2017/7/7-9@京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ
太陽が丘に来るのは10回目。今年10周年を迎えた“京都大作戦”は、3日間の開催となる。やや雲が浮かぶ宇治の空の下、緑に囲まれた太陽が丘には色とりどりのフェスTやバンドTを着た観客が詰めかけていた。ラジオ体操で身体をほぐし、MOBSTYLES 田原104洋氏による恒例の挨拶。今年も夏が始まった。
My Hair is Bad
源氏ノ舞台、大観衆のカウントダウンの後、「京都大作戦おはようございます!! 10周年の一発目を任されました!! 」とVo.椎木 知仁による挨拶の後、「アフターアワー」でライブは始まった。会場の隅から隅まで上がる拳と雷鳴のごとく鳴り響く歓声。「10-FEET、一発目にここを任せてくれてありがとうございます。背負う覚悟はあります」と本気を見せつける。エモーショナルなロックサウンドと熱い言葉に、会場は夢中になっている。「日本のロックバンドは死んでねえ!! 日本のロックバンドは生きている。俺はかっこいいロックバンドをやっている。何百人もの人が立ちたがっているこのステージ、今俺たちは立っている」と言い放つ。熱い想いをほとばしらせ、彼らは見事にトップバッターをやり切った。
ヤバイTシャツ屋さん
牛若ノ舞台、興奮したオーディエンスがステージ前にギュッと詰めかけ、ヤバイTシャツ屋さんのライブがスタート。「Tank-top of the world」のイントロからもうダイバーが続出。G./Vo.こやまたくやが「平日の昼ですよー!」と叫べば、オーディエンスは「イエーイ!」と応え、「みんな仕事してるんですかー?」と問えば「イエーイ!」と応える。初っ端から最高の一体感。10-FEETのカヴァー「JUST A FALSE! JUST A HOLE!」でも沸かせに沸かせ、彼らは最後まで全力で暴れまくった。
竹原ピストル
アコギ一本を担いで登場した竹原ピストル。ハスキーボイスの泣きメロは観客を完全にうっとりさせているが、楽曲が終わると曲調からは想像もできない大歓声が起こる。こんな大きなステージに1人で上がる勇気だけでもすごいと思ったが、源氏ノ舞台にあふれかえる観客の気持ちを沸騰させる“力”は、ポテンシャルとバイタリティが無いと出来るものではないだろう。男たちがこぞって涙を流した「Amazing Grace」を経て、最後は「狼煙」のポエトリーリーディングで締め、とてつもない余韻を残して彼はステージを去った。
夜の本気ダンス
Ba.マイケルとG.西田が煽りまくり、観客が踊りまくってスタートした夜の本気ダンス。炎天下、汗まみれ、クラップとコール&レスポンス。Vo./G.米田が「クレイジーに踊ろうぜ!」と叫んで「Crazy Dancer」を始めれば、ボルテージを上げて踊り狂うオーディエンス。ステージと客席の“打てば響く感”は抜群で、曲を重ねる毎にその陶酔度はぐんぐんと増していく。ステージ上の彼らはテンションが振り切れたまま、最後の「戦争」まで駆け抜けた。
サンボマスター
Vo./G.山口が「おめえら、びびってんじゃねーぞコノヤロー!」と叫ぶ。「10-FEET、10周年! おめえら、すげーミラクルを起こさねえと…今日は帰れま10!」と続け、“帰れま10コール”が始まる。なんだこれ。観客の心を一瞬にして掴む型破りなバイタリティはさすがのひと言。そして「ミラクルをキミとおこしたいんです」「できっこないを やらなくちゃ」とキラーチューン連発。魂を揺さぶる歌の力、身体を揺さぶる音楽の力をまざまざと見せつける3人。「10年分のミラクルをここで使い果たせ!」「おめえらの10年、そんなもんじゃねーだろ!」と山口は叫び続け、最後は「ロックンロール イズ ノットデッド」で締め。“京都大作戦”のサンボマスターはとにかく熱くて、等身大で、最高なのだ。
Creepy Nuts
Vo.R-指定が挙げた手に呼応して、客席からは振り上げられた拳と歓声。西日が差し始め疲れてるであろう観客は、全てを忘れてコール&レスポンス。最大級に盛り上がったのは、お客さん参加型のフリースタイルラップ。お客さんから募ったお題を歌詞にしてしまうというのだ。お題は「関関同立」「10-FEET」「ノブヤさん」「夏」「キュウリの一本漬け」「晋平太」「ドラえもん」だったが、それをちゃんとリリックに組み込んで歌うR-指定。サービス精神満載のステージは、大歓声に包まれた。
