2017/6/9
京都御所の向かいに位置するKBS京都は、地元の放送局として長い間府民に親しまれている。その歴史あるKBS京都の1Fにあるのが京都KBSホール。決して今風のホールではないが、京都らしい趣が感じられる。京都を愛し、京都を誇りに思って活動するバンドに相応しい場所ではないだろうか。
少し落ち着いた雰囲気の会場に、夕刻より続々とライブキッズが集結。思い思いのフェスTシャツ、バンドTシャツを身にまとい、首にはタオルを巻きつけている。社会人風の人たちもチラホラ。ROTTENGRAFFTYのファン層の幅広さを物語っている。この日は、ROTTENGRAFFTY主催の渾身のイベント“ロットンの日”。2日間開催1日目の対バン相手は、若手ロックバンドの中でももっとも注目を集め、その個性を際立たせているキュウソネコカミ。
SEが流れていつもの登場シーンだったが、音創りやリバーヴの効いたギターリフに、“あれ? キュウソってこんな感じだったかな?”と思っていると、1曲目はROTTENGRAFFTY「e for 20」のカヴァー。客席のテンションが一気に沸騰したところで、2曲目「ビビった」から爆発的なステージングで魅せるキュウソ節が炸裂。「ファントムヴァイブレーション」「邪邪邪VSジャスティス」と畳み掛け、「困った」でVo./G.ヤマサキセイヤがハンドマイクで客席へダイブ。
MCでは「ロットンとは何年も関わっているけど、なんか薄~い壁を感じてました」と信頼できる仲間だからこそのMCに、会場からたくさんの笑いが起きる。
後半の「DQNなりたい、40代で死にたい」では“ヤンキー怖い”の大合唱を引き起こし、会場が一体化するリアクションの連続。ストーリー性のあるライブパフォーマンス、詞の持つパワーと自然体なメンバーのキャラクター、2017年の日本とカルチャーを感じさせてくれる“嘘のないバンド”のステージに惹きつけられる。
そして真打ちの登場。「610行進曲」のSEでROTTENGRAFFTYのメンバーがステージへ。1曲目の「5~Five〜」はツインボーカルの魅力を最大限に活かした楽曲だ。続く「灯」では「この曲で心に火をつけろ!」とN∀OKIが叫び、「かぞえ詩」「STAY REAL」とガンガンに煽っていく。音数を減らしてそれぞれの楽器や声を際立たせるライブアレンジ、いつもとは少し違うROTTENGRAFFTYを存分に味わい尽くす。
「響く都」では彼らの真骨頂である日本音階と音頭調のアプローチ。「D.A.N.C.E.」ではミラーボールが回り出し、アッパーなビートで、オーディエンス、セキュリティ、関係者全員を座らせて一気にジャンプ。フロアを大いに揺らす。
「THIS WORLD」では「俺はいったい何人もの人を踏みつけているんだ?」と、NOBUYAが客席の中央付近までオーディエンスに担がれて熱唱。そしてバンドにとって想い入れが強い「マンダーラ」では、切々と語りかけるN∀OKIのラップに観ているこちらも胸を熱くする。妖艶な魅力を持ったNOBUYA、リアルな強さを持つN∀OKI、ROTTENGRAFFTYが擁する2人のヴォーカルの個性が炸裂する。
「NO THINK」から「銀色スターリー」「金色グラフティー」、そして本編最後の「Rainy」まで、会場を一つにして一気に駆け抜ける5人。肩車をして最前列を目指すキッズ達、メンバーと共に歌う会場。その光景を目の当たりにし、いつの間にか涙が溢れていた。
そしてアンコールへ。振り絞るような想いのリフレインが印象的な新曲「70cm四方の窓辺」を披露し、そして千葉から来ていた女の子を客席からステージに上げ、「Bubble Bobble Bowl」へのフリを任せて彼女は客席にダイブ。最後はキュウソネコカミのメンバーも揃い踏みで、握手とハグの感動的シーン。楽曲に対するアプローチは異なるものの、根底にある精神性を共にする2組が響く都で魅せた美しい光景。この場に居れたことに感謝してホールをあとにした。
2017/6/10
