ジャパニーズ・ロックンロールリヴァイヴァル・ムーブメントの若き旗手“The John's Guerrilla”を率いるLeo(Vo./G.)、元Radio Foundationのギタリスト・Ryuichi(Vo./G.)、10代からプロのベーシストとして数々の舞台で活動してきたRyuki(Ba.)。そんな3人が集い、2013年3月3日に結成されたバンドがALL CITY STEPPERSだ。w-inds.でも活躍するRyuichiに秘められた抜群の音楽センス、Ryukiの卓越したベース・テクニック、Leoが放つ唯一無二の歌声と存在感。デビューシングル『Precious Girl』では、この3人にしか生み出し得ない音が輝きを放っている。
●3人は元々どういうキッカケで出会ったんですか?
Leo:RyuichiがやっていたRadio Foundation(以下レディオ)というバンドがあって、噂は聞いていたんですよ。その頃は俺ら(The John's Guerrilla/以下ジョンズ)もちょうど1stシングル(『SHOOT THE RADIO』)を出したばかりで、「変わり者が出てきた」みたいに言われていて(笑)。「面白そうなバンドがいるから一緒にやってみよう」ということで、新宿LOFTで対バンをしたのが最初の出会いでしたね。
Ryuki:それが5年前のことなんですけど、僕とRyuichiは幼なじみなんですよ。僕の両親が札幌出身で、しかも父親同士は昔一緒にバンドをやっていたりもして。だから子どもの頃から夏に北海道の実家に帰省した時は、よく一緒に遊んでいたんです。
●3人が出会ったのは、2008年に対バンした時だったということですね。
Leo:俺はそこで初めてレディオのライブを観たんですけど、ガレージっぽい感じで俺らのやりたい音と近かったんですよ。アークティック・モンキーズやザ・ストロークスみたいな感じというか。カッコ良いなと思っていたら、向こうもシンパシーを感じてくれたらしくて楽屋でレディオのVo.(宮奥)謙馬が話しかけてくれたんです。その時、Ryuちゃん(Ryuichi)はジョン・レノンみたいなメガネをかけて、全然喋らなかったんですけど(笑)。
Ryuichi:僕も最初はLeoが恐くて。絶対に触れちゃいけないヤツだと思っていましたね(笑)。
●お互い、見た目でビビっていたと(笑)。
Leo:その時、Ryukiは普通にお客として観に来ていて。
Ryuki:謙馬とも友だちで、その日はなぜかリハーサルから観ていたんです(笑)。謙馬はジョンズのリハを観ながら「このバンド、ヤバい!」と言っていて、「やっと相性の合うバンドを見つけたね」と2人で話していたんですよ。だから、ライブ後の打ち上げでも一緒に仲良く話したりして。
Ryuichi:謙馬がその時にLeoと携帯電話の番号を交換したと聞いて、「勇気があるな」と思いましたね(笑)。
●そこから仲良くなった?
Ryuki:謙馬が俺のことをすごく気に入ってくれていて、Leoに「最高のベーシストなんだよ」と言って紹介してくれたんです。そこで俺も連絡先を交換したんですけど、当時はまだ特に連絡を取り合うわけではなくて。
Leo:プレイは観ていないけど、何か面白そうなヤツだなとは思いましたね。レディオとはそこからスタジオで一緒になったりして、たまに会うようになったんです。クアトロ(渋谷CLUB QUATTRO)でワンマンをやったという話を聞いて「すごいな」と思いつつ、俺らはマイペースに活動していた感じで。
Ryuichi:こっちも「Leoがワンマンでギターを燃やしたらしいよ」とか噂は聞いていましたね(笑)。
●お互いの噂は耳にしていたけど、直接的な交流があったわけではない。
Leo:プライベートで遊ぶという感じではなかったけど、“心のライバル”だと俺は思っていましたね。そういう中で、Ryuちゃんがレディオを抜けることになったということを聞いて。
Ryuichi:僕はw-inds.の活動も忙しかったし、自分が抜けることでもっと自由に活動できるんじゃないかなと思ったんですよ。僕が抜けた後も謙馬の弟が新たにギターとして加わって半年くらい活動していたんですけど、2009年7月に謙馬が急に亡くなってしまって…。その葬儀会場で久々にLeoとも再会してジョンズの音源をもらったりしつつ、お互いの心の傷を埋め合ったというか…。
