1999年からスタートし、もはや関西の音楽シーンを代表する夏フェスへと成長した“RUSH BALL”。今年は昨年に続いて2DAYS開催、“RUSH BALLクオリティ”とでも言うべき豪華なラインナップも発表され、8月末の開催を待つばかり。毎年同イベントをガッツリと特集してきたJUNGLE☆LIFEは、今回も総力をあげて“RUSH BALL2017”を連続で特集する。今月号では、主催者である株式会社グリーンズコーポレーションの力竹 総明氏にインタビューを敢行。日本全国でフェスや大型イベントが多く開催される中、“RUSH BALL”という唯一無二のフェスをどういう想いで続けてきたのか、出演者たちとどういう想いでつながっているのか。その核心に迫った。
「若さのパワーだったり、バンドのパワーだったり、規制がない音だったり。“ストレスが解放される場所であり続けるように”という想いでやってきた」
●1999年から始まった“RUSH BALL”は今年で19回目となりますが、開始当時と比べるとフェスはかなり増えましたよね。力竹さんから見て、全国各地でフェスが開催されている今の状況はどういう印象ですか?
力竹:どんどん増えていっていいんじゃないですかね。もはや“サーキット系”と呼ばれるようなイベントも全国各地で開催されていて、それぞれ盛り上がっていて、バンドもそういうイベントに対して「出たい」と意識していて。そういうイベントは、プロモーションできる場所だと思うんですね。
●はい。
力竹:例えばクラブミュージックとかヒップホップとか、ロックシーンとかポップシーンだとか、ジャンルで区切って考えるのか、それともオールジャンルなのか…それぞれのシーンでのし上がりたいと思うミュージシャンがそこに出ればいいわけで。何も考えずに出るミュージシャンなんて居ないと思いますし、だからどんどんフェスやイベントが増えていくのは全然いいと思います。もちろん、最終的には淘汰される部分はあると思うんですけど。
●その繰り返しのような気はします。
力竹:続くのは“やろう”と思う人の想い次第だと思うし、もちろんみんな必要だと思ってやっているわけですからね。金儲けとして「これだけやったらこれだけ儲かる」と単純に考えている人ほど失敗すると思うんです。出ていくお金の計算ができないから。それはもう、やっていかないとわからないことですからね。
●そうでしょうね。ただ“RUSH BALL”のように、これだけの規模のイベントが19年も続いているのは、単純にすごいことだと思うんです。
力竹:うーん、すごいですよね(笑)。よく続いているなと思います。
●ハハハ(笑)。力竹さんは“RUSH BALL”について、常に「バンドにとって、あくまでもここは通過点だ」とおっしゃってきたじゃないですか。音楽シーンに於ける“RUSH BALL”の役割というか位置づけのヴィジョンが、力竹さんの中ではっきりとしているのかなと想像するんですが。
力竹:例えばチケット代は上げていないんですけど…本当はもうちょっと下げたいんですけど、どうしても運営上必要な経費がありますので…たぶん未来永劫、この金額よりも上がることはないと思うんです。
●お、すごい。
力竹:上げないことによって、若い層が来やすい状況にするというか。“RUSH BALL”は毎年、来場者の平均年齢は20代前半なんです。いっても25歳くらい。
●それ、すごいことですね。
力竹:例えばキャリアがあるバンドととかは、若いオーディエンスたちに観てもらって闘いたいわけじゃないですか。そういうイベントとしてのテーマはずっと一緒なので、もちろん僕もどんどん年を取っていきますけど、中高生や大学生くらいの年齢の人たちがこのイベントに居続ける方法をひたすら考えてやっている感じですね。
●若い人たちが居続ける方法。
力竹:それがチケット代なのか、ブッキングなのか、プロモーションの仕方なのか。テレビでドーン、ラジオでバーンということではない考え方でやろうとしているので、ネットの先にあるプロモーションに加えて、日常の中で見つけてもらうアナログな宣伝もやり続けていて。
●なるほど。