ライブ前の楽屋でNOBUYAは「今日来てくれるやつらのために全力でやるだけ」と筆者に想いを語ってくれた。その日のライブはまさに彼の言葉通り。メンバー5人が全力で駆け抜けた、生々しくて熱く、そして人間くさくてROTTENGRAFFTYらしいステージだった。
幕開けは「切り札」。KAZUOMIのギターが鳴り響き、N∀OKIのハープで一気にヒートアップ。客席は大合唱で歌う無数の笑顔。NOBUYAは「全然足りひんぞ! かかってこい!」と煽り、「暴イズDE∀D」「8」と重ね、N∀OKIが「1人1人が主役やろ? 主役の声を聴かせてくれ!」と「毒学PO.P革新犯」。KAZUOMIがリフで煽り、侑威地とHIROSHIが怒涛のグルーヴで攻める。全員が前傾姿勢の攻撃態勢で一瞬も気を抜く隙がなく、オーディエンスは揉みくちゃになりながら一緒に歌い、彼らに追いつこうと必死に拳をあげる。KBSホールのボルテージは最初からフルテンションで、KAZUOMIが「楽しすぎて頭おかしくなる!」と叫べば、「零戦SOUNDSYSTEM」の曲中にN∀OKIは「今日は限界突破で来やがれ!」と更に煽る。
NOBUYAが「どうしても“ロットンの日”に演りたかった曲がある」と言って始まった「生クリーム」、ドラマチックな展開とサビの爆発力が強烈な「e for 20」。そして「続けてきたことを誇りに思う。集まったやつらに…」と「075GRAFFITI」、2人のヴォーカルの超攻撃的な掛け合いと胸を焦がすギターが魂を震わせる「GRIND VIBES」、無数のタオルが舞った「ケミカル犬」。初期の“ロットングラフティー”を形成してきたキラーチューンたちが、オーディエンスの心を鷲掴みにし、会場がひとつになっていく。その一体感は凄まじく、ステージの上とオーディエンスが1つの大きな塊になっているような感覚に包まれる。
MCではバンド結成の経緯やメンバー紹介なども交えつつ、客席に向かって何度も「ありがとう」と頭を下げる。
そしてライブは後半に突入。ダイバーが乱発した「So...Start」、コール&レスポンスで始まり怒涛のリズムが押し寄せた「かくれんぼ」。N∀OKIが「家族、仲間、そしてここに集まったお前ら」と叫んだ「Familiarize」、NOBUYAが「スーツでそっちに行くの何年ぶりやろ」といって客席に突入した「THIS WORLD」。この日のライブにどれだけの想いを込めているか、1本のライブに対してどれだけの覚悟で臨んでいるかが、1人1人の眼からすべてが伝わってくるような生々しいステージ。オーディエンスと一緒に、ステージの上も下も汗にまみれて全力で作り上げていくライブ。愚直なまでにまっすぐなROTTENGRAFFTYにしか作り得ない光景だ。
NOBUYAが「最初はただの語呂合わせやったけど、年々やってきたら、(“ロットンの日”を)みんなが大事な日に育ててくれて。お返ししたいけど、ライブや音源でしか返せなくて。年に1回しか演らない曲を、大事なみんなの前で演りたい」と告げて「悪巧み~Merry Christmas Mr.Lawrence」を披露。特別な瞬間に、観客は大興奮し、そして同曲の幻想的な世界に酔いしれる。
そしていよいよライブは佳境に入る。感情が掻きむしられる新曲「70cm四方の窓辺」。泣きながら歌う人、はじけるような笑顔で歌う人、必死な形相でステージを食い入るように見つめる人、拳を振り上げる人など、フロアに様々な感情が渦巻いた「盲目の街」。本編最後は全員で大合唱しつつ、肩車からのダイバーやモッシュでフロアがカオス状態になった「金色グラフティー」で締め。
アンコールでは、10/4にニューシングル『70cm四方の窓辺』リリース、そして12/23と12/24に“ポルノ超特急2017”の開催を発表し、NOBUYAが感情を爆発させた「I believe」、最後は「響く都」で大団円。何度も何度も「ありがとう」と感謝の気持ちを告げてステージを後にした5人。全30曲、尋常ならざる想いと覚悟で走り抜いたROTTENGRAFFTY渾身のワンマンに、彼らの生き様を見た。
TEXT:PJ、Takeshi.Yamanaka