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Enjoy Music Enjoy Life2018 〜GABUっと行こう#4〜

それぞれがMINORITYをMAJORITYに進化させた夜

FootRock&BEERS&JUNGLE★LIFE presents
Enjoy Music Enjoy Life2018 〜GABUっと行こう#4〜

ACT:まえだけんた&ジ・アッシュトレイズ / かしもとゆか
FootRock&BEERS PUB LIVE SYNDICATE / Takao Hiromatsu
2018.09.02 SUN@JUSO GABU

 

心斎橋のライブハウス「FootRock&BEERS」とJUNGLE☆LIFEがタッグを組んでお届けする、「EnjoyMusic EnjoyLife2018 ~GABUっといこう」のライブレポートをお送りする。vol.4の今回も会場は十三の「246 LIVE HOUSE GABU」。非日常を感じられる素晴らしいライブハウスである。

トップバッターはTakao Hiromatsu。ブラジルで暮らした経験があり、マグロ漁船にも乗っていたという、異色の経歴を持つアーティスト。パーカッショニスト、ギタリストとの3人編成で、元々彼の持つ資質を明確に打ち出せるプリミティブな編成で登場。自身の経験や心情を真っ直ぐに、半ば不器用に綴った楽曲を歌い上げるステージは、何か胸を打つものがあった。多感な時期をブラジルで過ごしたせいか、日本語の乗せ方やグルーブには独特なものがあり、それが彼のオリジナリティとなっている。自分に問いかけるような演奏は一概に悪いとは言えないが、自己完結的になってしまい、ステージと観客席との間に透明な膜を感じることがある。今回の彼のライブはそれが誠実さを醸し出す結果になっていたが、全てをフロアに向けて解放するようなライブも見てみたいと感じた。

2番目に登場したのはFootRock&BEERS PUB LIVE SYNDICATE。

心斎橋にあるライブハウス「FootRock&BEERS」に出演している、普段はそれぞれ個々に活動しているアーティストによって構成されるバンド。それぞれの武器と楽曲を持ち寄り、メインボーカルを変えながら目紛しく展開するライブは見るものを飽きさせない。ただ常に同じバンドとして多くの時間を共有しているわけではない点が、「軽さ」として表出しているように感じられた。演奏の機会を積むことでその辺りは解消されて行くだろうか。今後に期待したい。

続いて3番目に登場したのは、かしもとゆか。ウクレレ弾き語りで活動するアーティストだが、この日はバンドスタイルで登場。伸びやかで優しい歌声で、会場を暖かく包み込むようなライブが印象的だった。一聴すると心地の良い音楽に聞こえるのだが、注意深く耳を傾けると、一筋縄ではいかない歌詞の世界が見えてくる。そこに気づいた時、少しの驚きと、秘密の小箱をそれとは知らずに開いてしまったような背徳感にも似た感情が押し寄せる。少しだけ毒入りの林檎が放つ甘美な魅力がそこにはある。彼女の真骨頂とも言えるその部分に触れられるまで、是非何度もライブに足を運んでもらいたいアーティストである。

今回トリを務めたのはまえだけんた&ジ・アッシュトレイズ。

アコースティックギターをエレキに持ち替え、アグレッシブなライブを展開。定評のあるまえだけんたの歌声は、バンドサウンドに掻き消されることなく、むしろ水を得た魚のように、遠慮なしにフロアを占拠する。楽曲の世界観もより色彩を増し、ロックな曲はより激しく、バラードはより繊細にその風景を映し出して行く。小規模なライブバー等でのライブが多い彼であるが、小さな会場ではより親密に、大きな会場でも楽々と空間を支配してしまうそのポテンシャルには目を見張るものがある。

どこかでカタルシスを求めているような、むずがるような何とも言えない会場の雰囲気が、まえだけんたのライブによって一気に解放された瞬間には思わず両手を突き上げてしまった。正直、「ライブレポートを書かなくてはいけない」という意識はどこかに飛んでしまい、いち観客としてライブに没頭する自分がいた。しかし、こうでなくては。彼の今後が実に楽しみである。毎回個性的なアーティストが登場するこのシリーズ。是非一度足を運んでみてはいかがだろうか。

TEXT:Takaomi Matsumoto PHOTO:Shunya Hirai

 

 

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