バンド結成10周年を迎えた摩天楼オペラが、ニューアルバム『PANTHEON -PART 1-』を完成させた。昨年1月に4thフルアルバム『地球』をリリースした彼らだが、7月にこれまで長く活動を共にしてきたG.Anziの脱退という事態に直面…。しかし逆境と呼べる状況の中でも決して立ち止まることなく、10月にベストアルバム2枚と同時に新体制で即座にミニアルバム『PHOENIX RISING』を発表し、前進し続ける強い意志を見せつけてくれた。そんな新章の幕開けを告げた前作とそのリリースツアーを経て、いよいよ生み出されたのが今回のフルアルバムだ。自らのルーツにして最強の武器を究極的に研ぎ澄まし進化させた結果、摩天楼オペラ史上最もヘヴィメタルな作品が誕生した。タイトルに“PART 1”と付されているとおり4人の創造性は尽きることなく、さらにこの先すらも見据えている。鋼のような固き覚悟に満ちた音を放ちながら突き進む4人の今に迫る、表紙&巻頭10,000字インタビュー。
「細かい部分で“俺はこれがやりたいんだ!”っていうものは、個々にたくさんあると思うんですよ。でも“4人で摩天楼オペラをやるんだ”というところがまず一致しているので、同じ方向を向けているのかなと思います」
●昨年1月に『地球』をリリースしてから、7月にメンバーの脱退もあった中で10月にミニアルバム『PHOENIX RISING』のリリースも経て、今回の新作フルアルバム『PANTHEON -PART 1-』を完成させたという…何とも凄まじいペースで活動されていますよね。
苑:そうですね。“止まってなるものか!”と思って。
●まさにM-10「止まるんじゃねえ」のタイトルどおりの心境というか。
苑:本当にそのとおりです。時間があるところは制作に全部費やして、それでやっと(リリース日に)間に合ったという感じで。でも“このタイミングでアルバムを出したい!”っていうのは僕たちが決めたことですし、そのためには凄まじい忙しさになるということもわかった上でやっていたので全然、苦ではなかったですね。
●メンバーの脱退という逆境を迎えたところで、“ここで絶対に活動を止めたくない”という気持ちも強かったのでは?
苑:最初の動機としては、そういうところもありました。“4人でも続けるからにはやってやる!”という感じではあって。でも実際にやり始めたら結束もより強まったし、やりたい音楽も出てきたんです。“4人でもやれるな”という感覚になってから、バンドがより楽しいと思うようになりましたね。
●前作の『PHOENIX RISING』を作っている時点でも、そういう心境になっていた?
苑:当時はまだ、みんなの中でも探っている部分があって。“やるぜ!”っていう気持ちはありましたけど、まだ探り探りの状態でやっていました。昨年末の『PHOENIX RISING』のツアーからサポートギターにJaYが入って、その頃から変わってきたと思います。
●JaYさんの加入が、変わるキッカケになったんでしょうか?
苑:4人で覚悟を決めて“やってやる!”となっていた時に(JaYという)新しい風が入ってきて、空気がさらに良くなったんです。そういう中でツアーをまわってみたら、毎回の公演が楽しかったんですよね。ツアーファイナルでは僕たちが思ってもみないようなことを、ファンの方たちがやってくれたりもして。覚悟を決めた後にそういう楽しい経験をできたことで、“まだまだやるべきだし、やって良いんだな”と思えたことが今年につながっています。
●『PHOENIX RISING』のツアーを通して、バンド活動を今まで以上に楽しめるようになった。
苑:今までも楽しかったんですけど、“楽しい”と同じくらい“つらい”のもバンドだと思っていて。でも最近はどんな細かい仕事でもやれていることが楽しいし、ありがたいと思えるようになってきたんです。そういう意味で、あのツアーが分岐点だったと思います。
●ツアーを分岐点として、バンドの状態も上昇していったんですね。
悠:やっぱりツアーをやったことは大きかったですね。ライブでダイレクトにお客さんの声を聞けることで、反応も一番わかるから。まだ5人の時にまわっていた『地球』のツアー中に熊本地震(2016年4月)があって、熊本と福岡での公演が中止になってしまったんですよ。それを経て『PHOENIX RISING』のツアーで行った時に、いつもシャイだった九州のお客さんがすごく大きな声で迎え入れてくれて。そこで改めて“全国で待っていてくれたんだな”というのを実感して嬉しくなりましたね。
燿:メンバーが1人いなくなって新体制になってから初めてのツアーだったので、自分たちとしては“今までついてきてくれたファンの人たちがいなくなってしまっても仕方がない”というくらいの気持ちで臨んだんですよ。でも結果的にはちゃんと待っていてくれる人たちがいて、それが本当に嬉しかったです。これからは今まで聴いてくれている人たちにも満足してもらいつつ、もっと色んな人たちに聴いて欲しいなという気持ちになりました。
●より広げていこうという気持ちにもなれたと。そういうポジティブな気持ちが、今回の制作にもつながったのでは?