Nothing's Carved In Stone
源氏ノ舞台の大きなステージで、スケールの大きなロックを展開したのはNothing's Carved In Stone。ライブではアンセムとなっている「Isolation」が1曲目ということ自体、彼らの気合いが尋常ではない証だろう。メンバー4人はキレキレのテンションで、G.生形がギターで吠え、Vo.村松が叫び、客が沸く。音で心を強打していくような凶暴なアンサンブルに、オーディエンスはどんどん熱を帯びていく。雨がパラパラと降り始めた中、「In Future」ではハンドマイクの村松がエモーションを爆発させる。そして「Out of Control」で巨大な一体感を生み出し、最後の「Spirit Inspiration」はダイバーの嵐。唯一無二の存在感を示した4人はたくさんの笑顔を作り出してステージを去った。
打首獄門同好会
雨が降ってきて会場のテンションは下がる…と思ったが、打首獄門同好会もオーディエンスもまったく気にしていない様子だった。今日は七夕。「みんな願い事があると思うけど、俺の願いは雨やんでくれ!」と切実な願いを叫び、そこから盛大に前フリされた「デリシャススティック」、続けて「カモン諭吉」で大合唱。凄まじい観客のレスポンスにバンドはますますエンジンの回転を上げる。その頃には雨は土砂降りになっていたが、全員お構いなし。降りしきる雨の中、強烈な個性を放つパフォーマンスの数々は、他のどの出演者にも負けず劣らずで、観客をガンガンに盛り上げた。
SiM
「京都大作戦、10-FEET。10年で唯一の失敗は、我々SiMをでっかいバンドに育て上げたことだ!」とMAHが叫ぶ。「KiLLiNG ME」で幕を開けた狂宴は、宙を舞う観客、サークルモッシュ、モンキーダンス、ハーコーモッシュと、客席エリアの至る所で感情の爆発現象が起きている。“京都大作戦”に対するSiMの想い入れの強さは尋常ではないが、そのライブにかけるオーディエンスの気合いも尋常ではない。「次はおまえの番だぞ! おまえが夢を叶える番だ!」と、9年前に牛若ノ舞台に出演した彼らが夢の体現者として叫び、客席からも多数の叫び声が沸き起こる。気持ちと気持ちをぶつけ合うライブは、ROTTENGRAFFTYの「金色グラフティー」、そして10-FEETの「goes on」のカヴァーという憎い演出を経て、ラストは「JACK.B」。大きく成長したライブバンドが、多大なるリスペクトを込めて演りきった全力のステージ。会場の興奮は冷めやらない。
四星球
ライブスタートと同時に土砂降りの雨が降り出した四星球。今日のライブは“運動会”。曲間に観客が赤組と白組に別れて勝負をするという内容で、競技内容は「ウォールオブデスを仕切る奴対決」「ピポットからのシュート対決」「YMCA対決」と、何がなんだか分らなかったが、白組が勝利。そのあとは新曲「お告げ」で、シンガー北島康雄が神様から受け取ったお告げはDr.モリスが観客全員に担がれて源氏ノ舞台に行くというものだ。その後ライブは「時間がないときのRIVER」「クラーク博士と僕」と続き、凄まじい数のダイブが起こった「コミックバンド」ではお告げ通りモリスがステージからダイヴ。康雄以外のメンバーと観客全員が会場を後にして10-FFETのライブへと向かったため、康雄がどうやってライブを終えたのかは不明である。
10-FEET
SEが鳴り、数多くのタオルが頭上に掲げられる。“京都大作戦2017”、1日目、トリ。Vo./G.TAKUMAが「ありがとうございました!」「ありがとうございました!」と叫び、1曲目はあのギターから始まった。「RIVER」だ。客席から挙げられた腕は数え切れない。「俺らはいつも2日目でポンコツになる。今年は1日目でポンコツになりに来ました!」とTAKUMAが叫ぶ。巨大サークルが10ヶ所以上にも沸き起こった「VIBES BY VIBES」、「もっとおまえらとやりたい!」と感情を発露させた「アンテナラスト」。“雨が上がりました そちらはどうですか?”という歌詞が、ライブ直前まで降っていた宇治の空とシンクロした新曲「太陽4号」。泣くように叫び、叫ぶように歌うTAKUMA。リズミカルにベースを奏で、時折気持ちを爆発させるBa./Vo.NAOKI。2人を支えるDr./Cho.KOUICHI。その3人と、太陽が丘の2万人が一緒に作り出すライブ。アンコールではKOUICHIが藤井フミヤの「TRUE LOVE」で沸かせ、最後は会場の前から後ろまでびっしりと隙間無く盛り上がった「4REST」。数え切れない笑顔で埋め尽くされた太陽が丘、“京都大作戦2017”、大満足の1日目だった。
