Red Bull主催のバンド・コンテスト“Red Bull Live on the Road 2016”でグランプリを受賞し、数多くのイベントやフェスにも出演、目まぐるしいほどのスピードで勢いを増しているSunrise In My Attache Case。サーフロックや洋楽から影響を受けた独自のサウンドは、聴く者の心と感性に共鳴する力が満ち溢れている。そんな彼らが、World of Red BullのテレビCMソングに選ばれた「The Wall」収録の3曲入りシングルを満を持してリリース。世界へと目を向ける彼らのストーリーが今始まった。
「陽の当たらないところで活動をしていて、それでも絶対に世の中に通用する音楽を作ろうと思ってやっていたんです。それが、初めて認めてもらえたというか」
●Sunrise In My Attache Caseはカナダのバンクーバーで結成というオシャレな経歴を持っていますけど…。
Kazuya:バンクーバーには半年間しかいなかったんです。
●えっ!
Kazuya:しかも僕とanoppeの2人しかバンクーバーには行ってないんです。
●ええっ! どういうこと?
Kazuya:厳密にいうと、結成は奈良なんです(笑)。cubsと岡Pは後から加入したんですけど、もともとは僕とanoppeとあと2人の4人編成で始まって。とは言っても、結成したけどすぐにバンクーバーに行きたくなって、バンドは放っておいてanoppeと2人で「行ってくるわ」と。
●何しにバンクーバーに行ったんですか?
Kazuya:海外に憧れていて、1回行ってみたいなと前から思っていたんです。そういう話をしていたら、anoppeはちょうど仕事を辞めたタイミングだったので「俺も行くわ」ということで。anoppeはバンクーバーに1年留学した経験があったので、土地勘もあるし。
●“バンクーバーで結成”と聞いて、向こうの音楽学校とかで意気投合した音楽的偏差値の高い経歴を勝手に想像していたんですけど、すごくふわっとした動機ですね(笑)。
一同:ハハハ(笑)。
anoppe:それにKazuyaはものすごい方向音痴なんですよ。だからたぶん1人ではカナダに行けないだろうなと思ったんです。カナダはもちろん、関空にもたどり着けへんやろうなと。
●方向音痴が過ぎる(笑)。バンクーバーでは何をしていたんですか?
Kazuya:ホームステイしながら語学学校に通いつつ、毎日遊んでました。
●遊んでたんかい(笑)。
Kazuya:僕はこのバンドをやる前にもバンドをやっていたんですけど、ずっと洋楽から影響を受けていて、ゆくゆくは海外でも活動するようなバンドを目指していたんです。でもそのバンドが解散して、そのタイミングでやっぱり一度は海外に行っておきたいなと思いまして。
●向こうではライブとかには行っていたんですか?
Kazuya:行ってました。向こうのお客さんは最初から踊ってるんですよね。“テンション高いな!”と思ったんですけど、メンバーが出てきた瞬間に横にいた奴とか「ウォー!!」となっていて、日本では考えられないくらいの興奮度合いだったんです。あとはクラブとかも結構行ったんですけど、ブラジルの音楽ばかり流す日があったり、メキシカンの日があったりとかして、毎日が刺激的でしたね。
●要するに毎日遊んでいたと。
Kazuya:はい(笑)。毎日飲んでました。
●その半年間の経験は、このバンドに影響を与えているんですか?
Kazuya:かなり与えていますね。やっぱり英語で歌うということに関して、明らかに認識というか感覚が変わりました。今も英語の発音とかはまだまだですけど、メロディにハメるときのニュアンスとか。
anoppe:僕は景色感が変わりましたね。直に見るのと、スクリーンやテレビ越しで見るのとはやっぱり違う。あと、街を歩いてても日本語が聞こえてこないし、表記も全部英語だし。そういう環境にいて、価値観が少し変わった気がします。
●日本に帰国後、放ったらかしにしていたSunrise In My Attache Caseを始動させたんですね。
Kazuya:はい。まず2人で曲を作り始めたんですけど、そのときに出来た曲が明らかにそれまでと違ったんです。自分で作った曲を聴いて「やっぱりバンクーバーに行ってよかったな」と。だからバンクーバーで結成したと言っても過言ではないというか(笑)。それで「ちゃんとバンドやろうぜ」となって、2012年頃に動き出したんです。バンド名もそこで決めて。
●cubsくんと岡Pはどういう経緯で加入したんですか?