力竹:“お兄ちゃんやお姉ちゃんが行ってたから私も行きたい”と思ってもらいたいんですよね。だから10年以上続けて来てくれている人ももちろん居るし、そんな人たちもあの場所に行ったらパワーを感じることができる。それは若さのパワーだったり、バンドのパワーだったり、規制がない音だったり。“ストレスが解放される場所であり続けるように”という想いでやってきたつもりなんです。だから続いている理由と考えたら、そういういろんな要素が絡み合っているのかなと思います。
●そういう意味では、お客さんにとっては新しいバンドを見つける場所だったり、バンドにとってはステップアップするための場所だったり、そういう役割を担っているような印象が強いんですが。
力竹:最終的には、ステージとお客さんがあの場所で成立すればいいと思っていて。その成立の仕方は、感動だったり、雄叫びだったり、声援だったり。僕らは最終的にはそこには入れないですけど、それが成立するためのそれまでのプロセスを担ったり、それが成立した上で「じゃあ次どうしよう」と言えるわけなんですよね。じゃあその成立が半分くらいだったとしたら、「来年はもっと盛り上げるために」と一緒に考えたり。そういうところまで含めてやっているんです。
●“RUSH BALL”の特長として、出演者たちがバチバチというか、闘っている感じがすごくあるんです。先ほど力竹さんは「ステージとお客さんで成立して、僕らはそこには入れない」とおっしゃいましたけど、主催者の想いが伝わっているからこその本気度という気がするんですが。
力竹:気持ちを伝えている人と伝えていない人が居て、やっぱり出演者によりけりですかね。でも、基本的には顔が見えるイベントにしたいので、ミュージシャンに対しては「僕が責任を取ります」という形でやっとやれるようになったと思います。僕が“RUSH BALL”の担当になったのは2005年からなんですけど、今から思えば初期の頃は全然顔が見えないイベントだったと思います。
●あっ、そうだったんですか。
力竹:本当に運営面だけでやっていたような感じだったんですけど、“これはあかんわ”と思って、自分が前に出るようになったのは2007〜2008年くらいからかな。じゃないと、しんどい(笑)。
●ハハハ(笑)。しんどいですか。
力竹:それをやり続けるのはやっぱりしんどいですよ。
●例えば特定の出演者に対して「あなたたちがこの順番でこのステージに出てもらいたいのは、こういう理由だから」ということを伝えたりもするんですか?
力竹:全然あります。例えば去年はSiMがトリだったんですけど、ブッキングの進め方として、だいたいいつもトリから決めるんですよ。そこから1日の流れを考えつつ、そのミュージシャンのこれまでの経緯とこれからの流れも含めて考える。縦軸と横軸を合わせるような感じなんです。
●なるほど。
力竹:去年のSiMのトリについては、彼らは「いいんですか?」という感じだったんですけど、彼らの1年も考えてトリがいいかなと。でもふと気づいたんです。トリ前が居ないなと。
●ほう。
力竹:トリ前は、SiMを追い込まないといけないじゃないですか。トップバッターからずっと続いてきたその日の流れで、トリ前にハッパをかけるバンドが居ないなと。と考えてたら「おった!」と思って、BRAHMANに声をかけたんです。
●そうだったのか。
力竹:それでマネージャーに連絡して。そしたらTOSHI-LOWからLINEが来て、「これ噛ませ犬じゃねえか」と。
●うわ(苦笑)。
力竹:「いや、そう捉えられても…おかしくないな」と(笑)。「でも本当にパンチがあるバンドが必要だから、出て欲しいねん」っていう相談をして、決まったんです。それで本番にTOSHI-LOWが「俺ら噛ませ犬だから」ってステージで言いつつ(笑)、すごいライブをしてくれたんです。すごいバトンを渡すわけですよ。かっこいいなと。
●はい。
力竹:SiMはSiMで、1日の流れを汲み取りつつ、自分たちのワールドにするべくすごく考えてやってくれたし。細美くん(細美武士)とかだったら、やっぱり震災以降の流れもあるので、それがすごく印象に残っていて、“RUSH BALL”のこともすごく気にかけてくれているんです。今年は出ないですけど、ストレイテナーもずっと“RUSH BALL”に出てくれているアーティストの1つだから、これからもどういう形で出るのがかっこいいかとか、バンドと一緒に考えていきたいなと思います。そうやって一緒に考えているバンドは多いですよ。縦と横でね。