●そういう中で関係性を深めていった。
Leo:その1年後、謙馬の一周忌に渋谷PLUGでイベントがあって、そこで俺もライブをやったんです。俺の生き方をそのまま表現するようなライブをやったら、それをみんなが素直に受け入れてくれた感覚があって。そこで本当の友だちとして、「謙馬の遺志を受け継ごう」みたいな感じになったんですよ。それからたまにスタジオへ一緒に入ったり、遊んだりもするようになりましたね。
Ryuichi:僕は個人的な活動として、周りの仲間と一緒にスタジオに入ったり、楽曲制作をしたりしていたんです。三軒茶屋のSTUDIO FAMILIAにみんなで集まってセッションしたりしている中で、Leoもそれに快く参加してくれていて。
●当時、LeoくんはSTUDIO FAMILIAで働いていたんですよね。
Ryuichi:STUDIO FAMILIAがみんなの溜まり場みたいになっていたんですよね。そこに行けば絶対にLeoがいるし、「これヤバいよ」とか言ってレコードを聴かせてくれたりもして。そういう些細な日常をすごく刺激的に感じたし、お互いの音楽について情報交換することが自分の音楽人生にすごく影響するんだなということも知ったんです。Leoが別でやっているバンドのライブも観たりして、その中でもBABYLON PANICからは衝撃を受けたし、TERROR FAMILIAもすごく好きで。
Ryuki:俺とLeoは2年前くらいから、そのTERROR FAMILIAというバンドを一緒にやっているんですよ。
●LeoくんとRyukiくんは、その時点で既にバンドを始めていたと。
Ryuichi:TERROR FAMILIAのVo.Diana Chiakiとも昔から知り合いだったので、ライブを観に行ったんですよ。そしたらみんなが集まっていて、すごく楽しそうなことをしているなと感じて。
●Leoくんのやっていることに惹かれる気持ちがあった?
Ryuichi:Leoの周りにはクリエイターや芸術家みたいな、自分のエネルギーや魂を燃やして表現する人がたくさんいるんですよ。それぞれに自分のやりたいことを表現している人たちが俺には美しく見えたし、そういう人のエネルギーを垣間見ることって普段の生活ではあまりないから。実際にそういう人たちに会ってエネルギーを感じたことで、すごく魂を揺さぶられたんです。みんながLeoの人柄や生き方に惹かれて集まって、自分のエネルギーを瞬間的に爆発させている姿が素敵だなと思ったんですよね。
●そこで自分もそういうことをやりたいと思ったことが、結成につながっている?
Ryuichi:ちょうど(w-inds.の橘)慶太が今年ソロ活動を再開するということもあって、自分も新たな活動をやりたいなと思っていたんです。w-inds.での活動もたくさんの人から応援してもらっているし、評価してもらっていることは実感しているんだけど、それでも自分の中には燃やし切れていないエネルギーがまだあることを感じていて。
●そのエネルギーを燃やすことのできる新しい場所を求めていた感じでしょうか?
Ryuichi:レディオをやっていた頃は地方にツアーへ行く時もみんなで一緒に車で移動したりして大変だったけど、そういうくだらなくも楽しい音楽活動をまたやりたいなという想いがきっとどこかにあったと思うんですよ。そういう時にLeoやRyukiの周りにある音楽が僕を駆り立ててくれたような感覚があって。
●そこから3人でのバンド結成へと至った?
Leo:お互いの気持ちやタイミングも重なって去年の冬頃から、すごく会うようになって。そういう時にRyuちゃんから「LeoとRyukiと3人で一緒に音楽をやりたいんだよね」と言ってくれたんですよ。謙馬が亡くなった後にレディオは解散したんですけど、Ryuちゃんの中でも悔しい気持ちがあったと思うんです。脱退しているとはいえ、親友だった謙馬のやり残したことや遺志みたいなものを一番汲んでいると思うから。俺も謙馬が大好きだったし、そういう精神的な必然性も重なっての結成でしたね。
●この3人にも必然性を感じていたのでは?
