LAID BACK OCEAN、バンド結成8年目にして初のフルアルバム『NEW MOON』が遂に完成した。2016年秋にSYUTO(Pf.)が加入して現体制になってから、通販限定で発表した“RE:SOUZOU PROJECT”シリーズ(全6作/計25曲)はいずれも完売。UVERworldら様々なアーティストとのイベント共演に、“イナズマロックフェス”や各地のサーキットフェス出演を果たすなど、活動の熱量を着実に上げてきた。そんな中で流通盤としては前作ミニアルバム『心の箱』以来、約6年ぶりの新作となるのが今回の『NEW MOON』だ。これまでのサウンドイメージを一新するパワフルな「TOILET REVOLUTION」から始まり、深い音楽的背景を活かして幅を広げたヴァラエティ豊かな楽曲群は、活動当初に打ち出していた“ピアノロック”というイメージを軽々と超えていく。もちろん軸にあるYAFUMIのヴォーカルと歌詞も表現力をさらに増し、“らしさ”と“新しさ”が共存する傑作を生み出した。6月6日に、月が満ちる数と同じ全15曲(66分)というヴォリュームで放たれた集大成的アルバムの誕生を祝して、実現した待望の表紙&巻頭ロングインタビュー。
「“やっと揃ったな”っていう気持ちはありました。違和感がないし、今が最高の状態というか。ここへきて、それが言えることが嬉しいんですよ」
●バンド結成8年目での1stフルアルバムリリースとなるわけですが、ここまで時間がかかったのは偶然の結果なんでしょうか?
YAFUMI:完全に偶然です。何度も“出そうか”っていうタイミングはあったんですけど、色んなバランスの中でここまで来ちゃいましたね。
●これまでにも出そうとしたことはあったんですね。
YAFUMI:それこそ2年くらい前には、こちらが“イエス”と言えば出せる状態の時もあったんです。メジャーデビューが決まって…それが色んな事情でなくなってしまった時に事務所のスタッフから“じゃあ、ここでアルバムを出そうか”という話も出たんですが、自分たちがそういうモードにはなれなくて。そこで始めたのが、ここ2年くらいでやってきた“RE:SOUZOU PROJECT”だったんですよね。その中で試行錯誤しながらやってきたという意味では、今回“満を持して”という気持ちもあります。
●“RE:SOUZOU PROJECT”を始めた理由は、何だったんですか?
YAFUMI:まずは流れを断ち切りたかったというか。何か目標を立てて、そこから逆算して色んなことを決めていた時期もあったんですけど、やっぱり思い通りにはいかないじゃないですか。それが圧倒的に思い通りにいかなくなった時に、衝動的に面白いことをやってみるだけの期間が欲しかったんですよ。それが“RE:SOUZOU PROJECT”でしたね。
●だから、ああいう規格外のリリースになったわけですね。
YAFUMI:そうなんですよ。“俺たちは何がやりたいのか?”っていうことを、メンバーやスタッフと話し合った時にCDのパッケージに収まらないものや、通常の流通ではできないことをやろうとなったんです。だから氷の中にCDを入れて送ったり、イカ臭い歌詞カードにしてみたり…そういうものも全部、“表現”の延長線上でやれていたので、俺たちが今後活動していく上ではすごく大事なことでしたね。それをやっていくうちに“アルバムが作りたいな”っていう気持ちにもなれたから、今回のリリースにつながった部分はあります。
●誰もやらないことをやりたいという気持ちもあったのかなと。
YAFUMI:ロックバンドって、基本的にそういうことをやらないとダメだと思っているから。実際にやってみたら単純に楽しかったし、その間にSYUTOも加入して。SYUTOが入ってから一番最初にやったのが、イカ臭い歌詞カードの制作ですからね(笑)。
SYUTO:入った当初はスタジオでみんなが話しているのを、僕はわりと黙って聞いていたんですよ。その中で“どうしたらイカ臭い匂いを作れるのか?”っていう話をしていて、“この人たちは何を言っているんだろう…?”と思っていました。
一同:ハハハハハ(笑)。