●バンドのことを軸に考えつつ、“RUSH BALL”の1日の流れも軸として考える。
力竹:それをどんどん組み合わせていく。だからしんどいんです(笑)。そのパズルを作っていく上で足らないと思ったらミュージシャンに直接訊くし。相談しなくてもすんなりハマることもありますけど。
●第三者的に見て、“RUSH BALL”はロックでありストイックなイベントのイメージがあるんですけど、力竹さんなりの基準というのはどういうところにあるんですか? それが結果的に、毎年のラインナップに表れるんでしょうけど。
力竹:うーん…全員がライブで勝ち上がってきているアーティスト、ということかな。枠を拡げるいろんな仕掛けはあると思うんですけど、落とし所として“自分たちはライブだ”と思ってやっている人たちというか。
●はい。
力竹:そこをしっかりと見て、確信を得て。確信が得られなければ修行して、強くなって。中にはそこも通り越した伝説の人も居たりしますし(笑)。やっぱりライブですね。何がなくてもわかる、ライブが証明してくれる。そのかっこよさというか。できるだけかっこいいイベントにしたいんです。
●かっこいいイベント。
力竹:ネタとか、MCとかお笑いとか、そういうのは“OTODAMA~音泉魂~”に任せます(笑)。僕ら、逆にああいうのはできないので。
●ハハハ(笑)。
力竹:そこはもう、僕には想像がつかないんです。例えば、ただ単に四星球をポンと出すのはできると思うんですけど、四星球を出すための流れだったり、当日の仕込みだったり、終わった後の“ああ~、四星球の見方ってこういうことなんだ”っていう。それはもう“OTODAMA~音泉魂~”しかできないですよね。僕の場合はアーティストは触らないです。その代わりこういうステージがあるから「いってらっしゃい!」ってドーン! と見送る。それしかできないです。
●フェスにもそれぞれのキャラクターがありますね(笑)。あと、今年も2DAYSで開催されるわけですが、周年などのタイミング以外で2DAYSだったのは昨年が初めてでしたけど、もう定着したんでしょうか。
力竹:うーん。なんというか、1日ではもう足らないんですよ。あの夏の日に観せたいミュージシャン、作りたいイベント。かといって、2DAYSだと僕はそのぶん疲弊していくわけですが(笑)。でもそこはもうがんばるしかないんだろうなって。
●昨年の時点から、2017年も2DAYSということは決めていたんでしょうか?
力竹:昨年の時点で色々とお互い会話するじゃないですか。「来年出たい」とか「来年出て欲しいねんな」って。そういう会話をふわっとまとめてみると「あ、1日じゃあ足らん」となって。
●ということは、今後も2日で開催する可能性が高いんでしょうね。
力竹:でも来年20周年なんですよ。
●あっ、本当だ。どうするんですか?
力竹:どうしよう? と思って。とは言っても、まずは今年をキチンと成功させることが大事ですよね。今年がないと来年はないので。
●そうですね。まだタイムテーブルが発表されていないので詳しくは言えないでしょうけど、今年の見どころを最後に教えてください。
力竹:現時点で言えることは「トリは誰でしょう?」という感じですね(笑)。今年もすごいですよ。
●楽しみですね〜。どうなるんだろう。
力竹:ちなみに、今年出演してくれるDragon AshもACIDMANもRIZEも10-FEETも20周年なんですよね。
●うわ! 本当だ!
力竹:いろんなものが絡んでますよね。みんな年取ったなって。
●というか今年もすごいラインナップですね。今年19年目の“RUSH BALL”からすると、少し上の先輩バンドが多いと。
力竹:そうそう。“RUSH BALL”の1発目、1999年のトリはDragon Ashだったんです。
●あ、なるほど。楽しみ。
力竹:そうやってすべてが繋がっていくんです。“RUSH BALL”に関係なく、いろんなバンドが全国各地でプロモーションしてきて。そういうバンドたちの成長に、今年も“RUSH BALL”が一役を担えればいいですよね。
interview:Takeshi.Yamanaka
RUSH BALL 2017
8/26(土)、8/27(日)泉大津フェニックス
http://www.rushball.com/