スピード感あるピアノのイントロが新章の始まりを告げるような表題曲を掲げた6thシングル『RULER GAME』を、Fo’xTailsがリリースした。メジャー1stフルアルバム『INCEPTION』(2016年12月)から約7ヶ月の時を経て、次なるステージへと踏み出す第一歩となる今作。TVアニメ『時間の支配者』OPテーマとなった表題曲は、まさに今の4人の強い意志と覚悟が表れたものと言えるだろう。自分たちらしさは揺るぎなく持ちつつも表現の幅を広げ、今までにない側面も垣間見せる楽曲になっている。カップリングもインディーズ時代を思い起こさせるラウド&ヘヴィな「最低で最愛なヒカリ」、夏らしい爽快感と青春のノスタルジーが共存する「curtain」と、ライブでの盛り上がりが目に浮かぶキラーチューン揃い。過去からつないできた“今”に全身全霊で向き合いながら、未来へと突き進んでいく彼らが新たな切り札を手に入れた。
「アルバムを踏まえて、また新しい曲ができたなという実感はすごくあって。新しさもありながら、“俺たちは俺たちだ”と言える作品になりました」
●去年12月に1stフルアルバム『INCEPTION』を発表してから今作『RULER GAME』まで約7ヶ月ということで、ちょっと期間が空きましたね。
takao:前作のアルバムで一区切りという部分が、大きかったのかもしれない。次にどういう方向へ進んでいくかということを考えていた時期だったので、その間はライブの本数を減らしたりもしていて。あと、メンバーそれぞれに(他アーティストの)サポートワークをやったり、幅広く活動し始めていた時期でもあったんです。そういう意味では、新鮮さも感じられる期間だったと思います。
●アルバムで一区切りを付けて、その先を目指すためにあえてリフレッシュ期間を置いたというか。
takao:今までやってきたもののさらに上を行こうということで、そういう時期を作ったんです。次にどこへ行くかというのを見据えた上で、充電期間にしました。それぞれが課題に取り組んだり、俺自身もスキルアップを目指していたので、みんなが成長できた時期でもあったんじゃないかなと思います。
●takaoくん自身は、どういう部分で成長できたと思いますか?
takao:俺は物事をあまり難しく考えすぎないようなスタイルにしていこうかなと思っていて。もっとラフに考えるというか。その期間には色んな人と会ったりもして、そういうところで人間としてのインプットはありましたね。音楽関係以外の人とも話す中で、人間性の部分で色んなものを吸収できたなと思います。
●人間的に成長をしたということ?
takao:そうですね。音楽をやっている人としか出会わなかったりするから。この間で色んなところで出会った人たちと話していく中で、“こういう考え方もあるんだな”ということを知ったんです。音楽をやっている以前にまず“人間”なので、そういう“人”としての土台ができたというか。“これが大人になるということなのかな”と思いました。
●アルバムを経て、次の作品では新しいことにチャレンジしたいという気持ちもあったのでは?
鳴風:リリースするものは、毎回どれも新しいものでありたいという気持ちはありますね。もちろん自分の中にあるものを出してはいるんですけど、その中でも“今のFo’xTails”を出せればなと思いながらやっています。
●表題曲のM-1「RULER GAME」はTVアニメ『時間の支配者』OPテーマですが、ここでも今の自分たちらしさを出せている?
takao:アニメの監督さんが、俺たちのアルバムをすごく聴いてくれていて「好きだ」と言って下さったんです。今回も「Fo'xTailsらしいものを」と言って下さったので、アニメに寄り添いながら自分たちらしさもたっぷり出せましたね。
●原作はマンガなんですよね。
takao:『少年ジャンプ+』のアプリ内で配信されているマンガですね。俺は元々読んでいたので“アニメ化されるんだな”と思っていたら、自分たちにタイアップの話が来て“まさか!”っていう。
●原作を読んでいたこともあって、イメージしやすかったのでは?
takao:そうですね。内容が頭にあったので、自然にイメージできました。
●歌詞は先にテーマを決めて、書き始めたんでしょうか?
takao:曲が先に上がっていたので、デモを聴いた瞬間にインピレーションが湧いて歌詞にしていきました。原作でトランプを使って闘うシーンがあったり、主人公もディーラーになったりして。それで、ギャンブルゲームみたいなイメージで書き始めたんです。松井(洋平)さんのエッセンスも入って、さらに広がりました。
●松井さんは前作のアルバムから、作詞に参加しているんですよね。
takao:前作では松井さんに加わってもらったことで、世界観がグッと広がった印象があって。今回の楽曲自体にも世界観がすごくあったので、それを歌詞でもっと広げられたらなと思っていたんです。松井さんが協力して下さって、自分が元々使いたかった言葉を使ってくれたりもしたことで、世界観がより広がったと思います。
●鳴風くんはどういうイメージで曲を作ったんでしょうか?