Ryuichi:Leoの声はすごくピースフルだし、ハートフルに音楽のことを考えて活動している。Leoみたいな人って、自分の周りには他にいないなと思うんですよ。
Leo:Ryuちゃんは俺から見ても音楽的な才能がすごくあって、センスが良いんです。Ryukiが(ベースを)上手いのは一緒にバンドをやっているから、前からわかっていて。お互いにないものを持っているから、3人でやれば絶対に面白いだろうなと。それに3人ともビートルズが好きだったりして、お互いの好きな音楽やルーツが似ているんですよ。ストリートに根ざしているカルチャーも好きだし、友だちとして「それ、わかるわ!」ってなれる良い関係なんですよね。
●感覚を共有できるというか。
Leo:そうなんですよ。それぞれが活動してきたジャンルは違うけど、志は一緒だから良いんですよね。
●サウンド的なイメージはあったんですか?
Ryuichi:それぞれが今までやってきた活動とは違う新しい音楽を生み出したいなという気持ちはありましたね。それぞれの根底には60年代からのルーツ・ミュージックが深く根付いているから、同じ音楽を聴いた時にも一緒に感動できたりするんだろうなと思っていて。だから自分たちのルーツにあるものを、この3人で表現したいとはずっと思っていたんです。
●それを自分たちの中で消化したものを出す感じ?
Ryuichi:そうですね。もちろんその中で進化していった音楽を僕らは聴いているわけで、2013年までの音楽の軌跡をそれぞれに辿っていっていると思うんです。
Leo:ジャンル的に言えば、EDMだと思うんですよ。それをライブではバンドでやるっていう面白さもあるんじゃないかと思っていて。
●既にライブもやっているんですよね。
Leo:急にライブが決まったこともあって、慌ただしくレコーディングもして。とりあえず1曲、一緒にやってみようということで出てきたのが今回のM-1「Precious Girl」だったんです。明日がレコーディングという時に、3人で朝までかかって歌詞を試行錯誤しましたね。
●この曲で伝えたいメッセージとは?
Ryuichi:人生の中で「愛とは何だろう?」と日々自分に問いかけ、答えを探しているんです。その中での1つの答えとして、かけがえのない存在のことを歌っています。
Leo:偶然とか目に見えないもの、気付かない喜びをわかりやすい歌詞の中にこめたつもりですね。
●ライブでの反応はどうでしたか?
Ryuki:演奏していて一番楽しかったです。曲のキャッチーさのおかげか、お客さんの反応も一番わかりやすくて。演奏しながら「この曲をシングル曲にして良かったな〜」って実感していました。
●デビューシングルのタイトル曲ということで、思い入れも深いのでは?
Ryuichi:始まりの歌と言ってしまえば簡単になってしまいますけど、僕たちはこの曲をずっと歌っていくわけで。これからこの曲が色鮮やかになるようにどんどん思い出が重なって共に歩んでいく、そんな存在だと思いますね。
●カップリングのM-2「BRAND NEW DAYS」も新たな始まりを感じさせるタイトルというか。
Leo:タイトルどおり、まさに新しい日々の始まりということにつきると思います。3人でいる喜びが歌詞に詰まっていて。
Ryuichi:サウンドもキャッチーで、1つの扉を開いてくれました。奥深いリズムなので、こういうものをもっと研究したいです。夏に聞きたくなるような曲だと思いますね。
●今の季節感にもハマっていますよね。これは2曲ともに言えることですが、新たに3人でスタートするワクワク感も伝わってくる気がします。
Ryuki:このメンバーで一緒にバンドをやれるっていうことが決まった時、とにかくうれしくてワクワクしていたんです。そんな自分たちがバンドを組んだ時の原点の気持ちをまず1作目では表現したいなと思っていて。その気持ちと一緒に僕らのサウンド、メッセージを世に広めていきたい。そういう意味で、色々なタイプの楽曲がある中でも今は「Precious Girl」が自分たちを紹介するのに一番ベストな楽曲に仕上がっていると思います。
●これからが自分たちでも楽しみなんでしょうね。
Leo:もう10年くらい色んな音楽活動をやってきた中での結論としては、「楽しければいいんだ」っていうことなんですよ。この3人で一緒に音楽をやっていることが、今は本当に楽しいんです。ただ楽しみ続けたいし、仲間と一緒に純粋に良いものを作っていきたい。人生の共有、そこに幸せがあると信じています。
Interview:IMAI