SPECIAL LIVE REPORT:amenoto
2013/11/07@新宿Motion “amenoto ep” release party
彼女はどんな表情で歌うのだろうか? 音源でしか聴いたことのない自分には、その物憂げで切ない歌声がどのような姿から発せられるのかまだわからない。Vo./G.石井翠のソロプロジェクトとして、2013年初夏より始動した“amenoto(アメノト)”。前号の誌面でも取り上げた1st ep『amenoto ep』を11/7、つまりこの日から販売開始することを記念してのrelease partyが開かれた。
新宿Motionのステージにメンバーを伴って登場した彼女は、可憐なワンピースに身を包み上手にぽつりと立つ。ステージの隅に立っている細身で小柄な姿からは、他のメンバー3人と同じ空間にいるにもかかわらず“ぽつりと”という表現が浮かんでしまう。そんな寂しげな、“孤”のオーラを漂わせているのだ。演奏がスタートし、歌い始めた彼女の表情はまだ淡々としている。冷静さの中に何らかの感情を押し隠し、封じ込めてしまっているかのように。
だが、演奏が佳境に近付きサビを歌い上げる瞬間、彼女は泣き出しそうな顔をした。それは単なる孤独や悲しみの表出なのだろうか? いや、違う。全てを諦めてしまっているかのように、ネガティブな視点で描かれるamenotoの楽曲には必ずどこからか射し込む光が感じられるのだ。決して諦めきってなどいない。だからこそ、彼女は詩を書き、うたを歌い、普段は心の奥に閉じ込めた感情をメロディに乗せて解き放っていく。
“酸素不足 喘いでいたんだ”と歌う時、彼女は実際に喘ぐように苦しい表情を見せるかもしれない。そう歌う1st epのリード曲「ハロー」での、“ハロー のぞんだ世界はどう?”という問いかけは自分自身に向けられながら、作品化を機会にして他者にも向かい始めている。自らの内面を深くえぐり出し表現することは苦しいが、それが誰かの心を揺さぶった時には少なからず喜びを生むことは間違いないだろう。
いつか彼女がステージ上で、自然な笑みを浮かべる日がきっと来る。そう思えたのは、この日演奏された楽曲に大いなる可能性を感じたからだ。1st epに収録の「ハロー」「ゲシュタルト崩壊」「ひとりあるき」という3曲に加え、アンコールも含めて全8曲を披露。その中には前述の3曲に勝るとも劣らない、強力なフックを持った楽曲がいくつもあった。そう、amenotoというアーティストの歩みはまだ序章が始まったに過ぎない。その姿を照らし出す光は、時と共に強さを増すはずだと思った。
TEXT:IMAI