彩雨:『PHOENIX RISING』を作っている時にレーベルが変わって、周りのスタッフも入れ替わった時期だったんです。 レコーディングの時も細かい部分での変化はある中で探りながら『PHOENIX RISING』を作ったんですけど、結果的に良い作品ができて。その後でJaYくんと一緒に全国ツアーをまわったこともあって、今回のアルバムが作れたのかなと思います。そういう意味ではちゃんと流れがあっての『PANTHEON -PART 1-』なので、良いタイミングで作れて良かったですね。
●今回の『PANTHEON -PART 1-』の構想は、ツアー中から浮かんでいたんでしょうか?
苑:元々は『PHOENIX RISING』の続きのつもりで、今作を作ろうと思っていたんです。僕たちの一番の武器は合唱やヘヴィメタルなので、まずはそういうところから4人で走り出して。『PHOENIX RISING』には6曲しか入っていなかったので、“このスタンスでもっとヘヴィメタルな作品を作りたい”と思ったことが今回のアルバムにつながっていきました。
●合唱やヘヴィメタルといった自分たちの武器を、より活かした作品にしようと考えていた?
苑:そうですね。4人でリスタートするとなった時に、“自分たちの音楽をもう一度見直して、それをちゃんとやろう”と思ったんです。音源を作っている時だけじゃなく、ある程度の期間はまず“ちゃんと4人で両足で立つ”ということを意識して、納得がいくまでやろうと思っていました。
●そういう意識の中で、今作の制作を行っていったわけですね。
苑:今回は“ヘヴィメタル”っていう明確なコンセプトがあったので、そういう時のほうが狙いを定めて作りやすいんですよ。だから、やりたい曲がどんどん出てきて。そうやってやりたい曲が出揃ってきたら、今度はバランスを見て“こういう曲ができたなら、次はこういう曲”みたいな感じで連鎖して次々とできていきましたね。
●では、曲作りで困ったりすることもなかった?
苑:全くなかったです。
彩雨:今回は全体を通して「ストレートにメタルでいこう」っていう話を昨年からしていたんです。それを念頭に置いていたから、“曲をどうしよう…?”みたいなことにはならなかったですね。
●タイトル曲のM-1「PANTHEON」は今作の軸になるものだと思いますが、この曲はいつ頃にできたんでしょうか?
