2012年に神戸で結成された3ピースバンド、がらくたロボット。同世代バンドとは一線を画するアプローチで時には“時代錯誤”と揶揄されながらも、頑なに初期衝動を叩きつけてきた彼らが“本格始動”を宣言したのは2017年のことだ。2017年10月から2018年2月までの間、2ヶ月おきにライブ会場を主戦場として限定リリース企画“シングルカセット3部作”を実行した。それと並行して構想・制作が進められていたという1stフルアルバム『ツキノアリカ』が遂に完成し、4/25にリリースされる。過去の自主制作音源にも収録されていた「産叫」のリメイクバージョンから始まる今作は、まさに新しい生命の誕生を力強く叫んでいるかのよう。ここに収められた全12曲はいずれもこれまでとは明らかに異なる魅力を放ち、バンドとして次なるステージへと一歩踏み出したことを示している。十代の頃から必死に突っ走り続けてきた日々を血肉へと変え、普遍性と独自性を兼ね備えた自分たちのロックンロールを3人は生み出したのだ。ヤマモトダイジロウ(Vo./G.)が率直な言葉で語る、表紙&巻頭10,000字インタビュー。
「“若いのに”とか“ガキのくせに”って言われながらも、自分の影すら振り切るかのように本気で突っ走り続けてきた。でも今は、その影が後ろにスッと付いてきたような気がしていて。“そのまま、ここから始めようか”っていう準備が今やっとできたという感じがしているんです」
●これまでも2枚のミニアルバムをリリースしてきたわけですが、今回の1stフルアルバム『ツキノアリカ』を聴いた時に“ここで新たに生まれた”ような感覚があったんです。ある意味、今までは“助走期間”みたいなもので、今作が本格始動するにあたっての新たな出発点になっている気がするというか。
ダイジロウ:本当にそんな感じですね。これまではわけもわからず、ただ突っ走ってきたんですよ。人から“若いのに”とか“ガキのくせに”って言われながらも、自分の影すら振り切るかのように本気で突っ走り続けてきた。でも今は、その影が後ろにスッと付いてきたような気がしていて。“そのまま、ここから始めようか”っていう準備が今やっとできたという感じがしているんです。
●そういう感覚があるから、1曲目も「産叫」にしたのかなと。
ダイジロウ:そうですね。この曲を最初にレコーディングした時は、まだ高校1年生か2年生やったんですよ。元々は歌詞も何もなかったところから、レコーディングの前日くらいにパッとひらめいて。その当時はドラムと俺しかいなかったんですけど、ある意味、がらくたロボットが動き出す“始まりの曲”やったんです。それを今このメンバーで“さぁ、本格始動や”っていうタイミングで持ってこようと思って、アレンジも歌詞も変えて収録しました。
●“始まりの曲”だからこそ、ここに持ってきた。
ダイジロウ:実は前作の『BREAK OUT』(ミニアルバム/2017年3月)のラストで「ハネル」が終わった後に、(今作と同じ)産声がフェードインしてくるようになっていて。それは今回のフルアルバムに向けて、“ここで何か起こすんや”っていう気持ちで作っていたからなんですよ。
●『BREAK OUT』を作っていた時点で、既に今作へとつながるイメージを描いていたんですね。
ダイジロウ:あの時点で全てが決まっていたわけではないけど、大体の流れや“次はフルアルバムを出そう”ということは考えていました。作品が完成した時って1つの終わりであって、終わりは新しい始まりでもあって。『BREAK OUT』を作り終えた時にも“じゃあ次はこうだ”っていうものが明確に見えていたので、“だったら1曲目は「産叫」やな”っていうのはその時から決めていましたね。
●『BREAK OUT』から今作までの間に会場限定でカセットを3本リリースしてきたのは、どういう意味合いで?
ダイジロウ:あれに関してはある意味、実験的なところもあって。レコーディングに関する試行錯誤というか、色々と録り方や曲の作り込みについても考えている時期やったんです。あとはシングルをパンパンパンと出すことで、アルバムに向けて“来るぞ、来るぞ”という流れを作りたかったというのもありますね。
●会場限定で、しかも100本限定のカセットという仕様にしたのはどういう発想から?
