2010年に結成し、関西を拠点に活動を続けてきた和製轟音ギターロックバンド・ホロ。数々の苦難を乗り越え、主催イベント“ホロフェス”や2マン企画“-ikusa-”など今までの活動を通してかけがえのない人たちと繋がり、大きな成長と進化を遂げてきた彼らが、約2年ぶりの新作で不朽の音へと辿り着いた。「“優しさ”や“感謝”を表現したかった」という今作『Everlasting』は、現体制4人のすべてとこれからが詰まっている名盤だ。11月に控える梅田CLUB QUATTROでのワンマンへ向けて、彼らは突っ走る。
※註:当インタビューはホロの活動休止が発表される前に収録したものです。
「聴いてもらって初めて音楽が成り立つような実感があったんです。この人たちが居て初めて自分はミュージシャンなんだって。そこからライブが好きになりました」
●今年も主催イベント“ホロフェス”を東京と大阪で5月に開催し、最近もライブやイベントなど、かなり精力的に動いていますね。
石木:やっぱりライブは楽しいですよね。
赤毛:過去に交通事故やメンバーの脱退などでライブがしたくても出来ない期間があって、ライブがないとどうやら僕ら4人とも駄目なタイプらしくて(笑)、不安になっちゃうんです。
●バンドにとってライブは人と繋がる場所ですもんね。
赤毛:そうですね。今まで色んな人の表情をライブ会場で確認出来ていたけど、それが無くなっちゃうと…。まあ最近だとネットがありますけど、そういうツールでは100%伝わってこない部分もあるし、伝え切れない部分もあるし。そういうことが不安には繋がっていましたね。だから2017年3月にDr.竹川が正式加入して、それまでの反動っていうか(笑)、2017〜2018年はかなり活発に活動してきた感じがあります。
●9/26にリリースされた4thミニアルバム『Everlasting』ですが、制作を始める時点でイメージなどはあったんですか?
石木:今回は“優しさ”みたいなものを表現したかったんです。“優しさ”とか“温かさ”。ここ1年を振り返ってみると、優しさに触れた1年だったなと思うんです。
●それは、どういう優しさですか?
石木:実は去年アルバムを出そうとして、結果的に出せなかったんです。その際に友達のバンドに助けられたりとか、それでも「待ってるよ」と言ってくれるお客さんだったり、身近に居てくれる人や友達とか…すごく救われたんですよね。そういうことを経て、優しい音楽を作りたいなと思ったんです。
●周りに支えてもらっていることを改めて実感する1年だった。
石木:そうですね。具体的に言うと、みんなの“優しさ”が反映されたのはM-1「桜花に吹かれて」とかM-6「月の弓」で、お客さんへの感謝の気持ちを歌ったのがM-7「輝く星となって」ですね。
●お客さんへの感謝の気持ちを歌ったのが「輝く星となって」というのはすぐにわかりました。バンド自身の心境や、お客さんへのメッセージが描かれている。歌詞は抽象的な表現も多いですが、曲を書くとき、明確な意味が石木さんの中にあるんですか?
石木:そうですね。特定の誰かに対して書くことが増えてきていて。以前と比べて、フィクションをあまり書かなくなってきたような気がします。
●歌詞は石木さんが書いているとのことですが、メンバーと歌詞の内容についてやりとりはあるんですか?
石木:ないです(笑)。
赤毛:下手したら、どんな歌詞か僕らが知るのはレコーディングが終わった後です(笑)。
●え、そうなんですか? でも歌詞の内容というか、歌詞で描かれている心境の変化とサウンドの親和性がすごく高いと思ったんです。サウンドでも心境の変化を表現しているというか。
石木:それよく言われるんですけど、実は全然狙ってないんですよ。そこはメンバーを信頼している部分なんですけど、“こういう曲だったらこういうギターが付くだろうな”と思っていたらやっぱり思っていた通り付いた、みたいな。実際に話したり確認したりはないんですけど、結果的にそうなるというか。
●あ、そうなんですか。
石木:だから作っていてすごく楽しいんですよ。僕もレコーディングの歌入れの段階までみんなのアレンジは聴かないんですけど、歌入れのときに“うわ! やっぱりみんなすげぇ!”と思いながら歌う。
●作曲者として原曲を持ってくる石木さんの期待以上が多い?