The BONEZ
“京都大作戦2017”2日目、昨夜の雨で水たまりが残るグラウンドに凄まじい人数が既に集まっている。なぜならこの日、源氏ノ舞台1組目にThe BONEZが出演するからだ。声援の中、メンバーが登場。「始まるぞー!」とVo.JESSEが叫ぶと観客は「ウォー!」と返し、焼け付くような炎天下の中ペースを考えずに暴れ出す。曲を重ねる毎に激しさを増す彼らのライブに応えるように、激しいリフト&ダイブが繰り返される。Dr.ZAXが「京都! めちゃめちゃ楽しいな大作戦!」と叫び、観客が「楽しい!」と返す。その後JESSEが「リベンジマッチにきました。牛若ノ舞台で去年音が止まってしまった。でも俺たち突っ走ってきたから10-FEETが今年も呼んでくれたんだよ! この源氏ノ舞台に!」と叫び、今年も音が止まってしまうというドッキリで笑わせつつ、強烈に凄まじい音圧、キャッチーなメロディ、熱い言葉とストイックなアンサンブルで魅せる。ライブが終わるとメンバー全員が前に出て「ありがとうございました」と深くお辞儀をして終了。清々しくてとてつもなくかっこいい男たちのライブは最高のひと言。
NUBO
Vo.tommyとVo.一成、2人のヴォーカルが柵の上で煽る。「インソムニア」でライブを始めた5人の気迫は凄まじく、「咲く花」では大きな大きなコール&レスポンスで、観客がギュウギュウに詰めかけた牛若ノ舞台をひとつにする。高いテンションだけではなく、温かい想いと愛が詰まったステージは、オーディエンスの心と身体を自然にほぐしていく。彼らのライブはぐんぐんと右肩上がりに熱を挙げていき、最後の「Circle」ではステージ袖で観ていた10-FEETのTAKUMAに促されたtommyが再び柵の上に立ち、汗だくの形相で暴れまくっていた一成と共にオーディエンスと大合唱。牛若ノ舞台、最高の幕開けだ。
FIRE BALL with HOME GROWN
「音楽でひとつになろう!」と登場したのはFIRE BALL with HOME GROWN。ジャパニーズレゲエかつコンテンポラリーなプレイだが、ロックフェスにとけ込むバイタリティはさすが。「俺たちは基本出番が0:00を過ぎることが多いから夜の住人なんだけど、最高だな! 最高の曇りだな! 楽しんでいけよ!」と4人が声を張ると、観客は笑顔で地鳴りのような歓声をあげ、真っ昼間の源氏ノ舞台はダンスホールに姿を変える。盛り上がる観客に「貧乏、裕福、年齢、男、女、全部関係のない皆の歌を歌おう。これは皆の歌だ!」と「みんなのうた」で会場をひとつにする。最高に楽しい空気を味わい尽くした観客は、全てを忘れ盛大に歌って踊り、大歓声の中ライブは終了した。
藍坊主
14年ぶりに10-FEETと対バンするという藍坊主。シンガロングの「スプーン」は客席を笑顔で埋める。Ba.藤森が感慨深げに10-FEETとの思い出や、今日このステージに立つ喜びを語り、「群青」「伝言」とライブは加速。Vo./G.hozzyと一緒に歌い、腕を振り上げ、ダイヴするオーディエンス。ライブハウスで繰り広げられるかのような全員参加型のステージ、サウンドと歌と歓声のハーモニーがとても心地良い。そして最後は「殴れ」。パンク魂が詰まったバンド初期の楽曲で締めるという彼らの心意気がたまらなかった。
東京スカパラダイスオーケストラ
1曲目の「Paradise Has No Border」から待っていましたと言わんばかりにスカダンスをする人達で会場全体が波打ち、観客の声が飛び交って耳が飽和状態になった東京スカパラダイスオーケストラ。ホーンセクションは地を這うような安定感があり、恐ろしく華やかで、踊らない方が難しく、ネオスカワールドを心置きなく楽しむ観客は大ジャンプ、モッシュ、ダイヴとダンスを繰り返す。10-FEETのTAKUMAがステージに上がった時の盛り上がりは凄まじく、TAKUMAがコールをすると会場すべてからレスポンスが返ってくる。長い間愛され続けている東京スカパラダイスオーケストラは、恐るべき演奏力と抜群のパフォーマンスを全ての人に見せつけた。そして大きな会場を、言葉に表せない幸せな空気でいっぱいにした。