鳴風:アニメの制作側と打ち合わせをした時に「疾走感があってアニソンの王道っぽい感じで、ジャズの要素もある曲」というイメージがあると聞いて。そこに“時間”というキーワードもあった上で作り始めました。
●“時間”もキーワードになっている。
鳴風:ピアノで速めのフレーズを弾いているのは、時間が進むイメージからなんです。あと、セクションごとに場面が切り替わるようになっているのは、“生きていると色んなことがあるよな…”と思ったところからで。結果的に、こういう形になりました。
●イントロのピアノの音がすごく印象的でした。
鳴風:最初はギターで弾いていたんですよ。でも“ギターじゃないな”と思って。ジャジーな感じにするには…と悩みつつ、ピアノの音を使ってみたら、良い感じになりましたね。
●最初に「アニソンの王道っぽい感じにして欲しい」と言われたとおりの曲になっているなと。
takao:鳴風が作ってきた曲を聴いた時に、俺も“今までで一番アニソン!”と思いました。アニメの監督さんと最初に話したのも大きかったですね。俺たちの曲をすごく聴いてくれて「好きだ」と言ってくれていたので張り切っていましたし(笑)、歌詞についても「こういうワードを入れて欲しい」という要望をもらったものは積極的に取り入れるようにしたんです。
●アニメの世界観に寄り添いつつも、自分自身の想いも込められている?
takao:そうですね。自分の言いたいことが軸にある上で、アニメのイメージとリンクした部分を積極的に使ったという感じです。“巻き戻せない過去に戻りたい”という気持ちもありつつ、“過去ばかり見ていちゃいけない“と思うところが自分自身とも重なって。自分の意志とアニメとの上手く重なった部分を使ったというか。
●自分たちらしさもありつつ、新しさも見せられる曲になった?
takao:そこは見せられたと思います。アルバムを踏まえて、また新しい曲ができたなという実感はすごくあって。新しい部分もあるけど、メロウな部分はFo’xTailsらしいし、ガラリと変わった曲ではないですね。新しさもありながら、“俺たちは俺たちだ”と言える作品になりました。
●カップリングのM-2「最低で最愛なヒカリ」も新しさを意識したんでしょうか?
鳴風:「最低で最愛なヒカリ」に関しては、takaoが「とりあえず激しいのを作ってくれ」とずっと言っていて。
takao:「激しくて速いやつを作って欲しい」と伝えていたんです。
鳴風:その言葉から作りました。インディーズの時は結構こういう曲をやっていたので、それをさらにアップデートした感じですね。
●昔はよくやっていた感じの曲というか。
takao:身体に一番馴染んでいる音楽です。新しい曲調に挑戦していくことも楽しいんですけど、やっぱり俺たちはロックバンドだから。ロックな部分は全力で出したいなと思っていて。“今、俺はこういう曲が歌いたい”ということを伝えたら、鳴風が良い曲を作ってきてくれましたね。
鳴風:エモくなる感じですね。
●冒頭のシャウトから、いきなり鳴風くん節が出ているなと思いました。
鳴風:「激しいのを!」と言われたので、とりあえず叫んでおこうと。
takao:安易!
●ハハハ(笑)。
鳴風:あと、「The LiBERTY」(5thシングル表題曲)以降は思い切りシャウトする曲がないなとも思っていたから。
takao:鳴風が元々持っているものをここでは歌いたかったし、“(自分たちらしさを)見失っているんじゃないか”と思われるのも嫌だったんです。だから一番最初のFo’xTailsみたいなものを、この曲では出したかった。ライブの画が浮かぶ曲なので、聴いていて自分でも“ライブがしたい!”って思うんですよ。それくらい自分のテンションが保てる曲でもあって。
●ライブへの欲求を高めてくれる曲になっている。
takao:自分の中で溜まっていたものもあって、色々と爆発させました。自分自身が思い悩んでいたことを、ここで吐き出したという感じもあります。
●“幼い頃憧れた夢は 時に猛毒になって”という歌詞が気になったんですが。
takao:そこがタイトルにつながる部分だと思います。すごく大好きな夢でも、本当に“嫌だな”と思う瞬間があるんですよ。“なぜこんなに上手くいかないんだろう?”って思う時もあるし、“なぜこんな夢を見ちゃったんだろう?”と思ったりもして。結局はそれを好きすぎるがゆえに、“毒”になってしまっているんだなと。
●最愛のものだからこそ、最低な気持ちにもさせられるわけですよね。M-3「curtain」はまたちょっとテイストが違いますが、これはどういうイメージで?