苑:この曲の骨組み自体は3年くらい前からあったんですけど、完成して今の形になったのは今回の制作期間中でした。
●骨組みは3年前にあったんですね。
苑:その当時作っていたアルバムの候補曲だったんですけど、その時は他にも作品のコンセプトに合う曲がたくさんあったのでお蔵入りになっていて。でも燿がこの曲のメロディをすごく気に入ってくれていたので、僕のストックには入れておいたんです。
燿:3年前の時点ではまだ1コーラスだけだったんですけど、キャッチーなメロディだなとは思っていたんです。でもその時の作品コンセプトとはちょっと違うというところで、収録には至らなくて。“これは定期的に言っておかないと(候補から)消されてしまうだろうな”と思っていたので、音源を作るという話になる度に僕はこの曲を挙げていたんですよ。
●燿さんの中ではそれくらい、この曲を形にしたかった。
燿:元々、摩天楼オペラらしい曲だなとは思っていて。アレンジを経て今作のコンセプトにマッチするものになったし、ブラッシュアップしたらメインの曲にもなるんじゃないかなと思っていました。
苑:最初にその話を聞いた時は、“いや、メインにするには弱いって…”と僕の中では思っていたんですよ。最初の段階ではサビしかなかったので、それだけで考えたらメインには弱いと思っていて。でも今回作っていく中で大サビが浮かんで、その時に“これはメインだな”って思いました。このメロディならアルバムのメインになり得るなと。
●「PANTHEON」というタイトルはどこから出てきたんですか?
苑:歌詞にもある“英雄のような強さ”というのが僕にとって今最も欲しいもので、そういう強さでメンバーやお客さんを引っ張りたいんです。そういうことを考えながら歌詞を書いていった時に、「PANTHEON」には“英雄たちの集まる場所”という意味があるのでピッタリだなと思って。“メンバーが集まる場所”や“聴いてくれるファンの人たちが集まる場所”という意味もあるし、このアルバムの曲に出てくる主人公たちはみんな力強いので“そういう曲たちが集まる場所”という意味でもピッタリだということで「PANTHEON」と名付けました。
●“英雄のような強さ”を求める「PANTHEON」だったり、「止まるんじゃねえ」だったりと、自分自身を鼓舞するような歌詞が多いのかなと。
苑:そうですね。あと、こういう歌詞を書いた時に(リスナーに)全く共感が生まれないということもないだろうなと思って。みんな心のどこかで背中を押して欲しかったり、助けの手を伸ばして欲しかったりすると思うから。僕も音楽に助けられてバンドを続けてきたので、そういう経験もあって“自分もリスナーも元気になれる曲が良いな”という気持ちはありました。
●M-8「何度目かのプロローグ」では“丸めた背中で歩く 自分に気づいて嫌んなった”という歌詞があって、M-5「Excalibur」でも“背中丸めて呑むために俺は こんなところまで来たわけじゃない”と歌っていますよね。これはどちらも実体験に基いているものなのかなと思ったんですが。
苑:「何度目かのプロローグ」は、完全に日々の生活の中で自分がしてしまっていた経験から書いていて。落ち込んでいる時にふと気付くと、うつむき加減に歩いてしまっているんですよね。気付いた時に“それじゃダメだ!”って、いつも思うんです。“行くしかない!”とか“やるならやる!”っていうことを歌った、本当に等身大な歌詞ですね。
●等身大の言葉を率直に歌っている。
苑:やっぱり自分の本心を歌ったほうが、リスナーの心にも刺さると思うんですよ。丸裸になった自分が歌う言葉のほうが、聴いている人にも衝撃が伝わる気がしていて。“演じている自分”よりも、“丸裸の自分”のほうが言葉の重みも違うのかなと思います。
●そういう心境になったのはいつ頃から?
苑:2~3年前くらいから、徐々にこうなってきました。等身大のほうがライブで歌っていても感情がまっすぐに入るし、聴いている人たちにもまっすぐ入っていくと思うんです。昔はストーリーを作って仮想の主人公を立てた上で歌詞を書いていたというのもあって、今の言葉の強さを自分でもより一層実感しています。そういうもののほうが、歌っていて気持ち良いんですよね。
●メンバーも歌詞に、自分を重ねられたりする?