Age Factory
3ピースから放たれる骨太なオルタナティブサウンドでオーディエンスの心を鷲掴みにしたAge Factory。頭をぐわんと揺さぶるような歌声が響く「RIVER」でライブをスタートさせ、疾走感のあるサウンドと想いを吐き出すかのような歌が印象的な「疾走」、会場を不敵な雰囲気に塗り変える「Puke」と、強烈なオリジナリティを輝かせる。その締めくくりは、スケールの大きなメロディで包み込む「ロードショー」。ゾワゾワと肌が沸き立つような迫力を放つステージは、観客を釘付けにした。
Ken Yokoyama
「無茶なライブをしますが、お付き合いしてください」と言い、1曲目「Let The Beat Carry On」から観客をモッシュとダイヴの渦に落とし込んだKen Yokoyama。メロコアの王道を貫いた彼らのパフォーマンスに、源氏ノ舞台が一丸となり、大きな大きな歓声が響き渡る。ライブのピークには会場の声が爆音に打ち勝つほど。Kenの2ビートオールダウンピッキングに、全パンクキッズは大興奮。特に印象的だったのは「I Won’t Turn Off My Radio」。激しいサウンドを楽しみ過ぎて暴れまくるオーディエンス、感極まって震える者、数え切れないほどのダイバー。老若男女関係なくすべてのキッズがKen Yokoyamaのライブに身を委ね、心を委ねる光景が繰り広げられる。最後の「Believer」でマイクを客席に投げ入れ、観客とライブを楽しんだKen Yokoyama。最初から最後まで一貫して魂が込められたステージに、心が震える思いだった。
yonige
タイトなサウンドとVo./G.牛丸のウィスパーな歌声、メリハリの効いたリズムと流麗なメロディ、牛若ノ舞台に一陣の爽やかな風を巻き起こしたyonige。牛丸は5年前、高校生の時に初めて行ったフェスが“京都大作戦”だという。そしてそのとき、10-FEETの「super stomper」でダイヴしたという。彼女たちの想いが溢れんばかりのエモーショナルなステージに、オーディエンスも気持ちを爆発させて熱狂した。
湘南乃風
湘南乃風は10-FEETの3人と共に登場。「Rockin’ Wild」でのその化学反応は音圧の固まりとなって、会場全体に爆撃音のごとく届いていく。観客の頭上を回り続けるタオルはゲシュタルト崩壊を起こしそうなほどの数になり、大きなひとつの絵のように見える。10-FEETの3人がはけ、完全に湘南乃風のフィールドとなった源氏ノ舞台は、まだ梅雨明け前にも関わらず夏まっただ中の灼熱に包まれる。熱気渦巻くステージ、ラストは「黄金魂」から一気に「睡蓮歌」。会場が一丸となって大合唱を作り出し、オーディエンスはサークルモッシュをしながらタオルをまわして爆発的な盛り上がり。まさに圧巻だった。
Crystal Lake
不敵な笑みを浮かべたVo.Ryoが「大作戦イチ、ヘヴィなサウンドを聴かせてやるよ」と告げ、1曲目の「Matrix」から牛若ノ舞台をハーコーモッシュの嵐にしたCrystal Lake。Ryoが言ったように、おそらく最もヘヴィ、そして最もデンジャラス、なのにピースフルな一体感に包まれた彼らのライブ。客席にメンバーが何度も何度も身体を乗り出すアグレッシブなステージ、ひっきりなしに宙を舞うダイバーのテンションもえぐい。Crystal Lakeとオーディエンスの美しき闘いは、最後の「Prometheus」が鳴り終わるまで繰り広げられた。
RADWIMPS
1曲目から観客のクラップが埋め尽くす。それに応えるようにメンバーは激しいパフォーマンスに突入。「前前前世」では、周りを見渡すと観客全員が歌詞を口ずさむ。その後会場全体の一体感を作り出し、野田がギターを鍵盤に持ち替えて「棒人間」で魅了。G.桑原が「初めてこの景色見たけど最高! マジでありがとう!」と言えば、Vo.野田が続いて「この後誰が出るか分ってるんだろ? 本当にいい感じにつながなきゃ、俺たちあの人たちに何されるか分らないから頼むよ!」と言って、めくるめくキラーチューン連発の後、最後の最後まで、オーディエンスはRADWIMPSの世界を楽しみ尽くした。
NAMBA69
