiMとHEY-SMITHが休憩時間というところじゃないですか(笑)。
●ハハハハ(笑)。それはSiMとHEY-SMITHに対する信頼感があるからこそでしょうね。
Masato:やっぱりあいつらは絶対めんどくさいことをぶっ込んでくるので(笑)。
Katsuma:あとは、Sugiには各バンドの曲を弾けるように練習してもらって。
Sugi:俺、めちゃくちゃおいしいじゃん(笑)。
●スペシャルコラボの可能性もあると。そんな中でも気になるのは、ラインナップの中のPay money To my Pain。これは…どこから聞いていけばいいのでしょうか(笑)。
Masato:Pay money To my Painは“BLARE DOWN BARRIERS 2010”に出てもらっていて、いちばん最初に声を掛けたバンドなんです。だから今回…The BONEZが止まっているからとかじゃなくて…Pay money To my Painには絶対に声をかけたかった。
●ああ〜、なるほど。
Masato:ただ、今のタイミングでPay money To my Painを呼ぶのはちょっとどうかな? と悩んだんです。The BONEZの代わりだと思われたくないので。それとこれは別の話なんです。
●そうですよね。
Masato:俺らからしたらすごく身近な先輩で、大好きなバンドで。だから“BLARE DOWN BARRIERS 2010”でもいちばん最初に声をかけたし、今回も呼びたかった。でも実際のところ、Pay money To my Painがどうやってライブをするのかは俺らもわかってなくて(笑)。
●え、そうなんですか?
Masato:彼らならどうにかしてくれるでしょう(笑)。
●2年前に会場を押さえた時点で、Pay money To my Painの名前が浮かんでいたんですか?
Masato:もちろん。Pay money To my Painが出演することを発表をしたときから、色んな意見をもらっているんです。でもそれはわかっていたことで。色んな意見がある中で、“Kくんがいないことはわかっているけど、それでもあの曲がまた聴きたい”と思っている人も居る。だったらやっていいじゃん、という感覚ですね。
●楽しみですね。こういうバンド主催フェスの場合、ホストのバンドはバックヤードでの各出演者のフォローもあるし、会場の状況把握もあるだろうし、自分たちのステージもある。気持ちの持って行き方がすごく難しいと想像するんですが。
Masato:そうでしょうね。でも現時点ではまだ全然考えてなくて(笑)。1日目で死んで2日目はなんとかするしかない。昨年末の“ポルノ超特急”のときのROTTENGRAFFTYのメンバーを見てたら、もうバカだなと思いました(笑)。すごすぎる。
Katsuma:HIROSHIくん(ROTTENGRAFFTY/ Dr.)とかは練習をしつつ、ほとんどのバンドのステージ袖に居たんですよ。すごいなって思いました。
Masato:だから自分の身体に奇跡が起こるのを期待しています(笑)。
Sugi:色んなバンドにいいライブを見せられて、どういう風に自分のテンションが上がっていくのかが楽しみですね。
Masato:現時点では全然わからないですけど、たった1つ確定しているのは、coldrainのライブのときにはお客さんはバテ切っているだろうと。だからあまり考えないようにする(笑)。
●ハハハハハ(笑)。
Y.K.C:これだけの人に力を借りてるので、両日ともトリにふさわしいライブをしたいですね。
Katsuma:他のバンドのフェスに行くと、やっぱりホストのバンドはその日限りのライブをしているじゃないですか。あの力って狙って出しているわけでもないし、そこまでに繋いできたバトンとかがあってこそだと思うんです。
●うんうん、そうですよね。
Katsuma:だから、自分たちがその立場になったらどうなるのか。それがすごく楽しみですね。
●考えたらワクワクしますね。ちなみに、毎年やるわけじゃないんですよね?
Masato:そうですね。
●実際のところ、どうするんですか?
Masato:毎年はやらないと思います。
●えー、やればいいのに。
Masato:ルーチンになって慣れを作るのが嫌なんです。「来年も“BLARE FEST.”があるから…」となる必要はないと思いますし、毎年そこに照準を合わせて動いていくのは違うと思っていて。オリンピックとかワールドカップが毎年あったらあんなに盛り上がらないでしょ?
●うーん…はい(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
Masato:一回一回の“BLARE FEST.”に照準を合わせたい。2〜3年記憶に残る2日間にすればいいだけの話ですよね。
Y.K.C:毎年やると決めていないのは、フェスの名前とcoldrainの名前を闘わせていきたいからなんです。
Masato:coldrainとしてやらなければいけないことはまだまだたくさんあるので。今年のメンツを発表したときに「来年どうするの?」という意見が出ていたんですけど、そういう考え方をしたくないんです。
Y.K.C:最初から来年のことを考えていたらこのメンツにはならない(笑)。
●フフフ(笑)。そういうことか。
Masato:どうせ終わったら“またやりたいな”という気持ちになっちゃうと思うんですけど(笑)。だからMCでそういうことは言わないようにします(笑)。
Y.K.C:Masatoはどうせ言う(笑)。
Sugi:言っちゃうね(笑)。
RxYxO:「来年もやりてーな!」って軽く言っちゃうと思う(笑)。
●Masatoくんは思ったら言っちゃう人なんですね(笑)。
Masato:でも今のところ、ステージで言ったことはほぼやれているんです。
●いろいろな意味ですごくcoldrainらしいフェスになりそうですね。
Masato:フェスにおいて“慣れ”ってすごく重要だと思うんですんですよ。慣れているからこそ円滑に進む部分も多いだろうし。でもその“慣れ”という言葉がすごく嫌になったんです。それは海外の経験からもらったものなのかもしれないですね。慣れていない環境に味をしめたというか。
●慣れてない環境って緊張しませんか? 手汗めちゃくちゃかいたり、震えたり。
Masato:それがいいんですよ(笑)。
●やばいな(笑)。この人たちゴリゴリのバンドマンだ。
Masatro:そっちのほうが俺たちはいいですね。遊園地とかも毎年行くより何年かぶりに行ったほうが楽しくない?
Katsuma:うーん…まあわかる(笑)。
Masato:結局変わっていくのはバンドなんですよ。このフェスを何年後かにやって、また同じメンツを呼んだとしても同じライブにはならない。今年の出演者は、過去にこのイベントに呼んでいるバンドがほとんどなんですよ。キャパシティ700人のライブハウスが埋まらなかったときがあって、またSiMやPay money To my Painが集まって2万人をソールドアウトさせるっていう。バンドが変わってきたからフェスができるようなっただけのこと。
●なるほど。
Masato:だから毎年やらないというのは、一年刻みじゃなくて、何年後かにcoldrainというバンドをデカくした状態でやりたいという気持ちが根底にあるのかもしれないですね。
interview:Takeshi.Yamanaka
assistant:Yuina.Hiramoto