彩雨:まぁ、状況はみんな一緒ですからね。
悠:でも他のメンバーは、僕から見ると強いんですよ。だから、僕が一番“歌詞がしっくりくるな”と感じていて。何作か前から自分(※苑)の気持ちを反映した歌詞が多くなってきたのは、良いことだと思っているんですよね。それによって僕も共感できるところがすごく増えたし、口ずさみやすくなったというか。印象に残るフレーズも多くなったと思います。
燿:完全に一緒ではなくてもリンクする部分があったり、違う受け取り方でも自分を重ね合わせたりできるような曲が増えてきているなと思っていて。僕はわりと強いほうなので普段から自分を無理に鼓舞しなくても生きていけるんですけど、“こういう考え方もあるんだな”っていうところでハッとすることはありますね。彩雨も「状況はみんな一緒だ」と言いましたけど、4人とも向いている方向が一緒なので今はすごく勢いのある感じになっているんだと思います。
●向いている方向が同じになったのは、4人でリスタートした時点からでしょうか?
苑:“4人でやろう!”と決めた時から、方角的には一緒になっていますね。細かい部分で“俺はこれがやりたいんだ!”っていうものは、個々にたくさんあると思うんですよ。でも“4人で摩天楼オペラをやるんだ”というところがまず一致しているので、同じ方向を向けているのかなと思います。
「理由は何でも良いんですよね。“もう1回やりたいな”と自分で思えたことが重要だから。そういう気持ちがあれば、何度でもできると思います」
●メンバーの方向性が一致していてバンドの状態が良いからこそ、曲やアイデアもたくさん生まれてきたのかなと。収録曲は、それぞれが候補を持ち寄った感じですか?
苑:最初に僕と彩雨が作ってきたものを出して、そこにないものを燿さんが作ってきてくれたという感じですね。
●全体の流れから見ると、彩雨さん作曲のM-6「AM6:00に針路をとれ」はとりわけ軽やかでキャッチーな印象がありました。
彩雨:これはメロディよりも先に、ギターがずっと同じことをやり続けるというアイデアがあったんです。普通はベースラインやコード進行から作っていくと思うんですけど、ギターが同じフレーズをずっと弾き続けている中で僕ら4人が周りにどう色付けをして変化を付けていくかっていう実験的な曲作りがしたくて。そういうことをあえて今、ギターのいないタイミングでやりたかったんですよね。
●ギターの正式メンバーがいない今だからこそ、できるチャレンジというか。
彩雨:そういう実験的な曲作りから始めて、紆余曲折を経て今作ができたんですけど、非常に良い化学反応が生まれたと思っています。特に「AM6:00に針路をとれ」は素の状態からそれぞれがアレンジをして、良い感じの世界観に仕上がりましたね。
●今回のレコーディングにはツアー同様にJaYさんがサポートギターとして参加したそうですが、そこで生まれた化学反応もあるのでは?
彩雨:ありますね。全国ツアーを一緒にまわった中でギターの部分でも人間的な部分でもコミュニケーションが取れていたので、すごく良い状態でこのレコーディングに入れたんですよ。完全に“初めまして”というところからギターをお願いしていたら、こういう仕上がりにはならなかったと思います。そういう意味でも、JaYと一緒に全国ツアーをまわれたことは良かったですね。
●ヘヴィメタルなサウンドを追求する上で、ギターはすごく重要なポジションだと思うのですが。
苑:重要ですね。JaYに参加してもらった時に、摩天楼オペラの楽曲を完璧に弾きこなす人だったのでビックリしたんです。上手いのは知っていたんですけど、曲を渡して戻ってきた時の編曲能力の高さが“ヤバいな!”と思って。センスが良いんですよね。
●想像を超えたものが返ってくる?
苑:超えてくれます。だからシンプルなギターを入れてきた時は「いやいや、そんなはずないだろ?」と言って、いったん返して。そうすると、次には凄まじい変態ギターが入って戻ってくるんですよ(笑)。
●ギターのアレンジに関しては、JaYさんに任せた部分もあったんでしょうか?
