“Jin-Machine 2018 tour「今日から一歩」”
2018/4/15@川崎CLUB CITTA’
今年2月から2ヶ月半にわたり全国各地を行脚してきたプログレッシヴ・コミックロックバンド、Jin-Machine。その“Jin-Machine 2018 tour「今日から一歩」”のファイナル公演が、川崎CLUB CITTA’にて開催された。『JUNGLE LIFE』244号ではツアー前半戦を振り返るインタビューも掲載し彼らの珍道中の模様を一部お届けしたが、そこから後半戦の旅路を経たことで5人はさらなる進化を遂げているはず…。そんな期待と確信を胸に、ミサ(※ライブ)の開演を待つ。
場内が暗転するとスクリーンにツアー各会場で撮影されたファンとの集合写真が次々と映し出され、今回の旅の記憶を我々にも追体験させてくれるかのようだ。カウントダウンが行われた後にメンバーが1人ずつ登場して客席を沸かせ、いよいよミサの幕が上がる。待ちわびた平民たち(※ファン)に向けて“迎えにきたよ、マリア”と呼びかけ、「maria.」から演奏がスタート。ヘヴィなイントロに合わせてステージ上では火柱が上がり、まさしく火蓋が切られた。
続けざまにヘヴィな「hell metabolic death my life」を放ち、間奏ではフロア中央に配置された花道を練り歩いて“飛べ!”と煽るfeaturing16[MC/以下16]。「suffer」でも“頭を捧げなさい!”という指示に従い、信仰心の厚い平民たちは一心不乱のヘッドバンギングで応えていく。「救声」では、あっつtheデストロイ[破壊/以下あっつ]の野太いデスヴォイスに合わせて、たくさんの拳がフロアから突き上げられる。「モンスターペアレンツ」「NEVER SAY NEVER」とアッパーチューンの連発で、序盤から徹底的にブチ上げられていった。
“川崎、今日は楽しい夜になりそうだね。俺たちとお前たちなら絶対できるよ”という16のV系っぽいセリフに肯きながら、ミサは禁断の中盤へ。レジデンス涼羽―178[ていおん!]とルーベラ・木村・カエレ[ドラミ]のリズム隊2人による“カッコ良いバンドなんじゃないか?”と勘違いしてしまいそうなセッションの後、白いシャツ姿で1人登場したのはマジョリカ・マジョルカ・マジカル☆ひもり[ギタ―――(゚∀゚)―――!! /以下ひもり]。ヒューマンビートボックス的な感じでルーパーを使って様々な声を重ねてトラックを作り、それをバックに「STAND BY ME」を熱唱した。
“サクセス!”と叫んでひもりが去っていくも、まだこれだけでは終わらない。それぞれ赤と黄色のド派手なタキシードを身にまとった16扮する“デス山田ひろし”とあっつ扮する“新人(=あら ひとし)”が現れて、2人で「death海峡のdeath岬」をデュエット。“演歌×デスメタル”という誰にも真似できない…いや、真似したいとも思わない独創性溢れる楽曲で唖然とさせた後は一転、「夢の中で」をしっとりと聞かせる。そのままボサノバ調の「BLUE MOUNTAIN」で良い雰囲気になりそうなところを、あっつのリコーダーソロと16の音が掠れまくったトランペットソロでブチ壊してくれるのが、我らがJin-Machineだ。
ヤツらによる音楽への悪ふざけは、まだまだ終わらない。デス山田ひろしと新人が再び登場して、「きよしのズンドコ節」を“デス演歌”カバー。その後でいったん暗転すると、フロアに突如“桃太郎!”という素っ頓狂な声が響く。スクリーンにはあっつ画伯による紙芝居が映し出される中、誰もが知っている昔話がただ語られていくというカオス空間を展開。“めでたしめでたし”のところで火柱が上がったり、その後でスクリーンに映ったメンバー5人による本当にしょうもない会話に合わせて照明やスモークが使用されたりと、これでもかとばかりに特効を無駄遣いした末に後半戦へ突入する。
SEに乗って再びメンバーが1人ずつ登場し、花道で平民たちを煽っていく。“後半戦も飛ばしていくよ”と宣言してからの「さよなら†黒歴史」では、息の合った振り付けの動きでヴォルテージが上昇。ゴリラがステージに登場して共に踊った「ゴリラ」から、メンバーが花道でサイリウムを振って盛り上げた「二次元シンドローム」、さらに「シャンゴリラ」と続けられればテンションも激アガりせざるを得ない。会場全体を巻き込んでのエンターテインメント性に溢れたパフォーマンスも、Jin-Machineの真骨頂なのだ。
演奏前に振り付けを平民たちにレッスンしてから始まった「恋してせんべろ」では一体感を生み出し、「マグロに賭けた男たち」ではマグロやイカがステージと客席の間を大量に飛び交う。こんなよくわからないけど凄まじく楽しい光景が繰り広げられるのは、世界広しといえどもJin-Machineのミサしかないはずだ。そして最後は、ツアーを通して感じた想いを歌に乗せたという新曲「今日から一歩」を披露。歌詞がスクリーンに映し出される中で、メンバーが交代で歌うという感動的っぽいシーンで本編は締め括られた。
まあ、そんな感動的な話で終わらないのが、Jin-Machineのミサである。アンコールを求める“帰れ”コールに応えて、特攻服を着たメンバーがステージへと見参。何やらピンチらしい姐さん(※スケバン風の衣装を着たあっつ)を救うために、花道に敷き詰められた足つぼマットの上を16が「チャンプロード」を歌いながら裸足で必死に進んでいく。誰も得しない寸劇をやりきった後はメンバーそれぞれが今回のツアーへの想いをわりと真面目に語り、おなじみの「ENCORE」から本当の終盤戦へ。「たのしい日本語」「じんましーんのテーマ2」に続けて、「パチンコ イエーイ!!!」でピースフルなサークルモッシュを巻き起こして、盛りだくさんのミサを終幕させた。
“この5人で新しいJin-Machineの未来がちょっと見えた”という16の言葉どおり、レジデンス涼羽―178を迎え入れての新体制でやり遂げた今回のツアーは、今後の道程に確かな光を射し込んだものだったと言えるだろう。メンバーが変わろうとも、彼らの進んでいく道が変わることはない。誰も足を踏み入れたことのない、誰も足を踏み入れたくもないかもしれない、そんな未開の地を切り開いていくのがJin-Machineに課せられた使命なのだ。7月から始まる新たなツアー「マジ卍ジンマ島(=まじまんじじんまじま)」でも、この5人の勇姿をぜひ見届けて頂きたい。
Text:IMAI / Photo:千佳