音楽メディア・フリーマガジン

スキッツォイドマン

努力と挑戦をすれば、地獄からでも音楽は世界に届く。

優勝者は3万人を動員するドイツの野外フェス“タウバタール・フェスティバル”で演奏できるという世界最大級のライブコンテスト・“エマージェンザ・ミュージック・フェスティバル”。2016年の大阪大会に優勝してドイツへと乗り込んだのは、スキッツォイドマンだ。サイコビリーに影響を受けた奇抜なルックスで、パンクとジャズを融合させた唯一無二のサウンドを奏でる彼らに迫るべく、貴重なインタビューを実施。地獄から現世へと召喚した故人/Ba.captain.ktに、コンテストでのエピソードやバンド活動について語ってもらった。

 

●昨年の“エマージェンザ・ジャパン”の大阪大会で優勝して、ドイツのフェス“タウタバール・フェスティバル”に出場した印象はいかがでしたか?

kt:すごく良い感じのところでしたね。空気も新鮮でしたし、地獄にはなかなかない風景だなと思いました。

●ちなみに、地獄はどんな風景なんですか?

kt:基本的に、赤い空とねずみ色の土しかございませんので。

●殺風景ですね…さすが地獄。実際にドイツのステージに立たれた感想は?

kt:日本でのライブとあまり変わらなかったです。言葉は通じないので気合いだけは伝えてみたら、現地の皆さんがけっこう盛り上がってくれたので楽しかったですね。通訳してくれたエマージェンザのスタッフさんには「MCでの語学力が本当に酷かった!」と言われましたけど(笑)、“どこの国に行っても大きな声で呼びかけたら、みんな応えてくれるんだな”と思いました。

●緊張やプレッシャーもなかったんでしょうか?

kt:優勝したら全世界ツアーに行けるんですけど、そこは最初から狙っていなかったので、気負うことなくステージに立てましたね。

●最初から優勝を狙っていなかったんですか…?

kt:普通は世界ツアーのことを念頭にやるんでしょうけど、私は“もうこれで十分だな”と思っていたので、好きなようにやりました。

●地獄を抜け出して、ドイツに行けただけで満足だったと。そもそも“エマージェンザ・ジャパン”に応募したきっかけは?

kt:知り合いのライブハウスの店長にこのコンテストを教えてもらって、軽い気持ちで応募したんです。だから初戦は何も気負わずにやったんですけど、準決勝まで進んだ時に“ここで負けたら一番キツいな”と思って。準決勝で負けるのはガチ感があって笑えないというか(笑)。

●中途半端ですからね。そこで準決勝から本気になった?

kt:“この中では私たちが地上で一番のはず!”と思い込んでいたので、あの手この手を駆使して優勝をもぎ取りました。

●あの手この手というと、地獄からの組織票なんかも使って…?

kt:いえ、悪さをすると二度と地上に出られなくなってしいますから、使っていないです。逆にもし地獄からの組織票を使えたら、どんな大会でも負けないと思いますよ(笑)。

●仕方ないので今回は真面目に、生身の人間に手売りしていったと。

kt:そうですね。でもライブの本数も限られていてチケットを売る機会が少なかったので、いつもお世話になっている天王寺Fireloopの店長さんに相談して。ライブハウスのエントランスで、毎日チケットを売らせてもらいました。

●そんな地道な努力が実って大阪大会で優勝した時は、どんな気持ちでしたか?

kt:正直“当たり前よ!!”とは思いましたけど、私たちが頑張ったことに対して応えてくれた方々には感謝しております。結局どんなに私が頑張っても、それに応えてくれる人がいなかったらただの一人相撲になってしいますからね。

●“エマージェンザ・ジャパン”を通して、改めてお客さんの大切さを知ったんですね。

kt:それはすごく感じました。私たちはまだまだお客さんがいない時期のほうが長かったので、日々感謝しています。もしお客さんがいなかったら、ただスベっているだけの存在になっちゃうから(笑)。

●たくさんのお客さんから支持を受けて優勝できたわけですが、予選のライブではどんなことを心がけていましたか?

kt:予選に限らず、その場にいる人みんなが“楽しい!”と思えるようなライブを常にお届けしたい思っています。やっぱり楽しめるのは、生きている内だけじゃないですからね。

●故人に言われると説得力があります(笑)。

kt:私は元から、すごく立派なメッセージや熱い想いを抱えて伝えていくタイプではないんですよ。今さらそれをやっても嘘になってしまうから、楽しさだけでも伝えられたらなと思っています。

●スキッツォイドマンのような特殊なバンドでも優勝できるというのが、この大会の魅力の1つですよね。

kt:結果に正直な大会だと思います。我々を優勝させてドイツに送り込んだというのが何よりの証拠ですよ。一歩間違えたら、国の恥さらしになりますから。

●ハハハ(笑)。頑張ったぶん、ちゃんと見返りがあるコンテストなのかなと。最後にこれから“エマージェンザ・ジャパン”に挑戦する人にアドバイスをお願いします。

kt:1日1日を真剣に頑張るしかないですね。“この大会で優勝するためには何ができるだろう”と考えて、毎日行動することが大切だと思います。別にどこかに直接行かなくても、SNSでアピールするだけでも良いですし、何かしらは行動に移したほうが良いんじゃないかなと。それはこのコンテストに限らず、“バンドで食べていく”という想いがあれば普通のことだと思いますよ。

●故人でも“バンドで食べていく”ことは考えるものなんですね。

kt:たまに“なぜ死んでまで、こんなことを考えないといけないんだろう?”と思うこともありますけどね。“死んだら楽になる”って嘘ですよ!

●なにせ普段いらっしゃるのは地獄だから…。

kt:“私、そんなに悪いことしたかな?”と自分の人生を振り返ってみて、ふと思うんですよ。良いことも悪いこともしなかったのがいけなかったんですかね?

●生前に何もしなかったことが一番の罪だったのかもしれない?

kt:“無”でいたことが罪だということに、私は気づいていなかったんですね…。

●哲学的な話になってきましたが、とりあえず現世で頑張っている人たちにアドバイスを頂いても良いですか?

kt:とにかくチャレンジすることが大切だと思います。失うものなんて大したものじゃないし、負けたって良いんですよ。それよりもせっかく大会に出て色んな人の目にとまるチャンスなので、そこでいかに新しいファンの心を掴めるかが大切なんです。考えながら動けば自分たちにちゃんとリターンがあるコンテストだと思うので、チャンスをしっかりとモノにして欲しいですね。私も地獄から応援しております。

Interview:室井健吾

 


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STUDIO CHAPTER H[aus]…来年20周年を迎える茨城県日立市のレコーディングスタジオ。
機材はもちろんのこと、壁の素材や建物の設計、電源周りまでにこだわり抜いたエンジニア樫村治延氏のノウハウが詰まったスタジオには、その“音”を求めて県外はもちろん海外からも多くのミュージシャンやクリエイターが集まる。
http://www.chapter-trax.com/

 

 
 
 
 

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