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People In The Box

真摯な探求者たちが奏でる比類なき音を、 生で享受できる幸福に心より感謝したい。

People In The Box “10th Anniversary「The Final」”
2018/1/21@EX THEATER ROPPONGI

 

 

デビュー10周年イヤーを締めくくるニューアルバム『Kodomo Rengou』のリリースを目前にした2018年1月21日、EX THEATER ROPPONGIを舞台にしてPeople In The Boxの“10th Anniversary「The Final」”が執り行われた。ある意味、東京という大都市の猥雑なまでの華やかさを象徴するような六本木の真ん中で、彼らのライブが開かれるということにも個人的には面白みを感じる。会場の入口を抜けて地下へ降りて行った先に広がる空間でSEが厳かに鳴り響き始めた瞬間に、もう俗世の喧騒を忘れさせる非日常の世界へと誘われてしまうのだ。

 

 

「汽笛」で晴れやかに幕を開けたライブは、そこから金属的な鋭い響きが耳を刺す「火曜日 / 空室」へ。会場全体を呑み込むような轟音を最後に掻き鳴らした後に「聖者たち」が始まると、Ba.福井健太の太くうねるベースラインにオーディエンスは身体を揺らす。大きな拍手と歓声に包まれる中で迎えた、この日最初のMCでVo./G.波多野裕文が“10年の幕開けの曲”と告げて奏で始めたのは「She Hates December」だ。デビュー作となった1stミニアルバム『Rabbit Hole』(2007年)のオープニングチューンから、こちらも同年に発表された初期の名曲「犬猫芝居」(1stフルアルバム『Frog Queen』収録)へと続いていく。

 

 

かつての彼らに想いを馳せていたのも束の間、「空は機械仕掛け」(5thミニアルバム『Talky Organs』/2015年)で一気に時代を近年にまで引き戻す。その先に披露されたのは、現時点における彼らの最新型を映し出したもの。すなわち、ニューアルバム『Kodomo Rengou』に収められている新曲だ。“パンチがあるし、相当攻撃力が高いアルバム”の中でもとりわけ強烈な攻撃力を誇るという「無限会社」が、そんな波多野の言葉どおりに初めて聴く観衆たちを圧倒する。メンバー全員が声を揃えて歌う“ようこそ間違いの国へ”や“紛いもの”というワードが、耳を捉えて離さない。同様に独自のリリックセンスが冴え渡る「デヴィルズ&モンキーズ」と続けざまに放たれた2曲だけでも、新作の最高傑作たる片鱗を存分に知らしめたことだろう。

 

 

中盤では波多野がキーボードにチェンジして、「マルタ」「月」「技法」の3曲をじっくりと聴かせる。People In The Boxの3人が生み出していく音世界にすっかり没入してしまいそうなところで、Dr.山口大吾のMCへ。波多野と出会った頃のエピソードを話して過去を振り返りつつも、トイレから戻ってきた観客を全員による拍手で迎え入れるという“客イジり”を煽動して和やかな雰囲気を生み出す。「レテビーチ」「大砂漠」を挟んで再び軽妙なトークを炸裂させたグッズ紹介タイムも、彼らのワンマンにはもはや欠かせない名物と言えるだろう。だが“11周年目も全力でブッ殺していくんでよろしく!”と宣言してから雪崩れ込んだ後半戦では、緩んだ空気が一瞬にして引き締まる。

 

 

「ニムロッド」「旧市街」とまさしく“キラーチューン”を連発して、フロアのヴォルテージをブチ上げた後は「木洩れ陽、果物、機関車」へ。新旧の代表曲を全身で浴びて魅了される観客たちに向けて“10周年の最後は一番新しい曲で終わりたいと思います”という言葉に続けて「かみさま」を演奏し、新たなる代表曲で本編を締め括った。万雷の拍手に応えてのアンコールを前に、“音楽しかやっていないんですけど、このバンドは。これからも末長くよろしくお願いします”と語った波多野。この時代においては“異端”とも言ってしまえるほどのストイックさで、彼らは音楽に向き合っている。常に実験と革新を繰り返しながら、間違いなく後世に残るであろう比類なき楽曲を創造していく彼らの音を生で享受できる幸福を、この日の会場を埋め尽くした大観衆と共に心より感謝したい。

Text:IMAI / Photo:takeshi yao

 

 
 
 
 

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