苑:「AM6:00に針路をとれ」みたいに、確実に“ここにこういうギターがないと”っていうものは事前に伝えますけど、基本的には自由にやってもらっています。
彩雨:「AM6:00に針路をとれ」や「何度目かのプロローグ」は、僕ら4人で骨組みをしっかり作ってから注意書きを添えて渡しましたね。逆にM-2「Curse Of Blood」はギターリフが重要になるなと思っていたので、先にJaYにギターをお願いしてからベースやキーボードを固めていって。曲によって音入れの順番を変えて制作したり、調整しながらやりました。
●「AM6:00に針路をとれ」は今作の中でも特に、一般的な生活を過ごしている人たちが自分を重ねられるような歌詞だなと感じました。
苑:自分自身にも思い当たる節はいっぱいあるんですけど、この歌詞の主人公は完全に僕というわけではなくて。この曲を聴いた時にフワフワっとした、漂うような印象があったんです。そこから“漂い人 人生に迷ってる”っていう歌詞が出てきたんですよね。日々頑張って働いて毎日同じことの繰り返しだけど、“何か自分のやりたいことが他にあるんじゃないか?”って悩んでいる人の姿が思い浮かんだので、その人を主人公に置いて想像しながら書きました。
●最後の“明日を変える 王道な主人公になれ 俺は”という歌詞は、バンドとしての自分たちにも重なるところなのかなと。
苑:やっぱり未来に向かう力強さというのは、今歌いたいことの1つだから。最初のサビで“平凡な主人公だぜ 俺は”っていうところで、自分のことを諦めちゃっているんですよ。でも“それじゃ、つまらないよ”と思っていて。みんな、人生では自分が主人公じゃないですか。だったら(『ドラゴンボール』の)孫悟空みたいに“こいつなら何とかしてくれるだろう”って思えるような、王道な主人公になったほうが良いんじゃないのかなと思って書いた歌詞ですね。
●みんな子どもの頃は孫悟空みたいなヒーローになりたいと思っていたはずなのに、いつの間にか“なれるわけない”っていう前提で考えるようになってしまっているものですよね。
苑:それを大人になってからやろうとするのは、なかなか厳しい道のりだとは思うんですけど、夢を見るのは自由じゃないですか。自分自身もそうやっていきたいし、“そういうふうに思っても良いんだよ”っていうことをリスナーにも言いたい。そういう意味で、“王道な主人公になれ”と歌っているんです。
●「何度目かのプロローグ」というタイトルには、“何度でもまた始められる”という想いも込めているのかなと思ったんですが。
苑:このタイトルは、まさにそういう意味です。理由は何でも良いんですよね。“もう1回やりたいな”と自分で思えたことが重要だから。そういう気持ちがあれば、何度でもできると思います。
●結成10周年を経て頂上に到達したというよりは、またこれから先に進んでいくという意志のほうが強いのかなと感じます。
悠:そうですね。ヘヴィメタルというのは元から僕たちの武器ではあったし、今までのアルバムにも数曲はそういう曲が入っていたんですけど、今作みたいにここまでヘヴィメタルをテーマにしたアルバムは初めてだったんです。そういう意味で今回の挑戦は新しいことだと思いますし、僕自身もヘヴィメタルが好きでバンドをやっているので嬉しい方向性ではありました。
●M-7「SYMPOSION」は燿さん・彩雨さん・悠さんの共作によるインスト曲ですが、これも新たな挑戦だったりする?
燿:今までのフルアルバムでもインスト曲は入っていたんですけど、どれもギターインストだったんです。今回は新体制ということもあって“今までと違うインスト曲があっても良いかな”と思って、この曲を作りました。今のメンバーの顔がちゃんと見えるものというか。わかりやすいところで言うと、キーボードがメインのリードを取っていたり、ベースが浮いているところとか、リズムパターンは基本的にドラマーに考えてもらったりとか、そういうところから発想していきましたね。
●タイトルには、どんな意味を込めているんですか?