たくさんのクラップに迎えられたNAMBA69。4人がステージ中央で音を合わせてエンジン始動。待ちきれなかったのだろう、「THE WIND OF CHANGE」のイントロからダイバーが続出。その後「LOOK UP IN THE SKY」、そしてThe BONEZのJESSEが乱入した「LET IT ROCK」と続く間も、ダイバーが一切途切れない。Vo./Ba.NAMBAが「ロックできんのか!?」と叫び、大声で応えるオーディエンス。会場は客席エリアから土煙がもうもうと上がるほどの興奮状態で、最後は観客をステージに上げて大団円。袖で観ていた10-FEETのTAKUMAがまるでセキュリティスタッフのようにドラムセットを守っていたのには笑った。
Dragon Ash
“京都大作戦”皆勤出演3組のうちの1組、Dragon Ash。彼らが「Mix It Up」でライブを始めると、観客は狂ったように暴れ回り、1日の疲れも忘れてリフトからのダイヴが乱発。「野郎ども頭振れ!」とVo.Kjのひと言で会場全体ジャンプが波打つほどのヘッドバンキングに変わる。Dragon Ashのライブはミクスチャーの真髄を押さえながらも、実に幻想的な空間が会場を支配する瞬間があってたまらない。「ここに出た奴は10-FEETが呼んでくれるまでずっと歯を食いしばっていたんだ。だから楽しいんだ。そしてここに来ている全員に楽しむ権利がある。今年も笑って帰れよ!」とKjが叫ぶ。確かな演奏力と、音をぶつけ合うかのようなバチバチのアンサンブル。CDでは味わえない迫力のライブサウンドに大興奮。そしてラストの「Fantasista」では最大級の大合唱が起こり、10-FEETの3人や他出演者たちがステージに乱入し、最後まで会場全体がモッシュやダイヴの凄まじい熱気に包まれた。
GOOD4NOTHING
1曲目の「WALK A WINDINGROAD」から抜群にハッピーな空間を作り出したのは牛若ノ舞台トリのGOOD4NOTHING。大合唱とダイヴ、メロディで魅せる、テンションで魅せる、一体感で魅せる。堺のおっさんたちは今日も最高だ。「J.C」「IN THIS LIFE」とキラーチューン連発にオーディエンスはダイヴで応え、Vo./G.U-tanは「一生背中見てます!」と10-FEETに最大限のリスペクトを叫ぶ。1秒も観客を飽きさせない目まぐるしくも濃厚なステージは、ライブハウスで鍛え抜いてきた彼らの真骨頂。まるでPL花火のような、ピークに次ぐピークの連続、爆発的な盛り上がりのまま、最後は「RIGHT NOW」で10-FEETにバトンを繋ぐ。U-tanの「ライブハウスへようこそ!」という言葉が胸に突き刺さった。
10-FEET
源氏ノ舞台は超満員。宇治の空に掲げられたそれぞれの手には10-FEETのタオル。客席からの歓声に煽られた10-FEETが登場し、1曲目「その向こうへ」をかき鳴らす。大喜びする観客は3人が作り出す至極の時間を力尽きるまで楽しもうとエンジン全開。「今年10年目だから知ってるよ。お前らがもっと出来るって」とTAKUMAが煽り、ゲストにFIRE BALLを迎えて「STONE COLD BREAK feat. FIRE BALL」をブチかまし、オーディエンスは更に大興奮。「賢くなってしまって疑うことを覚えてしまいました。歌い続けることが純粋さに繋がると思っていたけど、大作戦を見たら違うかもしれへんと思いました。また出直してきます」とTAKUMAが言い、新曲「太陽4号」を披露。泣けるメロディに夕方の空という演出も加え、何ともドラマティックなひと時だ。その後は「ヒトリセカイ」そして「gose on」と激情チューンを連発して本編終了。そしてアンコールは「RIVER」。途中Dragon AshのKjが登場したが、「今日は笑って終わりたい」と本人は歌わずにマイクをDr.KOUICHIに委ね、自身はドラムに。「KOUICHIよりKjの方がドラムうまいやん」とTAKUMAのひと言にKOUICHIはたじたじだったが、3日目のトリまでの流れを大切にして自身の想いは胸にしまったKjの心意気にグッとくる。そして最後は「もう1曲やってもいいですか? 最後まで笑って終わろう」と「風」。「そんなん泣いてまうやろ!」と客席の至る所から声が飛び、最大級の感動の中、京都大作戦2日目は終了した。
SUPER BEAVER
