メジャーデビュー作となった1stアルバム『OPEN!!!』を昨年3月に発売して以来、1年半以上の時間を経てBARBARS(バーバーズ)がニューアルバムを完成させた。初めて外部からプロデューサーを招き、試行錯誤の末に生み出された今回の2ndアルバム『CUT! CUT! CUT!』。自分たち自身を見つめ直しながら余計なものはカットし、新たな挑戦にも貪欲に挑んできた成果が今作には現れている。みんなと同じ日常と感情を全部ゴチャマゼにして、元気にさせちゃう強がりなロック。3人の“強がりサーカス団”が贈る、2つ目のおもちゃ箱をのぞいてみてはいかが?
●去年の3月に1stアルバム『OPEN!!!』を発表してから1年7ヶ月ぶりの新作ということで、随分と期間が空きましたね。
影山:ちょうど今から1年前くらいに次のアルバムを作ろうという話になったんですけど、気付いたら1年経っていましたね…。
●アルバム制作に苦戦した?
影山:それが一番にありますね。
湊:今回はプロデューサーが入ったことで、作り方を変えたんですよ。それで時間がかかっちゃったところもあるかな。前作は今まであった曲のベスト盤的な部分があったので割とスムーズに制作できたんですけど、今回は1から作った感じで。しかも前とは違う色や成長した部分も出していきたい気持ちもあったので、色々と試行錯誤している内に時間が経っちゃいましたね。
●曲の作り方が変わったんですね。
湊:私か未希(Vo./Ba.田中)が持ってきた元ネタを3人でセッションしながら作っていくという基本的な方法は同じなんですけど、今回は“メロディを活かすにはどうすればいいか”というところを重視していたんです。以前はアレンジから固めていく形が多かったところを、今回はメロディとだいたいの骨格を固めてからアレンジを詰めていった曲もあって。アレンジは後でやるパターンが多かった気がします。
●収録曲は、どれも今作に向けて作ったんですか?
影山:M-2「Honey? Money? Happy!」とM-6「Mr.Mr.」、M-11「イエローロード」は昔からあった原曲を引っ張り出してきて、作り直した感じですね。他の曲はどれも新たに作りました。
●過去のストックは前作で全て出し尽くした感じ?
湊:前作には当時のライブでよくやっていた曲をほぼ入れたんですけど、そこでストックを出し尽くしたというわけではなくて。今回はそういうものよりも、新しく作った曲を出したいという気持ちがあったんです。
●どんなアルバムにしたいというイメージはあった?
湊:“もう少し歌やメロディを立たせた感じにしたいな”とは思っていましたね。“伝わりやすさ”や“わかりやすさ”を、特に歌詞では重視して作りました。
●確かに前作で目立っていた奇抜な歌詞が減って、シンプルな言葉が増えた気がします。
湊:そこは意図的に変えましたね。言葉遊びみたいなことが元々好きなんですけど、それだけじゃ伝わりづらい時もあったから。自分の中でも色んな葛藤があって大変だったんですけど、普通に話していてわかるような言葉で今回はもっとシンプルにしてみようかなと。心の無駄をカットするという意味でアルバムタイトルも『CUT! CUT! CUT!』にしたので、そういう部分は意識して作りました。
●歌詞に関しても、プロデューサーの方からアドバイスをもらったりしたんでしょうか?
湊:「こういうことを言いたいんだったら、こういう言い方のほうがより伝わるよ」といったアドバイスは、たくさんもらいましたね。
●初めて外部のプロデューサーが入ったことで得たものもあったのでは?
影山:プロデューサーが入ることによって、メンバーが1人増えるような感覚があったんです。僕たちよりも知識や経験が豊富な方なので、そういう人の意見を聞いて新しい発見をできたことがすごく大きくて。それによって今回のアルバムでは成長できたなと思っています。自分たちだけでは気付けなかったことがたくさんあったので、そういうものを知って視野が広がった部分はありますね。
●逆に、初めてで苦労したことはなかった?
