2018年8月に活動を開始させて以来、爆音の中に計算された音を散りばめて日々進化を続けるBUZZRAPTOR。そして前バンド解散後、弾き語りをやっていたVo./G.コイデアツヒトを中心に2017年に活動をスタートしたクジリ。音楽的には対照的とも言えるこの2バンドが、10/28に吉祥寺Planet Kで2マンライブを開催する。今回の2マンは、前身バンドの活動が止まった約4年前にBUZZRAPTORのG./Vo.Taroとクジリのコイデが交わした1つの約束が結実する場所でもある。“BUZZRAPTOR x クジリ 2MAN LIVE”の開催を記念して、両バンドメンバーによるスペシャル対談を敢行した。
●10/28に吉祥寺Planet Kで2マンライブを行うこの2組ですが、出会いはいつ頃だったんですか?
出会いは古いんですよ。
BUZZRAPTORとして活動してきたのは1年くらいなんですが、今と同じメンバーでやっていた前のバンドのとき…5年くらい前なんですが…に千葉ANGAのブッキングのライブで初めて対バンしたんです。
僕は千葉ANGAでずっと働いているんですけど、Taroさんと出会ったときは対バン形式で、クジリの前にやっていたMy Favorite Girlというバンドで出演したんです。
●お互い前身バンド時代に出会った。
そのときは仲良くなると思ってなかったけど(笑)、なぜか縁が続いて、自然と大好きになっていったんです。Taroさんたちの活動拠点は都内なのに千葉ANGAに出続けていて、それで共通の知り合いが増えて、対バンする機会も多くなっていったというか。
●バンド仲間で5年くらいの付き合いになると。それでなぜ今回、2マンをやろうということになったんですか?
2マンやるの初めてだっけ?
初めてですね。対バンはあるというか、何なら多いくらいやってますけど(笑)。
今回の2マンについては、1つ約束していたことがあったんです。
俺は前のバンドが解散して、Taroさんは活動休止になった頃でしたよね。割とほぼ同じくらいのタイミングで止まっちゃったんです。
俺はTaroさんは音楽を辞めない人だと思っていたし、俺はすぐその後にバンドを続けるために弾き語りを始めたんです。で、前にTaroさんたちと一緒にやっていく中で生まれていったシーンみたいなものが大好きだったので、「同じようなことはまた絶対にやろうね」と4年前にTaroさんと約束したんですよね。
●両者共に先が見えていない時期に約束をした。
お互いにそのことを覚えていたんですよね。
●なるほど。その結実がこの2マン。
こういうガチンコの2マンが、本当の意味での“再会”なのかなって思います。それに、実はBUZZRAPTORのGはクジリの元ギタリストなんですよ。
●えっ、まじですか。
BUZZRAPTORとクジリを掛け持ちしていた時期もありました(笑)。
BUZZRAPTORよりもクジリの方が先に活動を始めたんですが、そのときに「バンドが好きなんだったら弾けよ」ってGを誘ったんです。その後、BUZZRAPTORが始まって、お互いガツガツとやっていくようになっていった結果、Gはクジリを抜けてBUZZRAPTORに専念するということになって。
●前のバンドのときからGさんとも知り合いだったので、クジリを始めるときに誘ったと。
それでGが抜けることを受けて、俺たちも3ピースでやるようになったんです。まだ3ピースになって3〜4ヶ月なんでけど、今がバンドとしてはいちばんいい状態で。
●それGさんは複雑ですね(笑)。
一同:アハハハ(笑)。
でも僕もそれはわかっていたというか。アツくん(アツヒト)が前にやっていたバンドも3ピースだったので。
でもGが抜けるとなったときは、結構絶望してたんです。「あのギターが居なくなってこの曲たちは活きるんだろうか?」って。
「演奏どうしよう?」「エフェクターどうしよう?」とか色々と悩んでたんですけど、実際にやってみたら「あれ? 大丈夫じゃね?」みたいな(笑)。
だから、なるべくしてなったクジリと、なるべくしてなったBUZZRAPTORが対バンする今回の2マンが、本当の意味での“再会”なんです。
●この2マンにはそういう意味がある。
色々とまわり道はしてきたけど、お互いやっと独り立ちしたよねっていう。
●せっかくの機会なので、この2バンドを読者により深く知っていただくために、今回の2マンの対バン相手がどのようなバンドなのか、相手のバンド1人1人に訊きたいんですが。
BUZZRAPTORは、ライブを観てまずいちばん最初に印象に残るのは“音”だと思うんです。バンドの音。ロックバンドとか、若い世代の人たちの中で音がデカいことって珍しくないと思うんです。
●はい。
BUZZRAPTORの音ももちろんデカいんですけど、「音がデカいからかっこいい」とかそういうことじゃなくて、すごく緻密な部分で圧倒させるんです。それがポリシーというか、影の部分の努力というか、そこに命を賭けている感じの男気を感じるんです。ライブはクールにやろうとしているんですけど、でも音から伝わってくる熱量みたいなものを命賭けで表現しているところ、俺はそこに聴き入っちゃいますね。イントロのギターソロとか、そういうところからも熱を感じる。
●なるほど。元クジリのGさんから見て、クジリはどういうバンドですか?
僕が前から感じていたのは、まずライブを観たときに圧倒させること。ステージングも音もなんですが、ステージ全体を通して人柄みたいなものが伝わってくるんです。だからBUZZRAPTORとは全然タイプが違うんですけど、人間力みたいなものが伝わってくるバンドだと思います。
●タツトさんから見たBUZZRAPTORはどうですか?
BUZZRAPTORの音は強いんですよ。
●音が強い?