燿:これは“シンポシオン”と読むんですけど、“饗宴”や“宴”という意味なんです。曲の雰囲気も“宴っぽいな”と思ったので、このタイトルにしました。「PANTHEON」には“英雄たちが集まる場所”という意味があるんですけど、「SYMPOSION」は“場所”というよりも“みんなで盛り上がっているよ”という意味合いが強いですね。
●「PANTHEON」や「SYMPOSION」と聞くと、すごくメタルやシンフォニックなイメージが湧きますよね…。
苑:そういうイメージを持って欲しかったので、「PANTHEON」というタイトルは意図的に寄せたところはありますね。メタル臭のする感じというか。
●M-3「ICARUS」なんかもそうですよね。
苑:はい。「Excalibur」もそうですけど、ヘヴィメタル以外でこんなタイトルは付けないですよね(笑)。
●M-4「Mammon Will Not Die」もメタルっぽいなと。
苑:“Mammon”は(キリスト教での)“七つの大罪”の1つで、“強欲”を司る悪魔の名前なんです。でも僕は“強欲である”というのがいけないことだとは思っていなくて。人であるからには強欲であるべきだし、それを隠さず“力に変えていったほうが良いじゃないか”という歌詞ですね。
●欲がないと、上昇意欲も湧かないというか。
苑:本当にそうですよね。
●メタルっぽいタイトルで言えば「Curse Of Blood」もそうですが、これはどんな意味を込めている?
苑:“血の呪縛”っていう意味のタイトルなんです。悪く言ったら“呪縛”ですけど、この歌詞の中では“受け継がれてきた血の強さ”とか、“生まれては死んでを繰り返して、ここまで辿り着いた血の力強さ”というものを表現していて。この曲自体がゴリゴリで力強い感じなので、そういう血の強さが合うなと思って付けました。
●バンドも長くやり続けてきたことが呪縛にもなりつつ、それが未来へ突き進んでいく力にもなっているという意味で重なる部分もあるのでは?
苑:本当ですね。確かに重なります。
●そして“道を照らして”、“僕らは歩く”と歌うM-9「SHINE ON」は“この先に進んでいく”という意志を表す曲なのかなと。
苑:これは元々はクリスマス曲として作ったんですけど、今の一言でアルバムの締めにピッタリな印象になりましたね…ありがとうございます(笑)。
●歌詞の内容や曲調的にも「SHINE ON」でアルバムが終わるのかと思いきや、最後に「止まるんじゃねえ」が来るという…。
苑:“PART 2があるんだよ”っていう予告みたいなものですね。「SHINE ON」で終わると幕が一度降りてしまう感じがするんですけど、そうではなくて“まだまだ続きますよ”っていう感じを出したかったんです。
悠:僕は当然「SHINE ON」が最後だと思っていたんですけど、苑がこの曲順を提案してくれて。「止まるんじゃねえ」が最後で良いんじゃないかと言われた時に、“あっ、それ良いね!”と思ったんです。いつもと違う感じもあるし、“PART 2に続く”という意味合いにもなるから。しかも最後はいきなり終わるじゃないですか。その“終わっちゃった…”という感覚と“次が楽しみだな”という感覚が相まって、とても良いなと思いました。
●『PANTHEON -PART 1-』というアルバムタイトルからして、もちろん“PART 2”も予定しているわけですよね?
苑:はい。そこは裏切りたくないので、“PART 2”はあります。このアルバムを作っている最中に“これは入りきらないな…”と思って。今作を作っているうちに色んなアイデアが生まれたので、それを形にするためにも2枚必要だなと。よくメタルバンドのアルバムではPART 1~PART 2と続くものがありますけど、僕たちの作品では今までになかったので“今こそ、これだ!”と思って“PART 2”も作ることにしました。
●1枚には収まりきらないくらいアイデアが浮かんでくるというのも、バンドの良い状態を表しているのかなと感じます。
苑:そうですね。もうPART 2の構想も、頭の中では少しずつできているんですよ。これからツアーをまわっていく中で、徐々に作っていこうと考えています。
●まだ発表はされていませんが、結成10周年を記念した企画も考えられているんでしょうか?
苑:最終的には、何かやろうと思っています。もちろん10周年もめでたいことなんですけど、今は“4人で立つ”ということにまず重きを置いていて。今回のツアーのタイトルにも“ZERO”・“the first”・“the second”と付いているようにまだ先に続いていくものなので、その最終形態の時にみんなで10周年を祝えれば良いなと思っています。
Interview:IMAI
Assistant:室井健吾
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