鳴風:これは生き甲斐をなくしていた人に対して、“元気を出して欲しいな”と思って書いた曲なんです。その人に“新しい生き甲斐を見つけて欲しい”というイメージで作っていきました。そこから歌詞も含めて1コーラス分をまず書いてtakaoに渡して、練り直してもらって。takaoの言いたいことも加えてもらった結果、こういう曲になりましたね。
●歌詞を読んだ印象からは、恋愛の歌かと思っていました。
takao:俺がそういう感じにしました。サビは鳴風が最初に書いてきたものをほぼ使っているんですけど、こういうロマンチックな部分は鳴風らしいというか(笑)。そこを見た瞬間に“恋愛(の歌詞)に落とし込んだら面白いだろうな”と思ったし、楽曲自体を聴いた時に“青春”のイメージが浮かんだんです。
●確かに青春っぽい言葉が出てきますね。
takao:ストレートな感じの曲調がすごく好きだったので、それと“青春”の青臭い感じが絶対に合うと思ったんです。自分自身はそういう曲が大好きなんですけど、今までFo’xTailsでは青春っぽい曲は出したことがなくて。
●「Innocent Graffiti」(2ndシングル表題曲)は、青春感もあるかなと思いますが。
takao:「Innocent Graffiti」もそういう感じの曲ではあるんですけど、もっと感情的な部分で書いていたところがあって。今まで書いていた恋愛の曲は大体そうだったので、今回はもっと“青春”という言葉が似合う歌詞にしようと思ったんです。そこから“教室の窓から”みたいな、情景が見える言葉をどんどん入れていきました。
●青春の情景が浮かぶような曲になっている。
takao:キラキラ感があって、情景が浮かびやすいんですよね。これは鍵盤が入っているからだと思います。
●この曲と「RULER GAME」は、どちらも鍵盤の音が印象的でした。
takao:「curtain」は自然な感じの音が良いと思ったので鍵盤を生音で入れたんですけど、「RULER GAME」は打ち込みを使っていて。「RULER GAME」は固い音のほうがかっちりハマって、時計や時間のイメージにも合うなと思ったんです。
●「RULER GAME」の鍵盤には近未来的な無機質感があって、「curtain」は有機的な温かみがあるというか。
takao:そこのバランスが上手く表現できたと思います。「curtain」はピアノと歌だけのところもあるんですけど、生音にすることでより情景が浮かびやすくなりましたね。
●青春時代を思い出させるようなノスタルジック感もあるかなと思いました。
takao:自分よりもっと上の世代の人たちに、青春を思い出してもらえるような曲にしたかったんです。“こういう青春もあったな”という記憶が浮かんでくるほうが、この曲には合っているんじゃないかなと思って。だから、最後に“まだ青い春は僕等の心で 生きてるんだ”と歌っているんですよ。そういう意味では、青春って二度と消えないものだと思うから。
●あと、夏っぽいイメージもありますよね?
takao:曲を聴いた時に、夏のイメージだなと思って。中学・高校くらいに、片想いしていた時期がちょうど夏だったんですよ。だから自分の中では、青春と言えば夏というイメージがすごく強いんです。そういう青春時代を思い出しながら書きましたね。
●実体験を元にしているんですね。この曲も含めて、3曲どれもが表題曲になってもおかしくないような強さを持っているように感じたんですが。
takao:坂本(Ba.)も「どの曲もMVを作ったら良いものになりそう」と言っていましたね。それくらい良い曲が揃ったなと思います。あと、どの曲にも勢いがあるので、そういう意味でシングルの形としては新しいと思うんですよ。今まではバランスを考えて、曲を作っていたところもあったから。でも今回はそういうことを考えずにただ“良い曲を作ろう”としか考えていなかったので勢いもすごく出ているし、どの曲も表題曲っぽくなったんだと思いますね。
●3曲のバランスを取りにいくわけではなく、勢いのある楽曲を揃えたことで“攻め”のシングルになったなと思います。
takao:単純に良い曲が好きなんですよ。カップリング曲だからと言って、あえてキャッチーじゃないものにする必要もないから。“それはそれで良いじゃん”みたいな感じで、難しいことは今回あまり考えていないと思います。
●アニメをキッカケに「RULER GAME」を聴きたくて買ってくれた人に“他の2曲も良いじゃん”と思ってもらえれば、広がりも増していくわけですよね。
takao:バンドとしては、そこが大事だから。アニメで知ってくれた人たちに、俺たちの可能性をもっと見て欲しいと思うんです。だから「RULER GAME」だけじゃなくて、1枚のシングルとして聴いて欲しいですね。
●今作をリリースして、11月には4周年記念のワンマンライブ“〜Thanks 4 given〜”も予定されていますが。
takao:普通は5年・10年という節目でやることが多いんでしょうけど、俺たちは周年イベントを毎年やっていきたいと思っていて。個人的にも“4”という数字が好きなんですよ。悪いイメージもありますけど、良い意味もあるから。
鳴風:四つ葉のクローバーとか。
●4番バッターなんかもそうですよね。
takao:そうそう。見え方も心の持ちようで変わるし、俺らはプラスの意味で捉えていて。4周年って振り返れば短いようで、逆に“もう4年もやっているんだ”とも思えるんですよ。その中で“俺たちを見つけてくれて、ありがとう”という感謝をこのワンマンで見せたいなと思っています。
●たくさんいるアーティストの中から、自分たちと出会ってくれたことへの感謝を示したい。
takao:もちろんまだ出会っていない人にも、俺たちを見つけて欲しいという願いも込めていて。だから、今回は初めて大阪でもワンマンをするんですよ。もっと色んな人に知ってもらいたいから。そういう意味も込めて“〜Thanks 4 given〜”っていう、“4”(という数字)をかけたタイトルを付けたので、ぜひたくさんの人に遊びに来て欲しいですね。
Interview:IMAI
Assistant:室井健吾