石木:期待以上ばかりですね。だからそういうときに、人と音楽をする楽しさみたいなものを感じるんです。
赤毛:僕らの曲作りのスタイルを話すとみんなにびっくりされるんです(笑)。
●びっくりしました。特にギターのアレンジはかなり縦横無尽ですけど、歌の内容とリンクしているじゃないですか。だから作曲者が最初にすごく詳細まで曲のイメージを考えているか、もしくはアレンジ作業をメンバー全員で緻密にやっているのかなと想像していたんです。
石木:たぶん、僕らの信頼関係が音楽として形になっているんでしょうね。
赤毛:石木のヴォーカルに対して、フレーズを付けるプロがそれぞれに居るっていう感じかもしれないです。音楽に関しては好き嫌いとか、絶対にやりたくないこととか、人それぞれに価値観があるじゃないですか。僕らは8年間やってますけど、そういう部分が似てくるし、お互いわかってくるというか。
●ということは、アレンジを詰める作業はあまり苦労しない?
赤毛:4人でアレンジを詰めることはないんですよ。
●え…。
石木:アハハハ(笑)。もともとのデモである程度の方向性は示しているし、個々のアレンジは任せているし、期待以上のものが出てくるんです。
赤毛:そういうスタイルに慣れたというのもあるし、楽しめるようになってますね。石木のデモを聴いてそれぞれがフレーズを考えて、レコスタに入って最初にドラムを録るわけじゃないですか。「どういうドラム録ったんだろう?」と思ってその場で聴いて、「こうきたか!」と思ってその場でベースのフレーズを変えることも結構多いんです。
●そういうことか。
赤毛:そういうこと自体を楽しめるようになってますね(笑)。
●あと先ほど石木さんは「特定の誰かに対して書くことが増えてきた」とおっしゃいましたが、特定の誰かに対する気持ちを歌詞にする…要するに本心を吐露することに抵抗というか、照れみたいなものはなかったんですか?
石木:歌詞にしているような気持ちは、恥ずかしくて直接は言えないんです。でも僕は音楽にする意味があると思っていて。その人のことを想って曲を作ることが出来たっていうことは、自分自身もうれしいですし。
赤毛:石木の歌詞に関しては、バンド初期を除けば心境の吐露だらけですね(笑)。バンド初期の頃の石木の歌詞は、今よりもっと叙景詩としても抽象的だし、叙情詩としても抽象的だったんです。僕の印象としては、抽象的な絵画アートみたいなイメージで。
●うんうん。
赤毛:これは僕の印象なので正しいかどうかはわからないですが、2013年に『コントラスト』というデモシングルを出したんですけど、その「コントラスト」という曲から歌詞がすごく素直になったと僕は思っていて。
●「コントラスト」は最近ライブ映像をアップされていましたよね。
赤毛:そうです。あれほど素直に“感謝”みたいな気持ちを出した曲はそれまで無かったんです。あの辺りから、石木が人に対して曲を書き始めたのかなって。
●赤毛さんの発言を受けて石木さんどうですか?
石木:そのとおりですね。バンド活動を続けていく…というか人生を過ごしていく上で人と関わることはたくさんあるじゃないですか。それは1人で音楽をやっている時間よりも多くなってきて、誰かと音楽をしたり、誰かと過ごしたり。その中で、自分自身変わってきたし、その意味も見出してきたし。
●やっぱりバンドはキャリアを積む毎にどんどんピュアになっていきますよね。誠実になっていくというか。
石木:まさにその通りだと思います。
赤毛:やっぱり、あれだけたくさんの人の優しい気持ちを受けることって、アーティスト活動以外ではあまりあり得ないと思うんです。そんなにたくさんの“愛”を受けて、変化しない人間なんて居ないと思うんです。愛を受けて僻みようがないですよね(笑)。尖っていた人も年々丸くなっていく印象があります。
●そうですよね。ホロも例に漏れず、バンドとして健康的な成長をしてきたと。
赤毛:はい、健康的に変わってきてます(笑)。
●ところで、アルバムタイトルを“Everlasting”にした理由はどういうものなんですか?
