日本人離れしたファンキーな歌声と圧倒的な存在感を放つVo.真行寺貴秋を中心に、グルーヴィーなバンドサウンドでフロアを魅了する4人組バンド、BRADIO(ブラディオ)。それぞれにメロディックパンクシーンで活動していたというメンバーが新たな音楽性を求めて2010年に結成、シーンを問わない積極的なライブ活動により各所で評価を高めてきた。彼らの1stミニアルバム『DIAMOND POPS』はタイトル通り、光の当たる角度によって表情を変える宝石のような輝きと、観る者を魅了するポップネスに溢れている。この音とライブにまず触れてみて欲しい。
●BRADIOはライブのインパクトが凄いですよね。ソウルフルな歌もルックスも含めて、真行寺さんは日本人離れしているというか…。
真行寺:ステージ上ではすごく外国人っぽく見えるらしくて、物販で話すと「あ、日本人なんですね」って言われるという流れが毎回のようにあります。特にこの髪型にしてから、よく言われるようになって(笑)。ステージでキャラクターを作っているわけではないんですけど、スイッチが入る時はありますね。元々やりたかったことや憧れているものが今のステージには出ていると思うし、そういうものを見せたい気持ちはあるんですよ。
●その憧れているものというのはたとえば?
真行寺:僕はモータウン系とか、正統派のソウルやブラックミュージックが好きで。最初はビートルズとかが好きだったんですけど、中学校の先生が色んな音楽を聴かせてくれたことでそっちにも興味を持つようになったんです。たとえばマイケル・ジャクソンやスティーヴィー・ワンダー、ボーイズ・II・メンとかが好きで、彼らを真似するようになって今の自分があるのかなと。
●全員のルーツにブラックミュージックがある?
田辺:僕はこのバンドに入ってから、そういう音楽も聴くようになりましたね。新しいバンドを始めるなら、今までと違うことをやりたいなとは思っていて。ただロックはすごく好きなので、そこは忘れたくなかったというか。「元々ロックをやっていた人たちが頑張ってファンクやダンスミュージックをやっている」みたいなイメージで僕はやっているんですよ。そういう不器用さみたいなものが逆にカッコ良いかなと。
酒井:グルーヴとかダンスというコンセプトをバンドとして持ち始めてから、そういう音楽を研究するようになったというか。自分は元から色んな音楽が好きで聴いていたんですけど、その中から「こっちの方向かな」という感じでポンと出てきたんです。そしてBRADIOはそれができるバンドだったので「やったら面白いんじゃないか」というところから、こういう形になりましたね。
●ブラックミュージックにどっぷり浸かってきたわけじゃない人たちが、自分たちなりの解釈でそれをやることの面白さというか。
大山:元々はメロディックパンクのシーンにいたようなメンバーなので、本格的なファンクバンドと一緒にやった経験は誰もないんですよ。でも逆に、その感覚がすごく良いのかなと思っていて。そういう人たちがファンクとかを取り入れた音楽をやった時にどんなものになるのかが自分でも楽しみだし、常に新しさも感じられる。そこが僕らの武器かなと思っています。
●結成時から明確なイメージがあったわけではない?
