音楽メディア・フリーマガジン

GiNGER WiLDHEART

誠実なる言葉と音が紡ぎ出す、ハートウォーミングなソロアルバム。

ザ・ワイルドハーツの中心人物・GiNGER WiLDHEARTが、約2年ぶりとなるソロアルバム『GHOST IN THE TANGLEWOOD』を完成させた。彼自身のパーソナルな部分を包み隠さず表現した今作は、ザ・ワイルドハーツや別プロジェクトで見せる“激しさ・荒々しさ”とは表裏一体であるジンジャーのもう1つの顔“穏やか・優しさ”を感じさせる、ハートウォーミングな作品だ。4月には久々にソロでの来日公演も決まっている彼に、メールを介してのインタビューが実現。アルバムと同様に内面の深いところに至るまで、率直かつ誠実に語ってもらった。

 

●今回のアルバム『GHOST IN THE TANGLEWOOD』では、とてもパーソナルな内容を歌われていますよね。こういった作品を作ろうと思ったキッカケは、いったい何だったんでしょう?

GiNGER:ソングライターっていうのは、歌詞に意味を持たせるべきだと思うんだ。誰かの人生に影響を与えられる特別な存在だし、その立場をわざわざ捨てるようなくだらない歌詞を書くなんて、ファンに対する侮辱だしね。リスナーの誰もが個人的な歌詞を好むわけじゃないとは思うけど、せめて面白かったり楽しい歌詞を書くようにトライするべきだね。俺は怠慢な歌詞を見てると、イライラするんだ(笑)。

●なるほど(笑)。2016年の9月に精神病院に入院された経験が、こういった作品の制作につながったのかなとも思ったのですが。

GiNGER:いや、特にそれがアルバム全体に大きな影響を与えたわけではないよ。M-1「The Daylight Hotel」では、それについて書いてるけどね。

●「The Daylight Hotel」は、精神病院での出来事について歌っている?

GiNGER:ああ、病院の中でとても勇敢な人に出会ってね。彼は人々の偏見と社会が判断する批判によって酷く虐げられてきて、社会と毎日闘ってきたみたいで。人間はある意味、他の動物たちより残酷な種だと思うんだ。病院の中では誰も偏見や批判を持っていなくて、俺はみんな誰もこの病気を自ら望んでいないということがわかった。ただ俺たちは、生きる方法を見つけようとしているだけでね。

●M-2「Paying It Forward」で、あなたは“一人先の人に手を差し伸べること”の大切さを歌われています。そのことに気付かれたのは、どういう経験からなのでしょうか?

GiNGER:これは誰かがホームレスの人の前を通り過ぎる時にわずかな小銭すら与えずに通りすぎるのを見る度に俺がいつも思うことなんだけど、自分たちの人生の状況を考えたら誰だってホームレスになり得ると思うんだ。俺たちはみんな、お返しができない人をもっと助けることができる。みんながもっとお互いを尊重しあって寛大な気持ちになれば、世界はもっと魅力的な場所になるさ。

●そういう想いからだったんですね。M-4「Phantom Memories」は、過去の苦しい記憶との向き合い方について歌っているのかなと思ったんですが。

GiNGER:うん、たくさんの苦しい思い出のことさ。時に家というのはそこで起こったことや過去の亡霊、壁に貼ってある昔の写真を仕切ってあるだけの箱のようなものでね。それらを見ているとツラいことばかり考えがちだけど、できるだけ毎日未来に集中するようにしているんだ。

●M-6「Remains」であなたは“変態(metamorphosis)は新たなものを生む もしかしたらもっとマシなものを 今はその途中”と歌われていますが、自分自身が徐々に良い方向に変わりつつあるということを実感している?

GiNGER:それは毎日のプロセスだけど、日によってかな。たまにしんどい日もあるけど、1日はそんな長くないからね。ある日はすごいパワーを持って何でもヤル気になる時もあるし、ベッドから離れたくない日もある。俺たちはただの人間で、みんな不完全なんだよ。

●自分自身が抱える鬱病や内面的な葛藤について率直に歌うことが、それらと戦っていくための方法や助けにもなっているのでしょうか?

GiNGER:精神的な問題と経験を歌によってみんなと共有することは、“俺たちは1人じゃないんだ”という助けにはなるかなと思う。俺は有名人やスポーツ選手、ミュージシャンなどがこのテーマについてより多く議論し、この病気が差別されないように社会に知らせる必要があると思うんだ。肌の色や“どれくらいお金を儲けているか?”とか“TVに綺麗に映っているか?”なんて、どうでもいいことなんだよ。

●あなたがそういったテーマを歌うことで、同じような病に苦しんでいるリスナーが救われることもあると思います。そういった人たちに対して、メッセージを頂けますか?

GiNGER:精神的な問題について、みんなに話すことを勧めるよ。話すことが最高の薬になる。君は1人じゃないんだ。

●M-10「Don't Say Goodbye」では“little one(=坊や)”に向けて語りかけていますが、“1人じゃない”という意味では“家族”の存在も大きいのでは?

GiNGER:この曲は俺の一番小さい息子に向けて歌ってるんだけど、毎回彼の元を離れるのがツラくてね。実際には息子が寂しがっているより、俺のほうが寂しがっていると思うよ!

