先日渋谷CLUB QUATTROでABSTRACT MASHのワンマンライブが行われた。彼らにとってワンマンライブは約1年9ヶ月ぶり。この日は“開場から開演までの時間も楽しんでもらいたい”というメンバーの想いから、ウェルカムアクトの出演もあり、あっという間に開演時間を迎える。
SEが鳴り始めると、オーディエンスから歓声があがる。メンバーが手を上げながら登場。榊巻雄太(Dr.)のカウントで始まった曲は「Inside the running soul」。メロウなギターの音と、村松拓(Vo./G.)の伸びやかな声が会場に響き渡る。会場全体が心和らぐような雰囲気に包まれる中、次の曲は「Where's My Stand」。サビで一気に照明が明るくなりそこに見えたのは、村松の笑顔と、オーディエンスが天井に向かって上げている手。小林雄剛(G.)が「Nothing can be printed with you」のキャッチーなメロディを弾き始める。榊巻が豪快にドラムを叩き、梨本恒平(Ba.)も楽しそうに一歩前に出て体を揺らしながらベースをかき鳴らしている。
「みんなを楽しませて帰りたい」と言って始まった曲は「NEWS」。青い照明の中、力強い村松の声に囁くようなコーラスが重なる。榊巻のドラムプレイがさらに曲をエネルギッシュにする。語りかけるように、そして時々叫びながら歌われる「ALL OF LIFE」、メンバー全員がすごく楽しそうに演奏する「Displayed mind」、村松の響き渡る声が印象的な「Turn your reason」が続けて披露される。村松の「QUATTRO楽しんでいますかー!」との声に、会場はオーディエンスの歓声でいっぱいになる。
「今日をとても楽しみにしていて、それぞれセットリストを考えた」と話す村松。「ここに集まった人の分だけハートがある。それぞれ楽しんで」と言って始まった曲は「Aches」。メンバーそれぞれが自分の音を奏で、そこに乗っかる村松の声が聴いていてとても気持ちがいい。梨本の軽やかでポップなベースラインもマッチしている。彼らを見ていると、メンバー全員がABSTRACT MASHのことが好きなのが伝わってくる。続いて新曲の「紫陽花を描こう」。客席はオーディエンスの手拍子で溢れる。力強い演奏と日本語詞、説得力のある村松の声は確かにオーディエンスの心に届いているだろう。「We're lonely parallel」が始まるが、客の手拍子は鳴り止まない。ライブも中盤を迎えたというのに熱気は右肩上がりだ。
少し照明が落ち、村松が話す。「高校の頃からの親友が少し前に逝ってしまって。その時に書いた歌詞です」と言って始まった曲は「finder」。切ないメロディと曲調で、そこに込める村松の想いがひしひしと伝わってくる。高音で歌う声がとても綺麗で、より切なさを込み上げさせる。
「Silent Wheel」ではメンバー全員が気持ちよさそうに演奏し、続いては「White schedule」。小林が高音のフレーズを奏でると、村松はオーディエンスに手拍子を求める。手拍子だけじゃ物足りず、体を左右に揺らせているオーディエンスが何人もいる。間奏ではメンバー全員が全身で思いっきり音を奏で、榊巻はパワフルなドラムを終始笑顔で叩いている。
榊巻がリズムを取り始めると、それに合わせて再びオーディエンスの手拍子が響く。「来てくれた人の心に少しでもきらめきを残せるように」と村松が話して始まったのは「Save the world」。大歓声の中、村松が「楽しんでますか渋谷ー!」と叫ぶとオーディエンスはそれまでの倍の声量で村松に応える。それを聴き、メンバー4人は本当に楽しそうだ。「大切な人の笑顔が見たい、そんな曲」と紹介された「Aspili」が始まり、その言葉によって会場が一気に幸せな気持ちに包まれる。「Livily play」では村松の「飛ぶぞ!」と言う合図にオーディエンスは跳びはねる。村松はとても楽しそうに歌う。それにつられてオーディエンスも笑顔になる。
まだまだ勢いは止まることはなく本編最後の曲、「I am」。小林がギターをかき鳴らすと村松は「ラスト1曲付いてきて下さい!」と叫ぶ。きらびやかな照明の中で見えるのは、踊ったり、手を上げたり、それぞれ楽しむオーディエンスの姿と、メンバー含めそこにいる全員の笑顔だ。久しぶりのワンマンライブということもあり、ただただその時間、その空間を楽しんでいる彼ら。大熱狂の中、本編が終了した。
まだまだ楽しみたいオーディエンスは大拍手とともにアンコールを求める。その中再度登場するメンバー。「今年初めてのライブがワンマンライブで、昨日の夜眠れないくらい緊張した。でもみんなの笑顔を見たらすごく嬉しくなった」と榊巻。「榊巻とは対照的に一切緊張はしなかった(笑)。明日からのことはノープラン。QUATTROでやると決めてからも9年かかったしね」と梨本が笑う。村松がビールを持って再登場し、始まったのは「Must be」。ゆっくりと体を揺らしながら聴き入るオーディエンス。まだまだ余韻は続く。
「結成の時からギターの小林が曲書いてるんだよね。天才だと思ってる。なんか一言」と村松が話を振ると小林は「みんなの笑顔が見れて嬉しい。最高です、ありがとう」と感謝を述べた。「また帰ってきたい」と村松の想いで始まった最後の曲は「1mmタール」。会場のボルテージは最高潮に達し、最後まで心に染みる村松の歌声がそこにあった。全員笑顔のまま、久しぶりのワンマンライブは幕を閉じた。お互いがお互いを尊敬していることが雰囲気で伝わって来た。いつかまた近い未来に彼らが楽しそうにしている姿が見たい。
TEXT:YUINA.HIRAMOTO
ABSTRACT MASHインタビュー7年の間、色褪せずにずっと輝き続けてきた4人の想いが、音楽として再び鳴り始める。村松・梨本・榊巻の3人に話を訊いた。
今年1月、自身のTwitterにてNext Liveを発表したABSTRACT ...