ROACH、Neverlost、JACKPOT BELLらが所属するBULL SHIT RECORDSが、初となるコンピレーションアルバム『BSR Vol.1』をリリースする。“ラウド”と呼ばれる界隈が盛り上がりを見せる現在の音楽シーンだが、そこにいるバンドたちが持つ多様性は簡単に一括りにできるものではない。ハードコア、メタルコア、エモ、メロディックパンク、スクリーモなど様々なジャンルの音楽性に、それぞれ自分たちなりのオリジナリティを加えたバンドたちが全国各地で群雄割拠しているのだ。そんな中から厳選された14組の若手アーティストとその楽曲を、本稿では順番に紹介していく。
名誉ある先陣を飾るのは、沖縄のNeverlost。何か事件の始まりを暗示するような不穏なイントロから始まるが、男気のあるコーラスも含めてシンガロングできてしまいそうなメロディラインはライブでの盛り上がりを想像させる。彼女in the displayは、その名前だけでも既にインパクト十分。ヘヴィなギターリフにスクリームという始まりからは意外すぎるほどに、歌メロはとびきりキャッチーだ。幅広い層へと届きそうな可能性すら感じる。JACKPOT BELLは、まるでバラードのようなタイトルの「ここにいるよ」で参戦。もちろんバラードなわけはなく、持ち味の男女ツインボーカルで疾走感のあるギターサウンドをフックのあるメロディと共に聴かせてくれる。Lay Another Flightはハイトーンなスクリームで始まったかと思えば、こちらもメロディは非常にキャッチーでコーラスも効果的だ。さらに耳を澄ませば気付く、細やかな同期の音遣いも特徴と言えるだろう。And Protectorは、街の雑踏の中での独白から一気に激情エモ/ハードコアサウンドで爆走。気付けばあっという間に終わってしまっているが、2分足らずの演奏時間の中にも起伏ある展開で強烈なインパクトを残す。BACKFLIPは「SACRIFICE」というタイトルからダークな曲調を想像していたが、その予想を鮮やかに裏切ってくれる。印象的なギターリフからスピード感のあるサウンドで、メロディは爽やかさすら感じるほどにブライトだ。We Are From Youはミドルテンポの英詞から始まる冒頭に、スケール感ある雰囲気が漂う。ラップパートからキャッチーなメロディへと流れ込む展開も、ライブで初見の観客を一気に持って行きそうなフックを持っている。
折り返して後半戦は、大阪のPOTから始まる。日本語詞のおおらかな歌とメロディは今作の中でも特に異色なものかもしれない。サウンドはハードエッジなところもありつつ、ギターロックと言ってしまってもいいほど聴きやすく、裾野の広さを感じさせる。fleelの「ENDING IS BEGINNING」は、頭から一気にたたみかけるようなドラムのビートがインパクト大。そのまま突っ走るのかと思いきや、抑揚や起伏もつけた展開で彼らが持つ表現の幅を見せつける。福岡のLISTROCKは、ややハスキーな歌声のアカペラからリスナーを引き込む。ミドルテンポの曲調とも相まって、哀愁を感じさせるサウンドが今回の「NEXT」では印象的だ。PANIC in the BOXは、男女ツインボーカル共にポップな声質が今作中で一際目立っている。サウンドはヘヴィかつ、スクリームパートもありながら依然キャッチーさを保っているのは声の魅力も大きいだろう。Dirty Little Secretは一転、シリアスなイントロから重厚な音塊を響かせる。だが静謐なパートでは美しさすら感じさせ、エモーショナルなメロディと共にその音は荘厳な情景を描き出すかのようだ。RIZING 2 ENDは、独自のロマンティシズム漂うメロディをカリスマ性に溢れたボーカルで歌いあげ、一瞬で聴く者を魅了する。ライブでのキラーチューンであること間違いなしの疾走感とストリートのヴァイブスに満ちた名曲。大トリのROACHは、代表曲を再録した「piece of Asia-2013-」。沖縄らしい温かみのあるメロディと、ヘヴィでありながら全てを包み込むようなバンドサウンドは彼らにしか鳴らし得ない。エンディングを飾るにふさわしい存在感を見せてくれた。
以上、14組の収録曲を駆け足で解説してきたが、まずは実際にその耳で今作を聴いてみて欲しい。この文章だけでは到底伝わり切らない多様な音楽性を、それぞれに持っていることが伝わるはずだから。日本の音楽シーンに新たな盛り上がりを生み出していく、究極の個性と可能性がここにはある。
TEXT:IMAI