Kazuya:その後1年くらい活動してベースが脱退することになったんですけど、その頃に仲良くしていたcubsを誘ったんです。
cubs:僕は高校生の頃、Kazuyaが前にやっていたバンドのアルバムを聴いて“俺もバンドやりたい”と思い、音楽を始めたんですよ。
●お。Kazuyaくんが憧れの存在だったんですね。
cubs:それであるとき、奈良のスタジオで店員さんに「僕はこういうバンドが好きで音楽始めたんですよ〜」とか話してたら、店員さんが「それ俺やで」と。
●え!
Kazuya:僕は奈良のスタジオで働いていたんです。
●憧れの存在がめっちゃ身近にいた。
cubs:それがきっかけで飲みに行くようになって、仲良くなったんです。当時は毎週飲んでました。毎週金曜日になったら「飲みに行こう」と連絡が来るので、僕はもう金曜日はバイトを休みにして。
●仲良しですね(笑)。
Kazuya:cubsが入ったタイミングで前作『The Winding Road』(2015年7月リリース)を作ることを決めたんです。それまでは本当にゆっくりしか活動していなくて、何か1つ目標がないと自分たちは動かないと思ったのでアルバムリリースを決めて、それがきっかけで結構バンドが進むようになったんです。
●なるほど。
Kazuya:その後、今度はドラムが抜けることになって、ちょうど同じタイミングで岡Pが所属していたバンドを脱退したんです。そのバンドとSunrise In My Attache Caseはすごく仲が良くて、対バンしたり、一緒に淡路島旅行したりしていて。
●というか、さっきから仲良しエピソード多いですね。2人でカナダ行ったり、毎週飲んだり、バンド同士で旅行したり。
一同:ハハハ(笑)。
Kazuya:岡Pが脱退したタイミングで、ちょうど前のドラムが抜けたから誘ったんです。
岡P:もともと仲が良かったのもあるし、前からSunrise In My Attache Caseはめっちゃいいなと思っていて。でも“もっとドラムをこうしたらバンドがもっと良くなるのに”という視点でも見ていたんですよ。だから前のドラムに対して、“あいつ辞めへんかな”と内心思っていて。そしたら本当に脱退したんです(笑)。
●呪いの念を送っていたのかもしれないですね。
cubs:確実に呪いが効いたと思います(笑)。
岡P:それがちょうど1年くらい前。“Red Bull Live On the Road 2016”の初戦が僕の初ライブでした。
●ところで作曲はKazuyaくんで作詞はanoppeが担当しているということですが、どうやって曲を作っているんですか?
Kazuya:最初に僕が景色感をイメージするんです。
●あ、景色感。さっきanoppeも言ってた。
Kazuya:そこはいつもめっちゃ大事にしていて、「こういう景色の中を歩いてて…」みたいなことをanoppeに説明するんです。
anoppe:そこからイメージを膨らませて、歌詞を書いて。
Kazuya:anoppeが書いた歌詞を僕が読んで、「こうしていきたい」ということを伝えて。2人でそういうやり取りをしながらメロディと歌詞を同時進行で作っていくんです。
●なるほど。例えば今回のシングル曲M-3「The Wall」はどういうきっかけで出来たんですか?
Kazuya:海外ドラマの『ウォーキング・デッド』です。
●は?
Kazuya:あのドラマがメンバー全員めちゃくちゃ好きなんです。登場人物のグレンとマギーって
いうカップルがいるんですけど、その2人が試練を乗り越えて再会する場面がすごく良くて、そこから刺激を受けて書いた曲なんです。
●ものすごく明確なきっかけというか題材がある曲(笑)。
cubs:グレンとマギーのストーリーはドラマ前半の山場なんですよ。2人が離れ離れになってしまって、ゾンビの世界だし周りのみんなは「恋人を探す前に自分の命を守った方がいいよ」と言うんですけど、2人はお互いを信じて「そんなことない。絶対に生きてるはず」と探し続けるんです。(※『ウォーキング・デッド』の話が長くなったので中略)…2人がやっと再会した瞬間の高まりが、この「The Wall」では余すことなく表現されています。
●なんの話やねん(笑)。というかこの曲、World of Red BullのテレビCMソングに選ばれたんですよね。
cubs:はい。日本のRed Bullの人に「全世界で流れるCMだから受かるかどうかわからないけど、応募してみない?」と言われて、候補曲を何曲か出したんですけど、まさか選ばれるとは思ってなかったです。
●すごいな。それとさっき“景色感”という言葉が出ましたが、Sunrise In My Attache Caseの音楽を聴くと、景色とか場面とか、ストーリーみたいなものを感じるんですよね。音楽がすごく映像的というか。
cubs:僕らもKazuyaが作ってきた曲を聴いたときに、それぞれが想像するものは微妙に違うかもしれないですけど、パッと景色や情景が思い浮かぶことが多くて。それはやっぱりライブのときもめっちゃ大事で、お客さんにも同じ景色を見てほしいんです。僕らは「景色感」とよく言うんですけど、それは作品やライブを通して僕らと同じ景色を見てもらえたら最高だなと思っているからなんです。
●曲を聴いて景色が見える/見えないっていうのは、曲を作る立場からするとどういうところがポイントなんでしょうか?
