今年2月に5thシングル『僕ら』をリリースし、主催イベント“GOOD LUCK 2018”を大成功に終わらせたラックライフが、早くもニューシングルをリリースする。今作『シンボル』は、PONがバンドを始めた当初からずっと大切にしてきたもの(=シンボル)を形にした、ラックライフらしいエモーショナルでソリッドなロックチューン。カップリングには人間関係の中で生まれた絶望とその先の想いを綴った「ルーター」、そして両親への感謝の気持ちを初めて書いた「バースデー」。名曲が詰め込まれたラックライフの最新作、じっくりと聴いて自らにも照らし合わせ、様々な思いを馳せてほしい。
「それが僕のシンボルなんですよ。高槻で育ったこととか、仲間のバンドと一緒にドキドキしたライブのこととか、そういうのがずっと胸の中にある」
●前作5th シングル『僕ら』は今年2/28リリースだったので、かなりリリース間隔が短いですね。
PON:結構最近ですよね〜。でも『僕ら』は映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)』のタイアップということもあって、2017年の秋頃に作っていて。だから今回の制作はまあまあしんどかったですけど、そこまでタイトなスケジュールというわけではなかったので、ゲボ吐くまで追い詰められたりはしなかったです(笑)。
●今回のシングル『シンボル』はTVアニメ『食戟のソーマ 餐ノ皿』遠月列車篇のオープニング主題歌ということですが、このアニメは知っていたんですか?
PON:原作『食戟のソーマ』は天下の週刊少年ジャンプ(集英社)ですからね。僕らジャンプに育てられたようなもんなので。
●ということは、漫画も読んでいた。
PON:読んでましたし、オープニング主題歌をさせていただくことが決まってからも読み直しました。だから(タイアップが決まって)テンションが上がりましたね。
●今回のシングル曲M-1「シンボル」は、ラックライフのロックナンバーの中でも結構シリアスな部類に当たると思うんです。歌い方もサウンドも、ちょっとソリッドな印象。
PON:そうですね。『食戟のソーマ』ということで、まずサウンド的には尖った感じがいいなと思ったんです。まず最初にイメージしたのは、「僕がもし『食戟のソーマ』のオープニング映像を作るなら?」ということを考えてみたんです。
●ほう。
PON:そしたら中華鍋を振っていたんですよ。めっちゃ火が出てて、チャーハンがブワッとなってて星になる、みたいな。
●ハハハ(笑)。
PON:料理と言えば“火”やなと。だったらソリッドな感じがいいなと。そう思いながらサウンドの大まかな感じを作り始めて。
●ふむふむ。
PON:話の内容自体も料理バトルなので、バトルといえば…テレビ番組『料理の鉄人』みたいな(笑)、ああいうところで中華鍋を振っているところをイメージしてサウンドを作り出して。歌詞についても、主人公の幸平創真が寮生の仲間たちと力を合わせて闘っていく話なので、そういうことを自分に置き換えてみたんです。
●なるほど。
PON:『食戟のソーマ』の舞台は料理学校なんですけど、僕らにとっての舞台はライブハウスで、寮生の仲間たちは、僕らにとってはバンド仲間で。そこで、自分たちの夢とか理想の姿に近づけるために切磋琢磨して強くなっていく…そういうイメージが出てきて、ピン! ときたというか。“やっぱりさすがジャンプやな!”と思いながら。
●少年ジャンプのテーマは「友情」「努力」「勝利」ですもんね。
PON:そうそう。だから本当にライブハウスだけのことを想いながら歌詞を書いたんです。10年間バンドをやっているから、友達のバンド仲間がいっぱい出来るじゃないですか。昔からずーっと一緒にやっている友達のバンドとか先輩のバンドとか…まさしく僕らの主催イベント“GOOD LUCK”に出てくれるバンドとか。だから今回のタイアップはすごくタイミングが良かったんです。“GOOD LUCK”のメンツを見ながら歌詞を書いたんです。
●お、すごい。
