未曾有の大震災が日本を襲った日からちょうど1年。2012年3月11日にBRAHMANがDVD3枚組となるLive & Document Films『霹靂』をリリースする。
CDやDVDの発売日は流通会社の慣例によって通常は毎週水曜日に設定されているのだが、今年の3月11日は日曜日。これには当然意味と理由があり、意志がある。
震災以降、JUNGLE LIFEの取材をしていく中でバンドマンからBRAHMANの名前を聞くことが増えた。各々が観た場所は当然違うのだろうが、どこかのフェスかイベントでBRAHMANのライブを観て何かを感じたのであろう彼らは、雑談交じりに「最近観た中で印象に残ったライブは?」と投げかけた筆者の質問に対してBRAHMANの名前を挙げた。
震災の直後、日本の音楽シーンは一種のパニック状態に陥った。多くのCDが発売延期になり、たくさんのミュージシャンのツアーやライブが延期/中止になった。福島第一原発事故によって節電の必要に迫られ、ライブを活動の中心に置いている多くのバンドが「最初の一歩をどう踏み出すべきか?」を考え、悩み、その一歩を躊躇した。もちろんそれはバンドマンに限らず、多くの日本人が同じような状態だった。
そんな中、BRAHMANが所属するtactics recordsは早い段階から被災地の支援活動を開始した。Twitterなどで協力を呼びかけ、集まった物資をメンバー自らが被災地に運ぶ。“幡ヶ谷再生大学”と称して彼らが行なってきた震災支援活動は、まさに草の根的な活動だった。
それまでのライブではほぼMCをしなかったTOSHI-LOWは、“AIR JAM2011”や昨年9/7にリリースしたシングル『霹靂』のツアーはもちろん、多くのライブで言葉を発するようになった。鬼気迫るステージは当然のことながら、BRAHMANの生き方自体が強いメッセージを発しているように思われた。何が正しくて何が間違っているかがわからないような状況で、BRAHMANは自分たちがやることを自分の意志で選択し、動いた。
DVD『霹靂』の映像の中でVo.TOSHI-LOWは言う。「どっちがいいとかどっちが悪いとかじゃなくて、どっちを選びたいですか? っていう話」と。
Live & Document Films『霹靂』には、そんなBRAHMANが収録されている。これが震災以後のバンドの模範像なのかどうかはわからない。わからないけれど、濁りのないその姿勢には心を動かされる。すさまじい気迫を全身から放出するライブの姿からは、人がどうこう言える余地などないほどの何かを感じ、心が震える。
4年前に行った4thアルバム『Antinomy』のインタビューで、TOSHI-LOWは「人前でやるっていうのはどういうことなんだろうと。もちろん自己満足もあるし、でもやっぱりどこかで、“観てもらいたい”っていうのがあって。
10万人とか100万人みたいなデカい規模じゃなくていいんです。本当にたった1人…たった1人でいいから墓場まで自分たちの音楽を歌い続けてくれるような人に届けることが出来れば…っていうか、俺たちは絶対に届けたいんです。
昔だったら恥ずかしくて言えなかったんですけど、今はそう言わないと嘘になってしまう」と言った。BRAHMANは今、それを実行しているだけなのかもしれない。
誰もが忘れられない年となった2011年、BRAHMANというバンドが存在し続けていることで何かが大きく変わった。
TEXT:Takeshi.Yamanaka