田中:自分たちがやりたいことをプロデューサーに伝えるのが、最初は大変でしたね。こういうバンドなんだとわかってもらうために、ライブを何度も観に来てもらったりして。
●まずは感覚を共有しようとした。
田中:そこが難しかったですね。ステージについて最初に「もっと“素の感じ”が良いんじゃないか?」と言われたんですけど、私の中で“素の感じが良い”という意味が理解できなくて。ステージ上のBARBARSと、普段の私たちに距離があり過ぎると言われたんですよ。でも私は「それが良いんじゃん」と思っていたりもして、(言われたことを)自分の中で消化するのがすごく難しかった。
湊:ステージに上るというのは特別なことだし、普段着のままでライブなんてできないんじゃないかなって。でも“歌詞は身近なことを歌っているのに、衣装はそういうものとはかけ離れているのはどうなんだろう?”ということを自分でも考え始めちゃったりして…。
●確かに普段の姿とステージ上では、ギャップがありますからね。
影山:良くも悪くも俺が一番ステージ上と普段の印象が近いので(笑)、2人ほどはそういうことを言われなくて。ライブをしている時と普段1人でいる時とではギャップがあって当然なんですよね。ただ、ステージ上でも物販席にいる時でもお客さんの前ではできるだけ同じテンションでいようと意識するようにはなったかな。
田中:私なんかは色々と言われている時も意味がわからなくてもう半泣き状態なんですけど(笑)、そういう時にカゲ(影山)は冷静だなと思ったりして。でも何回もライブを観に来てもらったりしている中でお互いの距離も縮まってきて、言っていることの意味もわかってきたというか。最近では、それを消化しつつ吐き出すという行為ができているんじゃないかな。
湊:言われたことも消化しつつ、メイクや髪型も以前とは変わってきたので、そのあたりでバランスも取れるようになってきました。
●やっぱり、ステージと普段とではスイッチを切り換えている感じなんでしょうか?
田中:それはありますね。でもどっちの自分もウソじゃないと思っていて。今は“笑いたいから笑う”とか、思っていることをストレートに出すようにはなったと思います。
●作らなくなったというか。
田中:もちろん今でも作っている部分はあるけど、今までは無駄に作っている部分が多くて。“こういう部分はなくてもいいんだ”っていうところがわかってきましたね。勘違いしていたところを大幅にカットした感じです。
●湊さんも同じような葛藤はあった?
湊:私の場合は“作る、って何なんだろう?”みたいな、もっと深いところまで入っていっちゃって…。色んなことを試してみた結果、自分の中にある一部がすごくブーストされて出ていると考えたらしっくりきましたね。
●自分の中にないものを作って見せているわけじゃなくて、ちゃんと自分の中にあるものを増幅して見せているだけだと。
湊:そういうふうに考えるようになってから、すごく自然にやれるようになりましたね。今まではきっと“こうありたい”というものが出ていたんだと思うんですけど、そこに自分の中にはないものもあったことで外から見ると違和感があったのかなって。そういう部分でも色んなことを試して、成長できた1年だったと思います。
●その成長をプロデューサーの方が後押ししてくれたという感じでしょうか?
湊:押し付けるようなことは言わずに、まず私たちがこの先どうしたいかを訊いてくれて。そのために必要な方法を色々と教えてくれたんです。道具を与えてくれて、料理するのは私たち自身という感じでした。性格的にも合う方だったので、一緒に楽しくやれましたね。
●曲作りで煮詰まったりは…?