PON:ずーっと一緒にやれていることはすごく嬉しいことやし、今でも昔から知っているバンドと対バンするときは負けたくない気持ちがすごく前面に出るし。バチバチやった後に「お前らやっぱりええやんけ」って言う打ち上げがあったり、「もっとこうやっていきたいよな」って夢を語るじゃないですか。
●はい。
PON:それを10年間ずーっとやっているわけですよ。それはすごく幸せなことで、僕の宝物やと思うんです。でも、“果たしてこれでいいのか?”とも思うんです。10年間ずっと、同じようなキャパシティのライブハウスで未だ一緒にやれてしまっているという現状に満足していること自体がすごく甘いなと。
●なるほど。
PON:“GOOD LUCK”というイベントもずっとやっているけど、1回もソールドアウトしたことがないし。そういうのはすごくダサいなと思ったんです。“かっこわるいな”って。端から見たら身内のノリでやっていると思う人も居るだろうし。“またラックライフ同じようなイベントやってるわ”みたいな。
●うんうん。
PON:僕ら大阪の高槻RASPBERRYでずっとやっていたときはそういう感じがあったんですよ。高槻というちょっと辺鄙な土地だし、誰かに言われたわけでもないですけど、“別にそのイベントは行かなくてもいいかな”みたいな見られ方をしている空気を感じていて。
●閉じているように思われているというか。
PON:そうですね。「そこでやるんやったら別に行かなくていいわ」みたいに思っていたお客さんも少なからず居るんじゃないかなって。変な話ですけど、大阪の中心地でイベントやるときよりも、高槻でやる方が動員は落ちるんですよ。場所も遠いし仕方がない話やとは思うんですけど、でも“そこを俺は大事にしたい”と思っていたからずっとやってきたし、今でも「大阪・高槻のラックライフです」という自己紹介はするし。
●うんうん。
PON:それが僕のシンボルなんですよ。高槻で育ったこととか、仲間のバンドと一緒にドキドキしたライブのこととか、そういうのがずっと胸の中にあって。初めてライブを観て衝撃を受けたあの感じとか、ずっと持っているから今もバンドがやれているんです。
●はい。
PON:でも、未だにずっとそうやって仲間のバンドとやれてしまっているということは、うまいこと行ってない、予定通りに行ってないということですよね。お互い大きなフェスに出て、そのバックヤードで乾杯する予定だったのに、同じライブハウスで毎年イベントやって、毎年ベロベロになるまで打ち上げして(笑)。それで「今日も最高やったな」と言い合っている…それでいいんかなと。
●ああ〜。
PON:もっともっとお互いにかっこよくなって、色んな人に認められて味方を増やして、もっとすごくなって自信を持った上で一緒にやって、夢を語り合えたらいいのになって。だから「俺も情けないしお前も情けないぞ。でもおまえめっちゃかっこいいし、俺もめっちゃかっこええけど、もっとがんばろうや!」っていう。悔しいなと思いながら。
●そういう想いが「シンボル」の背景にあるんですね。この曲の歌詞には“未来”という言葉が出てきますけど、未来や夢に向けて闘っているという感覚があるんでしょうね。
PON:そうですね。友達のバンドと「早く売れたいよな」とか「もっとすごいこと出来るようになりたいよな」みたいなことをずっと話しているんです。Self-Portraitっていうバンドのヴォーカル(眞鍋 総一郎)とめっちゃ仲が良くて、ご飯食べに行ったり飲みに行ったりするんですけど、そのたびにそいつは「俺は武道館のワンマンをして、いちばん最後の曲でオーケストラをバックに歌いたい」と言っているんです。THE BACK HORNがそれをやっていて(2008/6/7)、そいつはそれを観てバンドを始めたんです。
●まさに初期衝動ですね。
PON:はい。もうずーっと言ってるんです。「けど俺ら全然近づいてないよな」とか笑いながら飲んでるんですけど(笑)、それはあいつの“シンボル”で、ずーっと持ち続けている“夢”で、そのために必死こいてバンドをやっていて。
●PONくんには具体的な夢はあるんですか?