小雨が降りしきる中、ステージに登場した4人。Vo.渋谷が「ライブハウスから来た我々が、この源氏ノ舞台に立つということで、何かをハッキリと証明したいと思います。丘を越えてやって来ました」と告げて「証明」でライブスタート。音の1つ1つがずっしりと突き刺さり、渋谷が発する言葉の1つ1つが胸に残る。くっきりとしたコントラストを記憶に刻み込む唯一無二のライブに、SUPER BEAVERの真髄を見る。「10-FEETは必ずここに出てきます。言いたいことは、思ったときに、その速度でしっかりと伝えてください。今日は10-FEETに伝えてください」という渋谷の言葉。そしてその言葉に続けて披露された「ありがとう」。MCと楽曲の境目が無くなるかのような、想いと意志が一瞬で伝わってくるステージ。素晴らしかった。
ENTH
1曲目の「NO FATE」からテンションを爆発させたのは、牛若ノ舞台トップバッターを飾るENTH。ライブは驚異的な加速度で会場の興奮を高め、ダイバーがステージ前になだれ込む。この3日間、源氏ノ舞台も牛若ノ舞台も、ステージの上も下も全部最高じゃないか。「Let it die(t)~まこっつ走れ~」では土煙が上がるほど盛り上がり、3人とオーディエンスは一瞬も立ち止まることなく最後の「Crime in my mind」まで全力で走り抜いた。
dustbox
“京都大作戦”皆勤出演3組のうちの1組、dustbox。彼らのライブの楽しみ方を骨の髄まで心得ているオーディエンスは、SEの時点から大興奮。「Jupiter」で歌声を響かせたVo./G.SUGAが「京都大作戦! おもいきりやろうぜ!」と煽れば、客席ではダイヴ、モッシュ、サークル、Oiコールとおもいきりやるオーディエンス。ステージの上と下は息をぴったりと合わせ、「Riot」では源氏ノ舞台の広い客席エリアが前から後ろまでびっしりとクラップで埋まる。エグいほどの数のサークルが発生した「Try My Luck」、突き上げられた無数の腕が揺れた「I remember you」。そして恒例となった「Neo Chavez 400」では10-FEETのNAOKIがベースを手に、Ba./Cho.JOJIがハンドマイクでスパーク。更に途中でベースはROTTENGRAFFTYの侑威地に変わってJOJIとNAOKIは客席へ突入。そうやって散々盛り上げた後、SUGAが「10-FEETの3人に感謝の気持ちを伝える曲を持ってきました」と10-FEETの3人を呼び込んでパイプ椅子に座らせ、彼らの前で「ヒトリセカイ」を披露。“京都大作戦”への想いが溢れたdustboxにしかできない、素晴らしくて楽しいステージだった。
SIX LOUNGE
牛若ノ舞台に登場したのはSIX LOUNGEの3人。伸びやかなG./Vo.ヤマグチのヴォーカルが鳴り響く「ふたりでこのまま」でライブがスタート。クールなBa.イワオのプレイ、そしてタイトなDr.ナガマツのドラミング。魂のこもった歌と気持ちが入ったサウンドが、牛若ノ舞台に集まった観客の心を掴んでいく。グッと聴き入る者、ステージに惹き付けられてじっと見つめる者、ヤマグチと一緒に歌う者。その場に居合わせた観客の心の奥底まですっと入っていくようなステージに、牛若ノ舞台はたくさんの笑顔で埋め尽くされた。
氣志團
「今日唯一見逃していいのはこの時間なのに…」と爆笑させたのは、10-FEETと同じく今年結成20周年を迎える氣志團。オーディエンスを心の底から楽しませようという彼らの精神性は素晴らしく、TAKUMAが作った新曲「フォーサイクル」を宇宙初披露したかと思えば、「WANIMA改めWAKIGA、開催しまーす!」とWANIMAアレンジの「One Night Carnival」で沸かせ、その後はマキシマム ザ ホルモンの「恋のメガラバ」っぽい「One Night Carnival」で更に沸かせる。最後はマキシマム ザ ホルモンのナヲとダイスケはんも巻き込んでの大団円。氣志團のロックンロールをしかと見た。
OVER ARM THROW
しっかりと腰が入ったタフなサウンド、涙腺直撃のメロディ、オーディエンスの笑顔、ダイバーも笑顔。もう最高の要素しかない。OVER ARM THROWは1曲目の「Rotation」から極上の空間を牛若ノ舞台に作り出す。1曲目から乱発し始めたダイバーは全然減らない。というか、曲を重ねるごとにむしろどんどん増え続けている。ライブハウス・牛若ノ舞台が、OVER ARM THROWのライブによって揺れに揺れる。そんな観客の熱量にステージの3人は更にテンションを上げ、最後の「All right, all wrong」まで全力でライブを楽しんだ。
WANIMA