ダイジロウ:“そこでしか聴けないもの”っていう理由が、まず1つあって。A面の1曲だけ収録したCD-Rも付けていたんですけど、他の曲はカセットでしか聴けないっていうプレミア感も出したかったんです。“特別感”っていうものが、俺は大好きやから。それともう1つの理由としては、俺らの音がカセットにすごくマッチするというところもありましたね。
●テープ特有の音が自分たちに合っている?
ダイジロウ:全部がバッて飛び出しているような…、もうハチ切れる寸前みたいな音が良いなと思っていて。そういう音が良いなっていうのは、作ってみてからも改めて感じましたね。
●ハチ切れる寸前みたいな感覚というのは、ライブにも通じる気がします。
ダイジロウ:空気とかも全部含めて、その場にいないとわからないものがあるじゃないですか。それこそ毛が逆立つくらいの、肌で感じられるものがあるんですよね。カセットは“生(なま)”ではないけど、それに近いと言えば近いですね。
●カセットの表題曲は全て今作にも収録されていますが、先行シングル的な意味合いもあったんでしょうか?
ダイジロウ:それもありつつ、俺の中ではこのカセット3部作で1つ完結しているところもあるんですよ。そういう意味では全部まとめて“シングルカセット3部作”なんですけど、1曲1曲にもやっぱり意味はあって。だからアレンジをちょっと変えたりして、今作に持ってきたというパターンも多いですね。
●カセットの収録曲は今作に再録するにあたって、アレンジを変えたりもしていると。
ダイジロウ:そうですね。大体の骨組みは一緒なんですけど、音の処理や音質を変えたりもしました。シングルでは“この並びやから、こういう感じ”という表現になっていても、アルバムになるとまた違うんですよね。“アルバムではこういう表現”というものにしたかったんです。
●アルバムの中に入った時に、ちゃんと合うような表現に調整したというか。
ダイジロウ:やっぱり流れというものが大事で、同じような曲が続いても面白くないから。そこに波があってこそ面白いので、アルバムの中でその波を作るためにアレンジをちょっと変えたりしたところはあります。
●全体の流れを意識していた?
ダイジロウ:やっぱり“アルバム”やから。“ベスト盤”じゃないし、全編通して『ツキノアリカ』というアルバムなんですよ。
●1stフルアルバムということで過去の2枚のミニアルバムからもピックアップして、これまでの集大成的な作品にもできたわけですが、それはやらなかったわけですよね。
ダイジロウ:アルバムごとにもやっぱりテーマや意味があるから。昔の曲をずっとやり続けるのも1つの方法ですけど、アルバムに全く同じものを入れるっていうわけにはいかないんですよね。だからアレンジをちょっと変えたりもするし、たとえば前の作品の“答え”になっている曲もあったりするので、あまり再録はしないんです。
●そういう意味で今回「産叫」を再録したのは、特殊なケースというか。
ダイジロウ:そうですね。この曲に関しては、今やからこそできる音やアレンジにしているっていうところはあります。
●「産叫」は短い英詞になっていますが、1つ1つの単語に深い意味があったりする?
ダイジロウ:意味なんてないですよ(笑)。
●本当に?
ダイジロウ:いや…あるけど、ないんです(笑)。別に深い意味はなくて、そのまんまというか。逆にどう思いますか?
●たとえば“River”だったら、生まれ育った場所の近くに川が流れているというイメージにつながるのかなと思いました。
ダイジロウ:それは聴く人が想像したままで良いと思います。“River, Fountain”という歌詞から俺が生まれた場所の近くに“吹き上げる川があるのかな?”と想像しても良くて。ただ、全部ひっくるめて“Shout To The Born”=“俺らは生まれるために叫んでる”っていうのを、このアルバムの冒頭には置きたかったんです。生まれた時もそうだったから、というだけの曲ですね。
●この曲の最後に入っている産声は、本当にダイジロウくんが生まれた時の声だそうですね。
ダイジロウ:もう21〜22年前に生まれた瞬間の俺の声ですね。“ダイジロウちゃんの産声”っていうタイトルのカセットテープが残っていたんですよ(笑)。
●その存在を知ってから、ずっと使おうと思っていた?
