今年8月発売の前作シングル『ウツシヨノユメ』から3ヶ月にして、早くもナノがニューシングルをリリースする。10月より放送中のTVアニメ『CONCEPTION』のオープニングテーマ「Star light, Star bright」を表題曲に据えた今作。代表曲の1つでもある「No pain, No game」(2012年)を制作した堀江晶太と再びタッグを組んだ、この曲には様々な“感謝”の想いが込められているという。11/16には故郷アメリカ・ニューヨークでのライブを控えるだけでなく、12/22にはAiiA 2.5 Theater Tokyoでのワンマンも間近に迫る中で、最新の心境に迫るスペシャル・インタビュー。
「自分の気持ちと作品の求めていたものが上手くリンクできたかなって思います」
●前作のシングル『ウツシヨノユメ』から約3ヶ月での新譜リリースということで、かなりペースが速いですね。
ナノ:そうですね。実は『ウツシヨノユメ』の制作段階から既に決まっていたことだったので、自分としてはその当時から“楽しみだな”という気持ちはあったんです。でもファンの方は、ちょっとビックリしたんじゃないかなと思います。
●“楽しみだな”という気持ちになったのは、どういうところから?
ナノ:今回のタイアップは自分がデビューする時に関わらせて頂いたゲーム(※PSP用ソフト『CONCEPTION 俺の子供を産んでくれ!』。主題歌がナノの「Destiny 〜12回目の奇跡〜」)をアニメ化した作品なので、また一緒にやれるという嬉しさがあって。5年前からついてきてくれているファンの方は知っているはずなので、喜んでくれるんじゃないかなという想いもあったんです。
●デビュー時に関わった作品に、5年の時を経て再び関われるという喜びがあった。
ナノ:“まさかの…!”という感じもあって。自分自身も5年前は、まだ右も左もわからない状態でのコラボレーションだったというか。当時の曲はまだ作詞も自分でしていなかったし、“とにかく精一杯だった”という感覚なんですよ。その時に比べたら、今回は“成長したかな”と感じられましたね。
●今回は作詞も担当されていますが、作品の世界観への理解もより深まった状態で書けたのでは?
ナノ:もちろん初めてではないので、そういうところもありますね。でもアニメ作品自体もよりパワーアップしたというか、自分が知らない要素も今回はたくさんあったんですよ。だから、頂いた資料を読みながら“へ〜、あれがこうなるんだ!”という驚きもあって。
●新たな発見や驚きもあったんですね。
ナノ:世界観やキャラクターもすごく作り込まれている作品なので、そういうものの1つ1つを見ていて勉強になるところもあって。面白いなと思ったし、すごく楽しみながら作れましたね。
●作品から刺激を受けて楽しみながら、歌詞も書いていったと。
ナノ:ゲームの時から、すごくわかりやすい世界観だと思っていたんですよ。今回のアニメを見ていてもそんなに複雑な印象はなかったので、歌詞に関しても聴いてくれる人たちがスッと入れるようなものにしたいなと思って書いていきました。そういうところで今回は、自分の気持ちと作品の求めていたものが上手くリンクできたかなって思います。
●歌詞中の“12回目の奇跡”や“ケガレ無い世界”といった部分は、アニメの世界観とリンクしている部分ですよね?
ナノ:そうなんですよ。ゲームのファンの方がそういうフレーズを見て、“あっ、これは完全にリンクしているじゃん!”となるような部分を実は潜ませていて。“宝探し”みたいなワクワク感が出せたら面白いんじゃないかなと思って書きました。前回の「Destiny 〜12回目の奇跡〜」も自分として誇りを持って出した曲だったので、それに対するリスペクトの意味でオマージュした部分を入れてみたいなという気持ちもあったんです。
●「Star light, Star bright」というタイトルも、アニメ作品に関連した言葉なんでしょうか?
ナノ:今回は星に関わる作品なので、歌詞の内容も自然と星にまつわる言葉が多くなって。アメリカでは星に願いをかける時に言う、“Star light, star bright, The first star I see tonight〜”というおまじないみたいなフレーズがあるんですよ。元々は、その言葉をオマージュして付けたタイトルなんです。
●星に願いをかける言葉から来ているんですね。
ナノ:あと、実はこのタイトルにはもう1つ“裏”のテーマがあって。今回は堀江晶太さんが作曲に関わって下さっているんですけど、堀江さんとは『No pain, No game』(2ndシングル/2012年)でもタッグを組んでいるんですよ。だから今回も2つのワードをカンマ(,)でつなぐという、全く同じ構造のタイトルにわざとしたんです。“そこに気付けるファンが果たしているかな?”という部分も楽しみにしつつ、堀江さんへのリスペクトも込めたタイトルですね。
●「No pain, No game」に、それだけ思い入れも強いということでしょうか?