石木:“Everlasting”は日本語で“不朽”という意味なんですが、それが今のバンドの状況にすごく相応しい言葉だと思ったんです。活動出来ない時期があって、また立ち上がって作った作品でもあるし、これからのことも含めて、いちばんしっくりきた言葉だったんです。実は初めて英語のタイトルにしたんですけど、初めて英語にしてもいいなと思うくらい、自分の中でしっくりときたんです。
●そしてこのインタビューが公開になる頃は既にツアーが始まっていますが、ファイナルは梅田CLUB QUATTROでのワンマン…気合い入りまくりですね。
赤毛:そうですね。これはスベれないですよね(笑)。
石木:ハハハ(笑)。
●ホロのオフィシャルサイトにワンマンライブ“大阪統一”に向けて特設ページを設けているじゃないですか。そこでメンバーそれぞれがコラムを書いていて。告知でもブログでもなくコラムで、メンバーそれぞれがアーティストとしてキチンと文章で表現しているのが素晴らしいなと思ったんです。“告知”ではなく“表現”であることにバンドとしての美学を感じたというか。
赤毛:梅田CLUB QUATTROでのワンマンは僕らにとってすごく大きな決断だったし、かけている想いもそれだけ強かったんです。ライブの内容はもちろんなんですけど、お客さんにどれだけ伝えられるかという部分で、ワンマンまでの過程も重要だという気がしていて。そもそも、全部の活動はそういうことだと思うんですが。
●はい、そうですね。
赤毛:そういう考えで、梅田CLUB QUATTROでのワンマンに向けてメンバーの素性が垣間見えるものがほしくて。僕らはSNSをしない人が多いんですけど、だからこそ普段いいことも悪いことも伝わる機会が少ないなと。だから筆不精気味なメンバーを僕が引っ張って、あのコラムを始めたんです。
●なるほど。
赤毛:もちろん個人それぞれなので、色んな考え方があるかもしれないですけど、バンドをやっていく上で楽器も歌詞もそうですけど、アーティストは一挙手一投足に結構な理由をもって行動していると思うんですよ。その理由を言わない美学ももちろんあると思いますが、僕はその理由をちゃんと伝えた方が、音楽も何倍も伝わると思っていて。
●うんうん。
赤毛:逆に言うと、アーティスト側が「伝わっているだろう」と思っていることって意外とほとんど伝わっていないことが多いと感じることが多かったんです。だからどういう人間性で、どういう素性で、どういう意図でやっているかということを、僕はリスナーの立場だったら知りたいんですよね。
●はい。
赤毛:例えば「愛してる」という言葉でも、言う人によって全然意味が違ってくるじゃないですか。それは楽器もそうだし、ライブメイキングに関してもそうだと思うんです。それがおもしろいから、ライブに通う価値がある。そういうものを梅田CLUB QUATTROに向けて作りたかったんです。
●それはすごくわかります。ライブは音楽の表現でもありますけど、人間や気持ちを表現する場所でもあると思うんです。だから例え同じセットリストでも同じライブは二度と出来ない。ライブバンドってそういうことだと思うんです。
赤毛:多くを語らなくていい部分ももちろん存在しているんです。その棲み分けがちゃんと出来ているバンドはおもしろいと思うんですよね。僕はメンバーそれぞれおもしろい人たちだと思っていて、そのおもしろさやいいところををもっとお客さんに知ってほしかったんです。
石木:みんないいミュージシャンだし、かっこいい芸術家だよね。
赤毛:うん。もちろん各楽器のこだわりとかもめちゃくちゃあるんですけど、それを知る機会すら無かったからね。
●要するに、梅田CLUB QUATTROのワンマンはそれくらい気合いが入っていると。
赤毛:入ってます。
●どんなワンマンにしようと思っているんですか?
石木:少し先なので現段階ではまだメンバーとワンマンについて話してないんですけど、頭の中ではある程度固まってきていて。楽しいワンマンになると思います。
●ライブは楽しいですか?
石木:楽しいですよ。大好きです。僕、最初はライブが嫌いやったんですよ。
●えっ!?
赤毛:アハハハハ(笑)。
石木:自分の曲をCD通りに演奏出来ないのがすごく嫌だったし、ライブをやる理由がわからない時期もあったんです。音楽を作って聴いてもらったらそれでいいやん、と。
●すごいな(笑)。
石木:でもライブをして、そこで聴いてもらって初めて音楽が成り立つような実感があったんです。この人たちが居て初めて自分はミュージシャンなんだって。そこからライブが好きになりました。
赤毛:嫌いにまでなるってすごいよね(笑)。
石木:当時は「なんでライブやらなあかんねん」と思ってた(笑)。「音楽を作っとけばいいやん」と。
●赤毛さんはどうですか?
赤毛:ライブは気持ちいいですね。人生でいちばん気持ちいいです。
●え? セックスよりも?
赤毛:はい。気持ちよさは1位です。2位のセックスとは僅差ですけどね。
●ハハハハハ(笑)。
赤毛:だからやめられないですよね。
Interview:Takeshi.Yamanaka