源氏ノ舞台をお祭り騒ぎにしたのはWANIMA。彼らがステージから放つエネルギーは計り知れない。Vo./Ba.KENTAが「10-FEETとみんなと大作戦に会いに来ました」と言って「BIG UP」が始まれば、オーディエンスのはしゃぎっぷりが半端ない。かと思えば「Hey Lady」では半端ないシンガロング。10-FEETのTAKUMAからもらったギターを手にするG./Cho.KO-SHINが「日本でいちばん10-FEETが好き!」と言って「VIBES BY VIBES」をカヴァーすればTAKUMAが出てきて半端ない盛り上がり。そして「ともに」では2万人が大合唱し、最後は「やってみよう」。出演者、観客、主催者…全員がまるで地面から10cmほど浮いているほどのはしゃぎっぷり。これこそ“京都大作戦”の真骨頂だ。
ガガガSP
「結成20周年、賞味期限は切れてるけど、消費期限は切れてませんわ!」と唄い手・コザック前田が叫んで始まったガガガSPのライブ。客席最前の柵の上に登り、ダイバーの頭を掴みながら青春を歌うコザックの勇姿が目に焼き付けられる。客席の盛り上がりは「つなひき帝国」、新曲「ホイホイ行進曲」と曲を重ねる毎にエグくなり、「線香花火」「晩秋」でピークへ。「身体の動く限り、青春パンクをやりますよ!」と叫ぶコザックと、拳を振り上げ、汗にまみれ、もみくちゃになって歌うオーディエンス。神戸の雄がキラキラと輝くような存在感を見せつけた。
MAN WITH A MISSION
過去の“京都大作戦”では度肝を抜く演出で我々を驚かせてきたMAN WITH A MISSION。今年は舞妓姿と袴を着たホーン隊が10-FEETのSE(「そして伝説へ」)を生演奏するというサプライズ。今年も我々の度肝を抜きつつ、ライブは10-FEETのTAKUMAを迎え入れて「database」でスタート。曲の随所にフックが散りばめられたキャッチーなロックサウンドに、オーディエンスは大喜び。G./Vo./Raps.Jean-Ken Johnnyが「京都中ニ鳴リ響カセテクダサイ、アナタタチノ声ヲ」と煽って「Raise your flag」で沸かせ、「FLY AGAIN」ではDJサンタモニカが客席に突入。頭の先から尻尾の先まで余すこと無く楽しませる最高のステージに、源氏ノ舞台は大きな大きな歓声をあげた。
Dizzy Sunfist
3度目の牛若ノ舞台となるDizzy Sunfistは、1曲目の「Someday」から早速の大合唱。気合いはステージの3人も客席も満タンで、「Dizzy Beat」「SHOOTING STAR」と続いて何人ものダイバーが宙を舞い、Vo./G.あやぺたが柵の上で「1回目、台風で中止になったときチケット取ってた。2回目、ELLEGARDEN目当てで行ったら10-FEET大好きになった!」と叫ぶ。Dizzy Sunfistのステージは全力のまま、最後はdustboxのSUGAとJOJIが参加した「FIST BUMP」で締め。“京都大作戦”に対する想いは、出演者も観客も同じ。あやぺたが叫んだ想いに客席から大きな歓声が沸き起こったのが印象的だった。
マキシマム ザ ホルモン
10-FEETの盟友・マキシマム ザ ホルモンが“京都大作戦”に帰ってきた。彼らのライブを待っていた腹ペコオーディエンスは源氏ノ舞台をパンパンに埋め尽くし、その観客たちの頭上に雨が降り注ぐ。1曲目は「恋のメガラバ」。次第に雨は強くなっているがお構いなし、2万人がヘドバンで揺れる。彼らのアンサンブルはヤバいほどの切れ味で、音に触れるだけでゾクゾクするほどだ。雨と風が更に強くなるも、MCではナヲ(ドラムと女声と姉)とダイスケはん(キャーキャーうるさい方)が大爆笑させ、「シミを残そう」と「シミ」を演奏している最中には空に稲妻が光る。えげつないほど凄まじいマキシマム ザ ホルモンのライブに、バッチリ似合いすぎる雷の光。“最高の演出か!”と思いきや、次の「「F」」の後、10-FEETのマネージャー・masa氏がライブの一時中断をナヲに告げた。
雷のために一時中断
なんと、雷の危険から観客を守るためにライブは中断。源氏ノ舞台に居た観客が体育館やシャトルバスに誘導される。源氏ノ舞台から観客が完全に居なくなるまでにどれくらいかかっただろうか。観客が移動しやすいように後方の柵も撤去され、スタッフが誘導、その間ずっと状況を伝えるアナウンスが続けられるも、再開するかどうかはわからず。30分…1時間…刻一刻と時間は過ぎていく。雨は降ったり止んだりを繰り返す。残り3バンド。太陽が丘は宇治市との約束で、音止めは20時と決まっている。会場全体を不安が包み込む。