ダイジロウ:そうです。高校の頃に録った音源にも一応、入っているんですよ。その時はジャケットも、俺が生まれた時の写真やったりして。そういう“何かが始まる”時に使っているので、“今ここが新しい始まり”というタイミングでまた持ってきた感じですね。
●“Time For Changes”とも歌っていますが、今が変化の時だという認識がある?
ダイジロウ:そこは“時代は変わる”という意味でも良いし、“何かを変える時”とか“時を変える”という意味でも良いし、“ゼロに戻る”という意味でも良いんですよ。とにかく“ここから俺らはスタートする”っていう意味も含めて、全てが“チェンジ”なんです。
●1曲目であり、今作全体を象徴している曲でもあるのかなと。
ダイジロウ:そうですね。このアルバムを象徴する1曲でもあると思います。
●表題曲のM-12「ツキノアリカ」も今作を象徴するものだと思いますが、実はこの曲も古くからあるそうですね。
ダイジロウ:これも高2の頃にできた曲ですね。ただ、何回もやろうとはしたけどなかなか音源化できなくて、今回やっとできたという感じで。だからアレンジも最初の頃とは全然違うし、今やれる一番カッコ良い形で録れたと思います。
●この曲を表題曲にした理由とは?
ダイジロウ:これはずっとそうしたかったんですよ。いつか「ツキノアリカ」をテーマに作品を作るというイメージはあって。それが今回やっと形になったというだけですね。これまでは技量的にも足りない部分があって、この曲の全てを表現できていない感覚があったんです。だったら別にその段階で作ってしまうよりも、できるようになった段階で出したかったというだけで。
●曲の持っているポテンシャルを活かしきれていない感覚があったと。
ダイジロウ:当時はそうでしたね。曲自体は良いので今すぐにでもやりたいけど、自分たちが完全には消化できていないというか。あの時はまだ、がらくたロボット自体が“ツキノアリカ”を探してしまっていたんですよね。それを見つけられたから、今は自然とやれているんだと思います。
●今は“ツキノアリカ”を見つけたということ?
ダイジロウ:見つけていますね。1年前くらいにアルバムを作るとなった時に、“「ツキノアリカ」をもう一度見つめ直そう”ということになって。その時に“決まった!” っていう感覚になりました。
●何かキッカケがあったんでしょうか?
ダイジロウ:がらくたロボットが本格始動するというか、“新しいスタートをここから切る”となったのが1つのキッカケでしたね。
●自分たちの中でも“本格始動する”という感覚があった?
