フランス・パリで2000年より開催されているヨーロッパ最大のジャパンフェス“JAPAN EXPO”。その“KARASUステージ”(※4,000人規模)への出演権を懸けたコンテスト“JAPAN EXPO ROCKS”で2017年に優勝を果たしたのが、“立体型サファリロックバンド”を名乗る4人組ガールズバンド・虎の子ラミーだ。一度観たら忘れられない独自のサウンドと堂々たるパフォーマンスで、世界にその名を轟かせた彼女たちに優勝までの経緯と現地での体験を訊いた。
「今までは“4人で虎の子ラミー”という気持ちが強かったんですけど、“JAPAN EXPO ROCKS”に取り組む中で毎回お客さんの力も借りて勝ち上がってこれたので、“お客さんも含めて虎の子ラミー”という気持ちがより大きくなったと思います」
●今年7月にフランスのパリで開催された“JAPAN EXPO 2017”に出演されたわけですが、現地での反響はいかがでしたか?
マザー:フランス語とか全然喋れない状態だったのに、MCの時もすごく盛り上がってくれたんですよ。日本の文化が好きな人が集まるイベントだったので、すごくウェルカムな感じで楽しかったです。
●言葉が伝わらなくても、受け入れられている感覚があったんですね。
マザー:事前に現地のテレビ番組で私たちのMVを流してくれたみたいで、曲を覚えてきてくれた人もいて。MCの時に日本語で「ありがとう!」と言ったら「カワイイ!」と返ってきたりして、とても温かいライブでしたね。
●実際に4,000人規模の“KARASUステージ”に立った時はどういう感覚でした?
マザー:リハーサルの時からガチガチでした。かなり緊張していたんですけど、本番が始まってしまえば私たちとお客さんの距離感はどこでも変わらないので、リラックスしてできましたね。外国の方はリアクションをストレートに表現してくれるので、私たちを受け入れてくれるのが早いんですよ。
ミズキ:普段のライブハウスよりもステージとお客さんとの間は広かったんですけど、温かく迎えてくれたので、そこは関係なくガツガツいけたかなと思います。
●ライブに挑む時の気持ちは、日本と特別変えたりはしていない?
マザー:そんなに変えていないですね。歌詞も日本語のまま歌って。『ドラゴンボールZ』のオープニングテーマ「CHA-LA HEAD-CHA-LA」はフランスでやるために用意していったんですけど、すごく喜んでくれて良かったです。
●オリジナル曲の「私がここでlove and peaceなんて叫んでも」を披露する前のMCでは「どうかあなたに伝わりますように」と仰っていましたが、実際に現地の人たちにも届いた感じはしました?
マザー:その曲は“JAPAN EXPO ROCKS”の決勝でもやったし、“フランスでもやりたい”と思っていたんです。それで実際にやったら、自然と手拍子が起こって。お客さんの顔がステージから見えたんですけど、“感じ取ってくれているんじゃないかな”と思いました。
●フランスのステージに立つにあたって、何か意識したことはありますか?
ミズキ:“JAPAN EXPO”に出たことがあるバンド友達から、「MCを一番気をつけたほうが良い」と言われていて。「あまり早口で言うとステージとの距離があって伝わらないから、ゆっくり喋ったほうが良い」とアドバイスをもらっていたので、そこだけは気をつけましたね。
Risako:演奏自体は日本と特に変えずにやりました。
●Risakoさんは、虎の子ラミーに正式加入してからフランスに行かれたんですよね。
Risako:3月からずっとサポートはやらせてもらっていて、正式なメンバーになって初めてのライブが“JAPAN EXPO 2017”だったんですよ。すごい責任感や緊張感がありながらも、4,000人規模のステージでやれて気持ち良かったです。
●すごく貴重な経験ができたんですね。そもそも虎の子ラミーが、“JAPAN EXPO ROCKS”に出場しようと思ったきっかけとは?
ミズキ:コンテストを開催しているのを知人に紹介してもらったんですけど、最初は出るかどうか悩んでいたんです。でも去年の12月に前のベースがやめてから今後どうしていくか決まっていなかったので、自分たちの1つの挑戦としてやってみたら優勝してしまいました(笑)。
マザー:あと、去年の10月にカナダでもライブをやらせてもらって。言葉の通じない場所でやるというのは自分たちの成長にもつながりますし、すごく刺激的な経験だったんです。“色んな場所でやりたい”という想いは常にあったので、“JAPAN EXPO ROCKS”にも挑戦することにしました。
●優勝した時はどうでした?
ミズキ:びっくりしましたね。でも全力は尽くしたので、“これで無理だったら仕方ない”とは思っていました。
●実際に予選から勝ち上がっていく中で、優勝できるという予感もあったんでしょうか?
マザー:予想以上にお客さんが応援してくれたんですよ。東京以外からもそのためだけに遠征して観にきてくれたりして、嬉しかったですね。
●自分たちが思っていた以上に応援してもらえた感覚があったんですね。
マザー:違うアーティストを応援しにきたお客さんも取り込んで、少しでも気に入ってもらえるように意識はしました。ヴィジュアル系やアイドルグループとかジャンルの違うアーティストも出ていたので、そういうお客さんの前でパフォーマンスできたのは、良い経験になりましたね。
●自分たちの色を出すために作戦を練ったりはしたんですか?
ミズキ:コール&レスポンスの時に、垂れ幕を作ったり日本の国旗を出したりしていました。
マザー:その時からフランスのことを視野に入れていて。“国を背負っているバンド”というのをアピールするために、国旗を背負って出ていました。
●最初からそのくらい強い覚悟で出ていた。
マザー:モチベーションは、他のバンドとは全然違いましたね。“フランスでやりたい”という気持ちは一番強かったと思います。
●それくらい強い想いがあっただけに、決勝に臨む気持ちは一際強かったのでは?