●ハハハ(笑)。ところでM-7「The Words Are Gonna Have To Wait」は、デビッド・ボウイが亡くなった日に浮かんだそうですね。近年ではモーターヘッドのレミーも2015年に亡くなられていますが、彼らはあなたにとってどのような存在だったのでしょうか?

GiNGER:彼らは俺にとって、父親のような存在だったね。レミーは俺に生きたいように生きることを教えてくれた。ボウイはお金のためにクリエイティブなことをやらなくていいと教えてくれた。彼らは全く異なる性格の人だったけれど、俺に重要なインスピレーションを与えてくれたよ。彼らは全く違う人だけれど、それは俺たちみんなにも当てはまる。俺たちはみんな、オンリーワンな存在なんだ。

●“your death is coming(=死が近づいてる)”というフレーズからM-9「The Reaper」は始まりますが、“死”を意識することで生まれる想いもあるのでは?

GiNGER:俺はいつでも死ぬ準備はできてる。時々、その日を楽しみにする日もあるけど、ある日にはまだその日が来ないで欲しいと思う日もある。だけど、死ぬことを全く恐れてないよ。

●そういう心境に今はあるんですね。あなたが今作について書かれたセルフライナーを読んで、“sincerity(=誠実さ)”という言葉がとても印象に残りました。あなたにとって、今この言葉はキーワードになっているのでしょうか?

GiNGER:俺にとって正直であることよりも重要なことはないよ。もちろん誠実さも含めてね。人々は、嘘をつくのは簡単だと思ってる。なぜなら、みんな簡単に騙せると思ってるからね。嘘をつくヤツらは、人々が毎回騙されるわけじゃないってことを忘れるんだ。ヤツらはそんなことに興味もないからね。君が100%正直である必要がある唯一の人間は、君自身だけなんだ。他人が嘘を信じるかどうかなんて誰が気にする? 君は親切にもヤツらに真実を持たせてるんだ。

●“sincerity”と同様に、今作の歌詞中に何度か出てくる“Tanglewood”というワードも記憶に残りました。アルバムタイトルも『GHOST IN THE TANGLEWOOD』ですが、これはどういった意味?

GiNGER:単純に“タングルウッド”とは俺のギターの名前さ。全ての曲をこのギターで書いたんだ。“ゴースト”は記憶のことで、“タングルウッド”はギター。つまり、俺の思い出をギターで変換しているっていうことだね。

●そういう意味だったんですね。このアルバムを作り上げたことで、良い方向にもう一歩進めたという実感はありますか?

GiNGER:これは俺が自身の老化の過程を受け入れていることを意味し、この正直な曲たちを今の俺が歌うのは自然なことだと思ってる。もちろん、まだうるさいギターの音やクレイジーなオーディエンスも大好きだし、それらはまだ俺の音楽の一部でもあって。“まだ俺は若い!”と幻想を持ち続けるためにもね(笑)。歳を取ることをたまに忘れることもあるけど、無視はできないしね。カントリーやフォークミュージックをプレイすることで、“俺は歳を取っても大丈夫だぞ!”と自然に老いを受け入れられるんだ。

●今作でもカントリーシンガーのSteve Earleの「My Old Friend The Blues」をカバーされていますよね。この曲をセレクトした理由とは?

GiNGER:俺にとって完璧な歌なんだ。彼のメッセージのシンプルさと斬新な方法に関しては、俺も自分の曲でいつかそこまで達成できることを願ってる。今まで俺が作った曲は、この曲の域までは達していないように思うね。それが、自身が優れたソングライターになろうと日々努力する理由でもあるんだけどね。

●この曲の中に出てくる“The Blues”のような存在が、あなたにとってのカントリーやフォークミュージックなのかなと思ったんですが。

GiNGER:俺にとって“カントリー・ミュージック”とは白人のブルーズ音楽のことなんだよ。家族のために一生懸命働く労働階級の人々の歌、そして彼らが耳を傾ける歌。こういった種の音楽には、ロックスターはいらないんだ。ミュージシャンとは村から村へ、その言葉を歌によって広める情報代理人みたいなものでね。

●ソロではワイルドハーツやMUTATIONとはまた異なる、あなたのルーツを垣間見ることができるのも大きな魅力だと思います。

GiNGER:MUTATIONとソロは両方とも同じで、俺の正直な願望から生まれているんだ。1つは世界の不公平を怒った声で歌い、1つは“なぜ俺たちはお互いに上手くいかないんだろう…”と物想いに耽った声で歌っていてね。どちらも同じ人間が同じことを歌っているんだよ。

●表現の仕方が違うだけで、どちらも同じことを歌っているわけですね。色々と真摯にお答え頂き、ありがとうございました。さて4月には、2年ぶりの来日公演が決まっています。これまでも何度か来日されていますが、あなたにとって日本はどういった場所ですか?

GiNGER:日本は自宅のような感じだよ。ファンのみんなは、いつも歓迎してくれるしね。いつか日本を本当の実家にしようと思ってる。その日が来るのはそんなに遠くないように感じる。俺の最後の日は日本で過ごしたい。イギリスは生まれた場所、日本は俺が死ぬ場所だと思ってる。

●それでは最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします!

GiNGER:4月が本当に待ちきれないよ! みんなの顔を早く見たい。俺のセカンドホームに帰ることを楽しみにしているよ。

Interview:IMAI

 

 
 
 
 

GiNGER WiLDHEARTの作品をAmazonでチェック!!

 

  • new_umbro
  • banner-umbloi•ÒW—pj