湊:煮詰まりました(笑)。今まで自分たちだけでやっていた時なら“これで完成!”となっていたものが、“何かが足りない”となった時にこれ以上どうしたらいいのかと悩む時もあって。迷路に入っちゃうことはありましたね。
●今までよりも広げるために苦労した。
湊:今までは曲ができたらとりあえずライブでやって、そこからどんどん変わっていくこともあったんです。でも今回はまずレコーディングが先にあったので、ゴールがどこなのかというところで悩んだりして。本当に手探りな感じで進んで行きました。
田中:プロデューサーにはそこの解決策も見えていると思うんですけど、あえて言わずに何とか自分たちの中から答えを出させようとしてくれるんです。そこがなかなか出せなくて、もどかしい部分はありましたね。でも技術的なアドバイスを頂いたことで、今まで3ピースであるがゆえにあった音の薄さを解決することもできて。“なるほどな”ということが多くて、すごく勉強になりました。
●徐々に消化していった感じなんですね。
田中:今作の曲にはまだライブでやれていないものも結構あるし、既にやっている曲の中でもまだ消化しきれていない部分があって。これからライブでやっていく内に、イメージがだんだんできてくると思うんですよ。M-3「残響サブストーリー」も最初はまだ消化しきれていない部分があったんですけど、PVを撮ったりしている内にだんだん自分たちのものになっていったというか。
湊:今まではライブでやっていく中で反応が悪いものは外していったりできたんですけど、今回は先にリリースしたものをライブでやっていくわけなのでそういうわけにはいかなくて。ライブでやっていく中でも変わっていくだろうし、今は聴いてくれた人たちがどう思ってくれたのかなと考えてソワソワしています(笑)。
●ライブでまだあまりやっていないから、実際の反響がわからない。
影山:そうなんですよね。CDとしては完成しているけど、ライブとしてはまだやっていないので、お客さんがどう思っているかはわからないから…。お客さんの反応を見て変えることもあれば、自分たちから“この曲はこういうノリ方なんだよ”と提示する場合もあると思うんです。
●良く言えば、伸びしろがあるというか…。
影山:伸びしろがありますね(笑)。
湊:ここからスタートというか、ライブで完成させていく感じだと思います。
●前作はインディーズ時代の集大成的な作品だったので、今作はそこからのまた新たな一歩になっている。
湊:新しいことがもっとできないかなとは、いつも思っていて。もっとワクワクできることや楽しくなれることをいつも探しているんです。自分の中でまだ出していない部分もあるし、メンバーのそういう部分も引き出せるような曲ができたらいいかなって思います。
影山:何でもありだと思っているし、“俺たちはこれじゃなきゃダメだ”という固定観念はなるべく消し去ろうという意識はいつもあって。“あんまり変わりすぎても…”とかは考えずに、どう転んでもいいみたいな気持ちでいますね。
●「イエローロード」のイントロがピアノで始まるのも新しい感じでは?
田中:これは私の中でイメージがあってプロデューサーに相談したら、こういうアレンジになったんです。
湊:前作の時はライブ感重視というところで3人の音にすごくこだわっていたんですけど、今回はそういうのもなくなって“良ければいいや”っていうか。他の音が入っても、3人の良さは出せるから。そこは柔軟になりましたね。考え方や視野も広がったと思います。
●先ほども言っていたように余計な部分はカットして、広げる部分はちゃんと広げられた。
田中:タイトルが『CUT! CUT! CUT!』なので、“他人との壁や余計なプライドだったり色んなものをカットしていこう”みたいなことを最近のライブでもよく言っているんです。もしかしたらなくしちゃいけないものまでカットしているのかもしれないけど、「なくしたらまた入れたらいいじゃん」と考えられるようになりましたね。今はひたすら目の前にあるものを消化することに必死なので、ライブはすごく生々しいと思います。
●11/9には、リリース後初の自主企画も予定されています。
田中:色んな人から客観的なアドバイスをもらいながら無我夢中で作ったアルバムなので、どんな反応があるか自分でも楽しみなんですよ。この先もライブの中でどんどん変わっていくと思うし、見逃さないで欲しいです。
影山:新しいことにも挑戦したし、いらないものも捨てて、この1年で確実に成長してこれたと思うんです。そういうものを今作にも詰め込んだので、これからのライブでも出していけたらなと。1年前よりも確実に良くなっているので、ぜひライブを観て下さい!
湊:良くも悪くも真面目な人たちが集まっているバンドなので、楽しむことを忘れないようにしたいなと思っていて。いつも楽しむことを忘れずに、どんどん前進していきたいですね。
Interview:IMAI