再開のアナウンスが流れたのは約2時間後。源氏ノ舞台に観客が誘導され、10-FEETのメンバーがステージに登場。20時に音止めするという宇治市との約束を守ること、止むなく曲は減らすけれど、残りの時間で出演者とスタッフが力を合わせて源氏ノ舞台3組・牛若ノ舞台2組のライブをやりきること。源氏ノ舞台と牛若ノ舞台、それぞれのライブ時間が被らないようにしてきたが、残りの時間がないので牛若ノ舞台と源氏ノ舞台は同じ時間にライブをすることを告げる。大歓声が沸き起こる。
マキシマム ザ ホルモン
ナヲが「俺たちは今、伝説の中にいる!」と叫び、「恋のスペルマ」でライブ再開。各出演者がステージに殺到し、オーディエンスも想いを爆発させる。ギュッと彼らの想いが詰まった「恋のスペルマ」、たった1曲で会場を包んでいた不安な気持ちを一瞬で吹き飛ばし、残り2組に繋いだマキシマム ザ ホルモン、見事としか言いようがない。
マキシマム ザ ホルモンのライブ後、ステージで転換作業をするスタッフに対し、客席から「がんばれ!」「がんばれ!」とコールが沸き起こった光景は、今でもはっきりと記憶に残っている。なんだよ、この人たち。出演者もお客さんもスタッフも最高じゃないか。
ROTTENGRAFFTY
10-FEETの盟友であり、10周年を迎えた“京都大作戦”の大トリ前を任されたROTTENGRAFFTYが、この日のライブに対してどれくらい強い想いを抱いているかは想像に難くない。Vo.N∀OKIが「伝説、継続中!」と叫んで「D.A.N.C.E.」でライブスタート。オーディエンスが踊り狂い、ステージの5人が気持ちを爆発させる。Vo.NOBUYAが「雨にも雷にも、おまえらにも、10-FEETにも、俺たちは絶対に負けない!」と叫び、「THIS WORLD」ではNOBUYAとN∀OKI、そしてG./Prog.KAZUOMIが客席に突入。そして最後は「金色グラフティー」。NOBUYAが歌詞を替えて“10-FEETの想いはここ太陽が丘に”と歌えば、N∀OKIは“金色グラフティー”という歌詞を“G-FREAK FACTORY”と替えて歌う。「京都大作戦ありがとう!」と叫んで終演。
10-FEET
いったい誰がこんな状況になることを予想しただろうか。音止め時間まで後13分。SE無しで10-FEETの3人がステージに登場して声を掛け合い、TAKUMAが「3曲しかできませんけど最高のものを見せます」と言って「DO YOU LIKE…?」でライブをスタート。1秒1秒を愛おしむように楽しむ観客、全力でライブを行うTAKUMA、NAOKI、KOUICHI。ステージ袖で見守る出演者とスタッフ。全員が気持ちをひとつにした瞬間だ。続いて鳴らされたのは「その向こうへ」。ROTTENGRAFFTYのNOBUYAとN∀OKI、MAN WITH A MISSIONのJean-Ken JohnnyとTokyo Tanakaが参加した同曲は、オーディエンスたちが自分の歌のように歌い、叫び、暴れ、ライブする。TAKUMAが「よっしゃ、なんとか間に合う。みんなごめんな。でもありがとう。来年からまたリベンジさせてくれ」と告げ、最後は各出演者がステージに出てきて「CHERRY BLOSSOM」で終幕。「ありがとう。ごめんね。でもありがとう。大好きやで、おまえらめっちゃ。大好きやで。来年もまた会いましょう」と最後にTAKUMAは笑顔で言った。
まさか10周年を迎えた“京都大作戦”がこんな結末になるとは思わなかったし、SHANKとG-FREAK FACTORYのライブを観ることができなかったのは残念でならない(※当参戦後記でSHANKとG-FREAK FACTORYのライブをレポートすることができなかったことをお詫びいたします)。でも、10年間毎年欠かさずに“京都大作戦”に参戦してきてよかった。この日、太陽が丘に居てよかった。10-FEETが最後に演奏した「CHERRY BLOSSOM」には“やまない雨などない”という歌詞がある。その言葉の意味と強さを、心から実感した。
TEXT:Takeshi.Yamanaka、Tetsuya.Fukushima
PHOTO:みやざきまゆみ、HayachiN、浜野カズシ、青木カズロー、JON、キシノユイ