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moke(s)

もっとギアをくれ。心を燃やし続ける、 本物のロックバンドの爆走は止まらない。

町田直隆(ex.BUNGEE JUMP FESTIVAL)、海北大輔(LOST IN TIME)、小寺良太(ex.椿屋四重奏)からなる3ピース・ロックバンド、moke(s)が早くも2ndミニアルバム『GIVE MORE GEAR』をリリースする。前作の1stミニアルバム『BUILD THE LIGHT』から約半年という短いスパンで放たれる今作は、圧倒的な演奏力と攻撃性溢れるサウンドはそのままに、よりメロディアスな側面に光を当てたものだ。キャリアを重ねながらも、十代の頃から変わらない熱い衝動を心の中で燃やし続ける“本物のロックバンド”の爆走は止まらない。

 

「“これに10代の俺は反応するかな?”っていうのはすごく考えていて。自分の心の中にいる14歳とか16歳が反応しない音楽は、このバンドではやりたくないんですよね」

●前作の『BUILD THE LIGHT』(1stミニアルバム)から約半年という短いスパンでリリースされますが、実は今回の2ndミニアルバム『GIVE MORE GEAR』も同時期に録音はされていたそうですね。

町田:Low-Fi Recordsからのリリースが決まる以前に、完全自主制作でアルバムを作ろうとしていたんですよ。それで2017年の年末頃にレコーディングしておいたものを、結果として前作と今作の2枚に分けて出したという感じですね。

海北:元々はフルアルバム用に曲を作って、録り貯めていたんです。でもレーベルの意向もあって、最初の作品はミニアルバムにしようということになって。前作を出した段階では曲が半分くらい余った状態になっていたんですけど、“残った曲も組み立て方次第ですごく面白いものになりそうだね”という話から今回のリリースに至りました。

●最初から2部作として考えていたわけではないと。

町田:そうではないですね。

小寺:メンバー的にはフルアルバムを出そうと思っていたんですけど、しのくん(※篠塚将行…それでも世界が続くなら/Low-Fi Records)の名采配のおかげで、良いミニアルバムができましたね。別に今回の曲が余りというわけではなく、結果的にすごくバランス良くなって。前作ともまたちょっと違うものになったと思います。

●前作が轟音から始まったのに比べて、今回は歌始まりというところでも印象が大きく違いますよね。

町田:そうですね。今回の1曲目を「リグレット」にするという案を出してくれたのは、しのくんなんですよ。バンドとしては元々フルアルバム用にレコーディングしたものだったので、どういうふうに分けるべきか当初は悩んでいて。そういう時にしのくんが「リグレット」を1曲目にするという曲順案を出してくれたおかげで、自分の中でこの作品のビジョンがはっきり見えてきたんです。

●そこで作品としてのビジョンが見えた。

町田:moke(s)がゴリッとした楽曲だけではなく、こういうメロウな楽曲も持っていることを知ってもらえたら、前作を聴いた人も“おっ!?”となるだろうなと思って。前作とのカラーの違いも出せて、見事に2つの作品として分かれましたね。

●前作では、あえてゴリッとしたサウンドを前面に出そうとしたんでしょうか?

海北:前作は“moke(s)って、こんなバンドだよ”という、わかりやすい“入口”みたいな曲を選んでいて。今作は、moke(s)の“幹”の部分というか。外向き/内向きという言い方が正しいのかわからないですけど、メロウでスウィートな部分と攻撃的でエモーショナルでハードな部分というのは表にも裏にもあるんですよ。そこのコントラストは(2作で)付けられたかなって思いますね。

●確かにそうなってますね。

小寺:あと、ミックスやマスタリングといった仕上げの作業に関しては前作と同じメンツでやったことで、音の感じも少し変わっていて。

海北:前作に引き続きエンジニアは鈴木歩積くん(told)にお願いしたんですけど、ミックス作業はまた別行程だったんです。レコーディングから時間を置いて、今回のミックスをして。だから前作を経たことで得られたイメージや知識、そして築き上げたものを今作に上手く落とし込めたところはありますね。良い感じに寝かすことができたので、それが今作にすごく良い感じに作用したなと思います。寝かすことによって悪くなっちゃう曲もあるから。