ダイジロウ:それこそ最初に話したように、そこまで影を振り切ってきて走り続けていたところからようやく影がくっついた感覚があって。“今やったら、そのままでイケるやん。何も気にしなくて良いし、カッコつける必要なんてない。そのままやれば良い”って思えた瞬間から、“本格始動”したんだと思います。
●その結果、「ツキノアリカ」も形になったわけですね。全体の流れで言うと、MVにもなっているリード曲がアルバムのラストにあるというのはちょっと珍しい気がしました。
ダイジロウ:それは他の人にも言われましたね。でも“最後まで聴かんと、聴けへんぞ”っていう(笑)。
●ちゃんと最後まで通して聴けと(笑)。特に最近の傾向かもしれませんが、リード曲は大体1曲目や前半に入っていることが多い気はします。
ダイジロウ:俺らは全部、リード曲ですもん(笑)。だから、どこを切り取っても良いやろっていう。
●その自信があるから言えることというか。
ダイジロウ:別にどの曲が一番とかはないんですよ。その曲にはその曲の役割というか、持っているものがあって。俺らからすると、どの曲を取っても“がらくたロボット”なんです。ただ、MVにはまた別の意味があって、“こういう曲の表現”とか“こういうバンドのイメージ”とかを見せるものやから。だからMVになったからといって俺らがこの曲を一番愛しているという意味ではなくて、全部の曲を愛しているんですよね。
「やっぱりこれが“あるべき姿”じゃないけど、“今のリアルな俺たち”っていうか。このアルバムを聴くと、自分たちは“がらくたロボット”なんやなって思いますね。自分たちなりにやっと足並みが揃って、“出発や”って言える状態になったというのは本当に思います」
●「ツキノアリカ」やM-2「Heartfull Murder」を聴いた時に“がらくたロボットって、こんなにメロディアスだったっけ?”と思って。イメージ的にはカセット3部作の第1弾のタイトル曲でもあったM-7「STOP」のほうが、自分の中での“がらくたロボットらしさ”に近いんですよね。
ダイジロウ:確かに「STOP」は、リフ1発でデタラメな歌を歌っている感じが“がらくたロボットらしい”1曲ですね。でも昔からメロディアスな曲もあったんですよ。ただ、昔は「STOP」みたいな曲をもっと前面に押し出していただけで。やっぱりライブで一番グッとくるのは、こういう曲だったりもするから。
●元々持っている側面の、どこを前面に押し出すかの違いだけというか。
ダイジロウ:だからどこを抜き出しても、“がらくたロボット”らしいんですよ。音的にいわゆる“ガレージっぽさ”が「STOP」とかに詰まっているというのはありますけどね。もちろんガレージやパンクも大好きやけど、俺は昔からやっぱりメロディのある曲が好きなんです。
●その部分が自然と出ただけなんでしょうね。
ダイジロウ:いわゆる“売れている曲”なんかでも、良い曲は良いと思うから。だから意図してメロディアスにしようとしたわけじゃなくて、自分の中にあるものをそのまま吐き出すとこうなったというだけで。今は本当にそのままで良いというか、“息をするように歌えたらそれで良いな”と思っています。
●“息をするように歌う”というのは?
ダイジロウ:息をするように“吸い込むように吐き出す”みたいな感じです。昔はもう吐き出すばかりで、“限界を超えるまで吐き出す”みたいな感じやったから。でもそういう時もあったからこそ、今の場所で歌って呼吸ができているという気はします。
●ここまでの道のりがあったから、こういう表現もできるようになった。
ダイジロウ:そうですね。全部、自分たちの“血”になっていると思います。
●「Heartfull Murder」では同じギターリフの繰り返しでどこまで表現できるかという挑戦をしたそうですが、そういうことの繰り返しも“血”になっているのかなと。
ダイジロウ:それもありますね。スタジオでもアレンジをちょっと変えてみたり、“こういうふうにやってみたらどうなるんやろう?”みたいな実験を色々とやっていて。色んなことをやってみて、それがどうなるかっていう試みは日々やっています。
●それによって、表現方法が広がっている部分もあるんじゃないですか?
ダイジロウ:そうですね。だから“表現する”っていうことができるようになってきたんやと思うんですよ。
●これまで吸収してきたものをちゃんと消化した上で、表現として出せるようになっているというか。
ダイジロウ:自然とそれが吐き出せるようになっているんだと思います。搾り出そうとすることもあるんですけど、今は“もっと楽に呼吸したら良い”と思えるんですよね。
●そう思えるようになったのは、これまでツアーや各地でライブをする中で色んなものを見てきた経験も活きているんでしょうか?
ダイジロウ:それはどうなんかな…? どこでやっても一緒やけど、自分が“どこを見ているか”が大事というか。別に神戸にずっといるつもりもないし、いずれはどこへでも行きたいとは思っているんですよ。ただ、“そこ”さえ見えていたら神戸にいても、どこに行っても良いと思うんです。見えるものは別に変わらないから。
●“そこ”というのは?
