いつからだろう? 音楽だけでは足りない。そんな風に思いながら、さらなる表現方法を追い求めてきた。
この『Sang』はもともと今年3月にアルバムとして発表した作品だ。しかし当初からアルバムというパッケージには収まっていなかった。前作から約3年半ぶりということもあり、原作を壮大にし過ぎた(笑)。構想の時点でアルバムとしては完全にキャパオーバーだったのだ。
早い段階でそれに気づきライヴでの表現へと切り替えたのが正解だった。シアトリカルなライヴはずっと目指していたものだったし、声優に演じてもらうことも僕にとってはとても自然な流れだった。額縁を模したスクリーンに様々な絵画やイメージが映し出され、声優の演技と共に曲へと繋ぐ。この表現方法なら『Sang』を伝えられる。アルバムは音楽作品に留め、ライヴでは制限なしにストーリーを表現した。結果としてライヴが映画のような作品へと進化することに成功した。
まず行うのは原作を元にした脚本制作。プロットとしての原作は存在していても、やはり登場人物のセリフがなければナレーションにしかならない。それだけは避けたかった。一番伝えたいのは状況説明などではなく感情やメッセージだからだ。様々な書籍を貪るように読み漁り登場人物になりきった。そしてそのモードのままシナリオ(脚本)に落とし込んでいく。普段の作詞と違い、遠回しにすることなくストレートにセリフを書けるようになるまでが長かった。無駄に雰囲気のある言葉を使い過ぎてしまう。そんな時は決まって彼らになりきれていない時だ。散歩をし、心を無にし、彼らの魂の居場所を作る。慣れるとキャラクターが勝手に喋り出し、動き出す。そして彼らは自分の思い描く世界の中にいた。それは今まで感じたことのない喜びだった。
いつか映画を作りたい。そんな夢に大きく近づいた作品。新しい形で物語を楽しんでいただくライヴスタイルでの映画。それがこの『Sang Live』だと思っている。
KAMIJO
Live Blu-ray & DVD『Sang Live at Zepp DiverCity Tokyo』
発売記念KAMIJO・10000字スペシャル・ロングインタビュー#1→
http://chateau-agency.com/kamijo/sanglive_int1