●鮮度が落ちるというか。

海北:そういう意味では、鮮度が落ちにくい曲が今作には集まっているという捉え方もできるのかな。

小寺:今思ったんだけど、ミニアルバムと言っても8曲入っているよね…(笑)。

町田:だから、ミニアルバム感はあまりないですね。でもトータルタイムは30分もなくて、短いんです。

●あっという間に終わる感じがするのも、何度聴いても聴き飽きない印象につながっている気がします。

町田:moke(s)に関しては曲のサイズ感にもこだわりがあって、“なるべくスパッと終わりたい”っていう想いがあるんです。“もうちょっと聴きたいな”っていうところで終わる感じが良いなと思っているんですよね。自分の中では60年代のビートルズやイギリスのパンクバンドの曲をイメージしているんですけど、どれも3分くらいでスパッと終わるじゃないですか。あの感じが自分はすごく好きなので、そこは意識しています。

●そういう音楽的ルーツも今作からは感じられました。特に90年代のオルタナ〜グランジ的な匂いがするなと思って。

町田:僕らが青春をすごしたのが90年代なので、その時代に吸収した音楽が身体に染み付いているんですよね。それこそニルヴァーナとかのグランジだったり、メロコアやパワーポップだったりといった音楽が染み付いていて。前回はラウドな部分にスポットを当てたんですけど、今回は自分たちが影響を受けてきた色んなジャンルの90年代の音楽的要素が出ているんじゃないかな。

●様々な90年代のサウンドから受けた影響を昇華したものになっている。

海北:ジャンル的な意味ではなく、90年代に流行った“ミクスチャー”という言葉がしっくりきますね。色んなものをミックスする文化というか。特に今の40代前後のバンドマンって、邦楽/洋楽やメジャー/インディーズといった違いを気にしない、“雑食”な人が多い世代だと思うんですよ。

●そういう時代でもありましたよね。

海北:その後でジャンルがさらに細かく分かれていったんですけど、僕らはちょうど一番良い時期にリスナーでいることができた世代なのかなという気もしていて。そういう感じの楽しさが、今作のバリエーション感の中にはあるような気がします。

町田:僕らの時代って、音楽を聴いていることがカッコ良かったんですよね。若者の間で一番のメインカルチャーが音楽なんじゃないかっていうくらいの感覚があって。ロックバンドが人気だったし、チャートにもバンドがたくさん入っていたから。色んなカルチャーとのコラボもあったし、ロックとファッションがもっと密接だった。今振り返ると、すごく幸せな時代だったのかなって思います。そういう時代の感じに、moke(s)の音は影響を受けているんじゃないかな。

●3人ともその時代に育ったことが共通項になっているわけですよね。

町田:“俺たちが青春時代にやりたかったサウンドをやろう”っていう共通認識はあって。もちろんそれぞれの90年代に対する感覚はちょっとずつ違うと思うし、ロック観も違うと思うんですけど、それが面白いんですよね。

●その違いが化学反応を生むというか。サウンド的にはバリエーションがありつつもバンドとしての統一感があるのは、やはり町田さんの歌が軸になっているからこそだなということを今作で改めて感じました。

町田:そう言ってもらえると嬉しいですね。

海北:自分自身が歌うバンド(※LOST IN TIME)をやっている身として、そこがあるからmoke(s)ではベーシストに徹することができるんですよね。

小寺:moke(s)を知っている人にはガッツリした攻撃的な部分のほうが印象にあるかもしれないですけど、実は“歌”のバンドなんですよ。

●今作はその魅力が特に伝わる作品かなと。

町田:もちろん攻撃的なサウンドもすごく好きなんですけど、やっぱり僕自身がしっかりと歌心のあるものが好きだというのもあって。そこは自分の中で、譲れない部分でもありますね。似たようなサウンドを出しているバンドは他にもいるかもしれないんですけど、そこでmoke(s)の“武器”になるのは歌がしっかりと軸にあるところだと思うから。

●今作タイトルの“GEAR”にも、“武器”という意味を込めているんですよね。“GIVE MORE GEAR”というフレーズはM-4「DEAR MY ENEMY」の最後に出てきますが、そこから取ったんでしょうか?

町田:ミニアルバムのタイトルを考えようとなった時に、歌詞の中から取りたいなと思って。それで色々探してみた結果、これがピッタリなんじゃないかなと。これからのmoke(s)という意味でも、“もっとギアをくれ”っていうのが挑戦的で良いなって思いました。

●あえて挑戦的な言葉にした?