ミズキ:セットリストはすごく考えましたね。特に「私がここでlove and peaceなんて叫んでも」は決勝でやりたかったので、最後までとっておきました。
マザー:予選はみんなと一緒に楽しむ感じのセットリストだったんですけど、決勝はフランスでライブをしている気持ちで臨みましたね。
●決勝へと勝ち進む中で、緊張感やプレッシャーもどんどん増してきた?
Risako:本当はプレッシャーをかなり感じていたんですけど、なんとか感じないようにしていました。
ミズキ:Risakoは途中からの参加だったんですよ。
●予選の最初から参加していたわけではなかったと。
Risako:私は準決勝から参加したんです。その前の準々決勝が1位だったのに、私がサポートをした準決勝は3位で。だから“決勝では勝たないとマジでヤバい”と思って、自分で追い込んでいましたね。
マザー:でも準決勝が3位だったのもあって、決勝では“やっちゃえ”という感じで逆にリラックスしてできたんです。終わった瞬間は特に結果は気にせず、やり切った感でいっぱいでしたね。
●準決勝が3位だったことで、決勝は逆に吹っ切れた部分もあったんですね。
Risako:いざ本番になるとみんなの気持ちが1つになって、“クヨクヨ考えていても仕方ない。かましたろ!”という感じになって。その結果、逆転できたのが気持ち良かったです。一番カッコ良い勝ち方ができたと思いますね。
ミズキ:優勝が決まった時は、「絶対に泣かない」と言っていたRisakoが一番泣いていたよね(笑)。
●それくらいプレッシャーがあった?
Risako:優勝して緊張の糸が緩んだのか、かなり泣いちゃいましたね。私はその時まだサポートだったんですけど、メンバーより泣くという(笑)。
●大会を一緒に経験したことで、メンバーの一員になれた感じがあったんじゃないですか?
マザー:Risakoは馴染むのがめちゃくちゃ早かったんですよ。サポートの時からライブで北海道とかに遠征していたのもあって、すぐ打ち解けられましたね。
ミズキ:まだ知り合って1年も経っていないんですよ。正式メンバーになって5ヶ月くらいで。
Risako:でも自分的には、2年くらい付き合っている感覚ですね。色んなところに行って色んなことを経験して、色んなことを一緒に悩んだから。
●それくらい濃い時間を共有してきたと。ちなみに当初“JAPAN EXPO ROCKS”に応募するかどうか悩んだ理由とは?
マザー:それまでは“音楽は勝ち負けじゃない”というスタンスでやっていたので、コンテストとかは避けてきたんです。でも新体制になった虎の子ラミーの名前を広めていくために頑張ろうと思って、挑戦しました。
ミズキ:“JAPAN EXPO ROCKS”に出たことで自分たちがどこまで受け入れてもらえるのかを実感できて、良い勉強にもなりましたね。
●実際に受け入れてもらえた感覚はありました?
マザー:ヴィジュアル系とかアイドル系のファンのお客さんの前でやったことがあまりなかったので、最初はどうなるのか怖かったんです。でも実際にやってみたら私たちの音楽に一緒にノッてくれたり手を上げてくれたりして、楽しんでくれる人が多かったんですよ。終わってからSNSに「虎の子ラミー良かった」と書いてくれたりもして、そういう反応はとても嬉しかったですね。
●普段とは違う幅広い層の前で演奏できるのは、“JAPAN EXPO ROCKS”ならではなのかなと。フランスでの経験も経て、進化できた実感はあります?
ミズキ:周りから「もっと野獣になって帰ってきたね」と言われることはありました。
マザー:でもまだ進化途中です。今後もたくさんライブをやる予定ですし、まだ行ったことのない国もたくさんあるし、やりたいことがたくさんあるから。
●今後も進化し続けていくと。
マザー:私たちは常に進化し続けるバンドだと思いますね。ジャンルとかも意識していないので、虎の子ラミーを知らない人に「どんなバンド?」と訊かれるとすごく困るんですよ。でもそれが虎の子ラミーかなとも思っていて。色んなジャンルの音楽を自分たちなりに噛み砕いて、曲ごとに違う顔を見せられるバンドだと思っています。
●これから新たに作っていく作品でも、その変化が見られるんでしょうね。
ミズキ:2年前に出した全国流通盤『あくまでも、愛故の衝動』の時とはリズム隊が変わっているので、リズムに関しての引き出しは増えたのかなとは思っていて。これからも曲作りをする上でまた新しい虎の子ラミーを見せるために色んなジャンルを勉強して、変わっていくと思います。
●それでは最後に、これから“JAPAN EXPO ROCKS”に挑戦しようという人たちへアドバイスをお願いします。
マザー:自分のやりたいことを全身で表現して欲しいなと思います。そして、この大会を様々なきっかけにして欲しいですね。自分たちも大会に挑んでいく中で正式メンバーも決まったし、本当に出て良かったと思っているから。この大会が私たちを良い方向に導いてくれた感じはありますね。
●“JAPAN EXPO ROCKS”が、バンドにとっても良いきっかけになったんですね。
マザー:この大会を通して生まれたお客さんとの一体感も、大きな財産になったんです。今までは“4人で虎の子ラミー”という気持ちが強かったんですけど、“JAPAN EXPO ROCKS”に取り組む中で毎回お客さんの力も借りて勝ち上がってこれたので、“お客さんも含めて虎の子ラミー”という気持ちがより大きくなったと思いますね。ここで経験したことを糧にして、これからも頑張っていきます!
Interview:室井健吾