ダイジロウ:“今ここで何が起こっているのか”というか。神戸でも大阪でも東京でも、日本だけじゃなくて“今、世界で何が起こっているのか?”っていうのが見えていないと、音楽なんてできないんじゃないかなって思うんですよ。自分たちは、音楽で世界を動かそうとしているわけで。そこで自分のことしか見えていなくて、自分の世界しか知らないようじゃ何もできないから。
●自分の中だけではなく、外の世界にも目を向けている。
ダイジロウ:外を常に見ながら、自分自身ももちろん見ています。別にそんな意識するようなことでもないのかもしれないですけど、“今、何がどうなっているのか?”くらいは知っておいたほうが良いと思うんですよ。
●たとえば音楽だったり、自分の好きなものだけを見ているわけではない。
ダイジロウ:だって音楽は表現の1つの手段であって、それは別に画家だとしても一緒なんですよ。自分の好きなものは好きなものであって良いんですけど、この手段の中で何をするかが大事で。俺はこの“がらくたロボット”っていうもので“何ができるのか? 何を吐き出すのか? 何を表現したいのか?”っていうのを突き詰めるだけなんですよね。
●バンドはただの自己満足を実現するためだけの場所ではないというか。
ダイジロウ:自己満足なら学園祭バンドでもやっていたほうがマシやから(笑)。そのほうがきっと盛り上がってハッピーな気分にもなるし、お山の大将にもなれるじゃないですか。でも俺らはそういうことがしたいわけじゃないんですよ。俺らは“自分”とか“バンド”っていうものを表現して訴えているわけで、ただの自己満足ならバンドなんかとっくにやめています。
●その感覚は、バンドを始めた当初からある?
ダイジロウ:ありました。だから高校生の頃も、年上のバンドとばかりやっていて。ガキ大将になりたいなら、同級生のバンドとかともっと一緒にやっていたと思うんですよ。俺の中では“子どもやから”とか“大人やから”というのは、どうでも良いことで。“音楽をやっている以上、どこに出ても俺はやるし、どこでやっても一緒。自分たちがどうやるかだけ”っていう想いは、やり始めた頃からずっとありますね。
●共にバンドをやっていて、同じ土俵に立っている以上は年齢も関係なく勝負するだけという感覚なのかなと。
ダイジロウ:そうですね。音楽をやって吐き出しているなら、どっちが強いも弱いもなくて、みんな同じなんですよ。
●音楽には“良いか悪いか”というのもなくて、最終的にはそれぞれが“好きか嫌いか”だけだと思うんですよね。
ダイジロウ:それぞれに好き嫌いがあって、その人が“何を好きか”ということだけなんですよね。それこそ“ツキノアリカ”も同じで、(自分たちが見ているのは)太陽に見せられている“月”であって、人によって見え方は違うわけで。人それぞれの“月”が見えているわけだから、その中でどう思っても良いんですよ。“自分にはこういう月に見えている”というだけで良いというか。それはこのアルバムも同じなんです。
●聴く人が自由に捉えれば良いし、ダイジロウくんが考える“ツキノアリカ”と、聴き手が考える“ツキノアリカ”が違っていても良い。
ダイジロウ:一緒である必要はないし、それがもう答えというか。その人の“ツキノアリカ”じゃないですか。それで良いと思うんですよね。
●メンバー3人は同じ“ツキノアリカ”を見ている?
ダイジロウ:知らないです(笑)。
●そこも別に一緒じゃなくて良いと(笑)。
ダイジロウ:(バンドとして)“何を訴えようとしているのか”が大事であって、それぞれの答えはそれぞれが持っていたら良いと思うんですよ。
●メンバー間で、“どこを目指すか”みたいな話はするんですか?
ダイジロウ:しますよ。“目指す”っていうか、その都度その都度で“今どうしようか?”っていう話し合いはしています。同じ場所にいるのは好きじゃないから。ずっとステイするくらいなら、もうやめたほうが良い。常に動いているから面白くて、変わっていくから面白いわけで、止まっているのは嫌ですね。だから“次はどこを目指そうか? どこに行こうか?”っていう話はしますね。
●その時ごとにやりたいことは変わっていく?
