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ABSTRACT MASH “Set Yourself” ライブレポート 2018/5/11@渋谷TSUTAYA O-WEST

1つ1つを心から楽しんでいる様は、とても美しく見えた

ABSTRACT MASH “Set Yourself”
2018/5/11@渋谷TSUTAYA O-WEST

 

 

5/9(水)、千葉LOOKでのライブで7年ぶりに活動を再開させたABSTRACT MASH。その彼らが、「活動休止前に自分たちの企画で最大キャパだったのはO-WESTだったので、ここからまた始めたい」ということで開催したワンマンイベント“Set Yourself”。チケットはソールドアウト、フロアにはたくさんのオーディエンスが詰めかけ、その瞬間を心待ちにしていた。

 

 

予定開演時刻を5分ほど過ぎた頃に会場が暗くなってSEが流れ、ステージにメンバーが登場。拍手に包まれる中でVo./G.村松 拓が右腕をフロア方向に掲げ、Dr.榊巻 雄太のカウントでライブがスタートした。

 

 

1曲目は「Where's my Stand」。村松の声がどこまでも響き渡っていく中、サビではG.小林 雄剛がコーラスをとり、2人のハーモニーによってメロディが更に輝きを放つ。Ba.梨本 恒平は身体全体を大きく使ったプレイで客を煽り、榊巻は終始笑顔のまま確かなリズムを繰り出していく。心地よく降り注ぐ雨のようなサウンドはオーディエンスの気持ちを温め、輝きを放つメロディは我々の感情を揺さぶり、小林が奏でるギターリフが心の琴線に触れる。「Nothing can be printed with you」、そして村松が「今までと同じことをやってもおもしろくないから」と歌詞を新しく書いた「Aspili」、曲を重ねていくに従って会場は彼らの音楽に陶酔していく。

 

 

フロアでモッシュが起こるわけでもないし、ダイバーが舞うわけではないが、彼らの音楽を浴びながらステージを観ていると、心は常に大きく揺さぶられ、ぐっとに惹き付けられる。不敵なリズムでヒリヒリとした空気を作り出した後に極上のメロディで眼の前をパッと明るくした「Aches」、4人が笑顔で気持ちを溢れさせた「Displayed mind」、スケールの大きな音像が壮観だった「Inside the running soul」。静と動、緊張と緩和。音で描かれる美しい心象風景に魅了される。

 

 

ライブ後半に披露された新曲「Silent Wheel」は、村松と小林のハーモニー、降り注ぐサウンド、押し寄せるリズム、泣きのギターが印象的な、エモーショナルなナンバー。2018年現在進行形のABSTRACT MASHをしかと見せてくれた。

 

 

村松が「俺たちは俺たちらしく。大好きな曲に対する気持ち…それしかない」と叫ぶように言って「Save the world」で感情を溢れさせ、「Livily Play」でフロアを揺らし、「White Schedule」で会場の熱を更に上げ、「I am」では4人が気持ちを剥き出しにする。ずっと浸っていたい爆音の中で、4人が歌い、音を鳴らし、笑顔を見せる。同曲のアウトロで村松はギターを弾きながらステージをぐるりと歩き、演奏に没頭する小林の顔、笑顔でドラムを叩く榊巻の顔、激しく身体を揺らしながら演奏する梨本の顔に目をやった後、もう一度フロアを眺め渡して本編が終了した。

 

 

アンコールでは、12/4に仙台MACANAで次のライブを行うことを発表し、「ゆっくりやっていくんでこれからもよろしくお願いします!」と言って「We're lonely parallel」、そして「もう1曲やっていいですか?」と「1mmタール」で終演。

 

 

彼らはとにかく楽しそうに演奏し、曲に没頭して歌っていた。曲によってコーラスを担当するメンバーは変わっていくのだが、4人それぞれが演奏しながら(例えマイクを通さずとも)歌っているし、メンバーそれぞれがまるで歌うように楽器を鳴らしていた。とにかく、彼らは小林が書く楽曲が好きで、村松の歌が好きで、4人でライブをすることが好きで、ABSTRACT MASHというバンドが大好きなのだろう。4人で演奏すること、音をぶつけ合うこと、パワー感のあるキャッチーなメロディを一緒に紡ぐこと、MCでくだらないことを言って笑い合うこと。その1つ1つを心から楽しんでいる様は、とても美しく見えた。

TEXT:Takeshi.Yamanaka

 

 

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