はい。どの楽器の音も突き刺さってくるというか。ベースもわけわかんないくらい歪んでますし、TaroさんやGのギターも鋭いし、ドラムのスネアがめちゃくちゃ深胴だったりとか…そういう感じで、音が強いバンドだと思うんです。更にこれは僕の印象なんですけど、その“強さ”の中に個々の人たちの“弱さ”も見えるというか。
●弱さ?
BUZZRAPTORのメンバーはみんな仲良くなるまで時間がかかるし、すごく人見知りなんですよ。僕もそうなんですけど、話せるまですごい時間がかかったりして。
特にリズム隊の2人(Ba.ハギヤアケミ / Dr.Masashi)はそうだよね(笑)。
そういう内面性みたいなものもライブで見えてくる感じがあるんです。BUZZRAPTORは、周りのワイワイ楽しそうなバンドとか、友達が多いバンドも居ますけど、その中に入っていこうとするわけでもなく、自分たちの道を行くっていう意思がしっかりと伝わってくる。誰が何と言おうが、どこのライブにどのタイミングで出ようが、BUZZRAPTORはBUZZRAPTORとしてやることをやる。媚びないし、芯のあるバンドだと思います。
●クジリのサポートドラマーであるうとさんから見たBUZZRAPTORはどういうバンドですか?
BUZZRAPTORが活動開始した約1年前のライブも観に行ったんですけど、そこからだんだん印象が変わってきて。爆音系のバンドって曲の最初から最後までずーっと爆音という印象があるんですが、メリハリというか、縦のラインがパチン! と合ったときの爆発力とか、逆に音を止めるときの緻密さがBUZZRAPTORはすごいんです。だから観るたびに衝撃を受けるんです。
●そういうアレンジとかグルーヴは、ライブを想定しているんですか?
曲によってですけど、そこはかなり計算してます。
僕らの場合、音量ではない“爆音”というか。小さい音量でも4人でぴったりと合わせることによって音圧を出すみたいな。
他にも、イントロで鳴っているリフをサビの後ろで鳴らしている曲があったり、曲ごとにちゃんと違う色のリフを付けていたり。歌詞が英語だと識別しづらいというデメリットがあると思うんですが、リフや演奏に必ずキャッチーな聴きどころがあるんです。
●その話を伺う限り、BUZZRAPTORのサウンド構築やアレンジには色々な美学がありそうですね。
聴いてほしいワードやメロディやポイントに誘導するために、という感じですね。ギミックを入れてポイントに持っていく。そういうことは結構考えてます。
●なるほど。一方でTaroさんから見たクジリはどうですか?
正直に言うと、日本のシーンを見渡したときにギターロックバンドっていっぱい居ると思うんですよ。ライブハウスシーンで考えても、サブスクリプションで上がっているような音楽で考えてみても、似たようなバンドがいっぱい居て。僕はオリジナリティのあるギターロックバンドってすごく少ない気がしているんですが、クジリはすごいオリジナリティがあるバンドの1つで。そのオリジナリティは何か? というと、歌詞の内容だったりサウンド面も含まれると思うんですが、いちばんはアツくんの人間力というか、説得力。
●説得力。
大体のバンドって聴いたときに誰から影響を受けたのがなんとなくわかるじゃないですか。でもクジリの場合は何から影響を受けたのか全くわからない。
●サポートメンバーでさえわからないという(笑)。
それがクジリのアイデンティティであり、オリジナリティだと思うんです。何に影響を受けたのかわからないっていうのは音楽をやる上ですごくいいところだと思うんです。
●そうですね。バンドを始めて、そこに辿り着くのが最初のポイントのような気がします。
たぶんギターロックのシーンっていうのはずっと消えないと思うんですが、その中でクジリはずっと輝いて居続けることができるバンドなんだろうなって思ってます。
●なるほど。
更に言うと、僕はずっとクジリのようなバンドをやりたかったんですよ。
●そういえばTaroさんはもともと日本語で歌っていたんですよね?
はい。日本語で歌ってたし、ギターロック大好きだし。もともとクジリみたいに、Aメロ〜Bメロがあってめちゃくちゃいいメロディと歌詞のサビ、みたいなバンドをしたかったんです。でも僕にはその才能が無いことに気づきまして。
●ほう。
例えばですが、僕が「愛してる」と言ったときとアツくんが「愛してる」と言ったときの説得力が違うんです。僕の場合は嘘くさくなっちゃうんですよね。それはなぜかというと、僕が生きてきた中でいっぱい隠してきたり、背伸びをしたりしてきたから、そういう部分が出てしまう。でもアツくんは本当にまっすぐ音楽や目の前に居る人だけを見続けて生きてきたからこそ、説得力のある音楽で出来るんだろうなって。そういうバンドであり、フロントマンなので、僕にとっては一生憧れの存在ですね。
一同:フフフ(笑)。
●最後に1つ訊きたいんですが、前身バンドが止まったときのことについて、アツヒトさんが「Taroさんは音楽を辞めない人だと思っていた」とおっしゃっていましたよね。お互いが“この人は音楽を辞めない”という確信がないと今回の2マンに繋がる約束は出来なかったと思うんですが、お互いバンド的な挫折をした時期に、なぜ“この人は辞めない”という確信があったんですか?
アツくんは本能でしょうね。
●ほう。
そこに関しては、“こういう理由だから〜”みたいな説明が出来ないですね。伝わってきたというか。
お互いヴォーカルだからこそわかることなのかもしれないですけど、歌に乗ってくる“覚悟”みたいなもの。もしかしたらそれをお互いが感じてたのかな?
俺はむしろバンドを観るときはそこしか観てないんです。歌に心が入っているかどうか。それが、Taroさんはバンバン伝わってくる人だったから、“きっとTaroさんは音楽を辞めないんだろうな”って。
Interview:Takeshi.Yamanaka