真行寺:最初はまだフワッとした感じでしたね。今回の作品を作るタイミングで、広がっていた方向性がシュッとまとまったかなと。
大山:2010年に結成してからこれまでに2作のシングルを出しているんですけど、最初はそれぞれがやってきた音楽と今やりたい音楽を突き合わせてみた時に色々なアイデアが出すぎちゃって。だから、1作目は「こういう人たちが集まるとどういう音楽ができるんだろう?」っていう実験的な感覚で作った作品だったんです。
●その段階ではまだ固まっていなかったと。
大山:その次の2作目で、自分らの中でも少し方向性が見えてきたところがあって。ファンクとかパーティー感のあるダンスミュージックの要素を取り入れつつ、ロックというベースがある中でどう表現できるかということを少し形にできたかなと。そこから今回の作品では、BRADIOとして打ち出したい方向性がようやく1つ見えたという意識はありますね。
酒井:自分もこのバンドをやるとなった時に、何をやるかは明確に決めていない状態で。この3年間で模索してきて、やっと今のスタイルができた感じなんです。
真行寺:僕は前のバンドではベースボーカルだったんですけど、このバンドでピンボーカルをやることになって。そこで本気で歌をやってみようかなと決心して、歌と向き合う時間が増えていったんです。ちょうどその頃からブラックミュージックにどっぷり浸かっていった自分の中での流れと、バンドとしてファンクやダンスミュージックを取り入れていこうという流れが重なって、自分のスタイルも変わっていきましたね。
●パーティー感のあるライブやサウンドが、バンドとしての大きな特徴かなと。
大山:ソウルやファンクと言っても、小難しい音楽という感じの打ち出し方はしたくなくて。「何かよくわからないけど、すごく楽しいな」と思ってもらえるライブをやりたいという気持ちは元々あったんです。観てくれた人が日頃の嫌なことを忘れて楽しい気分になれるライブというか、日常感がないような空気を作り出したいんですよね。だから衣装とかも含めて日常とは違うものを見せたいし、それを徐々に目に見える形でやれるようになってきてはいるのかなと。
●今も変わり続けている途中だったりする?
大山:何か1つに固定はしたくなくて。作品ごとでも色んな見せ方があっていいと思っているんですよ。「こういう人たち」という大きな軸はある中で、「今回はこういう感じで」という小さなコンセプトはどんどん出していきたい。バンドとしても成長していって、もっとエッジやパンチを出したいという気持ちはありますね。
●軸はしっかりとありつつ、新しいことをどんどんやろうとしている。
大山:たとえばグルーヴ感というのはこのバンドにとって外せない要素なんですけど、それだけに囚われてしまうような活動はしたくなくて。「もっと雑な部分があってもいいじゃん。単純に楽しくてもいいじゃん」みたいな発想は忘れたくないんですよ。
●曲調も初期とは大きく変わったんでしょうか?
大山:もちろん初期からつながっている部分もあるんですけど、今回の作品は自分たちにとって全く新しいスタイルや感覚のものができたという意識はあります。
●どれも初めて音源化する新曲なんですか?
大山:ライブでやっている曲もあるんですけど、音源としては全て新曲ですね。
●M-6「Tonight! Tonight! Tonight! -決戦は今夜-」は実際にライブでやっているのを見ましたが、定番曲だったりする?
大山:これに関しては、実はわりと昔からある曲なんですよ。ライブでは盛り上がる曲なのでずっとやっているんですけど、音源化するには自分たちの中でしっくりこない部分があったんです。でも今回はどうしても作品に入れたくて、アレンジも練り直して。ライブとは全く違う形に再構成して、やっと「こういう感じが良いよね」というものになれたので今回は収録しました。
●他にライブでよくやっている曲というと?
大山:リード曲にもなっているM-1「Golden Liar」とM-4「Take Me Higher」ですね。「Take Me Higher」は今作を作る上での“入り口”になった曲で、これができたことで次の方向性が見えてきたんですよ。だから絶対に今回は入れたかったんです。この曲がまずある上で、他の曲たちをバランスよく作れたと思います。
●「Take Me Higher」でも特徴的な日本語と英語を織り交ぜた歌詞が、80年代後半〜90年代初頭のバブル期に流行ったJ-POPを彷彿させる気がします。
真行寺:以前は英詞にこだわっていた時期もあったんですけど、このバンドで初めて日本語詞を書いたんですよ。そこで「なぜ日本語がダサいって思うんだろう?」と考えたことがあって。
大山:歌詞は真行寺が書いているんですけど、「何がカッコ良くて、何がダサいのかがわからない」という話になったんですよ。その時にもう「何がダサいかなんてわからないし、気にしなくてもいいんじゃない?」という感じになって。90年代のJ-POPって今聴いても、すごく良いんですよね。自分らの年代的な部分もあるんでしょうけど、それが「カッコ良いじゃん」って単純に思うから。
●文字で見るとダサくも思えるような言葉をカッコ良く歌えているのがすごいなと。
真行寺:歌詞についてはメンバーにも相談するんですけど、自分でも「これ、大丈夫かな?」みたいな言葉を入れたりしても(メンバーからは)「逆に良い」みたいな反応があるんです。歌詞を書いていると考えすぎちゃうので、あえて外してダサくやってみると意外と耳につくというか。「この人、何を言ってるの?」みたいなほうが逆に良いんじゃないかなと。
●M-2「語らぬ愛は美しい」の“僕はタイガー 大胆にタイガー”なんて、普通は言わないですよね?