PON:僕は全部です。武道館もそうやし、『ミュージックステーション』も『紅白歌合戦』も『FNS歌謡祭』も出たい。『探偵ナイトスクープ』の探偵にもなりたい。
●おお、確かに『探偵ナイトスクープ』の探偵さんは関西ではすごいステータスですよね。
PON:ですよね。あのポジションになれるくらいになりたい。関西ローカルの番組に普通に出てる感じ…『探偵ナイトスクープ』と『やすとものどこいこ!?』に出るのも僕の夢なんです(笑)。
●ハハハ(笑)。話を戻すと、PONくんが昔から大事に思っていること、それが『シンボル』に詰まっていると。
PON:そうです。初期衝動というか、ずっとバンドを続けている理由というか。なぜこんなにずっとバンドをやっているかというと、最初にドキドキ出来たからやし、そのドキドキが胸にあるから未だに走っていられる。
●ちなみに、テーマ曲というのは今まで何度も経験してきましたよね。自分たちが作った曲が、アニメや映画という作品として放送されることには慣れました?
PON:慣れないですね。いつも最初はドキドキします。そういえば1つ発見があったんですけど、アニメきっかけでラックライフを聴いてくれている人たちって、あまり自分に(曲の世界観を)当てはめて聴かないっぽいんですよ。
●え! なるほど!
PON:自分というより、キャラクターに当てはめる。Twitterとかで見ていても、「この曲はこのキャラクターとこのキャラクターの関係性にすごくぴったり」ってつぶやいていて、後から自分で見返したら“うわ! ほんまや!”と思ったり。自分に当てはめないのが良いとか悪いとかの話じゃなくて、“音楽にはそういう楽しみ方があるんや!”ということを発見したんです。
●それ、すごく興味深い発見ですね。PONくんが作る作品にとって“共感”はすごく重要な要素だと思うんですが、そうじゃない楽しみ方がある。
PON:そうそう。アニメとセットで音楽も作品として楽しんでくれているという。だからすごくびっくりしました。そういう人たちが、タイアップが付いていないラックライフの他の曲もそうやって聴いてくれるんですよ。
●ああ〜、おもしろい。
PON:共感というのは自分だけじゃないんやなって。何かの曲を聴いて“この曲あいつに聴かせたいな”と思うことと一緒なんやなって。自分じゃなくて誰かを想うこと…それが例えばアニメであっても漫画であっても、それはそれで素晴らしい受け止め方やし、僕らみたいに“自分に! 自分に!”って当てはめるよりも、全然広い楽しみ方を知っている人たちなんやなって。“たまには自分にも当てはめてみてや〜”って思いつつ、すごく勉強になりました。こういう機会をたくさんいただかなかったらわからないことやったなって。
●なるほど。それとカップリングのM-2「ルーター」とM-3「バースデー」はそれぞれタイプが違う曲ですが、かなり両極端ですよね。
PON:そうですね。「ルーター」は、僕がずっと大事にしているものを理解されていなかったというか破壊されたことがあって、“こんなに近くに居るのにわからへんのやったら、誰ともわかり合えへんわ!”と自暴自棄になったことがきっかけで書いたんです。
●それ、結構な感情ですね(笑)。
PON:はい(笑)。対して「バースデー」は“今日は僕の生まれた日”というフレーズが最初に出てきて、それをきっかけにして“俺の誕生日か。誕生日というと…”と膨らまして考えていったら、父ちゃんと母ちゃんに行き着いて。
●わかります。誕生日は親に感謝する日という感覚がある。
PON:昔はそういう感覚はなかったけど、年を重ねるごとにだんだんそういう気持ちが出来てきて。でも親に「産んでくれてありがとう」とか言ったことあります?
●いや、言えないですね。
PON:そうですよね。今はめっちゃ仲良いんですけど、昔の僕は両親とギスギスしていてロクに会話したことがなかったんです。高校3年で進路決めるときも“あれ? 俺、親とどうやってしゃべるんやったっけ?”って思うくらい、ちゃんとしゃべったことが無かったんです。
●ええー!
PON:だから正直、誕生日もほとんどお祝いされたこともお祝いしたことも無くて。
●そうだったんですか。意外。
PON:そういう家庭だったので、「ありがとう」と言いたいし感謝したいけど、やっぱり出来ひんなっていう(笑)。“俺、家でそんなキャラじゃないねんな〜”っていう。
●ハハハ(笑)。
PON:だからそれを曲にしたら…おとんとおかんに対する気持ちをちゃんと歌に出来たらなと。
●め、めっちゃいい話だ!
PON:おかんはいつもタワーレコード高槻店で店着日にCD買うので、恥ずかしいんですけど(照)。
interview:Takeshi.Yamanaka