Kazuya:ものすごく感覚的なんですけど、例えばコードをバーンと鳴らしたときには夕焼けとか、ピアノを入れたらちょっと大きな土地になるとか。
●大きな土地? スケール感が出るということですか?
Kazuya:そうですね。僕の中だけの感覚なんですけど、そういうのがあって。
●曲作りはそういう感覚を組み合わせていく作業なんですね。
Kazuya:そうですね。シンプルにアコギ1本でいきたいときは、海のイメージがあったり。
●ああ〜、確かに言われてみるとなんとなくわかるかも。
Kazuya:基本的には、僕はドライブや旅に行っているときに音楽を聴きたくなるんですよ。だからそういう生活の一部にリンクしてほしいなと思って曲を作ることが多いですね。
●それとM-1「Higher」やM-2「Flight」も含めて、曲にはエモーショナルな要素が共通して入っていると感じたんですが。
Kazuya:感情が揺さぶられるような要素は入れたいですね。「Flight」は前にいたメンバーに対して思った気持ちが元となっていて、「Higher」はお客さんに対して思っていることが元になっているんですけど、どういう経緯で出来た曲にせよ、感情を揺さぶりたいとはいつも思っています。
●「Higher」はお客さんに対して思っていることが元になっているということですけど、この曲は衝撃的でした。「The Wall」とはまったく違うタイプですけど、ライブでの爆発力があるというか、聴いた人の気持ちを巻き込む引力みたいなエネルギーがある。
cubs:岡Pが加入する前に出来ていた曲なんですけど、僕らも曲が出来たときは「この曲ヤバくない?」っていう手応えがありました。
●結構前に作った曲なんですね。
cubs:僕らは去年“Red Bull Live on the Road 2016”でグランプリを獲りましたけど、もともとは“どうせ負けるやろ”と思っていたんですよ。大人の力とか無いし、きっとああいうのはお金で決まるもんやろうと。
●お金もコネもない自分たちには無理だろうと。
cubs:だから負けたら奈良のスタジオで「Higher」「Flight」「The Wall」の3曲入りのシングルを自分たちで録るつもりだったんです。特に「Higher」は、自分たち的にもインパクトがあると感じていたので、そのときはリード曲にしようと思っていて。
Kazuya:その準備をしていたんですけど、グランプリを獲れたから「これはレコーディングしている場合じゃない!」となって。
●グランプリを獲ったことによって環境が変わり、レコーディングを延期して、満を持して今回のリリースに繋がったんですね。
cubs:僕らは奈良の田舎で、言ってみれば陽の当たらないところで活動をしていて、それでも絶対に世の中に通用する音楽を作ろうと思ってやっていたんです。それが、去年のグランプリや今回のCMソングで、初めて認めてもらえたというか。めちゃくちゃ嬉しかったですね。
●奈良からバンクーバーを経由して始まったSunrise In My Attache Caseが、今作とツアーで
羽ばたいていくと。
Kazuya:でも僕らはまだまだで、今回の“The Wall Tour 2017”も実質初めての全国ツアーなんですよ。
岡P:CDを聴き込んでからライブに来てもらえたらすごくおもしろいと思います。僕ら、音源とライブではかなりアレンジを変えるんですよ。
●あ、そうなんですね。
Kazuya:やっぱりライブバンドでありたいんです。音源ではこうしたけど、ライブでは体感的な気持ちよさを考えてアレンジを変えたりしているんです。最初に言ったように、海外で活躍出来るようなバンドになるのが目標なので、まずはこのツアーでいろんな人に知ってもらいたいですね。
interview:Takeshi.Yamanaka
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