2017/7/1-2@川崎市東扇島東公園特設会場
川崎の海辺に面した東扇島東公園には、朝早くからたくさんの観客が集い、CHAOS STAGEのトップバッター・おい、そこの道あけろのライブから凄まじい盛り上がりをみせた。HEY-SMITHのVo./G.猪狩が「“壁を壊す”というコンセプトで7年前に始まった“DEAD POP FESTiVAL”。今日見てください。どこに壁があるんですか? だから今日俺たちは壁を壊すというより、パンクロックがいちばんかっこいいことを証明しに来ました!」と言ったように、出演者は皆が皆、お互いをリスペクトしつつしのぎを削り合うような熱いライブを繰り広げていった。SiMにしか出来ないフェス、SiMにしか作り得ない空間。仲間との絆を大切にしつつ、自分たちのプライドを一切曲げず、先輩にも後輩にも敬意とライバル心を剥き出しにして走り続けてきた彼らの集大成の場所。ピースなだけではなく、ピリピリする緊張感だけでもなく、ライブハウスの延長線上、生々しい“あの”現場の雰囲気をまとった“DEAD POP FESTiVAL”は、今年も最高の2日間だった。
数多くのダイバーがその脚で川崎の空に大きな弧を描いたSHANK。SiMのメンバーが「感情のピクセル」で参加するというサプライズで熱狂した岡崎体育、「今日はライブバンドからもらったチャンスだと思ってます」と言って絶好のチャンスを掟破りなステージで走り抜いた四星球。爽やかな潮風を浴びながら聴く2人の歌声が最高だったPUFFY、会場の全員がワンナイトカーニバルした氣志團。CAVE STAGEとCHAOS STEGEで交互に繰り広げられていくジャンルレスのライブを、オーディエンスは思い切り楽しんでいる。
客席エリアがサークルモッシュとダイヴで充満したROTTENGRAFFTY、客席を煽らずともその強靭なサウンドでオーディエンスのテンションを爆発させたcoldrain。ROTTENGRAFFTYのVo.N∀OKIとVo.NOBUYAが乱入し、CHAOS STAGEのトリを見事に締めくくった山嵐。
そしてCAVE STAGEのトリ・SiMは圧倒的な存在感を見せつけた。「PANDORA」で幕を開けたライブは、4人が鋭い切れ味のサウンドを放って客席の各所で熱狂を誘発させ、火が点いた観客は「Blah Blah Blah」で2ステップ&ヘドバンで暴れまくる。ヘヴィなサウンドとサビの爆発力が凄まじい新曲「NO SOLUTiON」。日が暮れて暗くなってきた会場に浮かび上がるステージ、その上と下で繰り広げられる音楽の狂宴。
Vo.MAHが「どうか夢を語るのを止めないでください。夢は隠すものじゃなくて口に出すもの。信じられないかもしれないけれど、みんなが立っている場所は俺の夢だった場所です。だからみんなも、自分を信じて夢を持ってください」と言い、「Rum」で胸が張り裂けるほどの感情を放出する。同曲を歌い切った後、汗だくのMAHは「俺たちの夢に付き合ってくれてありがとう」と告げる。
ステージで圧倒的なカリスマ性を発揮しつつ、そのサウンドでオーディエンスの心を沸騰させつつ、歯に衣着せぬ誠実さと行動力を併せ持つバンド・SiM。そのバランス感覚が、SiMというバンドを時代と世代を象徴する存在へと成長させ、“DEAD POP FESTiVAL”というフェスをシーンを象徴する場所にしたのだろう。coldrainのVo.Masatoを迎えた「f.a.i.t.h」で締めくくった“DEAD POP FESTiVAL 2017”の1日目。SiMの夢が、また1つ具現化した1日だった。
“DEAD POP FESTiVAL”2日目。昨年CHAOS STAGEで出演したThe BONEZがCAVE STAGEのトップバッターを飾る。Vo./G.JESSEが客席に突入して一気に会場のテンションはヒートアップ。今日も熱い1日になる予感しかない。
その予感通り、各出演者の熱量は凄まじいものだった。「SiMの1つ下の世代として時代を変えたい」と宣言したTHE ORAL CIGARETTES。テンションMAXで駆け抜けたGOOD4NOTHING。サウンドチェックからSiMの「MAKE ME DEAD!」をカヴァーして掟破りに盛り上げたキュウソネコカミ。これぞ横浜代表&ライブハウス代表という器の大きさを見せつけたSTOMPIN’ BIRD。「L.Miranic」でMAHと共演したLiSAはまるで踊るように歌い、最多出演のCrossfaithはオーディエンスを巻き込む強烈なパフォーマンスで地面を物理的に揺らす。爆発的な盛り上がりにも満足しないのだろう、Vo.Koieが「“DEAD POP FESTiVAL2017”、2日目。The BONEZが灯した火を俺たちはもっともっと大きくしたい!」と叫んでMAHとJESSEがステージに乱入。“DEAD POP FESTiVAL”はSiMの夢であり、各出演者の夢であり、オーディエンス1人1人の夢でもあるということを改めて実感する。
ギリギリまでパンプアップされた強靭なアンサンブルと、絶対的な支配力で君臨したマキシマム ザ ホルモン。「SiMを倒しに来ました」とギラギラした想いを剥き出しにしたCHAOS STAGEトリのMy Hair is Bad。各出演者がリスペクトを胸に、全力でぶつかり合う。切磋琢磨とはこういうことを言うのだろう。
「26バンドが出演してくれました。でも本当の主役は集まってくれたお前らでは…ありません! 調子に乗るな!」とMAHが叫ぶ。ただの冗談ではなく、敢えて全出演者と全観客を敵にまわして勝負する覚悟でライブをスタートさせた大トリ・SiM。G.SHOW-HATEが笑みを浮かべ、Ba.SINが身体を揺らしつつベースを奏で、Dr.GODRiがパワフルにリズムを繰り出していく。汗に輝く4人の表情は頼もしく、その鋭い眼光からは並々ならぬ気迫を感じさせる。
MCでMAHが「フェスはゴールじゃなくて、知らないバンドとの出会いの場。だからMVの曲を演りがちだけど、ずっとCDを買ってくれている人にとっては、MVになってないけど通な曲があるわけでしょ? 自分たちのフェスくらいは好きな曲を演ろうと思います」と言ったように、そしてアンコールで「ルールに縛られたフェスは嫌だ。ライブハウスのようにフェスをやりたいって言ったら“よし! やろう!”と大勢が言ってくれて、今年で3年目になりました」と言ったように、ある意味アンタッチャブルとされてきたことや、誰もが見て見ぬふりをしてきたこと、知らぬ間に当たり前だと思って見過ごしてきたことに、真正面からぶち当たっていくSiM。それが彼らの誠実さであり、説得力にも繋がっている。この2日間、なぜ全出演者が全力でステージに上がったのか、たった20分の滞在でなぜ10-FEETのTAKUMAが京都から駆けつけたのか、なぜ全出演者が自分のイベントのように会場を盛り上げていたのか、アンコールで2回演奏された「f.a.i.t.h」にゲスト参加したKoieとMasatoがみせた熱量の意味。その理由がわかったような気がした。
来年の開催も宣言してステージを後にしたSiMの4人。ライブハウスと同じテンションで2日間、26組の全出演者が全力でライブを繰り広げた、ライブバンドによるライブバンドたちのフェス。今年も最高の2日間だった。
TEXT:Takeshi.Yamanaka
PHOTO:半田安政(Showcase)、Julenphoto