●その話をいきなり聞いたら、意味不明なだけですよね(笑)。
SYUTO:当時は、“クレイジーな方々だな”と思っていました(笑)。
YAFUMI:「童貞WONDERLAND」という曲があって、その(タイトルの)国から手紙が届くっていう設定のパッケージだったんです。“その手紙がイカ臭かったら素敵じゃない?”って誰かが冗談で言ったことを、本気でやり始めて。でもイカの匂いを付けてくれる業者さんなんかいないんですよ。それで色んなところを探していたら、イカの匂いを最初から調合してくれるという会社があったという…。だから、匂いの調合からやっているんです(笑)。
●イカの匂いの調合って(笑)。
KYOHEI:色んな種類のイカを並べて、吟味もしましたね。
YAFUMI:“あたりめ”はダメなんですよ。ちょっと甘さが出ているというか。
SEIJI:間違っちゃいけないのが、“イカの匂い”にしたいんじゃなくて“イカ臭い”ものにしたかったんですよね。
●そこにこだわったと。“RE:SOUZOU PROJECT”を第1弾・第2弾と合わせて6作も出したのは、そういう中でどんどんアイデアが生まれてきたから?
YAFUMI:そうですね。第1弾では、やれなかったこともあったりしたから。第2弾の1作目が氷漬けだったんですけど、あのアイデアは第1弾の時点であったんですよ。でもその時は具現化できなくて、他のことをやっている時に“こうすればできるんじゃないか?”というのが浮かんだんです。運送会社の流通の仕組みとかも調べて、“ひょっとして最初から凍らせていなくても、輸送する間に凍るんじゃないか”と気付いたりして。そういうことにどんどん詳しくなっていくんですよね(笑)。
●一見どうでも良さそうなことの中にも、創造につながるヒントがあるというか。
YAFUMI:本当にそうなんですよね。だから今回のアルバム制作でも、“RE:SOUZOU PROJECT”でやってきたことは絶対に忘れないでおこうと思っていました。
●アイデア出しはメンバー全員でやるんでしょうか?
YAFUMI:スタッフも含めて、みんなで話し合います。そういうものを言語化して共有するというのが、俺たちの強みでもあるのかなって思いますね。誰かが立ち上げたものを形にしていくっていう感じで、絶対に多数決はしないんですよ。強い想いを持っているヤツが言ったことに、他のみんなが寄せていくということはいつもやっているかな。雑談をしている中でポロっと誰かが言ったことを拾って、ゴールまで持っていったりもします。
SEIJI:“PUNK BACK OCEAN”(※第2弾 Vol.1【零度】)というのも、SYUTOが“パンク好きだ”と言ったところに熱を感じたので、やっても良いのかなと思ったんですよね。
SYUTO:あれは僕からでしたね。
●熱がある人の意見が重視される。
KAZUKI:そうですね。これまでにもオーディションとかで色んな人に出会ってきたんですけど、やっぱり決定打となったのはSYUTOが“バンドがやりたい”と言ったことなんですよ。メンバー全員そうなんですけど、“バンド”に夢を持っているというところで繋がっている部分があるから。
YAFUMI:ピアニストでそういう人って、あんまりいないんですよ。もっと個人主義的な人が多いというか。だから最初は“なぜやりたいの?”と思ったくらいで。でもSYUTOが“俺はバンドがやりたいんですよ。バンドで金持ちになりたいんですよ!”っていうので、“良いね良いね!”となって。
SYUTO:自分にはバンドが合っているなと思っていたんです。自分のピアノを最も活かせるのが、バンドなのかなと思っているから。
●バンドに夢を抱いているということが一番大きかった。
YAFUMI:俺たちは、そこの美しさにすごく重きを置いているから。“バンドとはどういうものなのか? なぜバンドなのか?”っていうところにこだわって、その空気感を伝えていきたいんです。だからメンバーを失って、また新たなピースを埋めるとなった時に、そこは本当に重要でしたね。
●そういう意味ではSYUTOさんが入って、現メンバーが揃ったことも大きかったのでは?
