音楽メディア・フリーマガジン

メトロノーム

三神が体現した20周年の証と未来への意志。

メトロノーム結成20周年全国巡礼
“ヤプー三神・巡礼〜ヤプーが召喚された夜〜[ 05→98→18迄-7=20 ] ”
2018/9/01@豊洲PIT

メトロノームの「結成廿周年全国巡礼 ヤプー三神・巡礼〜ヤプーが召喚された夜〜 [ 05→98→18迄-7=20 ]」が9/1、豊洲PITで開催された。定刻を少し過ぎた頃、詰めかけたオーディエンスの頭上にSEが鳴り響くと、それだけで場内がメトロノームの色に一瞬で変貌する。電子音声に導かれてメンバーが登場し、待ちわびたファンの20年分の歓声が彼らを包むなか、最新曲「血空」からライヴがスタート。立て続けに3曲を披露した後のMCでは、シャラク(VOICECODER)が開口一番「本日はお足下の悪いなか、お越しいただきありがとうございます…」と大人の気遣いを見せ、会場は瞬時にほのぼのとした空気に包まれる。

耳に残る特徴的な歌声と確かな技術に支えられた演奏が生み出すソリッドな音楽性と、相反するほどの“ユルい”とすら言えるメンバーの人間性が調和しているのも彼らの魅力かもしれない。ともすれば弛緩してしまいそうな空気を、リウ(TALBO-02)とサポートメンバーのJOE(Dr.)という盤石のリズム隊による力強いグルーヴとVJの視覚効果で切り換えながら進んでいく。「致死量フリーク」ではXジャンプならぬ“ダメ”ジャンプで会場を揺らしたかと思えば、「おやすみ世界」でしっとりと聴かせ、「友達の和」でコケテッシュな空気を醸し出した後は「アクアリウム」…と新旧織り交ぜた多彩な楽曲でフロアを大いに沸かせてみせた。

 

 

おなじみのフクスケ(TALBO-01)のMCコーナーでは、お茶目なキャラクターで会場を笑いで包みこむ。「MATSURI」ではメトロノーム流の祭り囃子を表現してみせ、「不機嫌なアンドロイド」「解離性同一人物」を立て続けに披露し会場が一体となった後の本編ラストは、名実ともにバンドを代表する楽曲「絶望さん」。一見、無機質な印象を与えるテクノポップ〜電子音楽を主軸にしながらも、オーディエンスとの有機的なコミュニケーションによって生まれるケミストリーが、このバンドが20年にわたり愛され続けてきた理由と結果を表しているようだった。

アンコールでは「東京バビロン」からのアッパーな楽曲でさらにフロアの温度を上昇させ、ダブルアンコールの「ΦD-SANSKRIT」のイントロでは会場から歓声が上がる。MCでは今回のライヴの映像化が発表されたほか、20周年の締めとなる年末ツアーの告知ではファイナルにて元メンバー、ユウイチローがサポートすることも発表され、ファンには嬉しいサプライズとなった。

 

 

オーディエンスからの「もう一回」の大合唱に応え、シャラクが「これをやらないと終われない」と披露したのは「弊帚トリムルティ」。最新アルバム『廿奇譚AHEAD』の楽曲を中心としながらも、新旧織り交ぜた20周年らしい選曲で駆け抜けた3時間弱。アルバムタイトルにつけられた“AHEAD=ここから先に”の言葉どおり、“今からさらに前進していく”姿勢が随所に現れていた1日だった。

TEXT:古川うなぎ
PHOTO:大塚秀美

 

 

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