ダイジロウ:もちろん変わっていきます。ただ、芯は一緒っていうか。“がらくたロボット”というものがある中で“何をしようか? 何ができるか? どれだけ広げていこうか?”っていうだけのことであって。このバンドでやっている上で、そこが変わることはないですね。
●作品に関しても“この瞬間はこういうものを作りたい”というイメージの違いだけというか。
ダイジロウ:そうですね。だからどっちの作品が良いとか悪いとかは本当になくて。どっちにもそれぞれの良さがあって、劣っているも優れているもない。だから別に昔と今を比較したりもしないし、今できることをどんどんやっていくだけで。その中で自分たちが“どうしたいか?”を考えて、挑戦し続けていくっていうのが一番なんです。
●それこそ最初の自主音源に入れた「産叫」は、今では再現できないわけですよね。
ダイジロウ:いや…、当時の録音はヒドいですね〜(笑)。
●ハハハ(笑)。
ダイジロウ:でも、確かにその時にしか出せないものなんですよ。やっぱり、あれは再現できない。だから、今できる形でやれば良いっていうか。その当時のやり方でやろうと思ったら、絶対に敵わないんです。今だからこういう形になっているので、当時のものとは同じ曲でも全く別物っていう感じですね。
●今作にも今しかできないことが閉じ込められている?
ダイジロウ:そうですね。今の12曲というか。それこそM-4「My Way」で“今ここで俺たちは歌っているんだ 俺たちの道を 君の道を”ということを歌っているのと同じで、自分たちの道を今歌っているのがこの12曲なんです。
●“君の道”というのは、リスナーのこと?
ダイジロウ:もちろんそれもありますけど、別に俺らが“道しるべ”ではなくて。“自分が思うようにすれば良いじゃん”っていう。“君も同じやろ? 行きたいところに行けば良いじゃん”っていうだけですね。
●自分たちの音楽で世界を変えたいという話もありましたが、多くの人に影響を与えたいという気持ちはあるんじゃないですか?
ダイジロウ:それはやっぱり自分たちも、先人たちからもらってきたものではあるから。“引き継ぐ”というわけでもないけど、自分も表現者ならそういうことを言っていきたいとは思っています。
●もっと広い世界に出て行きたいという気持ちもあるのかなと。
ダイジロウ:そうですね。このアルバムが俺らを色んなところに連れて行ってくれるって信じています。
●そういうアルバムになったという確信はあるのでは?
ダイジロウ:やっぱりこれが“あるべき姿”じゃないけど、“今のリアルな俺たち”っていうか。このアルバムを聴くと、自分たちは“がらくたロボット”なんやなって思いますね。自分たちなりにやっと足並みが揃って、“出発や”って言える状態になったというのは本当に思います。
●今後はライブやツアーで、自分たちの音楽をさらに広めていく段階ですよね。
ダイジロウ:もちろん“良い曲を作って、良いライブをして”というのが一番だから。まずはライブを観てもらわないと何も広がらないし、そこで何かを感じて欲しい。30分のライブでも1時間のライブでも、そこには俺らの“今”が全部詰まっているというか。最近は動画サイトや配信サイトとかも色々あるんですけど、それらはただの聴ける“道具”なわけで。そうじゃなくて“今、生で感じられるもの”や、“今しか観られないもの”っていうのがライブハウスには絶対にあると思うんですよ。それを観に来てくれたら嬉しいですね。
●まだライブを観たことがない人にこそ知ってもらいたい。
ダイジロウ:ただ単に自分らの殻の中だけで歌うんじゃなくて、色んなところに発信していきたいですね。ツアーでも色んなところに行きたいし、日本に限らずイギリスだったりとか、まだ見ぬ“友”へも送っていきたい。そうしたら自ずと広がっていくと思うんですよ。
Interview:IMAI
Assistant:TODA