YAFUMI:そうですね。本当にそこから動き出したというか。“やっと揃ったな”っていう気持ちはありました。違和感がないし、今が最高の状態というか。ここへきて、それが言えることが嬉しいんですよ。
●今回のアルバムタイトルを『NEW MOON』にしたのは、バンドとして新たに生まれ変わったという意味合いもあるのかなと思ったんですが。
YAFUMI:そういう想いもあるのかもしれないですね。“新しい”という意味の言葉が含まれている『NEW MOON』というタイトルを提示した時に、みんながスッと受け入れてくれたところがあったから。
●タイトルはいつ頃、浮かんだんですか?
YAFUMI:実は、今年の正月に書き初めで書いた言葉が“新月”だったんですよ。だから、その頃から何となくキーワードとしてあったのかなと思います。新月って“新しい月”と言いながらも、その日の夜空には何も見えないじゃないですか。そういうのが俺たちらしいなっていう気持ちも込めて、このタイトルにしました。
●書き初めで書いたということは、その頃からアルバムのヴィジョンは見えていたんでしょうか?
YAFUMI:ヴィジョンはまだはっきり見えていたわけではなかったけど、曲も集まり始めていたので方向性は見えてきていたのかな。“1stフルアルバム”ということで、悩んではいたんですよ。この1枚が、俺たちの今の状態を表してしまうものになるから。色んなことができるバンドではあるので、そういう意味では“どこに絞ろうかな?”っていうことを年明けくらいの時期は考えていましたね。
●そこから徐々に固まっていった?
YAFUMI:固まっていきましたね。最近のLAID BACK OCEANは、“振り切ろう”っていうところがあって。“どこかに絞って届けていこう”っていう気持ちはあったので、その絞るポイントは定めました。
●それはどういうところに?
YAFUMI:“マジョリティに対するアプローチをしなければならないのか”っていうところは考えましたね。簡単に言うと、“売れそうなものを作るべきなのか”っていうところはあって。今売れているバンドを聴いたりもしつつ、その中で“自分がやりたいこと、やるべきこと、やれることは何なんだ”っていうことをメンバーと話し合ったり、自問自答していたんです。でも結局は、“好きなことしかやれないな”っていう結論に達してしまいました(笑)。
●結局、それしかできないというか。
YAFUMI:そうなんですよね。でもそれをここで決められたのは良かった。だからこそ今回も自分たちらしさが出たアルバムになったので、“もう向かう場所は決まったな”と思っています。
●サウンド面での方向性は何か決めていたんですか?
KAZUKI:アルバムに向けて最初の曲出しをした時点では、既存の曲も半分くらい入っていたんですよ。でもSYUTOが入ってライブの本数を増やしていったことで、“ライブで熱量を伝えられる曲が欲しいな”と思うようになって。制作と平行してライブもやっていたので、そこで感じている熱をどうアルバムに反映していくかというところもすごく話し合って、アレンジにも曲作りにも反映したところはありますね。
●ライブの熱量を作品にも反映しようとしたんですね。
KAZUKI:熱量が伝わるようなアレンジというか。そこに重きを置いた感じですね。
●ライブの本数が増えたことが結果的にそういうところにもつながっていると考えたら、SYUTOさんの加入は本当に大きかったんだなと。
KYOHEI:同じメンバーと何年も過ごしていたら、“ありがとう”とか“ごめん”みたいな基本的な言葉を伝えられなくなっていくんですよ。でもSYUTOが入ってきてからは、そういう一言が自然と出てくるようになって。すごく新鮮だったし、そういう忘れかけていた部分を思い出させてくれるような存在でもありますね。
SEIJI:たとえばPUNK BACK OCEANにしても、“パンクをやる”ということに対して自分たちなら経験もあって迷ってしまうところはあって。でもSYUTOがやりたいって言うと、“良いのかな”って思える瞬間があるんですよ。そういう意味では、SYUTOが入ってから色々と動いたものはあるのかなって思いますね。
●バンドに良い影響を色々もたらした。
SEIJI:かと言って盲目的にそのジャッジを信じたりもしないんですけど、ただメンバーとしてSYUTOが言うっていう部分では新鮮だったりしますね。…というか、ここまでSYUTOを持ち上げすぎなのでそろそろ終わりにしたいんですが(笑)。
KYOHEI:大丈夫。原稿では全部カットだから。
SYUTO:ええっ、そんな…!