ナノ:その当時は、ああいうタイプの曲をまだやったことがなくて。「No pain, No game」は、ナノに“疾走感”という特徴が生まれたキッカケの曲だと思うんですよね。
●疾走感を前面に押し出した楽曲をやるキッカケにもなった。
ナノ:その時は、“これって人間が歌える曲なの?”と思ったくらいなんですよ(笑)。元々、堀江さんはボーカロイドの楽曲も手がけている方なので、テンポ的にもそっち寄りに仕上がっているんじゃないかなと感じていて。“これは相当に頑張らないとダメだな”と、初めて思わせてくれた曲でもあるんです。そこから今の自分が生まれたとも言えるので、感謝しています。
●過去の楽曲やコラボレーションに対する、色んな感謝やリスペクトが込められた曲になっている。
ナノ:今回のタイアップに関しては、全てにおいて“感謝”の気持ちがあって。最初のゲーム(『CONCEPTION 俺の子供を産んでくれ!』)との出会いにも感謝しているし、堀江さんと曲を書けたことにも感謝しているし、色んな“ありがとう”をこの曲には込めました。
●それが曲にもポジティブな雰囲気として表れているというか。逆に【アニメ盤】カップリングの「Artificial Hero」はアプリゲーム『DArk Rebellion』の主題歌ということもあって、すごくダークな雰囲気ですよね。
ナノ:本当に真逆のタイプの曲で、『DArk Rebellion』だからこそダークな雰囲気にしてみました。最近はそこまでダークな曲を書いていなかったので、久々ですね。過去の曲では、『No pain, No game』のカップリングに入っていた「エグジスト」に近いタイプになっていて。両極端な曲が入ったシングルになったなと思います。
●『DArk Rebellion』の世界観も取り入れた歌詞になっている?
ナノ:この曲は完全に、ゲームに寄せて作りましたね。できる限り余計なものを入れずに、ゲームの世界観に寄せたいと思って書いていきました。
●英詞にしたのはどういう理由から?
ナノ:元々そう決まっていたわけではないんですけど、制作中にディレクターと話している中で“ナノらしく英語で歌ったほうがパンチも出るんじゃないか”というところから英詞にしました。どちらかと言えば、直感ですね。
●曲調にもすごく合っていると思います。【ナノ盤】カップリングの「Blue Jay」もまた違うタイプの曲ですが、これは作詞・作曲共にナノさんなんですよね。
ナノ:この曲では、自分のパーソナルなストーリーを描いていて。小さい頃に出会った恩人がいて、自分がつらかった時期に色々と助けてくれたんです。アメリカを離れて日本に来る時にお別れをして以来ずっと会っていなかったんですけど、もしライブや音楽活動でアメリカに帰れる時が来たら、本人に直接そのことを報告したいなと思っていたんですよね。
●その方とのエピソードを描いていると。
ナノ:それで今年5月にアメリカへライブに行けることになったので“ようやく報告できる”と思って手紙を書いたら、残念ながらその方は既に亡くなってしまっていて…。伝えられなかったという後悔の気持ちがすごくあったので、その想いを“曲にしなきゃ!”という気持ちに駆られて今回、ディレクターさんに“この曲を入れさせて欲しい”とお願いしました。
●ちょうど今年、アメリカに凱旋する機会があったことも大きかった。
ナノ:それがなかったらたぶんこの曲は生まれなかったし、その方が亡くなってしまったことを知ることもできなかったと思うんです。アメリカに行くタイミングでそれを知ったというのも皮肉ですけど、自分の中で消化できるようにその想いを曲にしたいなと思ったんですよね。本当に色んなことを教えてくれた、大切な恩人だから。
●「Blue Jay」は“アオカケス”という鳥のことだそうですが、これをタイトルにした理由もその人に関わっている?
ナノ:その方のニックネームが“Blue Jay”だったので、自分もそう呼んでいたんです。それをそのままストレートに、タイトルにしてしまいました。
●恩人の方が“Blue Jay”と呼ばれていた由来は知っているんですか?
ナノ:それは自分もわからないんですよ。本人がそう呼んで欲しいと言っていたというだけで。たぶんBlue Jayとの出会いに関しても何かしら感動的なストーリーがあると思うんですけど、そこはもう自分で想像して楽しんでいます。やっぱり直接会って“聞きたかったな…”とは思いますけどね。
●そんな中、また11月にアメリカでのライブが決まっているわけですが。
ナノ:こんなに早く、また行けるとは思っていなかったですね。
●しかも今回は出身地のニューヨークでのライブということで、感慨深いのでは?
ナノ:“待っていました!”という感じですね。デビューした時から“いつかはニューヨークでライブがしたい”と思っていたので、すごく嬉しいです。今回は本当に自分が生まれた街なので、“ただいま”と言えるなと思っています。
●そして12月に予定されているワンマンライブ「A Thousand Stars」もいよいよ近付いてきましたが、徐々に気持ちも高まってきている?
ナノ:やっぱりワンマンは特別だと思っていて。イベントはイベントで普段は出会えないお客さんに観てもらえたり、色んな刺激をもらえたりするので、自分にとっては“学びの場”であり、力を付けられる場所だと思っているんです。でもイベントに出れば出るほど、“ワンマンがやりたい!”という気持ちも生まれてくるから。ワンマンができるのは本当にありがたいことだし、12/22は全身全霊で愛情を込めてやりたいなと思っています。
Interview:IMAI