町田:もっとmoke(s)というバンドを突き詰めていきたいし、もっとこのバンドをロック好きなヤツらに知らしめてやりたいなっていう想いからですね。

海北:僕は途中加入なんですけど、moke(s)に入ったことで、もう一度そういう気持ちになれた気がします。大人になって色んな経験をしたら、落ち着いてくるものじゃないですか。“大人になるとくたびれるのかな”と思っていたんですけど、それは固定観念にすぎなくて。意外とエネルギッシュにやっていけるし、逆にやり方がわかっているので楽しみながらできるというか。

●年齢を重ねたからこその楽しみ方ができる。

町田:若い時の闇雲なパワーはもうないんですけど、もっとはっきりと道筋がわかった上での楽しみ方ができるのは良いなと思いますね。正体がわからないものを追い求めて、自分の中に得体のしれないパワーが溢れているという状態は10代〜20代特有だと思うんですよ。でも今は、単純に自分の行く道が見えてくるというか。それゆえに“何だかよくわからないけど、すごい”というものはもう出せないかもしれないけど、逆に“これ、カッコ良いだろ?”と自信を持って出せるから。

●“カッコ良い”と自信を持って言えるものを提示できるのも、経験あってこそですよね。

町田:そういう意味ではずっとロックをやってきた中で、今が一番楽しいという感覚があるんですよ。

海北:アラフォーなりの“心の燃やし方”というものがあって。10代〜20代の心の燃やし方を今やったら、色々と不備が出るんですよ。でも燃やさずにいられるかっていう感じで、まだまだ燃やしたい気持ちはあって。それを上手く燃焼させる要素がmoke(s)にはたくさんある気がするから、僕も楽しめているんじゃないかなって思いますね。

●たとえば「リグレット」あたりは、ここまで歩んできた人だからこそ歌える内容だと思います。

小寺:「リグレット」は10代には歌えないでしょうね。

町田:歌詞に関してもやっぱり、10代や20代では書けなかったものですね。でもこういうものに当時は憧れていたと思うんです。当時も必死だったと思うんですけど、今になってようやく自然に表現できるようになったのかなって。だから10代や20代の頃の自分に“羨ましいだろ? 40代のお前はこんなバンドをできちゃうよ”って、自慢したいんですよね。きっと“良いな〜。カッコ良いな!”ってなると思うから。

●青春時代の自分が聴いてもカッコ良いと思えるものをやれている。

町田:いつもmoke(s)をやりながら、10代〜20代の自分について考えるんですよ。言葉選びでもリフ選びでも、“これに10代の俺は反応するかな?”っていうのはすごく考えていて。自分の心の中にいる14歳とか16歳が反応しない音楽は、このバンドではやりたくないんですよね。

●その頃と同じ衝動が町田さんの中に今でも生きているからこそ、できることなんでしょうね。

町田:未だにギターをステージに叩き付けちゃったりしますからね。

小寺:この間のライブでは曲終わりにジャンプして、ギターのペグを折っていましたからね。

●勢いのあまり、壊してしまったと。

町田:スピーカーに乗ってからのスライディングで曲を締めたんですけど、ギターを庇わずにそのまま行ってしまって…。

小寺:最近よくジャンピングで終わるんですけど、この人は“受け身”っていうものを知らないみたいで。そういうことを全く考えずにジャンプするんですよね。

町田:そこもこだわりがあって。“受け身を気にしていたらダメじゃん”って思うから。

●名言っぽい言葉が出ましたね(笑)。

海北:“町田直隆”っていう人間には、構造的にブレーキが付いていなくて。

小寺:アクセルしか付いていない(笑)。

海北:だから、良い感じのアクセルワークが必要なんです。曲がろうとしているのにアクセルをベタ踏みをしているような状態の時に、後ろからちょっと引っ張ってあげると良い感じにコーナリングできるような印象があるんですよね。

●ブレーキを踏まずに、上手くコントロールしている。

町田:とんだ暴走車をコントロールしてくれていますよね(笑)。2人はメカニック担当なのかもしれない…。

海北:町田くんって、良いエンジンなんですよ。それを使って、どういう乗り物にしていくかっていうところがあって。小寺くんが入ったことでフレームもできて、ようやくmoke(s)っていう乗り物が“こういう車体です”となったんじゃないかな。

●この2作品で、より車体が完成してきたところもあるのでは?

海北:メンバー3人だけじゃなく、しのくんやエンジニアの歩積くんも含めたチームの力で、1台の乗り物として形がだんだん整ってきたところで。“さあ、これから公道をブッ飛ばしていこうか!”っていう感じかな。

小寺:今ライブに来てくれているお客さんも、ブッ壊れ具合を楽しんでくれている感じはあるから。そういう人がもっと増えてくれれば良いですね。

Interview:IMAI
Assistant:Shunya Hirai

 

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