一同:ハハハハハ(笑)。
「やっぱりロックバンドは、圧倒的であるべきだと思うんですよ。そういう意味で今、自分たちが光を放つモードになれているのはすごく良いなって思う」
●今回の『NEW MOON』を聴かせて頂いて、これまでのLAID BACK OCEANらしさもありつつ、新しい面も見える作品だなと感じました。
YAFUMI:そこは“絶対”ですね。自分たちの中でときめける、新しいことをやっていくのがロックバンドだと思っているから。
●“新しい”ということに関して、M-4「STANDING BACK」の“「新しい」か「あったらしい」か決めるのは ロザリオ”という歌詞が面白いなと思って。
YAFUMI:それは本当にこのアルバムを表すような言葉ですね。“横浜マラソン2018 PR動画挿入歌”として先にMVが出ているM-3「Million」は除いて、今作から最初にMVを世に出すのが「STANDING BACK」なんですよ。ある意味ではリード曲というか、それくらいの立ち位置の曲だからその言葉もハマったんだろうなと思います。
●どの曲も“自分たちの中でときめける”ということを大事に作っているから、フックの強い曲が揃っているんでしょうね。どれがリード曲になってもおかしくない感じがします。
YAFUMI:そう言ってもらえると、すごく嬉しいですね。本当に今、自分がときめけるものを鳴らしていて。70年代後半のパンクとかをずっと追いかけてきて、その後のニューウェイブとかも愛してきた上で、“今の2018年に自分たちはどういう曲を提示するのか”ということはずっと考えているんです。
●そういった過去の音楽を背景に持ちながら、今鳴らすべき音を追求している。
YAFUMI:もちろん聴いてくれる人に自分の音楽を全部理解してくれなんて全く思わないんですけど、そういう音楽愛みたいなものはあって。ミュージシャンって自分が楽しんでやれるものを一生懸命やることによって、誰かの人生が豊かになったりもするっていう最高の職業だと思っているんですよ。今回もそういうことができるアルバムになったかなと思いますね。
●自分が楽しいと思えることを一生懸命やることで誰かの人生も豊かにするし、自分たちも進化していけるのかなと思います。
KAZUKI:そこそこ長く音楽をやっているのでもちろん普通にギターを弾いたりはできるんですけど、今回もミックスを自分でやったのは“その先のところ”を表現していきたいという想いがあったからなんです。やっぱり音に対する解像度もだんだん上がってくるし、今回は特に歌のニュアンスについてすごくこだわっていて。YAFUMIがそこで歌いたいことや表現したいことを汲み取って、ミックスに反映させていったんですよ。
●歌のニュアンスについては、YAFUMIさんから要望があった?