真行寺:普通は言わないです(笑)。歌詞を書いていると、たまにすごくフザけたくなる時があって。行き詰まった時とかに、エロいこととかを書きたくなる時があるんですよ。それがこの曲だったんです。
●逆に「Golden Liar」の“嘘も重ねりゃいつかは真実”という歌詞にはメッセージ性も感じさせるかなと。
真行寺:これはフザけずに書きました。最初から最後まで聴いてもらえばわかるような、時間軸や物語性がある歌詞になっています。よく考えて書きたい時もあれば、ニュアンスを重視したい時もあって。今回はその両方を良いバランスで入れられたかなと思います。
●M-5「雨恋」はほぼ日本語詞で、他とはまたタイプの違う曲というか。
真行寺:これは普通のJ-POPみたいなものもやりたいなと思って、作った曲なんです。色々とやる中でファンクやソウルをディープに追求するのも良いんですけど、結局はいかにポップな感じで聴かせられるかというのを大事にしていて。これも練りに練った感じの曲で、フザけてはいないですね。
●1曲を完成させるまでにも、時間をかけて練り上げていくんですね。
酒井:M-3「Playback」は自分が元ネタを持ってきたんですけど、この曲に関しては本当に苦戦したんですよ。元々は全然違うアレンジだったところからバラードっぽくなったりもして、最終的にこういう形になりました。
大山:今作の中ではこの曲が一番苦戦したと思います。今回の6曲の中にはスッとできたものもあれば、すごく苦戦したものも入っていて。色んなタイプの曲が入っている中にも、これまでの自分らを詰め込めたなとはすごく思っているんです。
●これまでの集大成的な作品になっている。
大山:今回のミニアルバムを作るにあたってはもちろんライブでやっている曲も入れたかったし、逆に全く新しいものも入れたいという気持ちがあって。次への可能性も感じさせる部分も、ちゃんと作品に入れられたかなと思っているんです。だから満足のいく曲が揃っているというか。次のステップというところもイメージできているし、1枚目として本当に良い作品になったなと感じていますね。
●タイトルを『DIAMOND POPS』としたのは?
大山:完成した6曲を聴いた時に、1曲1曲に違うコンセプトや良さを持ったものが集まっていて、本当にバラエティがあるなと思って。最初に“DIAMOND”という言葉が浮かんだんですけど、宝石って見る角度や光の当て方によって色んな輝きを見せるじゃないですか。今作はそれに近い感じで、聴く人の状況や年代によって印象が全然違うと思うんですよ。たとえば年齢層が高めの人なら懐かしさも感じるだろうし、若い子たちが聴いたら逆に新しいと感じたりもするのかなと。色んな聴き方ができる作品になったけど、総じてどの曲もポップだなというところで今回はこのタイトルにしました。
●収録曲のイメージを象徴しているんですね。
酒井:自分も6曲を並べて聴いてみた時に、キラキラしている感じが宝石っぽいなというイメージを持っていたので『DIAMOND POPS』というのがまさにバシッとハマったなと思います。
田辺:一番良いなと思ったのは、僕らにしかできない6曲が揃っているところなんです。たとえば別の人がギターを弾いたら、全然違う曲になってしまうような。それはバンドにとってすごく大事なことで、オリジナリティがあるということだなと。良い意味でバラエティがありつつも、6曲の芯にあるものは全くブレていないというところがBRADIOっぽいというか。
真行寺:みんなのやりたかったことが、『DIAMOND POPS』という言葉でまとまった感じがします。今回はそれに尽きますね。
Interview:IMAI