She, in the hazeのワンマンライブが、2017年12月2日(土)に渋谷SPACE ODDにて開催された。本ライブは、11月8日発売の2nd EP『Last forever』リリースツアーのファイナル公演となる。今年も“ミリオンロックフェスティバル”や“SAKAE SP-RING”、“JOIN ALIVE”などの大規模フェスやショーケースライブに多数出演を果たし、中毒者を増やしてきた彼ら。その圧倒的ライブパフォーマンスに期待して来場した多数のオーディエンスで、場内は真冬にもかかわらず熱気を漂わせていた。
フロアが暗転するとスモークが湧き上がり、幻想的な照明と相まって一瞬にして異世界へと誘われてしまう。オープニングナンバーは「Doubt」。ゆったりとしたビートに合わせて規則正しく首を左右に傾けるメンバーの動きは、まるで何らかの儀式を見ているかのようだ。真っ白な衣装で統一していることもあるだろうが、神聖なる祭礼にでも迷い込んだかのごとき心持ちになってくる。続く「Paranoid」のイントロではノイジーなギターが炸裂し、ヴォルテージが一気に急上昇していく。
yu-ki(Vo./G.)のソフトで中性的な歌声が紡ぎだす優しいメロディに浸り、天上から降り注ぐ光に包まれているかのような気分になった「Mama said」。他の曲でもそうだが、反復するビートに身体を揺らしているうちにいつの間にやら甘美な毒に侵されて音世界の中に深く没入してしまうのだ。そして突如鳴り始める轟音に、ふと我に返る。その時、背景のスクリーンに映し出された聖母マリアのステンドグラスが粉々に割れるシーンを見て、She, in the hazeのサウンドは“破壊と再生”を体現しているのかもしれないと感じた。それほどのダイナミズムとカタルシスが、ここにはあるから。
「Last forever」では空から舞い落ちる雪がスクリーンに流されたが、彼らの音と共に触れると雪すらどこか温かい感触を覚えるのが不思議だ。「Behind」でのインダストリアルなビートや「Give me more」でのニューウェイヴィーなシンセ音などサイバーでクールな音色を駆使しながらも、根源には生命の熱があることを明白に体感させられる。それゆえに代表曲の1つとも言える「Stars」は、恐ろしいほどの高揚感をもたらすのだろう。この高揚感と陶酔感に一度ハマってしまうと、なかなか抜け出せそうにない。
この日最初のMCではマネージャーを引き合いに出して、自分たちの周りにいる仲間はみんなトチ狂っている人ばかりだが「一番頭がおかしいのはあなた方です(笑)」と、オーディエンスに対して愛情に満ちた賞賛を贈ったyu-ki。「“我が道を行く”っていう繊細で特別な感受性をこれからも持ち続けて欲しい」とは観客に向けられた言葉のようでいて、She, in the hazeというバンドに対してファンが求めるものでもあるだろう。その唯一無二のサウンドをさらに突き詰めた上で、より広い世界に彼らの存在が広がって欲しいと願わずにはいられない。
ラストの「Teddy」では神々しいまでに美しい音に合わせて、木立の隙間から光が差し込んでくる映像が流された。出口の見えない鬱蒼とした森の中を彷徨うかのごとき現在の音楽シーンにおいて、彼らの音は新しい時代の夜明けをもたらす光となるだろう。2018年もShe, in the hazeが見せる、次なる動きに注目せよ。
TEXT:IMAI