YAFUMI:そうですね。歌に対して今回は、すごく細かくジャッジしました。マイク選びやコンプ(※コンプレッサー)の使い方から…それらをどういうふうに存在させるかっていうことについてもすごく話し合って。
SEIJI:今回のアルバムを作るとなった時に“歌詞だけじゃなくて、声を聴いた瞬間に感動したいよね”っていう話が何度か出て。やっぱり良い曲って、声を聴いた瞬間にゾワッとしたりするじゃないですか。それも表現の1つだと思うし、そのために突き詰めるべきは歌の質感や声の解像度だよなという話はよくしていました。
KAZUKI:普通にバランスを取るだけだと、そういった部分のニュアンスってなかなか出せなくて。そこの細かい表現もしっかりできたかなと思いますね。でも今回はYAFUMIのジャッジが、やたらと厳しかったんですよ。一番キツかったのが、何十時間もかけてミックスした音源を聴いてもらった時に“ラフミックスより良くない”と言われたことで…。
●それはキツいですね…。
YAFUMI:普通は、言ったらケンカになるようなヤツですよね(笑)。
SEIJI:でもそれを言えるっていうのは、大事なことだなと思います。
●信頼関係があるからこそというか。
YAFUMI:ちゃんと“ありがたいな”と思いながら言っていますよ。でも大事なことだからこそ、あえて言葉を選ばずに“良くねぇから”とか言っていて。
KAZUKI:内心では、めちゃくちゃムカついていましたけどね(笑)。途中からはもう半ば、ゴールが見えなかったですね。本当に終わるのかな…っていう。
●でも最終的には、納得のいく仕上がりになったわけですよね?
YAFUMI:今回やるべきことの基準は達成しましたね。何より一番大事なのは今回“何をしたのか”っていうことを自分たちが把握しているかどうかだと思うんです。そういう意味では、目標はクリアしているので良かったです。
●目標にしていたものというのは?
YAFUMI:あえて言葉にするのであれば、“しっかりとリズムの効いたロックでありながら、ヴォーカルが表現したいものもちゃんと伝わる音”かな。単にヴォーカルのヴォリュームが大きくて、バックの音が小さいようなものはあまり好みじゃないから。
●その理想を本気で追求したわけですね。
KAZUKI:最近はデザインやミックスまでやる人もいますし、ミュージシャン自身の表現できる範囲が広がったというか。やっぱり色々やっていくうちに自分のやりたいことや出したい音っていうのは明確になっていくんですよ。でも人に頼むと、思い通りにならないところがどうしてもあって。
YAFUMI:本当に志が高ければ、どこまでもいけるような時代になってきていて。そこは、俺たちに合っているのかなって思いますね。そこの突き詰め方は本当にその人次第だと思うし、KAZUKIにはその素養があると思っているから。
●だから、あえて厳しいことも言ったと。
SEIJI:外注のエンジニアさんには(遠慮して)言えないことも、メンバーだから言えるというところもあって。メンバーだから同じ熱量でぶつかれるし、理解も速くて深い部分があるので、必然的に良くなっているとは思いますね。
●メンバーがミックスを担当しているからこそ、実現できる部分もある。
SEIJI:“RE:SOUZOU PROJECT”からKAZUKIがミックスをやり始めたんですけど、最初は色々と試行錯誤していた部分がありましたね。そもそも“RE:SOUZOU PROJECT”も“自分たちで何かをやろう”というところからじゃなくて、“やりたいことを自分たちがどうやってやるか?”というところから始まっていて。その結果、自分たちでミックスをやろうとなったんです。“目指す表現に追いつくために良いミックスをやれるのは誰だ?”となった時に、外注するよりもKAZUKIのほうが良いんじゃないかとなったわけで。
●自分たちが目指すものを実現する最善の方法として、それを選んだ。
SEIJI:外注でもやれるところで、あえてKAZUKIを選んでいるのも自分たちの選択なんですよ。最初から全部計画していたわけではないけど、今までもターニングポイントが何度もあって、今のメンバーが揃って、そこから必然的にここまで来られたのかなと思っていて。だからこそ今、このアルバムに対して自信が持てるというところはありますね。
●今まで意志を持ってやってきたことが、ここに繋がっている。
SEIJI:“繋がっている”というのは、すごく感じられますね。「Million」は“横浜マラソン2018”のタイアップがつきましたけど、元々YAFUMIはそのために走っていたわけではないから(※2016年に横浜マラソン出走)。でも結果としてそこに繋がったりもして、“やっぱり熱い想いを持っているヤツは集まるんだな”と思ったんです。いつか点と点が繋がっていくんじゃないかなっていう気持ちはあります。
●そういう意味では“RE:SOUZOU PROJECT”で計6作も作品を作ってきたことが、今回のアルバムにも繋がっているのかなと。
YAFUMI:そうですね。全てが繋がっているというのは間違いないと思います。
●ちなみに今作に“RE:SOUZOU PROJECT”からM-7「Mr.Good Morning (NEW MOON mix)」とM-15「SHINE (NEW MOON ver.)」の2曲を再録した理由は何だったんでしょうか?
YAFUMI:“今”ということを考えた時の重要性ですね。「Mr.Good Morning」はここ1年を象徴する曲だし、「SHINE」はあえて『NEW MOON』というアルバムの最後に入れることで本質的な意味を伝えられるんじゃないかと思ったから。このアルバムを「SHINE」で終われるのは、すごく良いなと思っていて。
●本質的な意味というのは?
YAFUMI:「SHINE」が生まれたばかりの頃に、昔からずっとお世話になっている人がライブを観に来てくれたんですよ。でもその日のライブは、全体的にあまり良くなくて。終わった後でその人が“今日のライブは全然良くなかったけど、「SHINE」っていう曲を意味を持って鳴らせるようになれば、このバンドはひょっとしたら強くなるかもな”と言って帰っていったんです。
●そんな出来事があったんですね。
YAFUMI:その言葉がどこかにずっと残っていて。そこからもう何年も経つけど、この曲はずっとライブでやり続けていたんですよ。それで今作の最後にこの曲がハマったというのは、やっぱりあの時の出来事に繋がっているなと。そのことをこのアルバムができて、最後まで聴いた時に思いましたね。今なら本当の意味で「SHINE」を鳴らせる気がしたんです。
●この曲の“君の生き方次第で「しね」はいつでもSHINEに変わった”という歌詞がすごく良いなと思って。ネガティヴな言葉を一気にポジティヴへと反転させる思考が面白いなと。
YAFUMI:そういうところをLAID BACK OCEANでは、いつも心がけていますね。散々悩んでいるし、自問自答もしているけど、最後の出口は光あるものになるような表現をしたいと思っています。
●脳天気なポジティヴさではなく、悩みや苦しみとも向き合った上で歌っているからこそ説得力があるんでしょうね。
YAFUMI:自分の中では“後ろめたさとかを経て、ここに立っている”という感覚があるから。その上で“あえて今日は陰の話はしないけど”って、言い切ってしまえる強さは持てているのかな。
●今作では他にもM-5「明日からの旅」や“未来を迎えにいくんだろう”と歌うM-6「KAZAANA」、“そしてまた次の旅に出る”と歌うM-8「YSC」など、光射す未来へと向かう曲が多いなと思ったんです。
YAFUMI:ロックバンドをやっていると、“どういうものを表現したら良いのか”とか“自分とは何なのか”っていうことをすごく考えるんです。これまでにも色んなモードがあったし、曖昧なものを歌いたくなる時期もあって。“こっちだって迷っているんだ”って、その迷いを素直に出したくなったりもするというか。でもやっぱりロックバンドは、圧倒的であるべきだと思うんですよ。そういう意味で今、自分たちが光を放つモードになれているのはすごく良いなって思う。信じても良いと思う…LAID BACK OCEANを。ここへ来て、まだそれを言い切れるのは良かったなって思いますね。
●そう言い切れる作品ができた。8年目にしてようやく1stフルアルバムを世に放つわけですが、ここで終わりではなく、もっと先を見据えているわけですよね?
YAFUMI:本当にそうですね。今、バンドとして良い状態で、そんなモードになれているのも奇跡的なことだと思っていて。そういうことをここでちゃんと相手の目を見て、本気で伝えられているのは良かったなと思います。“こんなものじゃなかったな。こんなつもりじゃなかったな”って、そんな想いが積み重なってやめていくバンドマンもたくさん見てきたから。そういう中で、“間に合った”という感じが自分たちはしています。ここからまた、何が生まれてくるのか楽しみですね。
Interview:IMAI
Assistant:Shunya
Artist Photo:尾形隆夫
Live Photo:佐藤祐介 / SERINA